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マグヌス効果
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{{出典の明記|date=2011年6月}} [[File:Magnus-anim-canette.gif|thumb|250px|マグヌス効果を表した[[GIFアニメーション]]。右から左への流れに対し、中心のローターを右回転させ始めると、ローター後方の流れが左上方へ変化し(青矢印)、下向きの力(赤矢印)が発生する。]] '''マグヌス効果'''(マグヌスこうか、{{lang-en-short|Magnus effect}})とは、回転しながら進む物体にその進行方向に対して垂直の力([[揚力]])が働く現象を言う。'''マグナス効果'''とも呼ばれる。 ベンジャミン・ロビンス([[:en:Benjamin Robins|Benjamin Robins]])によって観察<ref>{{cite|和書 |author=ジョン・D・アンダーソンJr.|translator=織田剛 |title=空気力学の歴史 |publisher=京都大学学術出版会 |year=2009 |isbn=978-4-87698-921-8 |page=73}}</ref>された[[小銃]]から発射される球形の[[弾丸]]が曲がることを説明するにあたって、[[1852年]]にドイツの科学者[[ハインリヒ・グスタフ・マグヌス]]によってはじめて認識された。 == 原理 == [[File:Magnus effect.svg|thumb|right|200px]] 円柱または球の回転体が、[[粘性]]を有する[[流体]]中を一定速度で移動している、または一様流中に置かれた場合、円柱または球が回転している状態において、回転体の回転軸ベクトルと流体との相対速度ベクトルに垂直の方向に力が発生する。その大きさは、流体の密度、回転体と流体との相対速度、および回転体の回転速度に比例する。 定性的な説明: 例えば球をバックスピンで投げた場合、球を迂回する流体には、流速と流体の曲率半径による遠心力が働く。回転体の前面、風上側は流速が減少する代わりに圧力が増し、大気圧よりも増すので抗力となる。しかし、回転体近くの上下は共に、遠心力による圧力勾配が生じ、表面の気圧が大気圧よりも負となっている。さらに、球が回転しているとき、流体のせん断応力が関与する表面の境界層の流れと、回転体を迂回する主流には、回転体の座標から見て、コリオリの力が作用している。球の前面で流体の運動量がゼロ位置である淀み点から境界層の流れが上下に分かれ、その淀み点を境にしてコリオリ力は、上側では負となって遠心力に追加され、下側では正の圧力として遠心力から引かされる。その結果、負圧の絶対値が、上側>下側となり、その差が上向の揚力として顕在化することになる。 循環による説明: 今、2次元[[速度ポテンシャル]]を考えると、一定速度または一様流速度を''U'' 、流体の密度をρとすれば、発生する力''L'' は次式で得られる<ref name="imai">{{cite|和書 |author=今井功 |title=流体力学(前編) |edition=24 |publisher=裳華房 |year=1997 |isbn=4-7853-2314-0 |page=124}}</ref>。 :<math>L = \rho U \Gamma</math> 上式は2次元ポテンシャルにおいて、循環を有する[[翼]]に生ずる[[揚力]]の式と一致する。この式は[[クッタ・ジュコーフスキーの定理]]と呼ばれる。 === 無次元式 === より一般的に、粘性の効果も含めて[[次元解析]]により揚力''L'' を求めると次式のようになる<ref name=igarashisugiyama>{{cite|和書 |author=五十嵐保 |author2=杉山均 |title=流体工学と伝熱工学のための次元解析活用法 |publisher=共立出版 |year=2013 |isbn=978-4-320-07189-6 |page=65-68}}</ref>。 :<math>C_L = f(\alpha,Re)</math> ここで、 * <math>C_L \equiv \frac{L}{\frac{1}{2}\rho U^2d}</math> :揚力係数 **''d'' :円柱の直径 * <math>\alpha \equiv \frac{Nd}{U}</math>:回転速度比 **''N'' :回転速度 * <math>Re \equiv \frac{\rho Ud}{\mu}</math> :[[レイノルズ数]] ** μ:粘性係数 == ディンプルの効果 == [[File:Golf ball 4.jpg|thumb|100px|ゴルフボールに刻まれたディンプル]] [[ディンプル]](表面のくぼみ)は、物体の[[臨界レイノルズ数]]を下げる。つまり、より低い速度で乱流が発生する。[[乱流]]は気流の物体表面からの剥離を防ぎ、マグヌス効果を維持する。 そのため、ディンプルはある範囲の速度で(ディンプル球の乱流発生速度から滑球の乱流発生速度まで)、マグヌス効果を増幅させる(マグヌス効果とは関係ないが、同時に、[[抗力]]を抑える効果もある)。 == 応用 == [[File:Flettner Rotor Aircraft.jpg|thumb|200px|right|[[アントン・フレットナー]]のローター飛行機]] * ドイツの科学者[[アントン・フレットナー]]は、船に帆の代替として回転可能な円柱を取付けた船([[ローター船]])を設計・製造し、[[1926年]][[5月9日]]に無事ニューヨークに到着し、大西洋横断の航海に成功した<ref name=igarashisugiyama/>。 * フレットナーによって[[ローター飛行機]]が製造されたが飛行の記録は無い。 * [[球技]]では、ボールがこの効果により落下が遅くなったり、はなはだしく浮き上がったりする。特に[[野球ボール]]では回転の方向を通常(後ろ向き)から変えれば[[球種 (野球)|変化球]]となり、左右に曲がったり、[[重力]]の影響以上に落ちるなど、作用効果が著しい。 * 球体を投射する際にバックスピンをかけると、重力に逆らう揚力が生まれる。これを利用したものに、野球等における[[直球]]や、多くの[[BB弾]]を使用した[[エアソフトガン]]に搭載されている「[[ホップアップシステム]]」がある。 * この効果を応用した[[風車]]がロシアで開発され、[[風力発電]]に応用したスパイラルマグナス風車による発電方式が2007年に開発された<ref name=igarashisugiyama/>。 == 脚注 == <references /> == 参考文献 == * {{cite book | 和書 | title=流れ学 | author=谷 一郎 | edition=第三版 | year=1967 | publisher=岩波全書 | ref=谷(1967) }} * {{cite book | 和書 | title=図解 流体力学の学び方 | author=清水 正之, 前田 昌信 | editor=笠原 英司(監修) | publisher=オーム社 | yer=1986 | ref=学び方(1986) }} == 関連項目 == * [[流体力学]] - [[航空工学]] - [[翼]] * [[等角写像]] * [[風力発電]] * [[境界層]] * [[ヴォルテックスジェネレータ]] * [[コアンダ効果]] * [[ライフリング]] == 外部リンク == *[https://www.youtube.com/watch?v=2OSrvzNW9FE マグヌス効果の実験動画]「Backspin Basketball Flies Off Dam」Veritasium {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:まくぬすこうか}} [[Category:航空工学]] [[Category:流体力学]] [[Category:物理学のエポニム]]
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