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{{redirect|マッハ}} {{物理量 | 名称 = マッハ数 | 英語 = Mach number | 次元 = 1 | 記号 = ''M'', ''Ma'' | SI = なし }} '''マッハ数'''(マッハすう、{{lang-en-short|Mach number}})は、流体の[[流れ]]の速さと[[音速]]との比で求まる[[無次元量]]である。 名称は、[[オーストリア]]の[[物理学者]][[エルンスト・マッハ]]({{lang-de-short|''Ernst Mach''|}})に由来し、航空技師の{{仮リンク|ヤコブ・アッケレート|en|Jakob Ackeret}}により1929年に名付けられた<ref name=matsuo>{{cite|和書 |author=松尾一泰 |title=圧縮性流体力学 |publisher=理工学社 |year=1994 |isbn=4-8445-2145-4 |pages=32-35}}</ref>。[[英語]]での読みは{{IPA-en|ˈmɑːk ˌnʌmbə''r''|}}、あるいは{{IPA-en|ˈmæk ˌnʌmbə''r''|}}となる。 == 定義 == マッハ数 <math>Ma</math> は流体の相対速度を<math>U</math> 、音速を<math>a</math> とすると、 :<math>Ma = \frac {U} {a}</math> で求められる。 == 物理的な意味 == マッハ数は、流れ場のもつ[[慣性力]]の[[弾性]]力(流れを圧縮するのに要する力)に対する比、つまり流れ場における[[圧縮性]]の影響の程度を表しており<ref name=matsuo/>、マッハ数が大きいほどに圧縮性の影響が増大する。このことからマッハ数は以下のような物理的意味を持っている。 * 圧縮性を考慮する必要性を判断するための指標 *: マッハ数が大きい流れでは圧縮性の影響が大きくなる。マッハ数が概ね0.3より大きいときには圧縮性の影響を無視することができない。 * 圧縮性に関する流れの相似条件のための指標 *: 別々の流れでもマッハ数が等しいときには圧縮性による影響は両者で等しいといえる。つまり圧縮性に関して両者は力学的に相似であるといえる([[相似則]]も参照)。さらに[[レイノルズ数]]と幾何学的特徴が一致すれば両者の流れは完全に相似、すなわちあらゆる現象が同様に起こることになる。 == マッハ数による流れ場の分類 == 先に述べたとおりマッハ数は流れ場における圧縮性の影響力を示している。このためマッハ数によって流れ場の特性が大きく変化することから、マッハ数を用いて以下のように流れ場が分類される。 ; 亜音速流 ({{en|subsonic flow}}) : すべての流域で流速が音速に満たない流れ場。物体の形状にもよるが、およそ''Ma'' < 0.7-0.8 である。 ; 遷音速流 ({{en|transonic flow}}) : 流れの中の一部の領域で流速が音速を超えている流れ場。音速を超えた流域では[[衝撃波]]が発生している。およそ 0.7-0.8 < ''Ma'' < 1.2-1.25 である。流れ場の最大マッハ数が 1 となる状態を[[臨界状態]]、このときのマッハ数を'''[[臨界マッハ数]]'''という<ref name=matsuo/>。 <!--マッハ数的にはこの範囲であるが、衝撃波が発生しないようにジェット旅客機には運用限界が設定されており、以下の部分は全くの誤解。 [[巡航速度]]で飛行する多くの[[ジェット機]]周りの流れがこれにあたる。 --> ; 超音速流 ({{en|supersonic flow}}) : 全ての流域で流速が音速を超えている流れ場。衝撃波が全域に発生する。超音速[[戦闘機]]や[[スーパークルーズ]]機周りの流れがこれにあたる。およそ 1.2-1.25 < ''Ma'' < 5 である。 ; 極超音速流 ({{en|hypersonic flow}}) : 流速が全域で著しく音速を上回る流れ場。''Ma'' > 5 では、[[断熱圧縮]]による激しい発熱により流体が[[電離]]・[[プラズマ]]化する(実在流体の場合)。一部の[[実験機]]や、[[大気圏]]通過時の[[ロケット]]周りの流れがこれにあたる。 <!--必要性に疑問 == 速度との換算 == マッハ数に音速を掛ければ、速度を得られる。 気温 15[[セルシウス度|℃]]、[[標準大気圧|1気圧]] (1,013 [[ヘクトパスカル|hPa]]) の[[空気]]中([[国際標準大気]] (ISA) 海面上気温)での音速は約 340 [[メートル毎秒|m/s]] ( = 1,225 [[キロメートル毎時|km/h]])だが、音速は、[[温度]]([[絶対温度]])と[[気圧]]のそれぞれ[[平方根]]に比例する。つまり、低温・低圧ほど音速は遅い。常温常圧を大きく離れなければ、気温を ''T'' ℃、気圧を ''P'' hPa とすると、次の式で概算できる。 :<math> 340 + 0.59 \times (T - 15) + 0.17 \times (P - 1013) \quad [\operatorname{m/s}]</math> 地上での実験等ではこの差はほとんど問題とならないが、ジェット機の巡航高度となる[[対流圏]]上部~[[成層圏]]下部では、低温と低圧により音速はおおよそ 300 m/s (≒ 1,100 km/h) となる。 ただし、これで得られるのは[[対気速度]]であり、[[風]]があれば[[対地速度]]を求めるには[[風速]]を加減しなければならない。特に中緯度の高空では、風速数十m/sから数百m/sの[[ジェット気流]]が流れているので、この効果は大きい。しかしジェット気流は速度も向きも一定ではなく、また実際には避けることも多い(特に西向き = 逆行のとき)ので、簡単な計算は難しい。 --> == 一般的用法 == 高速の飛行機においては、[[対気速度]]とは別に飛行マッハ数を[[マッハメーター]]を用いて計測することで空気の圧縮性の影響を求め、飛行制御に用いる。飛行機のマッハ計は圧縮性の影響を求めるための計器であり、単純に対気速度を定数としての海面上音速で割った物では無い。(亜音速で飛行する航空機の巡航速度は対地速度でも対空速度でもなく、飛行している空間の音速との比率で決まる。そのため例えば[[ボーイング787]]の巡航速度はマッハ0.85とされ、具体的な時速は明示されていない。) 音速は[[絶対温度]]の[[平方根]]に比例して変化する。地上での実験等ではこの差はほとんど問題とならないが、ジェット機の巡航高度となる[[対流圏]]上部 - [[成層圏]]下部ではおおよそ300 m/s(= 1,080 km/h)と、地上との差が顕著になる。したがって、飛行機の飛行マッハ数を単純に340 m/sや1,200 km/hで換算することは、とりわけ高空における場合は正しくない。高度11,000m以上では、1,062km/hが目安となる<ref>『世界の軍用機完全カタログ 全1587機種』 [[コスミック出版]]、2018年、500頁。ISBN 978-4-7747-8564-6</ref>。 大気圏外の[[宇宙船]]などに対しては、マッハ数を考えること自体ができない。 ただし、[[恒星圏]]と[[星間物質]]の相互作用を扱う際にはマッハ数を考慮することがある([[バウショック]])。 海面上音速等と言われるものは、気温 15[[セルシウス度|℃]]、[[標準大気圧|1気圧]] (1,013 [[ヘクトパスカル|hPa]]) の[[空気]]中([[国際標準大気]] (ISA) 海面上気温)での[[音速]]は約 340 [[メートル毎秒|m/s]] ( = 1,224 [[キロメートル毎時|km/h]], 761.2 [[マイル毎時|mph]], 661.5 [[ノット|knots]])となる。 「マッハ」という言葉は一般には高速という印象が強く、俗に以下のような使われ方をする。 *速度の単位(「マッハ1」=1224km/h=海面上音速)として使われる。 *その速さを直感的に表すため「マッハの世界」のような使われ方をする。<ref>[https://www.mhi.com/jp/group/rts/company 企業情報] - [[三菱重工業|菱重]]特殊車両サービス、2024.05.22閲覧。 [[90式戦車]]の砲弾速度に対し「マッハの世界」という言葉が使われている。</ref> *著作物([[文学]]・[[映画]]・[[アニメ (日本のアニメーション作品)|アニメ]]など)や商品名、ニックネームの類など幅広い用途で高速をイメージさせる語として使用される事も多い。有名な例には『[[マッハGoGoGo]]』、『[[マッハの恐怖]]』、[[フォード・マスタング]]のグレード名「Mach1」及び派生[[電気自動車|電動]][[クロスオーバーSUV|CUV]]「[[フォード・マスタング Mach-E|Mach-E]]」、[[カワサキ・マッハ]]、[[マッハ文朱]]などがある。 == 脚注 == {{reflist}} == 関連項目 == * [[臨界マッハ数]] * [[マッハメーター]] * [[圧縮性流れ]] * [[音の壁]] * [[ソニックブーム]] * [[熱の壁]] * [[超音速機]] * [[空力加熱]] == 外部リンク == * [https://www.grc.nasa.gov/WWW/K-12/airplane/mach.html NASA's page on Mach Number] マッハ数の解説および計算(英語) {{流体力学の無次元数}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:まつはすう}} [[Category:流体力学の無次元数]] [[Category:超音速]] [[Category:音の単位]] [[Category:物理学のエポニム]]
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