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'''ホール効果'''(ホールこうか、{{lang-en-short|Hall effect}})とは、[[電流]]の流れているものに対し、電流に垂直に[[磁場]]をかけると、電流と磁場の両方に直交する方向に[[起電力]]が現れる現象。主に[[半導体素子]]で応用される。1879年、米国の物理学者[[エドウィン・ホール]]({{lang-en-short|Edwin Herbert Hall}}, 1855-1938)によって発見されたことから、このように呼ばれる。 ==概要== [[ファイル:Hall effect.png|thumb|240px|ホール効果 青い丸は電子の流れ ([[電流]]の流れている向きとは逆). <br />'''番号''': <br />1. 電子 ([[電流]]の流れている向きとは逆!) <br />2. ホール素子 <br />3. 磁石 <br />4. 磁場 <br />5. 電源<br />'''解説''':<br />図AでN型ホール素子の場合、下部はイオン化したドナーにより正に帯電する(P型の場合は、イオン化したアクセプタにより負に帯電する)。 図B、図Cはそれぞれ電流の向き、または磁場の向きが図Aとは逆になっており、帯電の極性が逆転する。 図Dでは電流の向きと磁場の向きの両方が図Aとは逆であり、図Aと同じ向きに帯電する。]] p型またはn型の[[半導体]]試料において、x方向に[[電流]]を流し、z方向に[[磁場]]をかける。この時試料を流れている荷電粒子([[半導体#半導体の型|キャリア]])は[[磁場]]による[[ローレンツ力]]を受けてy方向に加速される。これによって、試料の表面にキャリアがたまり、電流と磁場の両方に直交する方向に電場('''ホール電場''')が生じ、起電力が発生する。ホール効果は[[ホール素子]]による磁場の検出のほか、[[半導体]]の電気的特性の測定に応用される。ホール電圧の符号と大きさから[[半導体]]のキャリアの種類と密度がわかる。また、金属は[[半導体]]に比べキャリア密度が大きく、ホール電圧が微小な値となるため、この現象を利用した物性測定は[[半導体]]が主である。 しかしながら、[[強磁性]]金属など磁化を帯びた物質中では、この磁化に起因するホール電圧が生じることもある。このような[[強磁性体]]の磁化に起因するホール効果を特に異常ホール効果と呼ぶ。また物質中のスピン軌道相互作用に起因してそれぞれ逆向きのスピンを有するキャリアが逆方向へと散乱されるスピンホール効果も近年注目を集めている。 ==関係式== [[File:Halleffect.png|400px|thumb]] 試料に図のようにx方向に電流を流しながら、 これと垂直な z方向に磁場を加えると、 磁場中を動く[[電荷担体|キャリア]]は[[ローレンツ力]]を受ける。 [[電荷担体|キャリア]]の電荷を {{mvar|q}} 、速度を {{mvar|v}} とすると [[ローレンツ力]] <math>\boldsymbol{F}_{\mathrm{L}}</math> は :<math>\boldsymbol{F}_{\mathrm{L}}=q(\boldsymbol{\mathit{v}}\times\boldsymbol{\mathit{B}})</math> となる。試料内に電流が流れている場合、[[電荷担体|キャリア]]は平均して一定の速度でx方向に進むようになるため,平均してy方向に :<math>\left\langle F_{\mathrm{L}} \right\rangle=-q\left\langle v_x \right\rangle B_z</math> という力を受け加速する。 すると、[[正孔]]が多数[[電荷担体|キャリア]]である場合(p型半導体)、面Bに[[正孔]]が溜まり、正に帯電する。逆に面Aは[[正孔]]不足となり負に帯電する。 また、電子が多数[[電荷担体|キャリア]]である場合(n型半導体)、面Bに[[電子]]が溜まり、負に帯電する。逆に面Aは[[電子]]不足となり正に帯電する。 したがって、y方向に電場 {{math|''E''{{sub|''y''}}}} が発生する。この電場 {{math|''E''{{sub|''y''}}}} をHall電場という。 [[電荷担体|キャリア]]がy方向の電場成分から受ける力 <math>qE_y</math> とローレンツ力 <math>\left\langle F_{\mathrm{L}} \right\rangle</math> のy成分とが打ち消し合い、平衡状態となる。 その時、Hall電場 {{math|''E''{{sub|''y''}}}} は {{NumBlk|:|<math>\left\langle F_{\mathrm{L}} \right\rangle+qE_y=-q\left\langle v_x \right\rangle B_z+qE_y=0</math>|{{EquationRef|1}}}} で決まる。 [[電荷担体|キャリア]]が一種類の場合、x方向の[[電流密度]] {{math|''j''{{sub|''x''}}}} は、{{mvar|n}} をキャリア密度とすると :<math>j_x=nq\left\langle v_x \right\rangle</math> と書ける。 この式と{{EquationNote|1|(1)}}式から <math>q\left\langle v_x \right\rangle</math> を消去すると {{NumBlk|:|<math>\frac{E_y}{j_xB_z}=\frac{1}{nq}</math>|{{EquationRef|2}}}} となり、 <math>R_{\mathrm{H}}=E_y/j_xB_z</math> を'''ホール係数''' ({{Lang|en|Hall coefficient}})という。 Hall係数を測定することにより、[[電荷担体|キャリア]]の種類と密度が決定できる。 また、電流 {{math|''I''{{sub|''x''}}}} は,試料の厚さを {{mvar|t}}、幅を {{mvar|b}} とすれば {{NumBlk|:|<math>I_x=j_xbt</math>|{{EquationRef|3}}}} である。 したがって、A面を基準にしたB面の電位(Hall電圧 {{math|''V''{{sub|H}}}} )は{{EquationNote|2|(2)}}、{{EquationNote|3|(3)}}式から :<math>V_{\mathrm{H}}=E_yb=\frac{1}{nq}\frac{I_xB_z}{t}=R_{\mathrm{H}} \frac{I_xB_z}{t}</math> で与えられる。 一般にキャリア密度をn、キャリアの電荷をeとして :<math>|R_{\mathrm{H}}|=\frac{r_{\mathrm{H}}}{ne}</math> の関係がある。ここで ''r''{{sub|H}} はホール因子(ホール散乱因子)と呼ばれる。 電流方向の電場を ''E{{sub|j}}'' として、 :<math>\theta_{\mathrm{H}}=\frac{E_{\mathrm{H}}}{E_j}</math> を'''ホール角'''({{lang-en-short|Hall angle}})と呼ぶ。 また、電気伝導度''σ''とホール係数''R''の積 :<math>\mu_{\mathrm{H}}=|R_{\mathrm{H}}|\sigma=\mu r_{\mathrm{H}}</math> を'''ホール移動度'''({{lang-en-short|Hall mobility}})と呼ぶ。ここで''μ''は[[電子移動度|ドリフト移動度]]である。 ==関連項目== * [[量子ホール効果]] * [[半導体]]-[[ホール素子]] * [[半導体#半導体の型|キャリア]]-[[伝導電子]] * [[ローレンツ力]] * [[コンデンサ]] * [[渦電流]] * [[電気素量]] * {{仮リンク|エリック・フォーセット|en|Eric Fawcett}} * [[ホールスラスタ]] * [[ホール プローブ]] * [[ネルンスト効果]] * {{仮リンク|エッティングハウゼン効果|en|Ettingshausen effect}} * [[スピンホール効果]] * {{仮リンク|熱ホール効果|en|Thermal Hall effect}} * [[トランスデューサー]] * {{仮リンク|ヴァン・デル・パウ法|en|Van der Pauw method}} == 参考文献 == * {{Cite book|和書|author=黒沢達美|date=2002-02-25|title=物性論―固体を中心とした|publisher=[[裳華房]]|id={{全国書誌番号|20259239}}|asin=4785321385|oclc=675078462|isbn=4785321385}} {{Condensed matter physics topics}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:ほおるこうか}} [[category:センサ]] [[category:半導体]] [[category:物性物理学]] [[Category:物理学のエポニム]]
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