ミョウバンのソースを表示

[[Image:Alum.jpg|thumb|アルミニウムミョウバン <br />AlK(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>・12H<sub>2</sub>O]]

'''ミョウバン'''（明礬、{{lang-en-short|Alum}}）とは、1価の陽[[イオン (化学)|イオン]]の[[硫酸塩]] <chem>M^{I}_2(SO4)</chem> と3価の[[金属]]イオンの硫酸塩 <chem>M^{III}_2(SO4)3</chem> の[[複塩]]の総称である。

<chem>M^{I}M^{III}(SO4)2\cdot 12H2O</chem> または <chem>M^{I}_2M^{III}_2(SO4)4\cdot 24H2O, M^{I}_2(SO4)\cdot M^{III}_2(SO4)3\cdot 24H2O</chem> などで表され、陽イオン1[[モル]]あたり12モルの[[結晶水]]を含む。

<chem>[M^{I}(H2O)6]^+, [M^{III}(H2O)6]^{3+}</chem> 及び2個の <chem>SO4^{2-}</chem>から構成され、結晶構造は [[等軸晶系]]に属する。

[[溶解度]]は温度によって大きく変わる。水に高温でより多く溶ける。水溶液は[[水素イオン指数|弱酸性]]である。

単にミョウバンといった場合、[[硫酸カリウムアルミニウム]]十二[[水和物]] <chem>AlK(SO4)2 \cdot 12H2O</chem> を示すことが多いが、このほかにも[[鉄ミョウバン]]、[[アンモニウム鉄ミョウバン]]などがあり、混同を避けるためにしばしば'''カリミョウバン'''または[[カリウムミョウバン]]と呼ばれる。特に、カリミョウバンの[[無水物]]を'''焼きミョウバン'''といい、[[食品添加物]]として[[乾物]]屋などで販売している。

== 用途 ==
{{出典の明記| date = 2024年9月| section = 1}}
[[Image:Chromium potassium sulfate dodecahydrate.jpg|thumb|クロムミョウバン <br />CrK(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>・12H<sub>2</sub>O]]

[[媒染]]剤や[[防水]]剤、[[消火]]剤、[[皮なめし]]剤、[[沈殿]]剤などの用途があり、[[古代ローマ]]時代から使われてきた。上質の[[井戸]]がない場合、質の悪い[[水]]にミョウバンを入れて不純物を[[沈殿]]させて飲用に使うこともあった。また、腋の制汗・防臭剤としても使用されていた。天然のミョウバンは'''白礬'''（はくばん）とも呼ばれ、その[[収れん作用|収斂]]作用、[[殺菌]]作用から、洗眼、[[含嗽]]に用いられることがあった。

食物への用途としては、[[根菜]]や[[芋類]]・[[クリ|栗]]の[[灰汁|アク]]抜き<ref>[http://general.kenei-pharm.com/faq/burnt-alum/ 焼ミョウバンに関するよくあるご質問] - 健栄製薬HP。</ref>の他、[[甘露煮]]などを作る際に、[[細胞壁]]と結合して不溶化することで煮崩れを防ぎ、また[[ナス]]の漬物では色素である[[アントシアニン]]の色を安定化して、紫色を保つ働きがある。[[ウニ]]（雲丹）の加工時の型崩れ防止・保存のための添加物としても使用される。多量に用いるとミョウバン独特の苦みを呈する。

温度の変化により[[溶解度]]が大きく変わる性質があり、[[溶解度曲線]]や[[単結晶]]生成の化学実験によく使用される。 

[[写真現像]]の定着処理液で硬膜処理剤としてミョウバンが用いられる。とくにフィルム感光面の長寿命化が要求される場合にクロムミョウバンを用いて定着処理の後に超硬膜処理をする場合がある。

[[日本画]]では[[和紙]]への[[絵具]]渗みを防ぐために、ミョウバンと[[膠]]の混合液である「[[礬水]]（どうさ）」を和紙に塗る。

園芸においては[[アジサイ]]の発色に用いられる。[[アントシアニン]]の色を安定化して鮮やかな青色を発色させる働きがある。

[[アルム石]]という名称で、固形物や軟膏に配合され、収斂作用、殺菌作用から制汗・デオドラント（防臭）製品に使用される。（例：デオナチュレブランドの各製品など）

== 学校での使用 ==
[[学校]]では、主に[[理科]]の学習で使用される。

[[小学校]]第五学年の実験で、[[水溶液]]を作る際に「[[塩|食塩]]」を溶かした「[[食塩水]]」と一緒に使われることが多い。

なお、ここでの「理科実験」は、[[2021年]]の[[新興出版社啓林館]]の教科書を参考とする。

== 種類 ==
{{節スタブ}}
* カリミョウバン、[[カリウムミョウバン]] - 硫酸カリウムアルミニウム十二水和物（化学式: AlK(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>·12H<sub>2</sub>O）<ref>{{Cite Kotobank|word=硫酸カリウムアルミニウム|encyclopedia=ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典|access-date=2020年7月9日}}</ref>
* 焼きミョウバン、焼ミョウバン - 無水硫酸アルミニウムカリウム（化学式: KAl(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>）<ref>{{Cite Kotobank|word=焼ミョウバン(明礬)|encyclopedia=百科事典マイペディア|access-date=2020年7月9日}}</ref>
* ソーダミョウバン、ナトリウムミョウバン - {{仮リンク|硫酸アルミニウムナトリウム|en|Sodium aluminium sulfate}}十二水和物（化学式: NaAl(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>·12H<sub>2</sub>O）<ref>{{Cite Kotobank|word=ナトリウムミョウバン|encyclopedia=世界大百科事典 第２版|access-date=2020年7月9日}}</ref>
* アンモニウムミョウバン
** 広義には、[[アンモニウム]]イオンの硫酸塩と3価の金属イオンの硫酸塩の複塩の総称<ref name=ammmoniummyouban>{{Cite Kotobank|word=アンモニウムミョウバン|encyclopedia=ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典|access-date=2020年7月9日}}</ref>
** 狭義には、{{仮リンク|硫酸アンモニウムアルミニウム|en|Ammonium aluminium sulfate}}十二水和物（化学式: (NH<sub>4</sub>)Al(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>·12H<sub>2</sub>O）<ref name=ammmoniummyouban/>
* 鉄ミョウバン
** 広義には、[[鉄]]を含むミョウバンの総称 - （一般式: MFe(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>·12H<sub>2</sub>O、M=K, Rb, Cs, NH<sub>4</sub>, etc.）<ref name=tetsumyouban>{{Cite Kotobank|word=鉄ミョウバン|encyclopedia=日本大百科全書(ニッポニカ)|access-date=2020年7月9日}}</ref>
** 狭義には、カリウム鉄ミョウバン - 硫酸カリウム鉄（Ⅲ）（化学式: KFe(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>）<ref name=tetsumyouban/>
* アンモニウム鉄ミョウバン - [[硫酸鉄(III)アンモニウム]]（化学式: NH<sub>4</sub>Fe(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>·12 H<sub>2</sub>OまたはNH<sub>4</sub>[Fe(H<sub>2</sub>O)<sub>6</sub>](SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>·6 H<sub>2</sub>O）<ref>{{Cite Kotobank|word=アンモニウム鉄ミョウバン|encyclopedia=世界大百科事典 第２版|access-date=2020年7月9日}}</ref>
* クロムミョウバン
** 広義には、[[クロム]]を含むミョウバンの総称 - （一般式: MCr(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>·12H<sub>2</sub>O、M=K, Na, Rb, Cs, Tl, NH<sub>4</sub>, etc.）<ref name=chrommyouban>{{Cite Kotobank|word=クロムミョウバン|encyclopedia=化学辞典 第2版|access-date=2020年7月9日}}</ref>
** 狭義には、{{仮リンク|硫酸クロムカリウム十二水和物|en|Chrome alum}}（化学式: CrK(SO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>·12H<sub>2</sub>O）<ref name=chrommyouban/>
* 苦土ミョウバン、{{仮リンク|苦土毛礬|en|Pickeringite}}-（化学式: MgSO<sub>4</sub>·Al<sub>2</sub>(SO<sub>4</sub>)<sub>3</sub>·22(H<sub>2</sub>O)<ref>{{Cite Kotobank|word=苦土ミョウバン|encyclopedia=世界大百科事典 第２版|access-date=2020年7月9日}}</ref>
* カリウムアルミニウムミョウバン

==日本のミョウバン==
[[1664年]]、[[肥後国]]出身の[[浪人]]、渡辺五郎右衛門が[[豊後国]]鶴見村（現在の[[大分県]][[別府市]][[鶴見 (別府市)|鶴見]]）の照湯の[[湯の花]]からミョウバンの製造に成功。当時のミョウバンづくりは大掛かりのもので、渡辺のミョウバンづくりは採算に合わず撤退したが、後を追うようにミョウバンづくりに挑んだ脇屋儀助が商業ベースに乗せることに成功。[[日本]]に出回っていた[[清]]産のミョウバンを[[江戸幕府]]との交渉を通じて駆逐し、[[森藩]]の特産品とした。もっとも国際競争力はなく、日本産のミョウバンは[[明治維新]]以降、急速に姿を消した<ref>{{Cite web|和書|date= |url=https://www.japal.org/research-group/yunohana/003444.html |title=明礬製造の歴史 |publisher=日本薬事法務学会 |accessdate=2020-04-02}}</ref>。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
* [[明礬石]]
* [[明礬温泉]]
* [[湯の花]]
* [[入浴剤]]
* [[ウニ]] - 物によっては、ミョウバンを主な保存料として添加する。
* [[アルミニウム]] - ミョウバン（英：Alum）から発見されたことから命名された。

== 外部リンク ==
{{Commonscat|Alum}}
{{Wiktionary|明礬}}
* {{Wayback|url=http://rika-net.com/contents/cp0100a/contents/3490/3490.html |title=ミョウバン　理科ねっとわーく（一般公開版） |date=20171003174640}} - 文部科学省 国立教育政策研究所

{{DEFAULTSORT:みようはん}}

[[Category:硫酸塩]]
[[Category:複塩]]
[[Category:食品添加物]]
[[Category:画材]]