ポエのソースを表示

{{Otheruses|占いの道具|[[ビャクダン目]]に分類されるアフリカ産の樹木|ポエ (植物)}}
[[File:Bowl and jiaobei, Yueh Hai Ching Temple.jpg|thumb|right|ポエ]]
'''ポエ'''とは、[[道教]]やそれに関連する[[民間信仰]]において、おみくじや占い、神託を得るなどのために、落とすように投げて使う道具である<ref name="kubo1996_36-38">{{Citation |和書 |last=窪 |first=徳忠 |author-link=窪徳忠 |year= 1996 |title= 道教の神々 |series= 講談社学術文庫 |volume= 1239 |url= https://ci.nii.ac.jp/ncid/BN14678450 |publisher=講談社 |pages=36-38}}</ref>。漢字では'''{{Zh|筊}}'''<ref name="s1996">{{Citation |和書 |last=朱 |first= 天順 |year= 1996 |title= 媽祖と中国の民間信仰 |url= https://ci.nii.ac.jp/ncid/BN15039628 |publisher=平河出版社 |page=110}}</ref>、'''{{Zh|珓}}'''<ref name="s1996" />、'''{{Zh|筶}}'''<ref name="kubo1996_36-38" />（日本語では『こう』と読む）という文字があてられる。ほかには'''{{Zh|杯珓}}'''（はいこう）とも表記され<ref name="ryu1994_146">{{Citation |和書 |last=劉 |first= 枝万 |year= 1994 |title= 台湾の道教と民間信仰 |url= https://ci.nii.ac.jp/ncid/BN11879183 |publisher=風響社 |page=146 }}</ref>、日本の[[関帝廟]]サイトでは'''神筈'''（しんばえ）という表記も見られる<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.yokohama-kanteibyo.com/sanpai.html |title=横浜 関帝廟《参拝の作法》 |work= |publisher= |accessdate=2018-11-11}}</ref>。[[台湾]]や[[中国大陸|中国]]南部でよく行われるとされるが<ref name="noguchi-tanaka2004_225-228" />、[[窪徳忠]]はおそらく[[中国]]全土で行われていると考えているし、[[東南アジア]]の一部でも見られる<ref name="kubo1996_36-38" />。[[日本]]でも、例えば[[横浜中華街]]にある[[横浜関帝廟]]や[[横浜媽祖廟]]で行なわれている<ref name="sakade">{{Citation |和書 |last= 坂出 |first= 祥伸 |year= 2010 |title= 日本と道教文化 |series= 角川選書 |volume= 466 |url= https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB01415181 |publisher=角川学芸出版,角川グループパブリッシング (発売)|pages=159-161}}</ref>。

== 形状 ==
ポエは三日月形に象られ、投げた時に表か裏が出るような造形となっている。表裏の片面は平たく、もう一方の面は丸みを帯びる。平らな面は[[陰陽|陽]]、丸まった凸面は陰を表わす<ref name="kubo1996_36-38" />。材質について、[[台湾]]では[[木材|木]]もしくは[[竹]]の根が用いられるが、[[泉州市|泉州]]では竹の幹を使って作られているものが確認されている<ref name="kubo1996_36-38" />。[[唐|唐代]]にはこの風習はあったようで、当時は[[ハマグリ]]の殻を使っていたそうである<ref>{{Citation |和書 |last=窪 |first=徳忠 |year=1989 |title=道教百話 |lccn=89189978 |series={講談社学術文庫 |url=https://books.google.co.jp/books?id=89kZAQAAMAAJ |publisher={講談社 |page=78}}</ref>。

== 使用法 ==
ポエは必ず2つ1組で投げて使用し、出目の組み合わせにより神意（場合によっては鬼や死者の意思<ref name="noguchi-tanaka2004_225-228">{{Citation |和書 |editor1-last=野口 |editor1-first=鉄郎 |editor2-last=田中 |editor2-first=文雄 |year= 2004 |title= 道教の神々と祭り |series= あじあブックス |volume= 058 |url= https://ci.nii.ac.jp/ncid/BA69719974 |publisher=大修館書店 |pages=225-228}}</ref>）を占う<ref name="kubo1996_36-38" />。ポエを投げることを{{Zh|擲筶}}（てきこう）という<ref name="ryu1994_146" />。まず供物や線香を供える。その後で、神仙その他の意図を伺いたい相手に向かってその内容を唱えてからおもむろにポエを投げる<ref>以下、本段落は特記ない限り前掲 {{Harv|窪|1996|p=38}} および {{Harv|野口|田中|2004|pp=225-228}} による。</ref>。唱える内容については[[#ポエを使う局面の例|後述するように]]願い事でもよいし、質問でもよいが、得られる回答はYES/NO、OK/NGといった2択なため、それに則った内容とする。投げ方は、2つそろえてやや前方あるいは右斜め前方へ放るように落とす要領で行う。地面に落ちたあと、どのような出目が出たかを見る。2つとも同じ面が上を向いたら回答はNOでありNG、互い違いに上を向いたらYESでありOKとなる。この時、上を向いたのが平らな面2つ揃いであれば笑い（冷笑）を表し、丸まった面2つ揃いであれば回答者の怒りを表す。丸まった面と平らな面がそれぞれ出た場合のことを{{Zh|聖筶}}（シンポエ）といい、願いであればかなうであろうし、質問の答えであればYESということになる。NGであった場合でも諦めたらそこで試行終了となってしまうので、微妙に願いや質問を変えて再チャレンジしてもよい。どうしてもNGが続く場合は日を改めてまたやればよい。

これら出目の組み合わせと確率は以下の通り。上述のように陽は平らな面、陰は丸まった面である。

{| class="wikitable" style="text-align:center;"
|-
! A＼B !! 陽面 !! 陰面
|-
! 陽面
| 笑 || {{Zh|聖筶}}
|-
! 陰面
| {{Zh|聖筶}} || 怒
|}

* {{Zh|聖筶}}の確率:<math>\tfrac{2}{4} = \tfrac{1}{2}</math> （50パーセント）
* 笑の確率:<math>\tfrac{1}{4}</math> （25パーセント）
* 怒の確率:<math>\tfrac{1}{4}</math> （25パーセント）

このように、儀式としてはきわめて手軽なため一般人にも広く通用しているものの、得られる回答は仕組み上単純な 2択に限られるため、具体的な指示を得たり、複雑な伝達には向かないという側面があり、そういう場合には[[タンキー]]などに頼る必要がでてくる<ref name="ryu1994_146" />。

== ポエを使う局面の例 ==
どういった場合に使うか、その具体例を以下に挙げる。何らかの神仙その他と関わる際には、ことあるごとに使用される。

* 願い事を唱えて、それがかなうか確認する<ref name="kubo1996_36-38" />。
* おみくじを引いた後で、そのくじが正しいかを確認する。NGであったら再度おみくじを引き、ポエを投げる。くじは[[筮竹]]のような形状で番号が振ってあり、{{Zh|擲筶}}の結果OKの目がでたら該当の紙を受け取り、記載された内容を読むという流れ<ref name="kubo1996_36-38" />。再チャレンジの回数については3回までと限定する資料もある<ref name="chiq">{{Citation |和書 |author=地球の歩き方編集室 |title=台湾の歩き方 2016-17 |publisher=ダイヤモンド・ビッグ社,ダイヤモンド社 (発売) |series=地球の歩き方ムック |year=2015 |url=https://ci.nii.ac.jp/ncid/BB08309025 |isbn=978-4-478-04795-8 |page=83}}</ref>。1921年の『台湾風俗誌』（片岡巌著）では、ポエとくじ引きの順序が逆順で紹介されている<ref name="sakade" />。すなわち、まず{{Zh|聖筶}}が得られるまで祈願と{{Zh|擲筶}}を繰り返し、その後で引いたくじが即確定となる。
* 葬式において死者を地獄から救い出すための儀礼「破地獄」の結果確認。遺族が{{Zh|擲筶}}し、うまく地獄から出られたかを問う。{{Zh|聖筶}}であれば儀式は成功したことになるので、うまくいかない場合は立ち合いの[[道士]]のとりなしのもと、何度も繰り返すことになる<ref name="noguchi-tanaka2004_225-228" />。
* 墓参りなどで、死者の意思や質問の答えを得るために使う<ref name="noguchi-tanaka2004_225-228" />。
* 祭りなど
**イベントの日程を決める時に使う。祭りの期間はある程度決まっているので、その中のどれが良いかを伺う<ref>前掲 {{Harv|朱|1996|p=159}} および {{Harv|野口|田中|2004|pp=200}} 。</ref>。
** 儀式における役割分担決め<ref>前掲 {{Harv|野口|田中|2004|pp=209}} および {{Harv|劉|1994|pp=419}} 。</ref>。
** 下願と返願の条件決め。下願とは神から得たい御利益で、返願とは御利益を得た場合の神への返礼となる供物などである<ref>前掲 {{Harv|野口|田中|2004|pp=196}} 。</ref>。
** 祭りの規模について意見が対立したときの解決として。例えば不景気な局面において、節約しようという意見と、せめて祭りだけでも景気よくやろうという意見が対立して合意が得られない場合、神意にかこつけてジャッジするのである<ref>前掲 {{Harv|劉|1994|pp=228}} 。</ref>。
** [[施餓鬼]]の最後に満足いただけたかの確認<ref name="noguchi-tanaka2004_225-228" />。

==関連項目==
*[[ポエ占い]]

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 外部リンク ==
* {{Commonscat-inline|Jiaobei}}

{{DEFAULTSORT:ほえ}}
[[Category:宗教用具]]
[[Category:占い]]
[[Category:道教]]
[[Category:民間信仰]]
[[Category:中国の民間信仰]]