ベンゼンのソースを表示

{{混同|ベンジン}}
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| C=6 | H=6
| Appearance = 無色透明の液体
| Density = 0.8765(20) g/cm<sup>3</sup> <ref name="handbook13">{{cite journal|author= David R. Lide, ed.|title= "Physical Constants of Organic Compounds", in CRC Handbook of Chemistry and Physics, Internet Version 2005|journal=CRC Press |url=https://books.google.co.jp/books?hl=ja&lr=&id=WDll8hA006AC&oi=fnd&pg=PA1&dq=David+R.+Lide,%E3%80%80Physical+Constants+of+Organic+Compounds%22,+in+CRC+Handbook+of+Chemistry+and+Physics,+Internet+Version+2005&ots=U1jGWOP-Pr&sig=J06OPaRj6xNq8ecqDlpDDE2aAM0#v=onepage&q&f=false}}</ref>
| Solubility = 1.8 g/L (15 °C) <ref>{{cite journal|last1=Arnold|first1=D.|last2=Plank|first2=C.|last3=Erickson|first3=E.|last4=Pike|first4=F.|title=Solubility of Benzene in Water.|journal=Industrial & Engineering Chemistry Chemical & Engineering Data Series|volume=3|page=253|year=1958|doi=10.1021/i460004a016}}</ref><!--1st ref is most comprehensive but is paywalled---><ref>{{cite journal|doi=10.1073/pnas.87.1.167|last1=Breslow|first1=R|last2=Guo|first2=T|title=Surface tension measurements show that chaotropic salting-in denaturants are not just water-structure breakers.|journal=Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America|volume=87|issue=1|pages=167-169|year=1990|pmid=2153285|pmc=53221}}</ref><ref>{{cite book|url=https://books.google.co.jp/books?id=N8RcH8juG_YC&pg=PA114&redir_esc=y&hl=ja|page=114|title=Ludwig's applied process design for chemical and petrochemical plants, Volume 1|author=A. Kayode Coker, Ernest E. Ludwig|publisher=Elsevier|year=2007|isbn=075067766X}}</ref>
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| GHSSignalWord = Danger
| EU分類   = {{Hazchem F}}強い可燃性<br/>[[発癌性|Carc. Cat. 1]]<br />[[変異原|Muta. Cat. 2]]<br />{{Hazchem T}}毒性<br />{{Hazchem Xn}}急性毒性（低毒性）<br />{{Hazchem Xn}}経口・吸飲による有害性<br />{{Hazchem N}}水生環境有害性
| 主な危険性 = 潜在的発がん物質<br/ >可燃性
| IngestionHazard = 高い
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| 皮膚への危険性 = 高い
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| 引火点  = -11 {{℃}}, 262 K
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| OtherCpds = [[トルエン]]<br />[[ボラジン]]
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[[File:Benzolflasche.jpg|thumb|]]
'''ベンゼン'''（{{lang-en-short|benzene}}）は、[[分子式]]  C<sub>6</sub>H<sub>6</sub>、[[分子量]] 78.11 の最も単純な[[芳香族炭化水素]]である。[[原油]]に含まれており、[[石油化学]]における基的[[化合物]]の1つである。分野によっては慣用として[[ドイツ語]] (Benzol:ベンツォール) 風に'''ベンゾール'''と呼ぶことがある。[[ベンジン]](benzine、主として炭素数5 - 10の飽和炭化水素からなる混合物)とはまったく別の物質であるが、[[英語]]では異綴の[[同音異義語]]である。

== 化学的性質 ==
[[無色]]で、甘い芳香を持つ[[引火]]性の高い[[液体]]である。

構造および性質が類似する4物質、ベンゼン (Benzene)、[[トルエン]] (Toluene)、[[エチルベンゼン]] (Ethylbenzene)、[[キシレン]] (Xylene) の頭文字をとって[[BTEX]]と称されることがある。ベンゼン・トルエン・キシレンの3つをBTXとも呼ぶ。

== ベンゼン環 ==
[[画像:Benzene geometrie.svg|class=skin-invert-image|thumb|200px|ベンゼン環の模式図]]
[[ファイル:Benzol.JPG|200px|right|thumb|試薬瓶に入ったベンゼン]]
6個の[[炭素]]原子が平面上に[[カメ|亀]]の甲（[[六角形]]）状に配置し、各炭素は[[混成軌道|sp<sup>2</sup>混成軌道]]をとっている。炭素原子間の結合距離は1.397 [[オングストローム|&Aring;]]であり、C−C間の1.534 &Aring;とC=C間の1.337 &Aring;の中間である。これは、全ての炭素同士の結合が等価になっていることを意味する。ケクレ構造式では交代する[[二重結合]]と[[単結合]]で表されているが、実際にはσ電子とπ電子が[[非局在化]]しているため、π電子は特定の結合に寄与していない。[[非局在化電子|非局在化した電子]]は環の上下に環状のπ電子雲を形成する。ベンゼンが対称な構造をもつことは、この分子のσ電子とπ電子の相互作用による。よって、ベンゼンは平面構造を取る。非局在化していることを強調するためにベンゼン環を六角形の中に丸を書いた形（構造式右図）で表示することがある。

π電子が非局在化すると、単なる二重結合・単結合の並びに比べて安定性が高くなる。このようにπ電子を非局在化した環状[[炭化水素]]のうち、π電子が (4n+2) 個（6個、10個、14個、……）あるものはすべてのπ電子が[[結合性軌道]]に入るため特に安定性が高くなる。ベンゼン環を含む、このような安定した化合物を[[芳香族化合物]]と呼ぶ。

ベンゼン環はベンゼン核とも呼ばれるが、現在ではあまり一般的ではない。置換基となる場合は'''[[フェニル基]]''' (phenyl group) と呼ばれる。

[[フェニル基]]の暗号としてはPhが用いられる。[[芳香族炭化水素]]の置換基は[[アリール基]]と呼ばれ、フェニル基は[[ナフチル基]]と同様にアリール基に属する。

== 反応 ==
構造式の見かけ上ベンゼンは二重結合を持つが、アルケンと異なり[[付加反応]]よりも[[置換反応]]の方が起こりやすい。
* 置換反応 - [[ハロゲン]]化（[[フッ素]]化、[[塩素]]化、[[臭素]]化、[[ヨウ素]]化。生成物の例: [[クロロベンゼン]]、[[ブロモベンゼン]]）、スルホン化（[[ベンゼンスルホン酸]]）、ニトロ化（[[ニトロベンゼン]]）、アルキル化、アセチル化
* 付加反応 - [[紫外線]]を当てながら[[塩素]] (Cl<sub>2</sub>) と反応させると[[ベンゼンヘキサクロリド]]（略称 BHC、1,2,3,4,5,6-ヘキサクロロシクロヘキサン）が生成。[[水素]] (H<sub>2</sub>) とも反応して[[シクロヘキサン]]を生成。
* [[五酸化二バナジウム]] (V<sub>2</sub>O<sub>5</sub>) を[[触媒]]として[[酸化]]すると、開環反応を起こし[[マレイン酸]]が生成。

== 危険性 ==
[[世界保健機関|WHO]]の下部機関[[国際がん研究機関|IARC]]より[[発癌性]]がある (Type1) と勧告されており、米国・[[カナダ]]・[[欧州連合|EU]]・[[オランダ]]など各国でも独自に人体影響を研究評価している<ref>{{PDFlink|[https://unit.aist.go.jp/riss/crm/mainmenu/zantei_0.4/benzene_0.4.pdf 詳細リスク評価書 ベンゼン]}} 産業技術総合研究所 化学物質リスク管理研究センター 平成18年3月20日</ref>。日本でも[[大気汚染]]に係る[[環境基準]]が定められている。また1973年には[[ベンゼンから生ずる中毒の危害に対する保護に関する条約]]が発効した。なお、[[ムコン酸]]は、ヒトがベンゼンに曝露された時の指標とされる。ただし、ヒトがベンゼンに曝露されると、他にフェノール、カテコール、ヒドロキノンなども代謝産物として生ずることが知られている<ref>[https://www.nihs.go.jp/hse/ehc/sum1/ehc150.html ベンゼン benzene] 環境保健クライテリア 150、環境省</ref>。

=== 代謝と毒性 ===
[[代謝]]は肝臓で行われ代謝の中間産物として[[フェノール]]、[[カテコール]]、[[ヒドロキノン]]等が生成され代謝産物が[[骨髄]]で毒性を発現する<ref>{{Cite journal |author=Snyder, Robert; Sammett, David; Witmer, Charlotte; Kocsis, James J |year=1982 |title=An overview of the problem of benzene toxicity and some recent data on the relationship of benzene metabolism to benzene toxicity |journal=Genotoxic Effects of Airborne Agents |pages=225-240 |publisher=Springer US |isbn=978-1-4613-3455-2 |doi=10.1007/978-1-4613-3455-2_18 |url=https://doi.org/10.1007/978-1-4613-3455-2_18}}</ref><ref name="大気環境学会">{{Cite journal|和書 |author= |year=1997 |title=ベンゼンに係る環境基準専門委員会報告 |url=https://doi.org/10.11298/taiki1995.32.4-2_19 |journal=大気環境学会誌 |publisher=大気環境学会 |volume=32 |issue=4-2 |pages=19-33 |doi=10.11298/taiki1995.32.4-2_19}}</ref>。
* 急性毒性 : 皮膚・粘膜への刺激、中枢神経系<ref name="大気環境学会"/>
* 慢性毒性 : 造血器官ら影響し[[骨髄腫]]など<ref name="大気環境学会"/>

=== 健康被害と産業界への影響 ===
[[1950年代]]、[[サンダル]]工場で[[接着]]作業に従事していた工員が継続的なベンゼンの吸入により、[[造血器]]系の傷害（[[白血病]]等）を受け死亡する事象が発生した。この事象を契機としてベンゼンの毒性・発癌性が問題視されるようになり、[[有機溶剤]]としては代替品で毒性の比較的低いトルエンやキシレンが使用されるようになった。しかし、これら代替溶剤は故意の吸入（いわゆるシンナー遊び）という、別の弊害を生むことになった。現在においても化学工業・[[実験|理化学実験]]では使用が忌避される傾向にある。ベンゼン含有量を削減した[[ガソリン]]などがその代表例である。

[[2006年]]春以降[[英国]]などの諸外国で清涼飲料水からベンゼンが低濃度検出されることが公表され、10ppbを越える製品の自主回収が要請された。生成の原因は[[保存料]]である[[安息香酸]]と[[酸化防止剤]]である[[ビタミンC]]の反応によるもの、とされている。日本でも厚生労働省医薬食品局食品安全部が市販の清涼飲料水を調査し、1つの製品で70ppbを超える濃度が検出され、自主回収を要請した<ref>[https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/07/h0728-4.html 厚生労働省：清涼飲料水中のベンゼンについて] 2014年9月5日閲覧</ref>。

=== 地下水汚染 ===
都市ガス製造時に生成しガス製造施設で高濃度のベンゼンによる[[土壌汚染]]<ref>{{PDFlink|[http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/pdf/senmonkakaigi/06/06_080519_1-1h-y-benzene.pdf 豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議]}}〈[[東京都]]〉</ref>や[[地下水汚染]]<ref>{{PDFlink|[http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/pdf/senmonkakaigi/06/06_080519_1-14gw-benzene.pdf 豊洲新市場予定地における土壌汚染対策等に関する専門家会議]}}〈[[東京都]]〉</ref>が公表されている。

== 製法 ==
ベンゼンは炭素の豊富な素材が[[不完全燃焼]]すると生産される。自然界では[[火山]]噴火や森林火災でも発生し、[[タバコ]]の主流煙・副流煙にも含まれる。

ベンゼンの工業的製造法には以下の物がある。
* [[ナフサ]]の[[接触改質]]
* [[エチレンプラント]]における[[水蒸気クラッキング]]の副産物
* [[トルエン]]の脱アルキル化または[[不均化]]
* [[高炉]]で使用する[[コークス]]製造の副産物

[[第二次世界大戦]]までは、[[製鉄産業]]において[[コークス]]の副産物としてベンゼンが生産された。その後[[1950年代]]になると、特に[[プラスチック]]産業の成長によりベンゼンの需要は増大し、[[石油]]からベンゼンを生産することが求められた。今日ではベンゼンの9割以上は[[石油化学工業]]で生産され、[[石炭]]からの生産は相対的に少なくなった。

粗製ベンゼンの2016年度日本国内生産量は474,969t、工業消費量は227,755t、純ベンゼンの2016年度日本国内生産量は4,072,574t、工業消費量は1,957,946tである<ref>[https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/ichiran/08_seidou.html#menu5 経済産業省生産動態統計年報　化学工業統計編]</ref>。

石炭蒸し焼きによる[[一酸化炭素]]を主成分とする[[都市ガス]]製造過程でも、ベンゼンが生成する。このため、[[都市ガス]]を製造した工場跡地において、ベンゼンなどによる[[土壌汚染]]や[[地下水汚染]]が起こることがある。

;接触改質 (catalytic reforming)
:沸点が80–200℃の[[炭化水素]]の混合物を[[水素]]ガスと混合する。そして、[[塩化白金]]あるいは[[塩化ロジウム]]触媒と500–525℃、8–50atmで作用させる。この条件下では、[[脂肪族炭化水素]]は環を形成し、水素を失って[[芳香族炭化水素]]になる。反応生成物を蒸留、および[[ジエチレングリコール]]や[[スルホラン]]などによる溶媒抽出によって分離精製して純粋なベンゼンを得る。
;水蒸気クラッキング (steam cracking)
:脂肪族炭化水素から[[エチレン]]や他の[[アルケン|オレフィン]]を生成する過程である。[[ナフサ]]などを原料とすると芳香族に富む[[分解ガソリン]]を副生する。これを[[蒸留]]および[[溶媒抽出]]によって分離精製して純粋なベンゼンを得る。
;トルエンの水素脱アルキル化 (toluene hydrodealkylation)
:トルエンを水素と混合させ、[[クロム]]、[[モリブデン]]または[[酸化白金]]触媒に500–600℃、40–60気圧で作用させる。場合によっては、[[触媒]]の代わりにより高い圧力が使用される。反応式を以下に示す。
: <chem>C6H5CH3 + H2 -> C6H6 + CH4</chem>
:通常、反応の[[収率]]は95%を超える。場合によってはトルエンの代わりにキシレンやもっと分子量の大きい芳香族化合物が使用されるが、変換効率は悪い。
;トルエンの不均化
:トルエン2分子の反応によってベンゼンとキシレンを生成する。トルエンと比較すると、ベンゼンとキシレンは化学原料としての需要が多いので経済的に成立するプロセスである。反応式を以下に示す。
: <chem>2C6H5CH3 -> C6H6 + C6H4(CH3)2</chem>
この他に、[[アセチレン]]3分子から赤熱した鉄触媒(あるいは[[石英触媒]])でも得ることができる（[[ワッカー法|ヘキストワッカー法]]）。具体的には、赤熱させた[[鉄]]管もしくは[[石英]]管にアセチレンガスを通すと得られる。
: <chem>3CH#CH -> C6H6</chem>

== 用途 ==
現在ベンゼンは他の化学物質を製造するための材料として利用されている。用途の大部分を占めるのが、[[プラスチック]]原料としての[[スチレン]]や、樹脂や接着剤の原料としての[[フェノール]]、[[ナイロン]]製造に用いる[[シクロヘキサン]]などである。その他、ゴム、潤滑剤、色素、洗剤、医薬品、爆薬、[[殺虫剤]]などの製造に用いられている。

かつては強力な[[有機溶剤]]として利用され、特に金属部品から[[グリース]]を除くのに使われていた。またペンキはがし、染み抜き、ゴム糊などの家庭用製品にも広く使われていた。毒性が明らかになるにつれ、より毒性の少ないトルエンなどの他の溶剤に取って代わられた。日本では[[労働安全衛生法]]および[[特化則]]により[[溶剤]]としての利用は原則禁止されている。1950年代に[[四アルキル鉛]]に代わるまで、[[オクタン価]]を上げて[[ノッキング]]を防ぐため[[ガソリン]]に添加されていた。世界的に有鉛ガソリンが廃止される過程で、再びベンゼン添加が行われるようになった国もある。

<imagemap>
File:Benzene_uses.png|class=skin-invert-image|center|ベンゼンに由来する主な化成品。記事へのリンクあり。|600px|thumb
rect 39 660 435 807 [[ベンゼン]]
rect 665 60 1062 207 [[エチルベンゼン]]
rect 665 426 1062 579 [[クメン]]
rect 665 795 1062 942 [[シクロヘキサン]]
rect 665 1161 1062 1317 [[アニリン]]
rect 665 1533 1062 1686 [[クロロベンゼン]]
rect 1215 345 1614 495 [[アセトン]]
rect 1215 636 1614 783 [[フェノール]]
rect 1764 57 2163 210 [[スチレン]]
rect 1764 432 2163 585 [[ビスフェノールA]]
rect 1764 1083 2163 1233 [[アジピン酸]]
rect 1764 1332 2163 1482 [[カプロラクタム]]
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rect 2313 1083 2712 1233 [[ナイロン]]
rect 2313 1335 2712 1485 [[ナイロン]]
desc bottom-left
</imagemap>

== 歴史 ==
[[1825年]]、[[マイケル・ファラデー|ファラデー]]によって、[[鯨油]]を[[熱分解]]したときの生成物の中から初めて発見された<ref>{{cite journal|author= M. Faraday|title=On New Compounds of Carbon and Hydrogen, and on Certain Other Products Obtained during the Decomposition of Oil by Heat
|journal=[[Philosophical Transactions of the Royal Society of London]]|volume=115|year=1825|pages=440–466|doi=10.1098/rstl.1825.0022|jstor=107752|authorlink= Michael Faraday}}</ref><ref>{{cite journal|author= R. Kaiser|title=Bicarburet of Hydrogen. Reappraisal of the Discovery of Benzene in 1825 with the Analytical Methods of 1968|journal=Angewandte Chemie International Edition in English|volume=7|issue=5|year=1968|pages=345-350|doi=10.1002/anie.196803451}}</ref>。ただし、この時点では環式構造をもつことは知られず、分子量と性質のみにとどまる。

1833年、ミチェルリヒが[[安息香酸]]({{lang|en|benzoic acid}})と[[生石灰]]を蒸留して得た物質に{{lang|de|benzin}}と名付けたのが名前の由来となった<ref>{{cite journal|author= E. Mitscherlich|title=''Über das Benzol und die Säuren der Oel- und Talgarten'' |journal=[[Liebigs Annalen|''Annalen der Pharmacie'']]|volume=9|issue=1|year=1834|pages=39–48| doi=10.1002/jlac.18340090103 }}</ref><ref name=rocke>{{cite journal|author= A. J. Rocke|title=Hypothesis and Experiment in the Early Development of Kekule's Benzene Theory|journal=Annals of Science|volume=42|year=1985|pages=355-381|doi =10.1080/00033798500200411|issue= 4}}</ref>。

1845年、[[アウグスト・ヴィルヘルム・フォン・ホフマン]]の下にいたCharles Mansfieldが[[コールタール]]からベンゼンを単離し、4年後に工業規模の製造を始めた。化学者の間では次第にベンゼンに関連する化合物が大きなグループを形成するという考えが醸成され、1855年にホフマンが[[芳香族]]という名称を付けることになる。

そして[[1865年]]にドイツの化学者[[アウグスト・ケクレ]]によって、炭素原子からなる[[六員環]]構造をもち、各炭素原子に1つずつ水素原子が結合し、さらに、炭素原子間には単結合と二重結合が交互に配列した「ベンゼンの環状構造式」（'''ケクレ構造式'''）が提案された<ref>{{cite journal|author=F. August Kekulé|title=Sur la Constitution des substances aromatiques |journal=Bulletin de la Société Chimique de Paris|volume=3|year=1865|pages=98-110|authorlink= Friedrich August Kekulé von Stradonitz |url=https://lib.ugent.be/en/catalog/rug01:001282677 }}</ref><ref>{{cite journal|author=F. A. Kekulé|title=''Untersuchungen uber aromatische Verbindungen''|doi = 10.1002/jlac.18661370202|journal=Liebigs Annalen der Chemie|volume=137 |year=1866|pages=129-136|issue=2}}</ref>。
ケクレはベンゼンの1置換体は常に1種類だけ生じ、一方2置換体は3種の異性体（オルト・メタ・パラ）が生じることを根拠にこの構造を提唱している。この構造は、ケクレが夢の中でヒントを得たとされている。猿が手を繋いでいたとか、蛇（[[ウロボロス]]）が自分の尻尾を噛んでぐるんぐるん回っていたなどと言われているが、その真偽については疑問が持たれている（詳細はケクレの項目を参照）。この構造('''ケクレ構造''')を持つ分子を'''ケクレ分子'''という。

[[画像:Historic Benzene Formulae V.3.svg|thumb|400px|left|提唱されたベンゼンの構造式。左から2番目がデュワーの式、3番目は[[プリズマン]]として知られる]]
ケクレ以外にも[[ジェイムズ・デュワー|デュワー]]や[[バンバーガー]]をはじめとして多くのベンゼン構造式が提唱されてきた。

これらのうち、デュワーのベンゼン式に相当する置換化合物（フォトピリドン (photopyridone) など）が発見されており、デュワー式に相当するベンゼンの類縁体の総称して[[デュワーベンゼン]]と呼称されることもある。ヘキサメチルデュワーベンゼンは市販もされている。
{{-}}

== 日本の法規制 ==
* [[化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律]]（化審法）：優先評価化学物質(45)
* [[特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律]]（化管法）：特定第一種指定化学物質(1-400)
* [[消防法]]：危険物第四類第一石油類
* [[労働基準法]]：がん原性化学物質、疾病化学物質
* [[労働安全衛生法]]：危険物（引火性の物）、特定化学物質（特定第2類物質、第3類物質等、特別管理物質）、名称等を表示すべき有害物、名称等を通知すべき有害物、管理濃度 1 ppm（ただし、ベンゼンゴムのりについては、製造等禁止物質）
* [[環境基本法]]：
** 水質汚濁に係る環境基準 0.01 mg/L
** 地下水の水質汚濁に係る環境基準 0.01 mg/L
** 土壌汚染に係る環境基準 0.01 mg/L (溶出試験検液濃度)
** 大気の汚染に係る環境基準 0.003 mg/m3 (年平均値)
* [[水道法]]：水質基準 0.01 mg/L
* [[下水道法]]：水質基準 0.1 mg/L
* [[水質汚濁防止法]]：有害物質、排水基準 0.1 mg/L
* [[大気汚染防止法]]：特定物質、有害大気汚染物質 (優先取り組み物質)、環境基準 0.003 mg/m3(年平均値)
* [[土壌汚染対策法]]：特定有害物質、土壌溶出基準 0.01 mg/L
* [[海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律]]（海洋汚染防止法）：有害液体物質C 類
* [[船舶安全法]]：引火性液体類
* [[航空法]]：引火性液体
* [[港則法]]：引火性液体類
* [[廃棄物の処理及び清掃に関する法律]]（廃棄物処理法）：特別管理産業廃棄物、判定基準 1 mg/L (廃酸・廃塩基、含有量)、0.1 mg/L(汚泥など、溶出量)
* [[建築物における衛生的環境の確保に関する法律]]（建築物衛生法）：水質基準 0.01 mg/L
* [[高圧ガス保安法]]：毒性ガス、可燃性ガス

==文字コード==
{{特殊文字|対象=節|説明=[[その他の技術用記号]]}}
[[Unicode]]の[[その他の技術用記号]]に割り当てられている。
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|}

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|2}}

== 関連項目 ==
* [[芳香族化合物]]
* [[1,3,5-シクロヘキサトリエン]] - ベンゼンが共鳴構造をとらず、電子が局在化していると仮定したときの、仮想の物質、ベンゼンの別名
* [[ナフタレン]]
* [[アントラセン]]
* [[フェナントレン]]
* [[ボラジン]] - 無機ベンゼンとも呼ばれる[[窒素]]・[[ホウ素]]化合物
* [[プリズマン|トリプリズマン]] - 三角柱型をしたベンゼンの[[異性体]]
* [[クラウスベンゼン]]
* [[π-π相互作用]]
* [[環境基準]]、[[地下水汚染]]、 [[土壌汚染]]
* [[シクロオクタテトラエン]]
* [[ベンゼンから生ずる中毒の危害に対する保護に関する条約]]

== 外部リンク ==
* [https://web.archive.org/web/20160304185020/http://ceis.sppd.ne.jp/fs2011/factsheet/data/1-400.html 化学物質ファクトシート2011年版 ベンゼン][https://archive.md/rn8XN] - 環境省
* {{PDFlink|[https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/pdf/CI_02_001/risk/pdf_hyoukasyo/299riskdoc.pdf 化学物質の初期リスク評価書 No.104 ベンゼン]}} - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
* {{ICSC|0015}}
* {{Kotobank}}

{{官能基}}
{{芳香環}}
{{Cycloalkenes}}

{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:へんせん}}
[[Category:溶媒]]
[[Category:第1石油類]]
[[Category:毒]]
[[Category:芳香族炭化水素]]
[[Category:六員環化合物]]
[[Category:アヌレン]]
[[Category:発癌性物質]]
[[Category:マイケル・ファラデー]]