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[[File: 1hkc.jpg|thumb|Hexokinase I, dimer, Human.]] '''ヘキソキナーゼ'''(hexokinase)は、<small>D</small>-[[グルコース]]、<small>D</small>-[[マンノース]]、<small>D</small>-[[フルクトース]]などの[[ヘキソース]]を[[リン酸化]]する[[キナーゼ]]の一種である。ヘキソキナーゼは[[アデノシン三リン酸|ATP]]の末端の[[リン酸基]]を一般のヘキソースの[[ヒドロキシル基]]に[[転移]]させる。ヘキソキナーゼはすべての[[生物]]のすべての[[細胞]]に存在する。その働きは[[解糖系]]などの[[細胞質]]での[[化学反応]]に関わる。構造は、[[酵母]]のヘキソキナーゼの場合、[[分子量]]10,200、[[残基]]数972、ポリ[[ペプチド]]鎖の数は2<ref>David L. Nelson, Michael M. Cox 共著 『レーニンジャーの新生化学[上]‐第4版‐』 山科郁男 監修、川嵜敏祐ほか 編、[[廣川書店]]、2006年10月、p.119、ISBN 978-4-567-24402-2</ref>。反応速度の性質は、[[脳]]のヘキソキナーゼの場合、基質がATP、<small>D</small>-グルコース、<small>D</small>-フルクトースのとき、[[ミカエリス・メンテン定数|''K''<sub>m</sub>]]=0.4、0.05、1.5である<ref>『レーニンジャーの新生化学[上]‐第4版‐』p.289、ISBN 978-4-567-24402-2</ref>。 EC番号:2.7.1.1 == 酵素反応 == Hexose-CH<sub>2</sub>OH + MgATP{{su|p=2−}} → Hexose-CH<sub>2</sub>O-PO{{su|b=3|p=2−}} + MgADP{{su|p=−}} + H<sup>+</sup><ref>Hexose-CH<sub>2</sub>OHは-CH<sub>2</sub>OH基を有するグルコースの含んだヘキソースを示す。</ref> : <chem>Hexose-CH2OH {}+ MgATP^{2-}\ </chem><math> \rightarrow </math><chem>\ Hexose-CH2O^-PO3^{2-}\ {}+ MgADP^- {}+ H^+</chem><ref><chem>Hexose-CH2OH</chem>は<chem>-CH2OH</chem>基を有するグルコースの含んだヘキソースを示す。</ref> {{Enzymatic Reaction |forward_enzyme=ヘキソキナーゼ |reverse_enzyme= |substrate=<small>D</small>-[[グルコース]] |product=α-<small>D</small>-[[グルコース-6-リン酸]] |reaction_direction_(forward/reversible/reverse)=forward |minor_forward_substrate(s)=[[アデノシン三リン酸|ATP]] |minor_forward_product(s)=[[アデノシン二リン酸|ADP]] |minor_reverse_substrate(s)= |minor_reverse_product(s)= |substrate_image=D-glucose wpmp.png |product_image=Alpha-D-glucose-6-phosphate wpmp.png }} ほかの多くのキナーゼと同様にヘキソキナーゼはその[[活性化#化学|活性]]に[[マグネシウム|Mg<sup>2+</sup>]]を必要とする<ref name="lehninger">『レーニンジャーの新生化学[上]‐第4版‐』p.747-748、ISBN 978-4-567-24402-2</ref>。それは、この酵素の基質のひとつは、ATP<sup>4−</sup>とMg<sup>2+</sup>が[[配位結合]]した[MgATP]<sup>2−</sup>だからである。多くの文献ではそれを省略して、ヘキソキナーゼの基質をATPと表記している。 ヘキソキナーゼのグルコースへの活性の場合、Mg<sup>2+</sup>はグルコースがATPのリン原子への[[求核置換反応|求核攻撃]]を促進する役割を担う。ヒドロキシル基もリン酸基も負電荷を帯びているため、本来は反発しあう。Mg<sup>2+</sup>の配位結合がリン酸基の負電荷を抑えることで、リン原子が求核攻撃を受けやすくしている。 ATPとグルコースの反応の触媒において、ヘキソキナーゼは[[コンホメーション]]の変化によってそれを実現している<ref name="lehninger"/>。ヘキソキナーゼはグルコースと結合すると、グルコースを包み込むようにその形を大きく変える。ATPと結合するとさらに変化が起こり、ヘキソキナーゼの2つの[[タンパク質ドメイン|ドメイン]]が約8[[オングストローム|Å]]接近するように動く。この動きにより、ヘキソキナーゼに結合している2つの基質も接近し、また、[[細胞質基質]]の水分子の接近を断つ。この遮断がなければ、ATPは水分子から攻撃を受けて、グルコースと反応する前に[[加水分解]]してしまう。 ==アイソザイム== [[哺乳類]]において、ヘキソキナーゼには4つのアイソザイム(ヘキソキナーゼI、II、III、IV)が存在する。特に、ヘキソキナーゼIV([[グルコキナーゼ]])と他のアイソザイムは、[[グルコース-6-リン酸]]に対する応答が異なる<ref name="lehninger"/>。この違いは、反応速度や調節の性質の違いによく反映される。 ===ヘキソキナーゼI=== [[筋肉]]において、ヘキソキナーゼIIとともにグルコース-6-リン酸を生産している酵素。 ===ヘキソキナーゼII=== ヘキソキナーゼIと同様に、筋肉においてグルコース-6-リン酸を生産している酵素。[[インスリン]]により、ヘキソキナーゼIV等の[[代謝]]に関連する[[酵素]]とともにその[[発現]]は調整されている。具体的には、インスリンはヘキソキナーゼIIの[[転写]]を促進する効果を持つ。この効果は、例えば、食事を摂り過剰の[[グルコース]]を取り込んだときに働く。グルコース濃度の上昇はインスリンの分泌を促し、[[解糖]]を介したグルコースの燃焼を促す。 通常、ヘキソキナーゼIIはその最大あるいはそれに近い[[酵素反応速度論|酵素反応速度]]で働いている。なぜなら、血中(グルコース濃度は約4~5 mM)から[[筋細胞]]に取り込まれたグルコースは、細胞中のヘキソキナーゼIIを飽和するのに十分な濃度をもたらすためである。ヘキソキナーゼIIはグルコースとの[[酵素反応速度論|親和性]]が強く、その1/2飽和濃度<ref>この飽和濃度の半分の値は酵素の[[ミカエリス・メンテン定数]]を定義している</ref>は約0.1 mMと低い。 ヘキソキナーゼIIはIと同様にその生成物であるグルコース-6-リン酸からアロステリック阻害を受ける。すなわち、細胞内のグルコース-6-リン酸の濃度が正常よりも高くなると、一時的にその生産が抑えられる。これは、ヘキソキナーゼIIの酵素反応を[[定常状態]]に復帰させ、グルコース-6-リン酸の生成速度と利用速度のバランスを保つ。 ===ヘキソキナーゼIV=== [[肝臓]]においてグルコース-6-リン酸を生産している酵素。グルコキナーゼとも呼ばれる。ヘキソキナーゼII等と同様に、その[[発現]]はインスリンにより調整されている。 他のアイソザイムと3つの点で大きく異なる。第一に、ヘキソキナーゼIVが半分飽和するには、通常の血中のグルコースの濃度よりも高い約10 mMの濃度が必要である。この値は、他のどのアイソザイムよりも大きい。第二に、ヘキソキナーゼIVの[[酵素阻害剤]]には肝臓に特異的に存在する[[タンパク質]]が存在すること。第三に、ヘキソキナーゼIVはグルコース-6-リン酸による阻害を受けないことである。 これはそれぞれが働く器官、すなわち筋肉と肝臓の糖質代謝における役割の違いを反映している。筋肉は、エネルギー生産のためにグルコースを消費する。対して、肝臓は、[[ホメオスタシス]]を維持するために、グルコースの血中の濃度に応じてグルコースの除去や産生を行う。 == 脚注 == {{Reflist}} {{DEFAULTSORT:へきそきなあせ}} [[Category:生化学]] [[Category:EC 2.7.1]] [[Category:解糖系]]
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