ブシネスク近似のソースを表示

'''ブシネスク近似''' (Boussinesq approximation)とは、[[流体力学]]の[[自然対流]]問題において、[[熱膨張]]による[[密度]]変化に比べて膨張圧縮による密度変化が無視できるとする解析上の[[近似]]手法である。<!--読み方については、ブシネ、ブジネ、ブジネスクなどが考えられますが、英語版に倣ってブシネスクとしました。-->この近似のもとでは、密度変化は重力に比例した浮力としてのみ流体の運動に影響を及ぼし、[[運動量]]の変化を無視する。

== 定式化 ==
密度 {{mvar|&rho;}} が温度によって変化するとき、[[ナビエ-ストークス方程式]]は以下のようになる：
: <math>\frac{\partial \rho\boldsymbol{v}}{\partial t} + (\boldsymbol{v}\cdot\nabla)(\rho\boldsymbol{v}) = -\nabla p + \mu\nabla^2 \boldsymbol{v} + (\rho-\rho_0)g</math>
ここで右辺最終項は、基準密度 {{math|''&rho;''<sub>0</sub>}} からの密度変化による[[浮力]]を表す。

ブシネスク近似では、左辺に現れる密度は基準密度から変化しないとし、かつ右辺の浮力項の密度変化は温度変化に比例すると仮定する。
: <math>\frac{\partial(\rho_0\boldsymbol{v})}{\partial t} + (\boldsymbol{v}\cdot\nabla)(\rho_0\boldsymbol{v}) = -\nabla p + \mu\nabla^2 \boldsymbol{v} - \rho_0\beta(T-T_0)g</math>
ここで {{math|''T''<sub>0</sub>}} は基準温度、{{mvar|&beta;}} は[[熱膨張率|体膨張係数]]である。変形すると、
: <math>\frac{\partial \boldsymbol{v}}{\partial t} + (\boldsymbol{v}\cdot\nabla)(\boldsymbol{v}) = -\frac{1}{\rho_0}\nabla p + \nu\nabla^2 \boldsymbol{v} - \beta(T-T_0)g</math>
となり、[[ナビエ-ストークス方程式#一般解|非圧縮性のナビエ-ストークス方程式]]に外力項として浮力が付加されただけとなり、解析が簡単になる。

== 制限 ==
この近似は密度変化による移流項の運動量変化を無視するものであるから、それが無視できないほど大きくなるとその妥当性を失う。つまり温度変化が小さく、{{math|1=''&beta;''(''T'' - ''T''<sub>0</sub>) &#x226A; 1}} が成り立つときにのみ有効な近似である。

具体的には空気で温度差が15℃、水で2℃以下のとき誤差が1%程度となる<ref name=Ferziger>{{cite|和書 |editor= |author=Joel H. Ferziger|author2=M. Peri&#x107; |translator=小林敏雄，谷口伸行，坪倉誠 |title=コンピュータによる流体力学 |edition= |publisher=シュプリンガーフェアラーク東京 |year=2003 |isbn=4-431-70842-1 |page=14}}</ref>。

== 参考文献 ==
{{reflist}}

{{DEFAULTSORT:ふしねすくきんし}}
[[Category:数値流体力学]]
[[Category:エポニム]]