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ポラックの法則
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'''ポラックの法則'''(ポラックのほうそく)は、1999年に提唱された「[[プロセッサ]]の性能はその複雑性の[[平方根]]に比例する」という経験則。 原典では「我々は二乗則の悪い側にいる」という表現で、これは計算機の性能は価格の2乗に比例する、とした[[グロッシュの法則]]を踏まえている。複雑性=価格とすれば、それぞれの法則を描いたチャートは、逆の形を描くことになる。 ここで「複雑性」とは、論理回路の水準で見るならばゲート数やFF数、電子回路の水準で見るならばネットリストのエッジ数とノード数すなわち配線数と素子数、などのことである。[[トランジスタ]]数のことだとして、この法則に文字通り従うならば、1プロセッサに使うトランジスタを2倍に増やしても、性能は<math>\sqrt{2}\fallingdotseq 1.4</math>倍にしか上がらない。 なお、実際のデータからは、定性的にはともかく、定量的には文字通りではなく、物量と性能の関係は一定ではなく変化するものだ、という意味に取るのが良いようである<ref name="ando">http://news.mynavi.jp/column/architecture/122/index.html 2024年9月6日閲覧</ref>。 ここで、ある系列のプロセッサの新型を設計するとして、その新型では'''プロセス[[微細化]]なしに'''2倍のトランジスタを使うことにする。すると(実際にはその設計次第であるが)、ポラックの法則に従うならばプロセッサの性能は1.4倍しか向上していないにもかかわらず、トランジスタ数に比例して消費電力は2倍に増大している。したがって消費電力あたりの性能は、トランジスタ数を2倍にした結果逆に0.7倍に低下することになる。消費電力は、ほぼそのまま発熱量とみてよい。結論として、トランジスタ数の増加によるプロセッサの性能の向上は、遠からず(仮に電力の供給はなんとかできたとしても)熱の問題により頭打ちとなることが、この法則が正しければ予言される。 直感的に説明するならば、この法則はプロセッサ設計がある種の「飽和」に達した後の現象だということになる。[[ビットスライス]]プロセッサのように、たとえば32ビットの[[演算装置#ALU|ALU]]を、8ビットのALU(たとえば[[AMD Am2900|Am2901]])を並べて作っていたような時代であれば、単純な物量作戦で性能は線形に上がるだろうし、もっとかも([[グロッシュの法則]])しれない。その後、単純に物量作戦で可能なことは全てやり、パイプライン化なども行われると、それ以上の性能向上は並列(parallel)処理で、となり、[[scoreboarding]] や [[Tomasuloのアルゴリズム]]など、並行(concurrent)処理の複雑さが、目的の計算以上に素子などの資源を喰ってしまうわけである。 なお以上の議論では'''プロセス微細化なしに'''という前提を置いているが、MOS集積回路の開発から200x年代頃までのトレンドとしては、[[ムーアの法則]]を達成するためのプロセス微細化によって、[[デナード則]]にもとづき高速化と消費電力が低減されてきていたため(しばしばこの後半のほうを指してムーアの法則だとされている)そちらによる性能向上が大きかった。こちらによる性能向上は、集積回路の生産プロセスを更新するだけでプロセッサ設計やマスクパターンの大きな変更無しに、単にパターンをより小さく縮小するだけであり、「無料の昼食」(Free Lunch)などと形容されることも<ref>[http://www.gotw.ca/publications/concurrency-ddj.htm The Free Lunch Is Over: A Fundamental Turn Toward Concurrency in Software] 2024年9月6日閲覧</ref>ある。 この法則が示唆する通り、また[[デナード則#2006年ごろのデナード則の崩壊|デナード則の崩壊]]により、その後のプロセッサは低消費電力・[[マルチコア]]化を(提唱時期からみても、この法則はシングルコア性能が前提である)指向するようになった。 == 出典 == * https://web.archive.org/web/20000818024243/http://www.intel.com/research/mrl/Library/micro32Keynote.pdf (2024年9月4日閲覧) 1999年に開催されたMicro-32の基調講演にてフレッド・ポラック([[w:Fred Pollack]])が提示したプレゼンテーション。この4ページ目に示された"We are on the Wrong Side of a Square Law"(我々は二乗則の悪い側にいる<ref name="ando" />)が原典。ポラックは[[インテル]]社のMRL(Microprocessor Research Labs)のディレクター兼インテル・フェロー(Intel Fellow)を務めていた。 <references/> == 関連項目 == *[[マルチコア]] **[[ヘテロジニアスマルチコア]] *[[ムーアの法則]] *[[ギルダーの法則]] *[[グロッシュの法則]] *[[カオの法則]] *[[アムダールの法則]] {{デフォルトソート:ほらつくのほうそく}} [[Category:コンピュータに関する法則]] [[Category:エポニム]]
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