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<div>[[ファイル:Polylactides Formulae V.1.svg|class=skin-invert-image|thumb|right|300px|ポリ乳酸の構造]]</div> '''ポリ乳酸'''(ポリにゅうさん、polylactic acid、polylactide、'''PLA'''<ref name="日経デジタルヘルス">[https://xtech.nikkei.com/dm/article/WORD/20060518/117235/?ST=health 旬な材料 ポリ乳酸とは]日経デジタルヘルス(2006年5月19日)2019年9月16日閲覧</ref>)は、[[乳酸]]が[[エステル結合]]によって[[重合]]し、長くつながった[[高分子]]である。化学式では{{chem|(C|3|H|4|O|2|)|''n''}} または {{chem|[–C(CH|3|)HC({{=}}O)O–]|''n''}}と表せる。[[ポリエステル]]類に分類される。 [[バイオプラスチック]](バイオマスプラスチック)、[[生分解性プラスチック]]の一種<ref>[http://www.jbpaweb.net/bp/bp_faq2.htm バイオマスプラQ&A]日本バイオプラスチック協会(2019年9月16日閲覧)</ref><ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49463580V00C19A9L31000/ 日精ASB、分解速い生分解性プラボトル成型技術確立][[日本経済新聞]]ニュースサイト(2019年9月5日)2019年9月16日閲覧</ref>。農産物([[トウモロコシ]]、[[芋]]、[[サトウキビ]]、[[ビート (植物)|ビート]]など)を含む[[植物]]を原料として生産できる<ref name="日経デジタルヘルス"/>。 <!--環境に優しい云々は曖昧なので説明には不適切。--> == 種類 == 乳酸は1つの[[不斉炭素]]を持ち、L 体と D 体の2種が存在する。L 体のみを重合させたものはポリ-L-乳酸(poly-L-lactic acid, PLLA)、D 体のみを重合させたものはポリ-D-乳酸(poly-D-lactic acid, PDLA)と呼ばれる。これらはその立体配置により、互いに逆回りの[[螺旋|らせん]]構造をとることが知られている。 PLLA と PDLA を[[混合]]したものは、そのらせん構造がうまく噛み合って耐熱性の高い樹脂となることが知られている。これをステレオコンプレックス型ポリ乳酸(SC-PLA)と呼ぶ。 分子鎖の中に D・L 両方の乳酸が混在するものも知られている。ランダムな重合体はポリ-DL-乳酸(poly-DL-lactic acid, PDLLA)と呼ばれるが、結晶性が低く実用的でない。D 体と L 体が交互につながったもの、[[ブロック重合]]したものなども合成され、研究が進められている。 == 性質 == === 生分解性 === ポリ乳酸は環境中の水分により[[加水分解]]を受けて低分子化され、[[微生物]]などにより最終的には[[二酸化炭素]]と[[水]]にまで分解される。こうした性質を持つ[[生分解性プラスチック]]の中でも、ポリ乳酸は最も研究・実用化が進んでいる高分子である。 土中や水中では数ヶ月~一年が安定だが、[[堆肥]]の中では、約1週間で分解される。[[農業]]用に、[[マルチシート]]や[[ビニールハウス|ハウス]]用のフィルムとして、ホビー分野では屋外用[[BB弾]](通称バイオ弾)として実用化されており、[[3Dプリンター]]のフィラメントとして使われるのも一般的になっている。その他、[[繊維]]製品、[[光ディスク]]、[[包装]]用フィルム、[[レジ袋]]などに応用研究・試験が進んでいる。 ただし、誤解してはならないのはポリ乳酸が通常の環境で直ちに生分解を始めるわけではないことだ。上述のように堆肥の中等の特に微生物が豊富な環境でなければ、一般の合成樹脂と同様にほぼ安定である{{要出典|date=2008年11月}}。従って、電気製品([[携帯電話]]や[[ノートパソコン]]の[[筐体]]など)や自動車部品の材料としても利用実績がある<ref name="日経デジタルヘルス"/>。 ポリ乳酸の製品は徐々に増えつつあるが、「廃棄時」においてポリ乳酸の特性を生かした処理法(堆肥の中に入れて生分解させる)がなされている例はほとんどなく、一般の合成樹脂同様に焼却処理されるのが通例である。このようにマテリアルフローが従前のままであれば「生分解性」自体が、製品への環境配慮の付与になっているかは自明であるとは言い難い状況にある。 === カーボンニュートラル === 上記のように、ポリ乳酸が生分解性を持つゆえに環境配慮に優れているという言説は現在では下火になっており、代わりに脚光を浴びているのが[[カーボンニュートラル]]という特性である。 ポリ乳酸は植物起源の素材から合成できる[[バイオプラスチック]]の一つである。[[ブドウ糖]](グルコース)・[[砂糖]](スクロース)などに[[乳酸菌]]を作用させると、その発酵作用により乳酸が得られる。原料となる糖類は[[ジャガイモ]]や[[トウモロコシ]]などから得られる[[デンプン]]に酵素([[アミラーゼ]]など)を作用させる、あるいは[[サトウキビ]]などから抽出することにより大量に得られる。 ポリ乳酸は微生物によって最終的に[[二酸化炭素]]({{lang-en-short|carbon dioxide}}、<chem>CO2</chem>)へ分解されて大気中に放出されるが、植物は[[大気]]中の二酸化炭素を吸収してデンプンを合成しているため、トータルで見て[[地球温暖化]]の原因とされる二酸化炭素の量を増やすことがない。こうした性質は「カーボンニュートラルである」といわれ、現在注目を集めている。 このほか、食料生産と競合する植物に代えて、微生物を用いてポリ乳酸を生産することが試みられている。2019年には[[大林組]]がCO2資源化研究所と共同でポリ乳酸の実用化検討を進めることを発表した<ref name=obayashi20190617>{{Cite web|和書|title=CO2から生産する生分解性プラスチックの実用化検討を開始|url=https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20190617_1.html|accessdate=2019-6-20|date=2019-6-17|publisher=[[大林組]]}}</ref>。これはCO2資源化研究所が保有する[[水素細菌]]を利用するもので、再生可能エネルギーから製造した[[水素]]と二酸化炭素を与えて乳酸を生合成させ、これを原料としてポリ乳酸を生産する。建設業は[[土嚢]]や養生シートなどの形で世界のプラスチック需要の16%を使用する[[大規模需要者]]であり、これを微生物由来のポリ乳酸プラスチックで置き換えることで食料と競合することなく脱石油化を目指している<ref name=obayashi20190617/>。 ただし、ポリ乳酸を合成するためにはある程度のエネルギーを必要とし、そのエネルギーは[[石油]]など[[化石燃料]]由来であることも多い。このためポリ乳酸を真の意味でカーボンニュートラルと呼んでよいかについては議論があり、カーボンニュートラルを考慮してもポリスチレンに比べて排出される二酸化炭素が多いとの見方も存在する<ref>{{Cite web|url=http://www.comm.tcu.ac.jp/itsubo-lab/research/results/files/case/cs2005-a.pdf|title=生分解性プラスチックの LCA 分析~2005 年度 事例研究最終報告書~|archive-url=https://web.archive.org/web/20201123154248/http://www.comm.tcu.ac.jp/itsubo-lab/research/results/files/case/cs2005-a.pdf|archive-date=2020-11-23|accessdate=2024-01-11|format=PDF|publisher=武蔵工業大学 伊坪研究室}}</ref>。 == 合成法 == [[ラクチド]]を経由する方法と、直接重合による手段とが知られている。 === ラクチド法 === 乳酸を[[加熱脱水重合]]すると低分子量のポリ乳酸が得られるが、これは分子が短すぎるためプラスチックとしては役に立たない。この[[オリゴマー]]をさらに減圧下加熱分解することにより、乳酸の環状二量体である[[ラクチド]]が得られる。ラクチドは[[金属塩]]の[[触媒]]存在下で容易に重合し、ポリ乳酸を与える。 触媒としては、毒性の低い[[カプリル酸|オクタン酸]][[スズ]](II)がよく用いられる。この他に[[アルミニウム]]や[[ランタノイド]]のイソプロポキシド、[[亜鉛]]の塩なども重合活性がある。 === 直接重合 === [[ジフェニルエーテル]]などの[[溶媒]]中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させることによって直接ポリ乳酸が得られる。この他、溶融法などによる合成法も研究されている。 == 脚注 == {{Reflist}} {{プラスチック}} {{DEFAULTSORT:ほりにゆうさん}} [[Category:合成繊維]] [[Category:ポリエステル]]
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