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メルカトル図法
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{{出典の明記|date=2019年7月}} [[Image:Mercator 1569.png|right|350px|thumb|1569年にメルカトルが作成した地図]] '''メルカトル図法'''({{Lang-en|Mercator projection}})は、[[1569年]]に[[フランドル]](現[[ベルギー]])出身の地理学者[[ゲラルドゥス・メルカトル]]が[[デュースブルク]](現[[ドイツ]])で発表した[[地図]]に使われた[[投影法 (地図)|投影法]]である。図の性質と作成方法から'''[[正角図法|正角]][[円筒図法]]'''ともいう。[[等角航路]]が直線で表されるため、[[海図]]・[[航路]]用地図として使われてきた。メルカトルが[[発明|発案]]者というわけではなく、[[ドイツ]]の{{仮リンク|エアハルト・エッツラウプ|de|Erhard Etzlaub|en|Erhard Etzlaub}}が[[1511年]]に作成した地図にはすでに使われていた。 == 特徴 == この図法では[[経線]]は[[平行]][[直線]]に、[[緯線]]は経線に[[直交]]する平行直線になる。ところが正角性を維持するには、横方向・縦方向の拡大率を一致させる必要がある。緯線はすべて[[赤道]]と同じ長さになるので、高緯度地方に向かうにつれて実際の長さ(地球儀上の長さ)より横方向に拡大される。それに応じて縦方向(経線方向)にも拡大させるので、高緯度に向かうにつれ[[距離]]や[[面積]]が拡大されることになる。例えば[[緯度]]60[[度 (角度)|度]]では、本来の緯線の長さは赤道の半分なので2倍に拡大され、したがって経線も2倍に拡大されるので、面積は4倍に拡大される。より高緯度の[[グリーンランド]]の面積は実際より17倍も拡大されている。 メルカトル図法の地図において、出発地と目的地との間に[[直線]]を引いて経線となす[[角度]](「舵角」という)を測り、[[方位磁針]]を見ながら常にその角度へ進むようにすれば、([[北磁極]]と[[真北]]の差を[[誤差]]として)目的地に到着する。このコースは航程線(等角航路)と呼ばれ、多くの場合に最短距離([[大圏コース]])から大きく外れるが、舵取りが容易なため羅針盤が発明された時代から広く利用されてきた。なお航程線が直線になるのは経線が平行直線であり、[[正角図法]]だからである。 [[Image:Tissot mercator.png|right|350px|thumb|赤い円([[テイソーの指示楕円]])は、地球上の同じ大きさの円をメルカトル図法で投影したもの。どの円も小さければ歪むことなく円になるが、大きさは緯度によって異なる]] メルカトル図法の大きな特徴は角度が正しい、すなわち十分狭い範囲だけを見ると形が正しいことである。一方で緯度によって縮尺が変化し、特に高緯度地方は著しく拡大されてしまう。そのため、広い範囲での角度、距離、面積比は正しくない。また極においては、極も赤道と同じ長さで表現されるので横方向に[[無限|無限大]]に拡大され、正角性を維持するため縦方向も無限大に拡大しなければならない。これは実際には不可能なので、極を表現できない。よってメルカトル図法では原理的に世界全図を描けない。そこで高緯度地方が拡大しないよう、経線方向の伸びを圧縮したのが[[ミラー図法]]である。世界全図が表現できるようになったが、正角性は失われている。 近年では、ネット上におけるシームレスな世界地図の表現方法として、メルカトル図法が用いられている。北が必ず上であり、正角図法であるため十分拡大すれば歪みが問題とならない。実際には、縮尺ごとに巨大なメルカトル図法の世界地図画像を用意し、要求された範囲だけを四角く切り抜いて送り出せばよい。ただし縮尺は緯度によって変わるので、比較のための尺を変化させる必要がある<ref>{{Cite web|和書 |url= http://user.numazu-ct.ac.jp/~tsato/tsato/document/mapcenter460/ |title= Googleマップの投影法 インターネット時代におけるメルカトル図法の再評価 |accessdate= 2016-09-28 |author= 佐藤 崇徳 }}</ref>。 == 投影法の表式 == 地図の中央の[[経度]]が <math>\lambda_0</math> であるとき、[[半径]]を1とする[[単位球面]]における[[地理経緯度]] <math>\lambda,\,\varphi</math> の点が投影されるメルカトル図法の地図上の点 <math>x,\,y</math> は次式で与えられる。 :<math> \begin{align} x & = \lambda - \lambda_0 \\ y & = \ln\tan\left(\frac{\pi}{4} + \frac{\varphi}{2}\right) \\ & = \tanh^{-1} \sin\varphi \\ & = \operatorname{gd}^{-1}\varphi \\ \end{align} </math> 次式は逆変換、すなわち図上位置 <math>x,\,y</math> から[[経緯度]]を与える。 :<math> \begin{align} \lambda & = x + \lambda_0 \\ \varphi & = 2\tan^{-1}\exp y - \frac{\pi}{2} \\ & = \sin^{-1}\tanh y \\ & = \operatorname{gd}y \\ \end{align} </math> ここで <math>\operatorname{gd}y</math> は[[グーデルマン関数]]である。グーデルマン関数の[[逆関数]] <math>\operatorname{gd}^{-1}\varphi</math> はランベルト関数とも呼ばれている。 ただし地球は[[扁球]][[回転楕円体]]モデルがより正確なので、 <math>y</math> 座標を縮減する必要があり、[[長半径]]を1、第一[[離心率]]を <math>e</math> として、 :<math> \begin{align} y = \tanh^{-1} \sin\varphi - e \tanh^{-1}(e\sin\varphi) \end{align} </math> となる。この量を新たな緯度と見立てることもでき、その際にはこの量は“[[緯度#等長緯度 (isometric latitude)|等長緯度]]“と称される。 この地表面上の微小距離<math>dt</math>と地図上の微小距離<math>ds</math>との関係(縮尺)は正角投影であるので方位角には依存しない。 :<math>ds = \sec \varphi \sqrt{1-e^2 \sin^2 \varphi} \ dt </math> なお[[Google Maps]](他の提供元の「web地図」も同様)では、<math>y</math> 座標の投影式で<math>e=0</math>とおいているので正確な正角投影にはならない<ref group="注釈">spherical Mercator Projectionとも呼ばれる。</ref>。また投影上の地球半径はズームレベルに応じた値を用いている :<math>a_\text{map} = \frac{256 \times 2^{zoomLevel}}{2 \pi} \ \text{pixels} </math> == 歴史 == メルカトルは、直線を引くことで[[等角航路]]が求まる地図を作ろうとしていたようである<ref>{{CRD|1000072629|メルカトルが、メルカトル図法を考えついた経緯を知りたい。|山梨県立図書館}}</ref>。 しかしながらメルカトルの時代にはまだ[[積分法]]が知られておらず、赤道から各緯度までの地図上の距離を示す定積分 :<math>u = \int_0^\varphi\sec\theta{\rm d}\theta = \ln\tan\left(\frac{\pi}{4} + \frac{\varphi}{2}\right) = \tanh^{-1} \sin\varphi = \operatorname{gd}^{-1}\varphi</math> をメルカトルは[[級数]]として[[近似]]的に計算したにとどまり、作図に必要な[[数学]]的根拠を明らかにしなかったので、メルカトル図法は普及しなかった。 海図をはじめ世界図にも用いられるようになったのは、[[1599年]]に[[イギリス]]の{{仮リンク|エドワード・ライト (数学者)|label=エドワード・ライト|en|Edward Wright (mathematician)}}が[[数値解析|数値計算]]法(今日でいう[[リーマン和]]による方法)を用いて緯線距離を導き出し、作図に必要な[[数表]]を作成してからである。この定積分を求める問題は[[17世紀]]中期に[[地図学]]を目的とする数学上の関心事として取り沙汰されていた({{仮リンク|正割関数の積分|en|Integral of the secant function}}問題<ref group="注釈">[[:en:Weierstrass substitution]]も参照。</ref>)が、当該積分は[[アイザック・バロー]]によって初めて{{仮リンク|閉じた式|en|Closed-form expression}}として求められたとされ(年代不詳)、[[1668年]]に[[ジェームス・グレゴリー]]によっても求められた。今日では、この緯線距離 <math>u</math> の式は上述のランベルト関数(逆グーデルマン関数)<math>\operatorname{gd}^{-1}\varphi</math> に相当すると解釈される。 == 縮尺 == <!--赤道上の[[縮尺]]を1とした場合、地理緯度 <math>\varphi\,</math> 線上の縮尺は <math>\sec\varphi \sqrt{1-e^2\sin^2 \varphi}</math> となる。 --> [[世界地図]]レベルの広域地図の場合は赤道上の縮尺をその地図の縮尺として表示することが多いが、縮尺の変化があまりに大きいので、緯度別のスケールを書くことも多い。 海図のように比較的限られた範囲を描く場合は「1/1,000,000(北緯35度)」のように緯度を指定して縮尺を表示する。さらに狭い範囲の場合は、地図の中央など図中の決められた地点の縮尺を表示する。(十分狭い場合は縮尺の変化を無視できる)。赤道上を縮尺の基準とする場合を接円筒型 (tangent type) 、赤道以外の緯度を縮尺の基準とする場合を割円筒型 (secant type) と呼ぶ場合がある。 短い距離の簡易的な測定方法としては、地図上で長さを測り、その長さを同じ緯度付近で経線方向にし、緯度差が何度に相当するかを確認し、1度あたりの[[子午線弧]]長を約111km(1[[分 (角度)|分]]あたり1[[海里]])で換算する。 [[横メルカトル図法]]や[[斜軸メルカトル図法]]のように、緯度だけあるいは経度だけで簡単に縮尺変化を表現できない場合、表記縮尺に対して基準線の縮尺をどれだけ小さくするかを縮尺係数として指定する。ただしこれらの図法は比較的大きな縮尺で用いられるので、精密な測定をするのでなければ意識する必要はない。 == 派生図法 == 通常「メルカトル図法」といえば赤道を基準線として、南北に離れると拡大する図法を指すが、他の[[球面#大円|大円]]も基準線にできる。[[子午線]]を基準線としたものを[[横メルカトル図法]]、それ以外の大円を基準線としたものを斜軸メルカトル図法という。さらに地球を[[回転楕円体]]として考慮した横メルカトル図法は特に[[ガウス・クリューゲル図法]]とも呼ばれる。これらは通常のメルカトル図法([[円筒図法]])のもっとも目立つ特徴である「経線と緯線が直交する直線である」性質が失われるので、小縮尺の[[世界地図]]にはあまり使われない。しかし、他の正角図法である[[ステレオ投影#地図学|平射図法]]や[[ランベルト正角円錐図法]]と比べると、 *基準線が直線になる *その基準線と平行な直線上で縮尺が同じ などの利点もある。そのため[[地形図]]など中縮尺~大縮尺地図の図法として、対象地域の近くに基準線を設定し、基準線近辺のごく狭い範囲に限定して使用されることが多い([[ユニバーサル横メルカトル図法]]参照)。 == 注釈 == {{Notelist}} == 出典 == <references/> == 関連項目 == *[[モルワイデ図法]] *[[グード図法]] *[[サンソン図法]] *[[ボンヌ図法]] *[[ミラー図法]] *[[オーサグラフ]] *[[ステレオ投影#地図学|ステレオ投影]](平射図法=正角方位図法) *[[ランベルト正積方位図法]] *[[ランベルト正角円錐図法]] *[[地球儀]] {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:めるかとるすほう}} [[Category:大航海時代]] [[Category:地図の図法]] [[Category:情報技術史]] [[Category:エポニム]]
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