ヘンリー (単位)のソースを表示

{{単位
|名称=ヘンリー
|英字=henry
|記号=H
|単位系=SI
|種類=組立単位
|物理量=[[インダクタンス]]
|組立=V/(A/s)
|定義=1秒間に1 Aの割合で変化する直流の電流が流れるときに1 Vの起電力を生ずる閉回路のインダクタンス
|語源=[[ジョセフ・ヘンリー]]
|画像=[[ファイル:Toroid electronic.jpg|150px]]<br />トロイダルコイル
}}

'''ヘンリー'''（{{lang-en-short|henry}}、記号:'''H'''）は、[[インダクタンス]]の[[物理単位|単位]]である。[[国際単位系]] (SI) では[[SI組立単位|組立単位]]となっている<ref>{{cite web | title=How Many? A Dictionary of Units of Measurement | last=Rowlett | first = Russ | url = http://www.unc.edu/~rowlett/units/dictH.html | publisher = [[University of North Carolina at Chapel Hill]]|accessdate=2016-08-04}}</ref>。名称は、アメリカ合衆国の物理学者[[ジョセフ・ヘンリー]]から付けられた<ref>{{cite web | title = A Princeton Companion | url = http://etcweb.princeton.edu/CampusWWW/Companion/henry_joseph.html | author = Herbert S. Bailey, Jr.|accessdate=2016-08-04}}</ref>。ヘンリーは、イギリスの[[マイケル・ファラデー]]とほぼ同時期に、それとは独立に[[電磁誘導]]を発見した。

== 定義 ==
1ヘンリーは、「1[[秒]]間に1[[アンペア]]の割合で変化する[[直流]]の[[電流]]が流れるときに1[[ボルト (単位)|ボルト]]の[[起電力]]を生ずる閉回路（[[コイル]]など）のインダクタンス」（[[計量単位令]]による。括弧内は編者注）と定義される<ref>[https://laws.e-gov.go.jp/law/404CO0000000357#77 計量単位令（平成4年11月18日政令第357号） 別表第1]</ref>。すなわち、
:H = V/(A/s) = V&middot;A{{sup-|1}}&middot;s
である。[[SI基本単位]]では
:H = V&middot;A{{sup-|1}}&middot;s ＝ m<sup>2</sup>&middot;kg&middot;s{{sup-|2}}&middot;A{{sup-|2}}
となる<ref>{{PDFlink|[https://www.nmij.jp/library/units/si/R8/SI8J.pdf 国際文書 国際単位系 (SI) 第 8 版日本語版 (2006)]}} p. 29。</ref>。他のSI単位で組み立てると、以下のようになる。
:<math>\mbox{H}
= \dfrac{\mbox{J}}{\mbox{A}^2} 
= \dfrac{\mbox{kg} \cdot \mbox{m}^2}{\mbox{s}^{2} \cdot \mbox{A}^2}
= \dfrac{\mbox{kg} \cdot \mbox{m}^2}{\mbox{C}^2}
= \dfrac{\mbox{Wb}}{\mbox{A}}
= \dfrac{\mbox{T} \cdot \mbox{m}^2}{\mbox{A}}
= \dfrac{\mbox{s}^2}{\mbox{F}} 
= \dfrac{\mbox{1}}{\mbox{F} \cdot \mbox{Hz}^2} 
= \Omega \cdot \mbox{s}
</math>
ここで登場する単位は、Wb = [[ウェーバ]]、T = [[テスラ (単位)|テスラ]]、J = [[ジュール]]、m = [[メートル]]、s = [[秒]]、A = [[アンペア]]、V = [[ボルト (単位)|ボルト]]、C = [[クーロン]]、F = [[ファラド]]、Hz = [[ヘルツ]]、Ω = [[オーム]]である。これらの組立単位による表し方は、以下のように説明できる。
; <math>\mathrm{H=\dfrac{J}{A^2}=\dfrac{kg\cdot m^2}{s^2\cdot A^2}=\dfrac{kg \cdot m^2}{C^2}}</math>
: コイルが蓄えるエネルギー {{Mvar|W}}[J] を、インダクタンス {{Mvar|L}}[H] と、電流 {{Mvar|I}}[A] で表すと、<math>W=\frac{1}{2}LI^2</math>であり、<math>\mathrm{J=H\cdot A^2}</math> を導ける。エネルギーの単位であるジュール<math>\mathrm{J}</math>は、 <math>\mathrm{\frac{m^{2} \cdot kg}{s^2}}</math> と変換でき、さらに電荷量 <math>\mathrm{C}</math> は <math>\mathrm{A \cdot s}</math> と変換できる。
; <math>\mathrm{H=\dfrac{Wb}{A}=\dfrac{T\cdot m^2}{A}}</math>
: インダクタンス {{Mvar|L}}[H] は、巻線に流れる電流 {{Mvar|I}}[A] と、そのとき巻線を貫く磁束 {{Mvar|&Phi;}} との比例係数であり、<math>\Phi=LI</math>の関係が成り立つ。ここから、<math>\mathrm{Wb=H\cdot A}</math> を導ける。磁束 {{Mvar|&Phi;}} は、磁束密度 {{Mvar|B}}[T] の面積分としても表せるので、磁束の単位であるウェーバー<math>\mathrm{Wb}</math>は、<math>\mathrm{T\cdot m^2}</math>と変換できる。
; <math>\mathrm{H=\dfrac{s^2}{F}=\dfrac{1}{F\cdot Hz^2}}</math>
: [[真空の透磁率]] {{math|''&mu;''{{sub|0}}}}[H/m] は、[[真空の誘電率]] {{math|''&epsilon;''{{sub|0}}}}[F/m]、[[光速]] {{mvar|c}}[m/s]との間に <math>\mu_0=\frac{1}{\epsilon_0c^2}</math> の関係があり、<math>\mathrm{H=\dfrac{s^{2}}{F}}</math> を導ける。時間の単位である秒 <math>\mathrm{s}</math> は、<math>\mathrm{\frac{1}{Hz}}</math> と変換できる。
; <math>\mathrm{H=\Omega\cdot s}</math>
: インダクタのインピーダンス {{Mvar|Z<sub>L</sub>}}[&Omega;] は、[[角周波数]]を {{Mvar|&omega;}}[/s]、インダクタンスを {{Mvar|L}}[H] として <math>Z_{\mathrm L}={\mathrm j}\omega L</math> と表せ、<math>\mathrm{\Omega=1/s \cdot H}</math> を導ける。ここで、<math>\mathrm j</math> は[[虚数単位]] を表す。

== 利用 ==
{|class=infobox
|-
|{{SI multiples
|symbol=H
|unit=ヘンリー
|note=よく使われる単位を太字で示す
|m=|mc=
}}
|}実用上は、1ヘンリーのコイルは非常に大きなサイズとなり、また[[巻線]]の[[電気抵抗]]などの原因により、大きなインダクタンスで純粋にコイルとしての作用をするものは製作が困難である。そのため、さらに小さな[[ミリ]]ヘンリー(mH)や[[マイクロ]]ヘンリー(&mu;H)といった単位がよく用いられる。

インダクタンスLのコイルと容量''C''の[[コンデンサ]]で形成される共振回路の共振周波数は<math>1/(2\pi \sqrt{LC})</math>となる。

{{clear}}
== 組立単位 ==
{{単位
|名称=ヘンリー毎メートル
|英字=henry per metre
|記号=H/m
|単位系=SI
|種類=組立単位
|物理量=[[透磁率]]
}}
'''ヘンリー毎メートル''' (H/m) は[[透磁率]]の単位である。[[真空の透磁率]]は約{{val|1.256|e=-6|u=H/m}}である。

== 表記 ==
国際単位系 (SI) では、人名に由来する単位の単位記号の1文字名は大文字で書くことになっているため、ヘンリーの記号はHである。ただし、単位名称を英字で書く場合は、頭文字は小文字にして''henry''と書く。[[アメリカ国立標準技術研究所]] (NIST) は、英語話者向けにhenryの複数形は''henries''と表記するよう推奨している<ref name=Taylor>{{Cite journal|author=Ambler Thompson & Barry N. Taylor|year=2008|url=http://physics.nist.gov/cuu/pdf/sp811.pdf|title=NIST Special Publication 811: Guide for the Use of the International System of Units (SI)|publisher=National Institute of Standards and Technology|accessdate=2013-03-21}}</ref>{{rp|31}}。

== 出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|40em}}

{{SI電磁気単位}}
{{SI units navbox}}
{{DEFAULTSORT:へんりい}}
[[Category:電磁気の単位]]
[[Category:SI組立単位]]
[[Category:物理学のエポニム]]
[[Category:単位のエポニム]]