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メタン菌
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[[画像:Methanosarcina barkeri fusaro.gif|thumb|220px|常温性のメタン菌[[メタノサルキナ属|''Methanosarcina barkeri'']]]] '''メタン菌'''('''メタンきん'''、Methanogen)とは[[嫌気性生物|嫌気条件]]で[[メタン]]を合成する[[古細菌]]の総称である。英語ではmethanogenというように、正確な邦訳は'''メタン生成菌'''である。'''メタン生成古細菌'''とも呼ばれる。[[動物]]の[[消化器官]]や[[沼地]]、海底堆積物、[[地殻]]内に広く存在し、地球上で放出されるメタンの大半を合成している。分類上は全ての種が古細菌ドメインの[[ユーリ古細菌]]に属しているが、[[系統樹]]上、ユーリ古細菌門の中では様々な位置にメタン菌種が分岐しており、起源は古いと推測される。35億年前の地層([[石英]]中)から、生物由来と思われるメタンが発見されている。 メタン菌の特徴は嫌気環境における[[有機物]]分解の最終段階を担っており、偏性嫌気性菌とはいえ、他の古細菌([[高度好塩菌]]や[[好熱菌]]など)とは異なり、他の菌と[[共生]]あるいは[[基質 (化学)|基質]]の競合の中に生育している。ウシの腸内([[ミノ|ルーメン]])や、数は少ないものの[[ヒト|人]]の[[結腸]]などにも存在し、比較的身近な場所に生息する生物として認知されている。また、[[汚泥]]や水質浄化における応用等も試みられている。 かつてはメタン生成細菌と呼ばれていたこともあったが、古細菌に分類されるに伴い、現在は使われない。 == メタン生成の基質 == メタン菌は極めて広範な環境に生育するが、メタン生成による[[エネルギー]]獲得の[[基質 (化学)|基質]]はそれほど多様ではない。一般的なメタン菌の生育基質は、[[二酸化炭素]]である。 しかし、この他にも多様な[[炭素]]源をメタンへと変換できるメタン菌も何種類か存在する。例えば、[[Methanosarcinacea綱|''Methanosarcinacea''綱]]のメタン菌は、[[一酸化炭素]]、[[酢酸]]、[[メタノール]]、[[メタンチオール]]、[[メチルアミン]]などを用いることができ、[[油井]]から分離された ''[[Methanolobus siciliae]]'' などは[[ジメチルスルフィド]]を[[資化]]できる。また、 ''[[Methanogenium organophilum]]'' は、[[第一級アルコール]]である[[エタノール]]や[[1-プロパノール]]を利用できる。かつては、''Methanobacterium omelianskii'' がエタノールからメタンを生成できると考えられていたが、これは後に[[細菌]]である[[S菌]](エタノールを[[水素]]と二酸化炭素に分解する)との[[共生]]系であり、今では ''[[Methanobacterium bryantii]]'' と名前が変更されている。また、[[第二級アルコール]]([[イソプロパノール]]、[[シクロペンタノール]]、[[2-ブタノール]]など)を[[電子供与体]]として利用するものや[[メトキシ|メトキシ基]][[芳香族]]化合物を利用するもの<ref>[https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2016/pr20161014/pr20161014.html 石炭を天然ガスに変えるメタン生成菌を発見] 産業技術総合研究所 2016/10/14</ref>もいる。 {{main|メタン生成経路}} == 基質の競合と共生 == メタン菌がメタン生成[[基質 (化学)|基質]]として利用する[[水素]]と[[酢酸]]は自然環境における基質として非常に重要である。そのため、嫌気環境においては幾つかの[[真正細菌|細菌]]とメタン菌は競合関係にある。また、[[脂肪酸|低級脂肪酸]]を分解して酢酸を生成する細菌と[[共生]]しているケースもあり、この点で古細菌といえども[[高度好塩菌]]や[[好熱性古細菌]]とは異なっている。 水素は嫌気性細菌の[[有機酸]]を[[電子供与体]]とした[[脱水素反応]]の産物である。また[[ヒドロゲノソーム]]を有する、[[カビ]]や[[原生動物]]などからも水素は発生する。[[深海熱水噴出孔]]などからも地球科学的に水素は発生しているが、そのような特殊環境を除けば嫌気的な環境からは水素が発生していると考えてよい。酢酸は、上に述べたように低級脂肪酸からの分解を含む発酵の最終段階の反応であり、[[発酵]]で得られる[[エネルギー]]としては最も多い([[グルコース]]から発酵が進んだ場合、[[PH (化学)|pH]] 7 においてモルあたり[[標準自由エネルギー変化|ΔG<sup>0</sup>']] = −946 [[kJ/mol]])。 水素と酢酸を利用する他の生物としては、{{仮リンク|二価鉄|en|Ferrous}}を[[電子受容体]]として生育する[[鉄細菌]]、[[硫酸|硫酸イオン]]を電子受容体として生育する[[硫酸還元菌]]([[硫酸塩呼吸]])、そして水素と炭酸塩から酢酸を生成する{{仮リンク|酢酸生成菌|en|Acetogenic bacteria}}がいる。モルあたりのエネルギー獲得量をそれぞれ以下に記す。 *鉄細菌 **水素を電子供与体とした時:ΔG<sup>0</sup>’ = −914 kJ/mol **酢酸の時:ΔG<sup>0</sup>’ = −809 kJ/mol *硫酸還元菌 **水素の場合:ΔG<sup>0</sup>’ = −152 kJ/mol **酢酸の場合:ΔG<sup>0</sup>’ = −47 kJ/mol *メタン菌 **水素の場合:ΔG<sup>0</sup>’ = −135 kJ/mol **酢酸の場合:ΔG<sup>0</sup>’ = −31 kJ/mol したがって、効率は鉄細菌が特に優れており、電子受容体として鉄が存在する場合は鉄細菌が[[優占]]する。同様に[[硫酸イオン]]が存在する場合は硫酸還元菌が優占する。'''鉄も硫酸イオンも無い環境で、水素が豊富な環境で初めてメタン菌が増殖可能となる。'''ただし、細菌類、[[原虫]]とメタン菌が共生する場合はこの限りでない。 共生の場合は嫌気条件下における嫌気性細菌の有機酸分解の効率が低いことを考える。例えば低級脂肪酸を嫌気的に分解すると以下の反応式となる。 : <chem>CH3CH2CH2COO^-\ + 2H2O -> 2CH3COO^-\ + H^+\ + 2H2</chem> この反応の標準自由エネルギー変化は ΔG<sup>0</sup>’ = +48.3 kJ/mol と[[吸エルゴン反応]]であり、酢酸や水素の濃度を下げない限りは起こりえない反応である。そこで、メタン菌の以下の反応により上記の反応を進行させる。 : <chem>CH3COO^-\ + H2O -> CH4\ + HCO3^-</chem> (ΔG<sup>0</sup>’ = −31 kJ/mol) : <chem>4H2\ + HCO3^-\ + H^+ -> CH4\ + 3H2O</chem> (ΔG<sup>0</sup>’ = −135 kJ/mol)(水素資化) メタン菌の水素[[資化]]の式と上記の脂肪酸分解の式とをまとめると、以下のようになる。 : <chem>2CH3CH2CH2COO^-\ + 2H2O\ + CO2 -> 4CH3COO^-\ + 2H^+\ + CH4</chem> この式の[[標準自由エネルギー変化]]を求めると、まず脂肪酸分解の +48.3 kJ/mol は2モル分で +96.6 kJ/mol、そこへ水素資化の −135 kJ/mol を合わせ、ΔG<sup>0</sup>’ = −38.4 kJ/mol となる。ゆえに[[発エルゴン反応]]となり、共生関係が成り立つ。 == 分布 == 自然界の幅広い生理条件([[温度]]、[[水素イオン指数|pH]]、[[NaCl濃度]])の嫌気的環境に分布。具体的には湖沼、[[水田]]、海洋、[[ミノ|ルーメン]]、[[シロアリ]]後腸など。至適増殖温度に関しては最低が 15 ℃ (''[[Methanogenium frigidum]]'')、最高が 105 ℃ ([[Methanopyrus kandleri Strain 116|''Methanopyrus kandleri'' Strain 116]]) である。淡水からも多くのメタン菌は分離されているが、[[高度好塩性]]のメタン菌としては ''[[Methanohalobium evestigatum]]''(至適増殖NaCl濃度 4.3 M)がある。 また、メタン菌の生育環境によって他の生物との相互関係により利用[[基質 (化学)|基質]]が変化する。メタン菌の生育場所として以下の4環境をあげて説明を行う。 #淡水の[[堆積物]]中([[嫌気消化槽]]、湖沼、水田) #海洋 #[[ミノ|ルーメン]] #シロアリ後腸 === 淡水堆積物中 === 淡水堆積物は[[発酵性真正細菌]]の働きが活発であり、[[硫酸イオン]]に乏しい。そのため、[[有機物]]はほとんど[[二酸化炭素]]、[[ギ酸]]、[[酢酸]]にまで分解される。また[[有機酸]]を[[電子供与体]]として水素も発生するので、'''メタン菌の生育の場としては理想的'''である。特に、淡水中では酢酸の量が多く、淡水で発生するメタン生成の60%は酢酸、40%は水素、二酸化炭素経由である。 多くのメタン菌が湖沼や嫌気消化槽から分離されているものの、潜在的なメタン発生源となっているとされる水田から分離された種は多くなく、[[Methanobacterium spp.|''Methanobacterium'' spp.]]や [[Methanoculleus spp.|''Methanoculleus'' spp.]] などが知られるだけである。これは、水田土壌が[[農閑期]]に乾燥状態に置かれるため、[[偏性嫌気性]]のメタン菌の中では特に酸素耐性が高い種が優勢になり、分離される率が高いからだという説もある。しかし最近では、[[RICEクラスター]]と言われる難培養性の水田由来のメタン菌が多く分離されている。 === 海洋 === 海洋中では硫酸イオンが豊富に存在するために、堆積物中で発生する'''水素、ギ酸、酢酸はほとんどが[[硫酸還元菌]]によって消費される'''。そのため、それ以外の基質(例えば[[メチルアミン]]、[[硫化ジメチル]]など)を持ってメタン菌が生育する。硫化ジメチルは 2 μM 以下の低濃度だと硫酸還元菌が用いるが、高濃度ではメタン菌([[Methanolobus属|''Methanolobus''属]])が優先的に利用する。 === ルーメン === 腸内で発酵によって生じる酢酸や[[プロピオン酸]]は腸によって吸収される。したがって、それ以外の基質である水素と二酸化炭素およびギ酸がルーメンでは利用される。発生するメタンのうち80%は水素-二酸化炭素由来、20%はギ酸由来である。 === シロアリ後腸 === シロアリ後腸でも[[ルーメン]]と同じように酢酸はシロアリに吸収される。したがって水素-二酸化炭素を利用するところだが、シロアリの種類によっては水素-二酸化炭素より酢酸生成菌が酢酸を生成する。自由エネルギー変化は酢酸生成系のほうが低い([[標準自由エネルギー変化|ΔG<sup>0</sup>’]] = -105 [[kJ/mol]])が、'''シロアリ腸内では酢酸生成菌が[[優占種]]となるケースが多い'''。 == 分類 == [[File:メタン菌の系統関係.png|500px|thumb|[[ユーリ古細菌]]の[[系統樹]]。赤線がメタン菌より構成される[[綱 (分類学)|綱]]、オレンジ線がメタン菌を一部含む、またはメタン生成経路を持つ種を含む綱、青線がその他のユーリ古細菌、黒線がその他の生物。矢印は[[ピルバラ]]から発見されたメタンの生成年代。]] メタン菌の分類に関しては[[国際メタン生成菌分類小委員会]]によって[[1988年]]に基準が設定されている。以下に最小基準を列記する。 #分離生成の確認(純粋性の証明) #[[形態]] #[[界面活性剤感受性]] #[[グラム染色]] #[[運動性]] #[[コロニー]]形態 #メタン生成[[基質 (化学)|基質]] #メタン生成の確認 #増殖速度 #増殖条件([[培地]]の条件:[[温度]]、[[PH (化学)|pH]]、[[NaCl濃度]]等) #[[GC含量]] これら以外にも、推奨される基準としては以下のようなものがあげられている。 #[[電子顕微鏡]]写真 #[[免疫蛍光]] #[[脂質]]分析 #全タンパク質([[二次元電気泳動]]) #[[16S rRNA系統解析]]あるいは[[DNA-DNA分子交雑法]] メタン菌より構成されるのは、[[メタノバクテリウム綱]]、[[メタノコックス綱]]、[[メタノミクロビウム綱]]、[[メタノピュルス・カンドレリ|メタノピュルス綱]]の4綱である。2013年には[[テルモプラズマ綱]]の中にメタン生成を行うものが発見された。いずれも[[ユーリ古細菌]]である。 一方、2015年には、[[オーストラリア]]の海底炭層[[帯水層]]に含まれていた[[バチ古細菌門]]の[[ゲノム]]から、メタン生成経路が発見された。バチ古細菌門は[[エオサイト説|TACK上門]]や[[プロテオ古細菌界]]と呼ばれるグループに属しており、メタン菌の起源が[[ユーリ古細菌]]分岐以前にさかのぼる可能性が出ている。 == 応用 == 主にメタンガスを得る[[バイオリアクター]]としての応用が盛んで、[[エネルギー獲得型廃水処理]]に用いられている。メタン生成経路は必然的に嫌気性生物処理となり、[[活性汚泥法]]など[[好気性生物]]処理と比較すると、次のような特徴を持つ。 # [[炭素]]がメタンガスとなるため、余剰[[汚泥]]発生率が低い。また、消化汚泥は安定化され腐敗しにくい。 # [[曝気装置]]が不要。ただし、[[攪拌装置]]として[[ガス撹拌ブロワ]]を利用する場合がある。 # 燃料として利用可能な、[[バイオガス]]が得られ(利用には、[[硫化水素]]や[[シロキサン]]を除去する必要がある) # 滞留時間が長く、極端な還元状態に保たれるため、ほとんどの[[病原体]]が死滅する # 活性汚泥法でよく問題となる、[[バルキング]]が発生しない(別原因による発泡現象が固液分離を妨げることがある) # [[硫化水素]]により、有害な[[重金属]]イオンが難溶性の[[硫化物]]となって固定・分離される # メタン生成経路の反応速度が遅いため、滞留時間が長くなり、処理装置の容積が大きくなる # [[窒素]]から[[アンモニア]]が生じ、[[水素イオン指数|pH]]が高いと[[毒性]]を示すほか、難溶性の[[リン酸マグネシウムアンモニウム|MAP]]結晶が装置内に蓄積する # 反応維持に必要な[[有機物]]濃度が高く、低濃度まで浄化できない。仕上げ工程として好気処理が必要。 # メタン菌の活性が低下すると、[[揮発性脂肪酸]]が大量に残留するため、[[悪臭]]が発生する === 主な利用法 === * [[排水処理]]:[[下水処理場]]などの[[嫌気性]]消化槽や、高濃度有機排水の処理など、[[含水率]]95%以上で運用される。 * [[廃棄物処理]]:[[家畜]]糞尿などの有機廃棄物を[[コンポスト]]化し、[[排出ガス|ガス]]も利用する。[[ドイツ]]で導入例が多く、含水率は90%以上。 * [[乾式処理]]:[[都市ゴミ]]([[生ゴミ]]と[[古紙]])を高温発酵させる方式。[[ベルギー]]や[[デンマーク]]で開発され、[[含水率]]は70%以上。 メタン菌は増殖速度が小さいため、処理水とともに流亡しないよう、菌体保持に工夫をこらした、各種のメタン発酵[[バイオリアクター|リアクター]]が開発されている。 * 嫌気性固定法 (UAFP:upflow anaerobic filter process) * 嫌気性[[流動床]]法 (AFBR:anaerobic fluidized bed reactor) * 上向流嫌気性汚泥床法 (UASB:upflow anaerobic sludge blanket reactor) == 地球環境への影響 == 自然環境から大気中に放出されるメタンは[[温室効果ガス]]であり([[二酸化炭素]]の20-30倍の温室効果)、[[地球温暖化]]への影響が心配されている。二酸化炭素は現在温暖化の原因として悪名高いが、現状の上昇グラフや温暖化への寄与率を考えると二酸化炭素以外の温室効果ガス(メタンを含む[[亜酸化窒素]]、[[オゾン]]、[[フロン]]など)が50年後には二酸化炭素の温室効果を上回ると考えられている。 原始地球においてはメタン菌によるメタン放出によって地球大気が暖められ、生命の進化を促したと考えられる<ref>{{Cite web ja|url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/69/ |title=6億3500万年前に起きた温暖化の原因はメタン? |date=2008-05-28 |website=ナショナル ジオグラフィック日本版サイト |access-date=2023-11-27 |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20231127072327/https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/69/ |archive-date=2023-11-27}}</ref><ref>{{Cite web ja|url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/796/ |title=凍った地球を溶かした異質な大気 |date=2009-01-13 |website=ナショナル ジオグラフィック日本版サイト |access-date=2023-11-27 |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20231127073014/https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/796/ |archive-date=2023-11-27}}</ref>。また[[ニッケル]]が減少した事によりメタン菌の繁殖が抑えられ、メタンの放出が減り[[藍藻類]]が登場して大気中の[[酸素]]が増え始めたという説もある<ref>{{Cite web ja|url=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/1091/ |title=人類繁栄はニッケル“飢饉”のおかげ? |date=2009-04-08 |website=ナショナル ジオグラフィック日本版サイト |access-date=2023-11-27 |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20231127073324/https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/1091/ |archive-date=2023-11-27}}</ref>。 大気中メタンは[[17世紀]]以前は一定の量を維持していたが、人口増加や[[産業革命]]に伴い増加の一途をたどっている。特にここ50年間で発生量は2倍になっており、これは水田や家畜などの寄与率が大きいと考えられる。メタン菌の関与しているメタン生成量は[[Zinder]]のデータによると年間3億〜7億トンである。一方、メタン菌非関与の生成量は5千万〜1.5億トンであるからその寄与率の大きさは明らかである。 汚泥の除去など有効利用が行なわれる一方、水田や家畜からのメタン発生の抑制を行なう研究が進行中である。例えば、水田では稲藁をそのまま投入するより、一度発酵させ[[堆肥]]として用いたほうがメタン発生を抑制できるとの研究結果もある。 == 生命の進化史におけるメタン菌 == メタン菌をはじめ、複数の[[原核生物]]が[[共生]]することによって[[真核生物]]になり、やがて[[人類]]へと[[進化]]したという説がある<ref>[http://www.brh.co.jp/katari/shinka/shinka15.html 真核生物誕生の謎] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20090303150853/http://www.brh.co.jp/katari/shinka/shinka15.html |date=2009年3月3日 }}</ref><ref>[http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=1993&number=3810&file=1hEElnqiyAXE0gQxXUFAFw== 古細菌の進化的位置と真核生物の起源]</ref><ref>[http://www.chitobe.com/bbs/bbs.php?i=200&c=400&m=157283 共生による真核細胞の進化]</ref>。特にメタン菌を[[真核生物]]本体の起源とする説を[[水素仮説]]という。 == 地球外生命の可能性 == 大気の成分にメタンが含まれる[[惑星]]や[[衛星]]が存在し、[[地球外生命]]としてメタン菌が存在する可能性がある。事実、初期の[[原始地球]]には存在したと考えられ、その子孫が現在のメタン菌であるとされる<ref>[https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20090910/ 地球初期の海底熱水活動再現実験で高濃度の水素発生を確認]</ref><ref>[https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20080729/index.html 超好熱メタン菌の培養に成功]</ref><ref>[http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0708/200708_034.html 火星とタイタン メタンは生命の徴候?]</ref><ref>[http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0410/methane.html 原始地球の気候を支配したメタン菌]</ref>。 == 歴史 == {{節スタブ|人物の名字と名前|date=2024年10月}} * [[1776年]] [[アレッサンドロ・ボルタ]]が[[イタリア]]北部[[マッジョーレ湖]]にて湖のそこから沸きあがってくる気体をガラス瓶に集め、この気体が燃えることを観察した(メタンの発見)。 * [[1783年]] [[アメリカ合衆国]]のペイン<!-- 「ペイン」に該当するような人物はなし -->や[[ジョージ・ワシントン]]もボルタと同様の観察を行なった。 * [[1868年]] [[ルイ・パスツール|パスツール]]門下の[[ベカンプ]]が[[微生物]]による[[エタノール]]の[[嫌気的分解]]によりメタンが発生することを確認した。 * [[1875年]]〜[[1900年]] メタン生成は[[ミノ|ルーメン]]内での[[セルロース]]の分解と関係の無いことが明らかにされた。 * [[1910年]] [[バイヤーリンク]]門下の[[ゼーンゲン]]によって幾つかのメタン菌が観察される。 * [[1936年]] バーカー<!-- 「バーカー」に該当するような人物はなし -->が[[寒天亀裂培養法]]によって[[メタン菌純粋分離法]]を確立した(ただし当時分離されたメタン菌はまだ混合培養状態であったと考えられている)。 * [[1947年]] [[シュネーレン]]によって ''[[Methanobacterium formicium]]'' と ''[[Methanosarcina barkeri]]'' が純粋分離される。 * [[1950年]] [[フンガーテ]]によって[[嫌気性菌]]を大気中で取り扱う[[ガス噴射法]]、および嫌気性菌の[[コロニー]]を[[寒天]]上に作らせる[[ロールチューブ法]]が開発される。 * [[1967年]] ブライアン<!-- 「ブライアン」このページに該当するような人物はなし -->によって ''[[Methanobacterium omelianskii]]'' が ''[[M. bryantii]]'' と[[細菌]]である[[S菌]]の混合培養系であることが明らかにされる。 * [[1996年]] 超[[好熱菌|好熱性]]のメタン菌 ''[[Methanocaldcoccus jannaschii|Methanocaldcoccus(Methanococcus) jannaschii]]'' の全[[ゲノム]]が解読された<ref>{{cite journal | author = Bult, C.J., ''et al.'' | year = 1996 | title = Complete genome sequence of the methanogenic archaeon, ''Methanococcus jannaschii'' | journal = Science | volume = 273 | issue = 5278 | pages = 1058-1073 | PMID = 868808 | doi = 10.1126/science.273.5278.1058}}</ref> == 出典 == {{Reflist|30em}} == 関連項目 == * [[栄養的分類]] * [[嫌気呼吸]] * [[地球温暖化]] == 外部リンク == * 高井研、稲垣史生、[https://doi.org/10.5026/jgeography.112.2_234 地殻内微生物圏と熱水活動 地球と生命の共進化における接点] 地学雑誌 Vol.112 (2003) No.2 P.234-249, {{DOI|10.5026/jgeography.112.2_234}} {{DEFAULTSORT:めたんきん}} [[Category:古細菌]] [[Category:生態微生物学]] [[Category:メタン]]
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