ベーキングパウダーのソースを表示

[[File:Backpulver.jpg|thumb|ベーキングパウダー]]
'''ベーキングパウダー'''（{{lang-en|baking powder}}）又は{{読み仮名|'''膨らし粉'''|ふくらしこ}}は、[[パン]]や焼き[[菓子]]といった焼き窯やオーブンの熱で焼く（[[ベーキング]]）料理に使われる[[膨張剤]]の一種である。

ガス発生剤の加熱分解及びガス発生剤と酸性剤の中和反応によりガスが発生する<ref>{{Citation |和書 |last=平井 |first=俊男 |url=https://doi.org/10.20665/kakyoshi.49.10_667 |title=ベーキングパウダーについて |periodical=化学と教育 |publisher=[[日本化学会]] |year=2001 |volume=49 |number=10 |page667 |doi=10.20665/kakyoshi.49.10_667}}</ref>。

[[出芽酵母]]（イースト）を使用する際の精密な温度管理と「寝かし」工程が不要で、生地中の砂糖や油脂などの影響を受けにくく保存性が良いことから利用が広まった。

== 組成と種類 ==
ガス発生剤を単独で用いる物と酸性剤 + 遮断剤が配合されている物がある。一般に市販されるベーキングパウダーは、ガス発生剤 + 酸性剤 + 遮断剤を一包式にしたものである{{r|ohmiya}}。

; ガス発生剤 :熱分解により[[二酸化炭素]] {{chem|CO|2}} または[[アンモニア]]ガス {{chem|NH|3}} を発生させる{{r|ohmiya}}<ref name="TokyoGas">[https://web.archive.org/web/20140329164134/http://home.tokyo-gas.co.jp/shoku110/shokuzai/140.html 「重曹」と「ベーキングパウダー」の違い、東京ガス 食の生活110番Ｑ＆Ａ]</ref>。
:* [[炭酸水素ナトリウム]] {{chem|NaHCO|3}}（重曹）、[[炭酸水素アンモニウム]] {{chem|NH|4|HCO|3}}（重安）
; 酸性剤 :中和反応によってガス発生剤の分解を促進する{{r|ohmiya|TokyoGas}}。成分の配合を変えることで、ガス発生が最大になるタイミングも変える事が出来る<ref name=cookeryscience1968.8.3_126>小西旭、「[https://doi.org/10.11402/cookeryscience1968.8.3_126 ベーキングパウダー合成膨脹剤]」『調理科学』 1975年 8巻 3号 p.126-131, {{doi|10.11402/cookeryscience1968.8.3_126}}</ref>。
:* [[酒石酸水素カリウム]]、[[リン酸カルシウム|リン酸二水素カルシウム （別名第一リン酸カルシウム）]]、[[酒石酸]]、焼[[ミョウバン]]、[[フマル酸]]、[[リン酸三ナトリウム|リン酸ナトリウム]]、[[グルコノデルタラクトン]]、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性リン酸アルミニウムナトリウム ({{chem|NaAl|3|H|14|(PO|4|)|8|4H|2|O}}) など。
; 遮断剤 :保存中にガス発生剤と酸性剤が反応しない様に隔てる為の成分{{r|ohmiya|TokyoGas}}。
:* [[デンプン]]、[[小麦粉]]

=== 一剤式 ===
アルカリ性剤 + 酸性剤 + 分散剤
* 二酸化炭素を発生する[[炭酸水素ナトリウム|重曹]]が（基剤-ガス発生剤）{{r|TokyoGas}}水分が加えられる事で重曹と酸性剤が反応して重曹の分解が開始され、加熱によって分解は加速される。
分解によって[[炭酸ナトリウム]]、炭酸ガス、水が生成するが、[[生地 (食品)|生地]]を膨らませる元になるのは炭酸ガスである。[[炭酸ナトリウム]]はアルカリ性で刺激ある苦味を示すが、酸性剤（助剤）等で中和され無味となる{{r|TokyoGas}}。

=== 二剤式 ===
アルカリ性剤、酸性剤を二包式に分け、使用時に混合する{{r|ohmiya}}。

== 化学反応式 ==
代表的な反応式の例{{r|cookeryscience1968.8.3_126}}、

* 40[[℃]]以上<ref>齊藤紅、簑島良一、椎葉究、「[https://doi.org/10.3136/nskkk.63.170 ミョウバンとその代替化合物の添加がパンケーキの膨張と構成タンパク質に与える影響]」『日本食品科学工学会誌』 2016年 63巻 4号 p.170-175, {{doi|10.3136/nskkk.63.170}}</ref>への加熱によるガス発生
*: <chem>2NaHCO3 -> Na2CO3 + H2O + CO2</chem>
* リン酸カルシウム
*: <chem>2NaHCO3 + Ca(H2PO4)2 -> Na2HPO4 + CaHPO4 + 2H2O + 2CO2</chem>
* d-酒石酸
*: <chem>NaHCO3 + C4H6O6 -> Na2C4H4O6 + 2H2O + CO2</chem>
* d-酒石酸水素カリウム
*: <chem>NaHCO3 + KHC4H4O6 -> KNaC6H4O6 + H2O + CO2</chem>
* [[グルコノラクトン]]
*: <chem>NaHCO3 + C6H10O6 + H2O -> NaHCO3 + C6H12O7 -> NaC6H11O7 + CO2</chem>
* 塩化アンモニウム
*: <chem>NaHCO3 + NH4Cl -> NaCl + H2O + CO2 + NH3</chem>

== 発明 ==
[[File:Oetker patent.jpg|thumb|150px|エトカーの1903年のベーキングパウダーの特許]]
ベーキングパウダーは[[ドイツ]]人の化学者、[[ユストゥス・フォン・リービッヒ]] (Justus von Liebig) の弟子の1人であるエーベン・ノートン・ホースフォード (Eben Norton Horsford) の手で[[1856年]]に研究が始められた{{要出典|date=2011年11月}}。ドイツ人[[薬剤師]]の{{仮リンク|アウグスト・エトカー|de|August Oetker|label=}}が[[1891年]]に売り出し<ref name="OetkerHistory">[http://www.oetker.com/oetker_com/company_history.html Company History, Dr. August Oetker 社]</ref>、現在でもドイツでは同じ ''Backin'' の名で売られている<ref name="oetker">[http://www.oetker.de/oetker/html/default/ascr-4h8djg.de.html Backin] (Dr. August Oetker社の商品紹介)</ref>。エトカーは<!--要出典:、[[1898年]]にベーキングパウダーの大量生産を始め、-->[[1903年]]に[[特許]]を取得している。

== 重曹との違い ==
[[炭酸水素ナトリウム|重曹]]（ベーキングソーダ）との違いは、重曹は純粋なガス発生剤であるのに対し、ベーキングパウダーは重曹に加えて助剤（酸性剤）や分散剤（遮断剤）も含む点にある{{r|TokyoGas}}。両者は対象によって使い分けられる{{r|TokyoGas}}<ref name="About">[http://chemistry.about.com/cs/foodchemistry/f/blbaking.htm What Is the Difference Between Baking Soda & Baking Powder?, About.com]</ref>。他に酸性の材料（ヨーグルト、チョコレート、バターミルク、はちみつ{{r|About}}等）が十分含まれる場合や、焼く時間が比較的短い（重曹が酸と反応する時間が短い）場合<ref name="wisegeek">[http://www.wisegeek.com/what-is-the-difference-between-baking-soda-and-baking-powder.htm What is the Difference Between Baking Soda and Baking Powder?, wisegeek.com]</ref>は重曹が使われる。酸性の材料が少なかったり焼く時間が十分長い場合等は、ベーキングパウダーが用いられる{{r|About|wisegeek}}。業務用のベーキングパウダーは焼き物や蒸し物等の用途別に数百種類あると言われる{{r|TokyoGas}}。

* 重曹が用いられる例：[[クッキー]]{{r|About|wisegeek}}、[[ホットケーキ|パンケーキ]]{{r|wisegeek}}、[[利休饅頭]]{{r|TokyoGas}}、[[どらやき]]{{r|TokyoGas}}等
* ベーキングパウダーが用いられる例：[[ケーキ]]{{r|About}}、[[マフィン]]{{r|wisegeek}}、[[ビスケット]]{{r|About|wisegeek}}、[[バターケーキ]]{{r|TokyoGas}}、[[まんじゅう]]の皮{{r|TokyoGas}}、イースト無しの[[パン]]{{r|wisegeek}}等

== ミョウバン（アルミニウム）の代替 ==
旧来、[[ミョウバン]]（アルミニウムの化合物）は重曹（炭酸水素ナトリウム）を中和、炭酸ガスを発生させるための膨張剤として、'''ベーキングパウダー'''に利用されてきた。

しかしながら、アルミニウムの毒性、とりわけ[[アルツハイマー病|アルツハイマー]]の発症リスクが指摘されている<ref>{{Cite journal|和書|title=アルミニウムはアルツハイマー病の原因物質か? |url=https://doi.org/10.14894/faruawpsj.26.7_727 |author=佐々木晴代 |date=1990 |journal=ファルマシア |publisher=日本薬学会 |volume=26 |issue=7 |pages=727-728 |doi=10.14894/faruawpsj.26.7_727}}</ref>。

これを代替する中和剤としてグルコノラクトンなどを用いたアルミフリーのベーキングパウダーが開発されている<ref>{{Cite journal|和書|last=紅|first=齊藤|last2=良一|first2=簑島|last3=究|first3=椎葉|date=2016|title=ミョウバンとその代替化合物の添加がパンケーキの膨張と構成タンパク質に与える影響|url=https://doi.org/10.3136/nskkk.63.170|journal=日本食品科学工学会誌|volume=63|issue=4|pages=170－175|doi=10.3136/nskkk.63.170}}</ref>。

== その他 ==
* [[1947年]]（[[昭和]]22年） - [[東京都]][[荒川区]]で希望者に[[配給 (物資)|配給]]されたふくらし粉を原因とする[[食中毒]]が多発。同年9月28日までに約100人に下痢などの症状が出た。原因として原材料の不純物が考えられている<ref>「百名が中毒 危ういフクラシ粉」『朝日新聞』昭和22年9月29日.2面</ref>。

== 出典・脚注 ==
{{Reflist|refs=
<ref name=ohmiya>{{Cite web|和書
 | url = https://www.ohmiya-bp.com/sp/business1/
 | archiveurl = https://web.archive.org/web/20180808105843/ohmiya-bp.com/sp/business1/
 | title = ベーキングパウダー（膨脹剤）
 | publisher = 大宮糧食工業株式会社
 | accessdate = 2018-08-08
 | archivedate = 2018-08-08
 | url-status=dead|url-status-date=2022-09-30 }}</ref>
}}

== 関連項目 ==
{{Commonscat}}
* [[酵母|ドライイースト]]（乾燥酵母）- ベーキングパウダーと同じくパンや焼き菓子の膨張剤として用いられ、発酵作用によりゆっくりとガスを発生させる。

{{Normdaten}}

{{DEFAULTSORT:へえきんくはうた}}
[[Category:食品添加物]]
[[Category:二酸化炭素]]