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{{For|記述集合論における特定の空間|ベール空間 (集合論)}} [[数学]]の[[位相空間論]]における'''ベール空間'''(ベールくうかん、{{lang-en-short|''Baire space''}})は、直観的には非常の大きくてある種の極限操作を行うのに「十分多くの」点を持つような[[位相空間]]である。名称はこの概念を導入した[[ルネ=ルイ・ベール]]に由来する。 == 動機 == 勝手な位相空間において、[[内点]]を持たない[[閉集合]]のクラスはちょうど[[稠密集合|稠密]][[開集合]]の[[境界 (位相空間論)|境界]]を成しており、これらの集合はある意味で「無視できる」。いくつか例を挙げれば、[[有限集合]]、平面内の滑らかな[[曲線]]、[[ユークリッド空間]]内の真のアフィン部分空間などがそれにあたる。位相空間が'''ベール空間'''であるというのは、それが「十分大きい」こと、つまりは無視できる集合の[[可算]]個の[[合併 (集合論)|合併]]になっていないことを意味する。例えば、三次元ユークリッド空間はその中の可算個のアフィン平面の合併になってはいない。 == 定義 == ベール空間の詳しい定義は、主にその時々に支配的だった需要と観点に起因して、時代とともに少しずつ変化してきた。まずは、よくある現代的定義を述べ、そのあとベールが与えたオリジナルの定義により近い歴史的定義を挙げる。 === 現代的定義 === 位相空間が'''ベール空間'''であるとは、[[内部 (位相空間論)|内部]]が[[空集合|空]]であるような[[閉集合]]からなる任意の[[可算]][[族 (数学)|族]]の[[合併 (集合論)|合併]]は必ず内部が空になるときに言う。 この定義は以下のように同値な条件で言い換えることもできる。 * 可算個の[[稠密集合|稠密]][[開集合]]の交わりは必ず稠密になる。 * 可算個の[[疎集合|疎]][[閉集合]]の合併の内部は必ず空になる。 * ''X'' の可算個の閉集合の合併が内点を持つ限り常に、それら閉集合の中に内点を持つものがある。 === 歴史的定義 === {{main|第一類集合}} ベールのオリジナルの定義では、[[範疇 (数学)|範疇]]の概念が以下のように定義された。 位相空間 ''X'' の部分集合が、 * ''X'' において'''[[疎集合|疎]]'''あるいは'''至る所疎''' (''nowhere dense'') であるとは、その[[閉包 (位相空間論)|閉包]]の[[内部 (位相空間論)|内部]]が[[空集合|空]]であることを言う。 * ''X'' において'''第一類''' (''first category'') または'''痩せている''' (''meagre'') とは、それが可算個の疎集合の和になっていることを言う。 * ''X'' において'''第二類''' (''second category'') または'''痩せていない''' (''nonmeagre'') とは、それが ''X'' において第一類でないことを言う。 これらの言葉でベール空間の定義を述べると次のようになる:「位相空間 ''X'' がベール空間となるのは、任意の空でない開集合が ''X'' において第二類であるときである」。この定義は先述の現代的定義と同値である。 ''X'' の部分集合 ''A'' が'''残留的''' (''residual'', ''comeagre'') であるとは、その[[補集合]] ''X'' ∖ ''A'' が痩せていることを言う。位相空間 ''X'' がベール空間であるための必要十分条件は、''X'' の任意の残留的部分空間が稠密になることである。 == 例 == * 実数の全体 '''R''' に通常の位相を考えたものはベール空間であり、したがって自分自身において第二類である。有理数の全体 '''Q''' は '''R''' において第一類であり、無理数の全体 '''P''' は '''R''' において第二類である。 * [[カントル集合]] ''C'' はベール空間であり、したがって自分自身において第二類だが、''C'' は単位閉区間 [0, 1] に通常の位相を入れたものにおいて第一類である。 * '''R''' において第二類かつ[[ルベーグ測度]]が 0 であるような例が、<div style="margin: 1ex 2em"><math> \bigcap_{m=1}^{\infty}\bigcup_{n=1}^{\infty} \left(r_{n}-{1 \over 2^{n+m} }, r_{n}+{1 \over 2^{n+m}}\right) </math></div>で与えられる。ただし、{''r''<sub>''n''</sub>}{{su|b=''n''=1|p=∞}} は[[有理数]]を全て[[数え上げ]]る[[数列]]とする。 * 有理数の全体 '''Q''' に '''R''' からくる通常の位相を入れた空間はベール空間でない。これは '''Q''' が可算個ある各点 ''q'' に対応する[[一元集合]] {''q''}(これは内点を持たない閉集合になっている)の合併として書けることによる。 == ベールの範疇定理 == {{main|ベールの範疇定理}} [[ベールの範疇定理]]は位相空間がベール空間であるための[[十分条件]]を与えるものである。[[位相空間論]]および[[函数解析学]]で重要なツールとなっている。 * ('''BCT1''') 任意の[[完備距離空間]]はベール空間である。より一般に、何らかの完備[[擬距離空間]]の[[開集合|開部分集合]]に[[同相]]な任意の位相空間はベール空間になる。特に 任意の[[位相的完備]]空間はベール空間である。 * ('''BCT2''') 任意の[[局所コンパクト]][[ハウスドルフ空間]]はベール空間である。 '''BCT1''' は以下の空間がベール空間であることを示す: * 実数の全体 '''R''' に通常の位相を入れた空間 * 無理数の全体 '''P''' に '''R''' からくる通常の位相を入れた空間 * [[カントル集合]] ''C'' * 任意の[[ポーランド空間]] '''BCT2''' は任意の[[多様体]]がベール空間であることを示す。これは多様体が[[パラコンパクト]]でなく、したがって[[距離化可能]]でない場合でも成り立つ。例えば[[長い直線]]は第二類である。 == 性質 == * 任意の空でないベール空間 ''X'' は、自分自身において第二類である。また、''X'' の稠密開集合からなる任意の可算族の交わりは空でない。しかしこれら二つの主張の逆は何れも成り立たない。なんとなれば、有理数全体の成す集合 '''Q''' と[[単位閉区間]] [0, 1] との[[位相的直和]]を考えればわかる。 * ベール空間の任意の[[開部分空間]]はまたベール空間である。 * [[連続写像]]の[[族 (数学)|族]] ''f''<sub>''n''</sub>: ''X'' → ''Y'' とその各点収斂極限 ''f'': ''X'' → ''Y'' が与えられたとき、''X'' がベール空間ならば極限写像 ''f'' が連続でない点の全体は ''X'' において[[痩集合|痩せた集合]]であり、''f'' が連続になる点の全体は ''X'' において稠密である。このことの特別な場合が[[一様有界性原理]]である。 == 関連項目 == * [[バナッハ・マズール・ゲーム]] == 参考文献 == *Munkres, James, ''Topology'', 2nd edition, Prentice Hall, 2000. *Baire, René-Louis (1899), Sur les fonctions de variables réelles, ''Annali di Mat. Ser. 3'' '''3''', 1--123. {{DEFAULTSORT:へえるくうかん}} [[Category:位相空間論]] [[Category:関数解析学]] [[Category:位相空間の性質]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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