ボーア磁子のソースを表示

{{物理定数
 |名称= 
 |英語= Bohr magneton
 |記号= {{math|''&mu;''{{sub|B}}}}
 |値= {{val|9.2740100657|(29)|e=-24|u=[[ジュール|J]] [[テスラ (単位)|T]]{{sup-|1}}}} <ref name="nist"/>
 |不確かさ= {{val|3.1e-10}}
 |語源= [[ニールス・ボーア]]
}}
'''ボーア磁子'''（ボーアじし、{{Lang-en|Bohr magneton}}）とは、[[原子物理学]]において、[[電子]]の[[磁気モーメント]]の単位となる[[物理定数]]である。[[1913年]]に[[ルーマニア]]の[[物理学者]]{{仮リンク|ステファン・プロコピウ|en|Ştefan Procopiu}}が発見し<ref>{{lang|ro|Ştefan Procopiu}} – {{lang|en|Determining the Molecular Magnetic Moment by M. Planck’s Quantum Theory}} - {{lang|fr|Bulletin scientifique de l’Académie roumaine de sciences}}、ブカレスト、1913年</ref>、その2年後に[[デンマーク]]の[[ニールス・ボーア]]によって再発見された。そのため'''ボーア＝プロコピウ磁子'''と呼ばれることもある。通常は記号 {{math|''&mu;''{{sub|B}}}} で表される。

== 値 ==
[[国際単位系]]における値は
{{Indent|
<math>\mu_\text{B} =9.274~010~0657(29)\times 10^{-24}~ \text{J}/\text{T}</math>
}}
である（2022 [[CODATA]]推奨値<ref name="nist">[[#nist|CODATA Value]]</ref>）。なお、単位は[[アンペア|A]] [[メートル|m]]{{sup|2}} と表すこともできる。[[電子ボルト]]を用いて表せば
{{Indent|
<math>\mu_\text{B} =5.788~381~7982(18)\times 10^{-5}~ \text{eV}/\text{T}</math>
}}
となる（2022 [[CODATA]]推奨値<ref name="nist-muB-in-eVTinverse">[[#nist-muB-in-eVTinverse|CODATA Value]]</ref>）。

ガウス単位系における値は {{math|''&mu;''{{sub|B}}}}={{val|9.274|e=-21|u=[[エルグ|erg]] [[エルステッド|Oe]]{{sup-|1}}}} である<ref>[[ボーア磁子#handley|O'Handley]] p.83</ref>。

== 他の物理定数との関係 ==
[[古典力学|古典的]]な回転する帯電体による磁気モーメントは、[[角運動量]]の半分に[[電荷質量比]]をかけたものである。ボーア磁子は、[[ボーアの原子模型]]において、[[基底状態]]にある電子の[[軌道角運動量]]による磁気モーメントに等しい。基底状態の軌道角運動量は[[ディラック定数|換算プランク定数]] {{mvar|&#x127;}} に等しいため、[[電気素量]] {{mvar|e}} と[[電子質量]] {{math|''m''{{sub|e}}}} を用いて
{{Indent|
<math>\mu_\text{B} = \frac{e\hbar}{2m_\text{e}}</math>
}}
となる。
なお、[[ガウス単位系]]が基づく量体系では電流と磁気の関係付け方が異なるため、[[光速度]] {{mvar|c}} の因子が入って
{{Indent|
<math>\mu_\text{B} = \frac{e\hbar}{2m_\text{e}c}</math>
}}
となる。

== 物理的意義 ==
軌道角運動量は {{mvar|&#x127;}} を単位として表されるため、ボーア磁子は軌道磁気モーメントを表すのに自然な単位である。
また、電子は[[スピン角運動量]] {{math|''&#x127;''/2}} を持つが、[[ディラック方程式]]から[[g因子]]が2となるため、電子のスピンによる磁気モーメントもボーア磁子にほぼ等しくなる。電子の磁気モーメントのボーア磁子からのずれは[[異常磁気モーメント]]と呼ばれており、[[量子電磁力学]]において[[くりこみ理論]]によって説明される。
このため電子による磁気モーメントをボーア磁子を単位として'''有効ボーア磁子数''' {{math|1=''&mu;''{{sub|eff}} =''&mu;''/''&mu;''{{sub|B}}}} で表すことがある。

なお、[[陽子]]も電子と同じスピン角運動量を持つので、[[核子]]や[[原子核]]のスピン磁気モーメントの単位としては、ボーア磁子の電子の質量 {{math|''m''{{sub|e}}}} を陽子の質量 {{math|''m''{{sub|p}}}} に置き換えた[[核磁子]]が用いられる。陽子の質量は電子の質量に対し約1840倍であるため、核磁子はボーア磁子の約1/1840となる。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
* {{Cite book
 |author= Robert C. O'Handley
 |title= Modern magnetic materials: principles and applications
 |year= 2000
 |isbn= 0-471-15566-7
 |ref= handley
}}<!-- John Wiley & Sons. -->

== 関連項目 ==
* [[核磁子]]

== 外部リンク ==
* {{Cite web
 |url= https://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?mub
 |title= CODATA Value: Bohr magneton
 |accessdate= 2024-05-20
 |publisher= [[アメリカ国立標準技術研究所|NIST]]
 |ref= nist
}}
* {{Cite web
 |url= https://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?mubev|search_for=elecmag_in!
 |title= CODATA Value: Bohr magneton in eV/T
 |accessdate= 2024-05-20
 |publisher= [[アメリカ国立標準技術研究所|NIST]]
 |ref= nist-muB-in-eVTinverse
}}

{{DEFAULTSORT:ほおあしし}}
[[Category:原子物理学]]
[[Category:物理定数]]
[[Category:磁気]]
[[Category:ニールス・ボーア]]
[[Category:物理学のエポニム]]