プラスマイナス記号のソースを表示

{{混同|プラス記号とマイナス記号}}
{{記号文字|±}}
'''プラスマイナス記号'''（プラスマイナスきごう、±）は[[近似]]値の[[正確度と精度|精度]]を示すためや、符号のみが異なる2つの値を略記する簡便な記法として、広く使われる数学記号である。

数学ではこの記号は「プラスマイナス」（英: ''{{lang|en|plus or minus}}''）と読み、片方が正で片方が負のちょうど2つの答えが考えられることを示す。また後述の[[#マイナスプラス記号]]と合わせて'''複号'''とも呼ばれる。

しかしほとんどの実験科学では、この記号は「増減がある」（英: ''{{lang|en|give or take}}''）と読み、測定値が取りうる上限から下限までの範囲<!-- inclusive range -->を示す。

== 歴史 ==
[[1626年]]に{{仮リンク|アルバート・ジラール|fr|Albert Girard}}が数学的な意味で初めて使用した<ref>{{citation|title=A History of Mathematical Notations, Volume I: Notations in Elementary Mathematics|title-link=A History of Mathematical Notations|first=Florian|last=Cajori|author-link=Florian Cajori|publisher=Open Court|year=1928|page=[https://archive.org/details/historyofmathema031756mbp/page/n263 245]}}</ref>。

== 精度を示す用法 ==
± で近似値を表す用法が最もよく見られるのは、量の数値をその[[公差]]やその統計的[[誤差|誤差の範囲]]と組み合わせて表すときである。たとえば、「5.7 ± 0.2」は5.7から0.2単位内にあると規定もしくは推定される量を示す。5.7 &minus; 0.2 から 5.7 + 0.2 までの範囲内のあらゆる値がありうる。より厳密には、科学的な使用ではその間隔内に存在する確率が、通常2[[標準偏差]] (95.4%) の確率となる。

[[百分率]]を使って許容誤差を示す用法もある。たとえば、230&nbsp;V ± 10% は電圧が 230&nbsp;V の両側 10% の範囲内 (207&nbsp;V - 253&nbsp;V) にあることを指す。

== 符号が反対の2つの値の略記法としての用法 ==
± には、数学の[[方程式]]で、たとえば1つの公式で''2つの''等式を表すための略記法としての用法が見られることがある。最も有名な例に[[二次方程式の解の公式]]がある:

もし ''ax''{{sup|2}} + ''bx'' + ''c'' = 0 (''a'' ≠ 0) ならば、
:<math>\displaystyle x=\frac{-b\pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}.</math>
省略せずに書くと、これは方程式に2つの解があると述べている。すなわち
:<math>\displaystyle x=\frac{-b+\sqrt{b^2-4ac}}{2a}</math>
および
:<math>\displaystyle x=\frac{-b-\sqrt{b^2-4ac}}{2a}</math>
他の例が[[三角恒等式]]に見られる。
:sin (''x'' ± ''y'') = sin ''x'' cos ''y'' ± cos ''x'' sin ''y''
これは2つの等式を略したものである。1つは等式の両側を + にしたものであり、1つは両側を &minus; にしたものである。

正弦関数の[[テイラー展開]]の公式では、この表現のやや異なった用法が見られる:
:<math>\sin x=x-\frac{x^3}{3!} +\frac{x^5}{5!} -\frac{x^7}{7!} +\dots \pm \frac{1}{(2n+1)!} x^{2n+1} +\cdots</math>
これはやや[[記法の濫用|濫用ぎみの記法]]だが、（0から数えて）偶数番目の ''n'' の項は加算されるが、奇数番目の項は減算されるというように項の符号が交互に現れることを示している。この場合、量 (&minus; 1){{sup|''n''}}（''n'' が偶数のときは + 1 を、''n'' が奇数のときは &minus; 1 を与える）を使えば、より曖昧さの少ない表現になる。

==マイナスプラス記号==
{{記号文字|&#8723;}}
さらにもう1つ、'''マイナスプラス記号''' (&#8723;) という文字もまれに見られる。これは「x ± y &#8723; z」のように、式中で「±」記号と組み合わせて使うときにのみ大きな意味を持つ。この式は「''x'' + ''y'' &minus; ''z''」または「''x'' &minus; ''y'' + ''z''」とは解釈できるが、「''x'' + ''y'' + ''z''」や「''x'' &minus; ''y'' &minus; ''z''」とは解釈できない。すなわち「±」で上側の「+」を採るときは「&#8723;」でも上側の「&minus;」の方を採って読み、同様に下側は下側だけで読むのである。このことを'''複号同順'''と言う。この式の場合「''x'' ± (''y'' &minus; ''z'')」のように書き換えれば、式の意味は同じままで混乱を避けられるが、
:cos (''x'' ± ''y'') = cos ''x'' cos ''y'' &#8723; sin ''x'' sin ''y''

のような三角恒等式では「&#8723;」記号を使って書いたほうが読みやすくなる。

ちなみに、「''x'' ± ''y'' ± ''z''」のように書いてすべての組み合わせ、すなわち「''x'' + ''y'' + ''z''」「''x'' + ''y'' &minus; ''z''」「''x'' &minus; ''y'' + ''z''」「''x'' &minus; ''y'' &minus; ''z''」を表すことを、'''複号任意'''と言う。この場合、マイナスプラス記号は用いない。

==文字コード==
{|class="wikitable" style="text-align:center;"   
!記号!![[Unicode]]!![[JIS X 0213]]!![[文字参照]]!!名称   
{{CharCode|177|00B1|1-1-62|正又は負符号|plusmn}}   
{{CharCode|8723|2213|1-3-59|負又は正符号}}
|}

*[[JIS X 0208]]、[[JIS X 0213]] には、プラスマイナス記号が1面1区62点に存在する。また、[[JIS X 0213]] には、マイナスプラス記号が1面3区59点に存在する。
*[[ISO/IEC 8859]]-[[ISO/IEC 8859-1|1]]、[[ISO/IEC 8859-7|7]]、[[ISO/IEC 8859-8|8]]、[[ISO/IEC 8859-9|9]]、[[ISO/IEC 8859-13|13]]、[[ISO/IEC 8859-15|15]]、[[ISO/IEC 8859-16|16]] では、プラスマイナス記号がコード B1{{sub|[[十六進記数法|hex]]}} に存在する。
*Unicode の先頭256個のコードポイントは {{U+}}00B1 にも存在する。
*この記号には <code>&amp;plusmn;</code> という [[HyperText Markup Language|HTML]][[文字実体参照|実体]]表現も存在する。
*使用頻度の低いマイナスプラス記号 (&#8723;) は、名前付きHTML実体は持たないが、Unicode ではコードポイント {{U+}}2213 で利用可能であり、HTML でも <code>&amp;#8723;</code> で利用可能である。
*[[TeX|{{TeX}}]] では、プラスマイナスとマイナスプラス記号はそれぞれ <code>\pm</code> と <code>\mp</code> のような実体として符号化されている。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
*[[プラス記号とマイナス記号]]
*[[数学記号の表]]

{{DEFAULTSORT:ふらすまいなすきこう}}
[[Category:約物]]
[[Category:数学記号]]
[[Category:減法]]