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{{Chembox | Reference = <ref>''[[Merck Index]]'', 11th Edition, '''7310'''.</ref> | Name = ホスゲン | ImageFileL1 = Phosgene-dimensions-2D.png | ImageSizeL1 = 120px | ImageFileR1 = Phosgene-3D-vdW.png | ImageSizeR1 = 100px | IUPACName = ホスゲン(許容慣用名)<br />二塩化カルボニル、カルボニルジクロリド(系統名) | OtherNames = 炭酸ジクロリド | Section1 = {{Chembox Identifiers | SMILES = O=C(Cl)Cl | CASNo = 75-44-5 | CASNo_Ref = {{cascite}} | RTECS = SY5600000 | EINECS = 200-870-3 | UNNumber = 1076 }} | Section2 = {{Chembox Properties | Formula = CCl<sub>2</sub>O | MolarMass = 98.92 g/mol | Appearance = 無色気体 | Odor = 青草臭または木材や藁の腐敗臭 | Density = 4.248 g/dm<sup>3</sup> (15 ℃)<br />1.432 g/cm<sup>3</sup> (0 ℃) | Solubility = hydrolysis | MeltingPtC = −118 | BoilingPtC = 8.2 }} | Section3 = {{Chembox Structure | MolShape = Planar, trigonal | Dipole = 1.17 [[デバイ|D]] }} | Section7 = {{Chembox Hazards | ExternalMSDS = {{ICSC-small|0007}} | GHSPictograms = {{GHS06}} {{GHS05}} | GHSSignalWord = '''Danger''' | HPhrases = {{H-phrases|314|330}} | PPhrases = {{P-phrases|260|264|271|280|284|301+330+331|303+361+353|304+340|305+351+338|310|320|321|363|403+233|405|501}} <!--旧規格なので隠しました。--><!--| EUIndex = 006-002-00-8 | EUClass = 猛毒 ('''T+''') | RPhrases = {{R26}}, {{R34}} | SPhrases = {{S1/2}}, {{S9}}, {{S26}}, {{S36/37/39}}, {{S45}}--> | NFPA-H = 4 | NFPA-F = 0 | NFPA-R = 1 | FlashPt = 不燃性 }} | Section8 = {{Chembox Related | OtherCpds = [[チオホスゲン]]<br />[[ホルムアルデヒド]]<br />[[炭酸]]<br />[[尿素]]<br />[[一酸化炭素]]<br />[[クロロギ酸]] }} }} '''ホスゲン''' ({{lang-en-short|Phosgene}}) とは、[[炭素]]と[[酸素]]と[[塩素]]の[[化合物]]。'''二塩化カルボニル'''などとも呼ばれる。[[分子式]]は COCl<sub>2</sub> で、[[ホルムアルデヒド]]の[[水素]]原子2つを[[塩素]]原子で置き換えた構造を持つ。毒性の高い気体であり、[[毒物及び劇物取締法]]によって毒物に指定されている<ref>[http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_docframe2.cgi?MODE=hourei&DMODE=SEARCH&SMODE=NORMAL&KEYWORD=%93%c5%95%a8&EFSNO=741&FILE=FIRST&POS=0&HITSU=87 毒物及び劇物指定令 昭和四十年一月四日 政令第二号 第一条 二十六の四]</ref>。[[1812年]]に[[イギリス]]の[[化学者]]{{ill|ジョン・デービー|en|John Davy (chemist)}}(同じく化学者である[[ハンフリー・デービー]]の弟)によって発見された<ref>{{cite journal | title = On a Gaseous Compound of Carbonic Oxide and Chlorine | author = John Davy | journal = Philosophical Transactions of the Royal Society of London | volume = 102 | year = 1812 | pages = 144–151 | doi = 10.1098/rstl.1812.0008 | issn = 0261-0523 | jstor=107310}}</ref>。 == 用途 == 化学工業分野で重要な化合物であり、1812年に初めて合成された<ref name="who2004">[http://www.who.int/csr/delibepidemics/bcjapaneses.pdf 生物・化学兵器への公衆衛生対策(世界保健機関)2004年 P130-133]</ref>。[[一酸化炭素]]と[[塩素]]から多孔質の[[炭素]]を[[触媒]]として合成される。[[ポリカーボネート]]、[[ポリウレタン]]などの合成樹脂の原料となる。 有機合成分野でもホスゲンは[[アルコール]]と反応して[[炭酸エステル]]を、[[アミン]]と反応して[[尿素]]あるいは[[イソシアネート]]を、[[カルボン酸]]と反応して[[酸塩化物]]を与えるなど用途が広い。ただし猛毒の気体であるホスゲンは実験室レベルでは使いにくく、近年では炭酸ビス(トリクロロメチル)(通称 [[トリホスゲン]])が代用試薬として用いられるようになった。この試薬は安定な固体だが、[[トリエチルアミン]]や[[活性炭]]の作用で分解し、[[in situ]] で3当量のホスゲンを発生する。ホスゲンに比べて格段にハンドリングが容易なため、近年使用例が増えている。 また、[[フロン類]](クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン)が加熱される事でも発生するので、特に冬季など暖房器具を使用する時期には中毒事故が発生しやすかった。室内の空気に塩素を含む有機性のガス、あるいは塩素と有機性のガスが存在する場合に、放電式の空気清浄機を使用すると、中毒事故が起こる可能性がある。 毒性が強く、[[化学兵器]]([[毒ガス]]・[[窒息剤]])とされている<ref>[https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/18pdf/1862.pdf 遺棄化学兵器の安全な廃棄技術に向けて 日本学術会議 平成13年7月23日]</ref><ref name="chuudokucenter">[http://www.j-poison-ic.or.jp/ippan/HP201204.pdf 公益財団法人 日本中毒情報センター 化学テロ・化学災害対応体制(概要) P6]</ref>。[[第一次世界大戦]]では大量に使用された<ref>[http://www.nihs.go.jp/hse/c-hazard/bc-info/cagent/pulmonary.html 窒息剤(Choking Agents、Pulmonary Agents) 国立医薬品食品衛生研究所]</ref>。旧日本軍では「あお剤」と呼称している<ref>[https://wwwa.cao.go.jp/acw/heiki.html 遺棄化学兵器等(内閣大臣官房遺棄化学兵器処理担当室)]</ref>。現在の[[日本]]では[[化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律]]の第二種指定物質・毒性物質であり、同法の規制をうける。詳細は[[化学兵器禁止条約]]を参照。 == 性質 == 20 ℃ では[[気体]]である。沸点は 8 ℃ で、純粋なホスゲンは独特の青草臭であるが<ref name="who2004"/>、毒ガスに使われるような低純度なもの、希薄なものは木材や藁の腐敗臭がするといわれている。 [[水]]があると[[加水分解]]を受け、[[二酸化炭素]]と[[塩化水素]]を生じる。 : <chem>COCl2 + H2O -> CO2 + 2HCl</chem> == 毒性 == 高濃度のホスゲンを吸入すると早期に[[目|眼]]、[[ヒトの鼻|鼻]]、[[気道]]などの粘膜で加水分解によって生じた[[塩酸]]によって刺激症状が生じる。 無症状の潜伏期を経て[[肺水腫]]を起こす<ref name="who2004"/>。潜伏期は数時間から、場合によっては24時間以上持続する場合もある<ref name="who2004"/>。 肺水腫が進んで潜伏期が過ぎると咳、息切れ、呼吸困難、胸部絞扼感、胸痛などの自覚症状が出る。肺水腫によって[[肺胞]]毛細血管への酸素運搬が阻害され、低酸素症を引き起こす。また体液が肺胞に流出することによって血液濃縮を起こし、[[心不全]]に進行する。 低濃度のホスゲンに長期曝露した場合には肺に障害を与え、繊維症、機能障害を生じることがある。また、数日が経過してから感染症による[[肺炎]]を起す場合がある。 * 人の粘膜を刺激する:4mg/m<sup>3</sup> 以上 * 吸入人[[半数致死量]]:3,200mg/m<sup>3</sup> * 吸入人半数不能量:1,600mg/m<sup>3</sup> * 曝露濃度による症状 ** 3 ppm:直ちに症状を伴うことはないが、通常24時間以内に遅発性の症状が出現する ** 3 ppm:上気道刺激、眼刺激 ** 25 ppm:30分間以上の曝露で致死的 ** 50 ppm:直ちに治療しなければ、短時間曝露でも致死的 == 治療法 == 解毒剤は存在しない。治療は主に[[肺水腫]]への対処を行うことになる。[[目]]の[[角膜]]が損傷する危険がある場合は洗浄を行う。[[肺炎]]などの感染症への予防措置を取る。防護措置としては、吸入をしないために、[[ガスマスク]]が用いられる<ref name="who2004"/>。 [[第一次世界大戦]]で毒ガスとして用いられた時には、拡散して低濃度になったホスゲンに長時間曝露した兵士が20 - 80時間後に突然症状が悪化して死亡する事例が多数あった。このため、曝露した場合は低濃度であっても3日程度の経過観察を行う必要がある。 == 脚注 == {{Reflist}} == 関連項目 == * [[カルボニル基]] * [[一酸化炭素]] * [[ホルムアルデヒド]] * [[クロロホルム]] * [[江川紹子ホスゲン襲撃事件]] - 1994年9月、[[オウム真理教]]の信者4人が[[江川紹子]]をホスゲンで襲撃した事件 * [[石原産業]] - 2008年5月、化学兵器禁止法違反(製造の無届け)の疑いで、経済産業省が告発 * {{仮リンク|フォスゲン石|en|Phosgenite}} - 塩化炭酸鉛を成分に持つ鉱物。組成から、ホスゲンを含むと誤認されたことにより命名された。 == 外部リンク == * {{ICSC|0007|title=ホスゲン(圧力容器)}} {{Chemical warfare}} {{Normdaten}} {{デフォルトソート:ほすけん}} [[Category:無機化合物]] [[Category:塩素の化合物]] [[Category:有機反応試剤]] [[Category:窒息剤]] [[Category:有毒ガス]] [[Category:毒物]]
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