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[[数学]]の分野における'''ボホナー空間'''(ボホナーくうかん、{{Lang-en-short|Bochner space}})とは、必ずしも実数の空間 R あるいは複素数の空間 C とは限らない[[バナッハ空間]]に値を取る関数への、[[Lp空間]]の概念の一般化である。 ボホナー空間 ''L<sup>p</sup>(X)'' は、バナッハ空間 ''X'' に値を取る[[ボホナー可測関数]] ''f'' で、その[[ノルム]] ''||f||<sub>X</sub>'' が通常の ''L<sup>p</sup>'' 空間に属するようなもの全ての同値類からなる。したがって、''X'' が複素数の集合であるなら、ボホナー空間は通常のルベーグ空間 ''L<sup>p</sup>'' となる。 ''L<sup>p</sup>'' 空間に関するほとんど全ての結果は、ボホナー空間についても同様に得られる。特に、ボホナー空間 ''L<sup>p</sup>(X)'' は <math>1\le p\le \infty</math> に対してバナッハ空間である。 == 背景 == ボホナー空間は、[[ポーランド]]系[[アメリカ人]][[数学者]]の[[サロモン・ボホナー]]の名にちなむ。 == 応用 == ボホナー空間は、時間依存の[[偏微分方程式]]、例えば[[熱方程式]]の研究へのアプローチとしての[[関数解析学]]において、しばしば用いられる。温度 <math>g(t,x)</math> が時間および空間についてのスカラー関数であるとき、<math>(f(t))(x):=g(t,x)</math> と書くことで、''f'' を時間についての関数とし、''f(t)'' を空間についての関数とすることが、いくつかのボホナー空間においては可能となる。 == 定義 == [[測度空間]] (''T'', Σ, ''μ'')、[[バナッハ空間]] (''X'', || · ||<sub>''X''</sub>) および 1 ≤ ''p'' ≤ +∞ が与えられたとき、'''ボホナー空間''' ''L''<sup>''p''</sup>(''T''; ''X'') は、対応するノルムが有限であるような全ての[[可測関数]] ''u'' : ''T'' → ''X'' の空間の(等号は[[ほとんど (数学)|ほとんど至る所]]についてのものであるような)[[コルモゴロフ空間#コルモゴロフ商|コルモゴロフ商]]として定義される。すなわち、そのような ''u'' に対しては :<math>\| u \|_{L^{p} (T; X)} := \left( \int_{T} \| u(t) \|_{X}^{p} \, \mathrm{d} \mu (t) \right)^{1/p} < + \infty \mbox{ for } 1 \leq p < \infty,</math> :<math>\| u \|_{L^{\infty} (T; X)} := \mathrm{ess\,sup}_{t \in T} \| u(t) \|_{X} < + \infty </math> が成立する。言い換えると、''L''<sup>''p''</sup> 空間の研究においてよくあるように、''L''<sup>''p''</sup>(''T''; ''X'') は関数の[[同値類]]であって、そこでは二つの関数が等しいとは、''T'' の ''μ''-[[測度]]ゼロの部分集合を除いた至る所でそれらが等しいことを言う。そのような空間の研究においてよくあるように、それは(より技術的には正しい)同値類と言うよりは、''L''<sup>''p''</sup>(''T''; ''X'') の「関数」と言う[[記号の濫用]]がよく見受けられる。 == 偏微分方程式への応用 == 空間 ''T'' は偏微分方程式を解こうとしている[[区間 (数学)|時間区間]]で、''μ'' は一次元[[ルベーグ測度]]であるようなことが頻繁にある。ここでのアイデアは、時間および空間の関数を、空間の関数の集まりと見なし、その集まりが時間についてパラメータ付けられるものとすることである。例えば、'''R'''<sup>''n''</sup> 内の領域 Ω および時間区間 [0, ''T''] 上の熱方程式の解としては、 :<math>u \in L^{2} \left( [0, T]; H_{0}^{1} (\Omega) \right)</math> および時間微分が :<math>\frac{\partial u}{\partial t} \in L^{2} \left( [0, T]; H^{- 1} (\Omega) \right) </math> であるようなものを探すであろう。ここで <math>H_{0}^{1} (\Omega)</math> は、一回[[弱微分]]可能でその一回弱微分が ''L''²(Ω) に属し、Ω の[[境界 (位相空間論)|境界]]上で(トレースの意味で)消失するような関数からなる[[ソボレフ空間|ソボレフ]][[ヒルベルト空間]]を表す。あるいはそのような関数は、Ω に[[コンパクト空間|コンパクト]]な[[関数の台|台]]を持つような滑らかな関数の極限でもある。<math>H^{-1} (\Omega)</math> は <math>H_{0}^{1} (\Omega)</math> の[[双対空間]]を表す。 (ボホナー空間を使うことで空間依存性は除かれるため、上記の時間 ''t'' についての[[偏微分]]は実際には[[全微分]]である。) == 参考文献 == * {{cite book | last=Evans | first=Lawrence C. | title=Partial differential equations | location=Providence, RI | publisher=American Mathematical Society | year=1998 | isbn=0-8218-0772-2}} == 関連項目 == * [[ベクトル値関数]] {{Functional Analysis}} {{DEFAULTSORT:ほほなあくうかん}} [[Category:関数解析学]] [[Category:微分方程式]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:数学のエポニム]]
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