ボディマス指数のソースを表示

[[File:Body mass index chart.svg|right|300px|thumb|BMI=体重/身長<sup>2</sup>[kg/m<sup>2</sup>] 相関図
{{Legend|white|Underweight：[[低体重]]}}
{{Legend|#F5F190|Normal range：普通体重}}
{{Legend|#F9D38D|[[wikidata:Q332428|Overweight]]：過体重 (WHO)、肥満1度（日本）}}
{{Legend|#F29A8F|Obese：肥満クラス1–3 (WHO)、肥満2–4度（日本）}}
データ出所：[[世界保健機関|WHO]] [http://www.who.int/bmi/index.jsp?introPage=intro_3.html BMI classification] ]]{{体重}}
{{読み仮名|'''ボディマス指数'''|ボディマスしすう}}とは、[[体重]]と[[身長]]の関係から算出される、[[ヒト]]の[[肥満度]]を表す[[体格指数]]である。一般に'''BMI'''{{Efn|英語: body mass index}}と呼ばれる。計算式が同一の'''ケトレー指数'''{{Efn|英語: Quetelet index}}または'''カウプ指数'''{{Efn|英語: Kaup index}}は、主に乳幼児に対して呼ばれる<ref>{{Citation|url=http://indianpediatrics.net/june1999/june-612-613.htm | last=Adhikari| first=K. M.| title=Body Mass Index: An Emerging Age-Independent Anthropometric Criteria|journal=Indian Pediatrics| year=1999| volume=36| pages=612-613}}{{En_icon}}</ref>。Body Mass Indexには日本語の定訳が存在せず、書籍・論文にはボディマス指数、ボディ・マス・インデックス、体容量指数、体格指数などの表記がみられる。このうち、体格指数は元来、[[体格指数#:~:text=体格指数（たいかくしすう,などを目的とする。|Anthropometric Index]]を意味する用語であり、BMI以外の指数も含む広い概念であるため、厳密にBMIのみを説明する言葉を選びたい際には注意が必要である。

== 指標の意義 ==
[[肥満]]は、[[糖尿病]]、[[高血圧]]、脳血管障害、[[虚血性心疾患]]などの重要な危険因子である<ref>[http://www.lifescience.jp/ebm/cms/ms/no.12/topics.pdf ストップ・ザ・メタボリックドミノ] ここまでわかっている生活習慣病</ref>。また[[痩せ]]は、栄養不良や慢性進行性疾患などで生じることがある。どの程度の肥満や痩せがあるかを正確に評価して把握することは、それらの疾患の予防や治療のために役立つ。そして、この評価に基づいて、対策を実行し、効果を判定することは意義が大きい。そのための簡便な指標が望まれる。肥満の評価には、本来は、体脂肪率や体組成の計測が行われるべきであるが、それらの計測は通常は困難である（普及している体脂肪計は、両足の間の電気抵抗を測定するに過ぎない）。このため、身長と体重から、簡便に計算されるBMIが使用される。BMIの最も良い点は、たいていの人において、体の総脂肪量とよく相関することである<ref>[http://www.cdc.gov/healthyweight/assessing/bmi/adult_bmi/index.html About BMI for Adult] CDC</ref>。

スポーツ界では、選手の過度な減量を防ぎ体重による有利・不利の差を少なくする目的で、[[スキージャンプ]]や[[ノルディック複合]]といった[[スキー]]競技の一部でBMIを用いた体重制限ルールを設けている。

== 計算式と判定 ==
=== 計算式 ===
体重の単位には <math>\mathrm{kg}</math>（[[キログラム]]）、身長には <math>\mathrm{m}</math>（[[メートル]]）を用い、BMI の単位は <math>\mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> である。体重が <math>w</math>、身長が <math>h</math>の人のBMI（カウプ指数）は、
:<math>\mathrm{BMI}=\frac{w}{h^2}</math>
で表される。例えば身長 <math>160\mathrm{cm}</math>(<math>1.6\mathrm{m}</math>)、体重 <math>50\mathrm{kg}</math> の場合、
:<math>\mathrm{BMI}=\frac{50\mathrm{kg}}{(1.6\mathrm{m})^2}=\frac{50\mathrm{kg}}{2.56\mathrm{m}^2}\fallingdotseq19.5\mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>
となる。

=== 判定基準 ===
[[File:Obesity & BMI.png|thumb|right|肥満体型とBMIの模式]]
[[ファイル:BodyMassIndex.svg|代替文=|右|フレームなし]]

==== 成人 ====
{{Seealso|肥満#分類|}}
BMIの計算式は世界共通であるが、肥満の判定基準は様々ある。

* [[世界保健機関]] (WHO)や[[米国国立衛生研究所]] (NIH)や英国[[国民保健サービス]] (NHS)では、BMIが <math>25\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上を{{仮リンク|過体重|en|overweight|label=過体重（overweight）|redirect=1}}、<math>30\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上を「[[肥満]]」{{Efn|英語: obese}}としている<ref name="obesewho">[http://www.who.int/bmi/index.jsp?introPage=intro_3.html BMI classification] 世界保健機関 2017年6月15日閲覧。</ref><ref>[http://www.nhs.uk/conditions/Obesity/Pages/Introduction.aspx NHS] Obesity</ref>。ドイツ、フランス、イタリアも同様である（Wikipediaの他言語版による）。
* アメリカ疾病予防管理センター (CDC)では、アジア系アメリカ人は内臓脂肪がたまりやすいため、BMIが <math>23\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上から注意すべきだとしている。<ref>[https://www.cdc.gov/diabetes/library/spotlights/diabetes-asian-americans.html Diabetes and Asian Americans]</ref>香港、シンガポールも23を普通体重とそれ以上を分ける境目にしている。
*[[日本肥満学会]]では、BMIが <math>22\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> の場合を[[標準体重]]としており、<math>25\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上の場合を[[肥満]]、<math>35\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上の場合を[[高度肥満]]、<math>18.5\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満である場合を[[低体重]]としている<ref name=":0">{{Cite web|和書|title=BMIチェックによって自分の肥満度と標準体重を確認しよう {{!}} HelC＋（ヘルシー）|url=https://www.health.ne.jp/bmi/|website=www.health.ne.jp|accessdate=2020-03-25}}</ref>。

{| class="wikitable"
|+世界保健機関(WHO)の基準<ref name=":0" /><ref>{{Citation|title=BMI Classification Percentile And Cut Off Points|last=Weir|first=Connor B.|last2=Jan|first2=Arif|date=2024|url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK541070/|publisher=StatPearls Publishing|pmid=31082114|access-date=2024-08-27}}</ref>
|-
!状態!! colspan="2"| BMIの指標
|-
|痩せすぎ (重度の痩せ)
|<math>16.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|rowspan="3"|低体重 (<math>18.50\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満)
|-
|痩せ (中度の痩せ)
|<math>16.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上、<math>17.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|-
|痩せぎみ (軽度の痩せ)
|<math>17.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上、<math>18.50\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|-
|普通体重 
|<math>18.50\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上、<math>25.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|標準
|-
|過体重 (前肥満)
|<math>25.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上、<math>30.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|太り気味 (<math>25.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上)
|-
|肥満 (1度)
|<math>30.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上、<math>35.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|rowspan="3"|肥満 (<math>30.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上)
|-
|肥満 (2度)
|<math>35.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上、<math>40.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|-
|肥満 (3度)
|<math>40.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上
|}

{| class="wikitable"
|+日本肥満学会の基準<ref name=":0" />
|-
!状態!! colspan="2"| BMIの指標
|-
|低体重 (痩せ)
|<math>18.50\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|低体重
|-
|普通体重
|<math>18.50\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上、<math>25.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|標準
|-
|肥満 (1度)
|<math>25.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上、<math>30.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|rowspan="2"|肥満
|-
|肥満 (2度)
|<math>30.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上、<math>35.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|-
|肥満 (3度)
|<math>35.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上、<math>40.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|rowspan="2"|高度肥満
|-
|肥満 (4度)
|<math>40.00\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上
|}

==== 乳幼児 ====
{{Seealso|肥満#小児肥満|}}
BMIは、満3か月-5歳の乳幼児に対して使われる。小児では、もっぱらカウプ指数と呼ばれる。

{| class="wikitable" style="text-align:center"
!年齢!!下限!!上限
|-
|乳児（3か月以上13か月未満）||<math>16\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>||<math>18\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>
|-
|幼児（満1歳-5歳）||<math>15\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>||<math>17\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 
|}

日本では、新生児〜生後3か月未満の乳児にはBMI（カウプ指数）は使わない。
{| class="wikitable"
|+ 厚生労働省の定義 （2001年）<ref>[https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/syusseiji/tokubetsu/yougo.html 21世紀出生児縦断調査（特別報告）結果の概況]厚生労働省</ref>
!状態!! 指標
|-
|やせぎみ||<math>15\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|-
|ふつう||<math>15\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上、<math>17\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 未満
|-
|ふとりぎみ||<math>18\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 以上
|}

日本では、乳幼児健康診査に際しては、身長と体重を、別々に、パーセンタイル曲線（[[成長曲線]]）で、評価している<ref>[http://www.niph.go.jp/soshiki/07shougai/hatsuiku/index.files/katsuyou.pdf 乳幼児身体発育評価マニュアル] 平成24年3月</ref>。

世界保健機関WHOのワークショップは、乳幼児肥満の判定に、BMIを採用している（判定には、BMIのパーセンタイルを用いる）<ref>[http://ajcn.nutrition.org/content/70/1/173s.full Workshop on childhood obesity: summary of the discussion1,2] Am J Clin Nutr.70(1):173S-5S, 1999</ref>。また、米国疾病予防センターCDCも、小児の肥満については、BMIを求めて、BMIのパーセンタイル曲線（[[:File:BMIBoys_1.svg]]）で評価している<ref>[http://apps.nccd.cdc.gov/dnpabmi/ Healthy Weight] CDC</ref>。

==== 妊婦 ====
妊婦の体重管理にも用いられ、妊娠週数によって正常範囲も異なる<ref>[https://web.archive.org/web/20120528212418/http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2012/04/post_1a33.html 妊婦の体重管理]（2012年5月28日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]]） - ある産婦人科医のひとりごと</ref>。

日本肥満学会では、妊婦のBMI値が、妊娠初期（5 - 16週）では <math>24.9\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 、中期（17 - 28週）では <math>27.1\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> 、末期（29 - 40週）では <math>28.2\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> を超える妊婦を肥満妊婦と判定する<ref>[http://www.jsog.or.jp/PDF/63/6312-315.pdf 産婦人科診療ガイドライン解説]</ref>。

{| class="wikitable" style="text-align:center"
!週齢!!下限!!上限
|-
|16||<math>18.5\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>||<math>23.7\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>
|-
|20||<math>19.3\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>||<math>24.3\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>
|-
|24||<math>20.0\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>||<math>25.5\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>
|-
|28||<math>20.6\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>||<math>25.8\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>
|-
|32||<math>21.5\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>||<math>26.5\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>
|-
|36||<math>22.2\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>||<math>27.0\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>
|-
|40||<math>22.7\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>||<math>27.9\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math>
|}
この両方の基準を比較すると、妊娠17週の場合には、両者の過体重の基準は、BMIで <math>3.2\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2</math> ほど異なっている。身長 <math>160\ \mathrm{cm}</math>の妊婦の場合には、過体重の基準は、<math>3.2\ \mathrm{kg}/\mathrm{m}^2 \times 1.6\mathrm{m} \times 1.6 \mathrm{m} \fallingdotseq 8.2\mathrm{kg}</math> ほども、異なっている。

『産婦人科診療ガイドライン2011』によれば、「妊娠中の体重増加の推奨値に関しては統一見解がなく、介入研究も極めて少ない。したがって、厳しい体重管理を行う根拠となるエビデンスが乏しく、慎重な姿勢が求められる。厳格に体重増加を指導する根拠は必ずしも充分ではないと認識し、個人差を考慮してゆるやかな指導を心がける」としている。また、National Collaborating Center for Women's and Children's Health（[[英国]]）のガイドラインでは、初診時に身長体重を測定して評価を行い、栄養状態に問題がある場合のみ定期的に体重を測定し、通常の妊婦健診では体重を測定すべきでないと述べている（定期的な体重測定にはメリットはなく、妊婦に不必要な心配を与えるに過ぎないとしている）<ref>[http://www.nice.org.uk/nicemedia/live/11947/40145/40145.pdf Antenatal Care] National Collaborating Center for Women's and Children's Health、P114</ref>。

=== 備考 ===
* かつて、厚生労働省の「肥満とやせの判定図」が使われたことがあった。これは、男女別の10歳ごとの肥満判定図であった。毎年の健診の評価に使用すると、10年に1回、使用する図が変わるが、その際に、前年に「普通」の判定を受けた人が、体重が不変であるのに、翌年に「肥満」の判定を受けることがあり得た。現在では使われていない。
* 小児科領域では、標準体重として、長い間「村田の表」が使われてきた。これは、男女別、1歳ごとの標準体重の表であった。誕生日が来て次の表を使う際に、年長の高身長の女児では、標準体重が一挙に数kgも増加することがあった。また、標準体重を表として固定すると、全員の体格が向上した場合には、全員が「肥満」と判定されることになる。現在は撤回されている。

== 歴史 ==
「体重/身長<sup>2</sup>」からなる指数は、[[ベルギー]]の[[数学者]]、[[統計学者]]で[[社会学者]]である[[アドルフ・ケトレー]]によって[[1835年]]に開発された<ref name="Quetelet">{{Cite journal |first =Garabed |last =Eknoyan |year=2008 |title=Adolphe Quetelet (1796-1874) -the average man and indices of obesity. |journal=Nephrol. Dial. Transplant. |volume=23 |issue=1 |pages=47–51 |publisher= |doi= |pmid=17890752 |pmc= |naid= |oclc= |issn= |isbn= }}</ref>。その後、[[ドイツ]]（[[オーストリア]]）の衛生学者イグナーツ・カウプ ({{Lang|de|Ignaz Kaup}}) によって小児の発育指数として利用されるなどして普及し、[[1972年]]の{{Lang|en|Keys}}らの研究<ref>{{Cite journal |author=Keys, A. |coauthors=et al. |year=1972 |title=Indices of relative weight and obesity. |journal=J. Chronic. Dis. |volume=25 |issue=6 |pages=329-343 |pmid=4650929 |doi=10.1016/0021-9681(72)90027-6 }}</ref>によってこの指数が体脂肪率とよく相関することが明らかにされたことによって、身体組成研究分野における重要な指数として位置付けられ、以後、BMIと呼称されるようになった。[[1985年]]には、{{Lang|en|Garrow}}と{{Lang|en|Webster}}の研究<ref>{{Cite journal |author1=Garrow, J. S. |author2=Webster, J. |year=1985 |title=Quetelet's index (W/H2) as a measure of fatness. |journal=Int. J. Obes. |volume=9 |issue=2 |pages=147–153 |pmid=4030199 }}{{En_icon}}</ref>によって、肥満度の代替指数としての有効性が検証された<ref name="hattori">{{Cite journal|和書 |author=服部恒明 |date=2006-07-10 |title=発育期のBody mass indexと身体組成 |journal=体育学研究 |volume=51 |issue=4 |page=436 |accessdate=2009-04-07||publisher=日本体育学会 |naid=110004782806 |issn=04846710}}</ref>。

== 遺伝性 ==
BMIは遺伝要因の影響が大きく、双子研究による[[遺伝率]]の推定値は75%である<ref>Elks, Cathy E., et al. "[https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fendo.2012.00029/full Variability in the heritability of body mass index: a systematic review and meta-regression]." Frontiers in endocrinology 3 (2012): 29.</ref>。

== BMIと平均余命の関係 ==
{{Double image|right|MenBMIMort.png|200|WomenBMIMort.png|200|alt=(Left) A graph showing how the risk of death varies with BMI. The lowest risk is found at a BMI of 20 to 25 and increases in both directions. (Right) A graph showing how the risk of death varies with BMI. The lowest risk is found at a BMI of 20 to 25 and increases in both directions.|喫煙しない米国の白人男性（左）及び白人女性（右）のBMIごとの10年後の相対的死亡リスク<ref name=NEJM10>{{cite journal |author=Berrington de Gonzalez A |title=Body-Mass Index and Mortality among 1.46 Million White Adults |journal=N. Engl. J. Med. |volume=363 |issue=23 |pages=2211–9 |year=2010 |month=December |pmid=21121834 |doi=10.1056/NEJMoa1000367 |url= |pmc=3066051 |author-separator=, |display-authors=3}}</ref>。BMI：20-24.9が最も死亡リスクが低い||}}
喫煙しないアメリカ合衆国の白人男性及び白人女性のBMIごとに、10年後の相対的死亡リスクについては、右図のように、BMI：20-24.9が最も死亡リスクが低い<ref name=NEJM10/>。

[[日本肥満学会]]では、BMI: 22の体重を標準体重（統計的に最も病気にかかりにくい体重）としている<ref name="himan-mhlw">{{Cite web|和書|url=http://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/topics/103.html |title=11年ぶりに肥満症の診断基準が改訂 | 健康・医療トピックス | オムロン ヘルスケア |work=肥満ホームページ |publisher=オムロン ヘルスケア |accessdate=2016-12-21}}</ref>。

例えば、[[肥満]]と糖尿病は関連があり、40 - 59歳の男性で、糖尿病が強く疑われる人の割合は、BMI18.5 - 22で5.9%、BMI22 - 25で7.7%、BMI25 - 30で14.5%、BMI30以上で28.6%であった。なお、加齢を重ねていない20-39歳の男性ではこのような大きな差は出ていなかった<ref name=mhlw>[https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/03/s0318-15.html 「平成14年度糖尿病実態調査報告」平成16年6月厚生労働省健康局]</ref>。

[[厚生労働省]]の研究班（研究代表者＝辻一郎東北大教授）による40歳代のBMIと[[平均余命]]を調査した研究で、太り気味 (25 ≦ BMI < 30)の人が最も長命である結果が得られた。「太り気味の人」に次いで、普通体重 (18.5 ≦ BMI < 25)の人、肥満 (BMI≧30)の人、やせた（BMI < 18.5) 人、の順で平均余命が高いことが判明した。なお、同じ研究で、医療費の負担は太っているほど重くなることも判明し、肥満の人が40歳以降にかかる医療費の総額はやせた人の1.3倍かかっていたという<ref>{{PDF|[https://web.archive.org/web/20111209230753/http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp/news/pdf/1003nagaiki.pdf やっぱり「ちょい太」、やせ形より7年長生き...厚労省調査（6月10日14時32分配信 読売新聞）]}}（2011年12月9日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]]） - 社会医学講座公衆衛生学分野 東北大学大学院医学系研究科</ref>。BMI 30 以上ではほぼ全ての人が[[脂肪肝]]であるが<ref>宮本敬子、小野正文、西原 利治、[https://doi.org/10.11405/nisshoshi.110.1597 非アルコール性脂肪性肝疾患の疾患関連遺伝子] 日本消化器病学会雑誌 Vol.110 (2013) No.9 p.1597 - 1601, {{doi|10.11405/nisshoshi.110.1597}}</ref>、BMI 25 未満で且つ[[人間ドック]]の血液検査値に異常が無い群でも約30%が脂肪肝であったと報告され<ref>大月和宣、[https://doi.org/10.11404/jsgcs2000.40.6_542 非肥満者における超音波診断による脂肪肝と生活習慣病の関連について] 日本消化器集団検診学会雑誌 Vol.40 (2002) No.6 p.542-546, {{doi|10.11404/jsgcs2000.40.6_542}}</ref>、インシュリン抵抗性と食後高血糖が影響している可能性が指摘されている<ref>西原利治、[https://doi.org/10.2957/kanzo.45.82 非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH): 病態と治療] 肝臓 Vol.45 (2004) No.2 P.82-86, {{doi|10.2957/kanzo.45.82}}</ref>。

2011年に『The New England Journal of Medicine』に発表された論文によれば<ref>{{Cite journal|last=Zheng|first=Wei|last2=McLerran|first2=Dale F.|last3=Rolland|first3=Betsy|last4=Zhang|first4=Xianglan|last5=Inoue|first5=Manami|last6=Matsuo|first6=Keitaro|last7=He|first7=Jiang|last8=Gupta|first8=Prakash Chandra|last9=Ramadas|first9=Kunnambath|date=2011-02-24|title=Association between body-mass index and risk of death in more than 1 million Asians|url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21345101|journal=The New England Journal of Medicine|volume=364|issue=8|pages=719–729|doi=10.1056/NEJMoa1010679|issn=1533-4406|pmid=21345101|pmc=4008249}}</ref>、日本人を含む100万人のアジア人を調べて、BMIが22.6 - 27.5の人が最も死亡リスクが少ないことを報告している。

2013年1月に、[[アメリカ疾病予防管理センター]]（CDC）が発表した研究結果によれば、BMIで「過体重」に分類されたグループのほうが、「普通体重」とされたグループよりも死亡リスクが6%低かった<ref>[https://www.afpbb.com/articles/-/2918976?pid=10053026 少し太めのほうが健康？米疾病対策センター研究] afp 2013年01月04日</ref>。一方で、BMIが35を超えると死亡率は普通体重に比べて29%増加する。

[[スウェーデン]]の男性160万人以上を対象とした調査結果からは、[[思春期]]の BMI は、将来の[[心不全]]リスクと正の相関があり、BMIの上昇とともにHF発症率が急峻に上昇するとの報告がある<ref>[http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/hotnews/etc/201707/551994.html 思春期男性のBMIは将来のHFリスクと相関] 日経メディカルオンライン 記事：2017年7月26日</ref>。

== 相似則との関係 ==
ケトレーは統計学的手法によって「平均人（{{Lang-fr|l'homme moyen}}、{{Lang-en|average man}}）」を示す指数として「体重/身長<sup>2</sup>」の関係を見出したが<ref name="Quetelet"/>、[[相似則]]に従えば重さ（体重）は長さ（身長）の3乗と相関するはずであり、事実、胎児の発育段階では相似則が保たれるため3乗と相関する[[ローレル指数]]が適合する。しかし、成人では頭部の重量比率などが胎児や乳幼児とは大きく異なり、また、筋肉量に応じた放熱に必要な体表面積を確保するために相似にならない<ref name="hattori"/>。なお、[[アリ]]の足は細く[[ゾウ]]の足は太いなど、生物は大きさに対して対称ではない。

== BMIの限界 ==
{{出典の明記|section=1|date=2020年10月17日 (土) 06:23 (UTC)}}
多様な肥満の病態を、身長と体重の関係のみに抽象して算出されるBMIには、自ずから限界がある。

体型が全く同じ相似形であっても、身長が大きくなればBMIはそれに比例して大きくなる。BMIは体重（体積にほぼ比例する）を身長で2回割ったものであるから、長さの次元を持っているといえる。体型が同じでも、身長（長さ）が増大するとBMIも増大する。BMIは大人では22くらいが正常値であるが、3歳児では16くらいが正常値である（BMIは、カウプ指数と同じ）。BMIは身長の低い人では数字が小さくなるので、肥満を過小評価することになる。また過去数十年間に、大人の平均身長は増加傾向にあったが、BMIは肥満の経年変化を過大評価することになる。

[[体脂肪率]]は考慮されていないため、例えばトップ・アスリートや[[ボディービルダー]]のような、筋肉質で高体重で体脂肪率は低い場合は「肥満」と判定され、逆に隠れ肥満のような、体脂肪率は高いが低体重である場合には「痩せ」と判定されてしまう。また、[[メタボリックシンドローム]]と判定された人が、運動を行って脂肪を筋肉に変えると、体重は増加し、BMIは増加して、肥満は悪化したと判定されてしまう。よって、激しい運動を伴う職業に従事する者に用いる場合には、[[体組成計]]で体脂肪率を測定した方が有効性は高い。

若年や高齢の男女を同じ指標で評価しているが、若い人ほど水分含有量が多く、女性の方が水分含有量が多い。同じ体型でも、水分含有量が多ければ、体重は軽く、BMIは小さい。

加齢の影響で、変形性脊椎症により、背骨（脊椎）の間の軟骨が磨り減ると、身長は短く計測される。また、背骨（脊椎）の圧迫骨折により円背が生じると、身長は短く測定される。いずれの場合も、体重は一定でも、BMIは増加する。

BMIには、上記のような問題が残されているものの、計算式が簡便なこともあり、成人の肥満の指標として多用されるものの一つとなっている。

== BMIの改良 ==
=== ABSI ===
BMIを改良した指標としてボディ・シェイプ・インデックス (A Body Shape Index: ABSI)がある<ref name="Steve">{{Cite book |和書 |author=スティーブ・パーカー |year=2018|title=BODY 世にも美しい人体図鑑|page=17|publisher=ディスカヴァー・トゥエンティワン}}</ref>。腹囲をBMIの3分の2乗と身長の2分の1乗をかけた値で割ったものである<ref name="Steve" />。この指標は体脂肪の分布も考慮に入れるために腹囲を計算式に入れている<ref name="Steve" />。
:<math>\mathrm{ABSI} = {\mathrm{WC} \over {\mathrm{BMI}^{2\over 3} \times {\sqrt{\mathrm{h}}}}}</math>
:<math>\mathrm{WC}</math> はメートル単位の腹囲。
:<math>\mathrm{h}</math> はメートル単位の身長。

=== ロイド・N・トレフェゼンによる指標 ===
英オックスフォード大学の数学者[[wikidata:Q4505456|Nick Trefethen]]教授は、予てより従来のBMIでは低身長の人が痩せ、逆に高身長の人は肥満という結果になりうることを指摘しており、身長の2.5乗を用いる新しい式を2013年に提唱した<ref>[https://people.maths.ox.ac.uk/trefethen/bmi.html New BMI (Body Mass Index)] </ref>。
:<math>\mathrm{BMI} = 1.3 \times \frac{\mathrm{w}}{\mathrm{h}^{2.5}}</math>
:<math>\mathrm{w}</math> はキログラム単位の体重。
:<math>\mathrm{h}</math> はメートル単位の身長。
1.3を乗じることで従来の「18.5 - 24.9は平常値」「18.5未満は低体重」「25 - 29.9は過体重」「30以上は肥満」との基準値をそのまま使えるようになっている。

==ローレル指数==
肥満の度合いの指数には'''ローレル指数'''がある。
{{main|ローレル指数}}

== 脚注 ==

{{脚注ヘルプ}}

=== 注釈 ===

{{Notelist}}

=== 出典 ===

{{Reflist|colwidth=30em}}


== 関連項目 ==
* [[ブローカ指数]]
* [[ブローカ式桂変法]]
* [[加藤法]]
* [[アロメトリー]]

== 外部リンク ==
* [https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-002.html BMI] e-ヘルスネット 厚生労働省
* [https://www.weight-kensaku.net/ BMI身長別区分]
* [https://krafit.studio/diet-blog/cinderella-weight/ BMI計算]
* [https://bmi.golong.uk/jp/ BMI計算]
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:ほていますしすう}}
[[Category:医学的指標]]
[[Category:肥満]]
[[Category:体重]]
[[Category:メートル法]]
[[Category:体形]]