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'''ポリアニリン''' (polyaniline, PANI) は[[導電性高分子]]の一種である。多くの導電性高分子と同様、[[共役系|共役]][[π電子]]系が直線的な分子鎖に沿って連なる一次元構造を有する。固体[[電解コンデンサ]]の電極材料などとして実用化されている。 [[重合]]条件(溶液の[[水素イオン指数|pH]])やドーピングによってプロトンの付加・脱離が容易に可能という他の導電性高分子にはない特徴を持つ一方、その機構には不明な点もある。 == 分子構造 == [[画像:Polyaniline structure.svg|thumb|right|500px|ポリアニリンの構造の例 n+m = 1, x = [[重合度]]]] ポリアニリンの構造は右図のようになっており、[[六員環]]の間に[[イミン]][[窒素]]原子 (=N-) と[[アミン]]窒素原子 (-NH-) が含まれている。重合度 (x) は1,000を超える。 不純物添加による[[酸化]]で電気的な性質が大きく変化する特徴がある。 * '''ロイコエメラルジン'''(英語:leucoemeraldine)(n = 1, m = 0、化学式:<chem>(C6H4NH)_n</chem>) ** 十分[[還元]]された状態のポリアニリンは完全な[[絶縁体]]である。 ** 白もしくは無色透明 * '''エメラルディン'''(英語:emeraldine)(n = 0.5, m = 0.5、化学式:<chem>([C6H4NH]2[C6H4N]2)_n</chem>) ** ロイコエメラルジンと異なり、[[分子]]や[[バンド理論|バンド]]の構造が修飾されたセミキノイド構造を取り、高い[[導電性高分子|導電性]]を示す。 ** 半酸化状態、基本青色で、塩の状態で緑色、[[N-メチルピロリドン|NMP]]などの溶媒に溶解し、成型が容易である。 *'''ペルニグルアニリン'''(英語:pernigraniline)(n = 0, m = 1、化学式:<chem>(C6H4N)_n</chem>) ** パーニグラニリン、ニグラニリン、英語:nigranilineとも呼ばれる。 ** ベンゼノイドまたはキノイド構造となるため、再び絶縁体になる。 ** 完全酸化状態で青か黒紫色の不安定な物質 ** '''アニリンブラック'''の主成分と推定されている<ref name=black>{{Cite journal|和書|url=https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN10079809-20110930-0061 |author=向井知大, 小畠りか, 大場茂 |title=アセトアニリドの合成の実験条件とアニリンブラック |journal=慶應義塾大学日吉紀要 自然科学 |publisher=慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会 |year=2011 |issue=50 |pages=61-75 |naid=40019023724 |ISSN=09117237}}</ref> == 歴史 == [[アニリン]]を[[電気化学]]的に酸化すると[[陽極]]表面上にいわゆる'''アニリンブラック'''が形成されることは古くから知られていた。これは黒い[[染料]]として用いられていたが、安定性が悪く、また物質の正体は長く不明であった。 ポリアニリンという呼び名ではないが、[[1862年]]には Letheby が[[電解重合]]に成功している。[[1912年]]には、異なる酸化状態のポリアニリン8量体が特定された<ref>A. G. Green ''et. al'', ''J. Chem. Soc.'', '''101''', 1117 (1912).</ref>。さらに[[1980年]]になると電解重合で電気的に活性なポリアニリンが得られることがわかり、[[導電性高分子]]として注目を集めるようになった<ref>A. F. Diaz ''et. al'', ''J. Electroanal. Chem.'', '''111''', 111 (1980).</ref>。近年ではエネルギー密度の高い[[二次電池]]の電極などとしても研究されている。 == 合成方法 == [[#歴史|歴史]]で述べたように、ポリアニリンは[[アニリン]]から電解重合によって合成される。特に、[[塩酸]]や[[硫酸]]などの[[酸性]][[水溶液]]中で電解酸化すると[[水素イオン|プロトン]]化したエメラルディンが電極表面に得られ、高い導電性を示す。この時に -0.2 ~ +0.8 V 程度の範囲で[[電位]]を掃引すると均質な薄膜が得られるが、定電圧を印加すると粉末状で導電性の低いポリアニリンが得られる。前者は電位掃引法と呼ばれる。一方、[[中性 (酸塩基)|中性]]ないし[[アルカリ性]]の液中では絶縁性のポリアニリンが得られる。 == 参考文献 == {{Reflist}} * {{Cite book|和書|author=吉野勝美, 小野田光宣 |title=高分子エレクトロニクス : 導電性高分子とその電子光機能素子化 |publisher=コロナ社 |year=1996 |NCID=BN14560687 |ISBN=4339006599 |url=https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002516118 |ref=harv}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:ほりあにりん}} [[Category:有機高分子]] [[Category:有機半導体]] [[Category:アニリン]]
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