ヤコビの楕円関数のソースを表示

数学において、'''ヤコビの楕円関数'''（ヤコビのだえんかんすう、{{lang-en-short|Jacobi elliptic functions}}）とは、基本的な[[楕円関数]]の一群であり、追加で[[テータ関数]]を含むこともあり、歴史的に重要な関数からなる。これらの関数は重要な構造を持っていて、さらに直接関連した応用も存在する。[[三角関数]]との類似性も便利で、''sin'' に対応する関数を ''sn'' と表記する{{refnest|これはそのまま「エスエヌ」と読む{{sfn|戸田|2001|p=28}}。}}。実用的な問題には[[ヴァイエルシュトラスの楕円函数]]よりもヤコビの楕円関数のほうがよく用いられる。これは[[複素解析]]の概念を使わずに定義し考察できるからである。これらの関数は{{harvs|txt|first=Carl Gustav Jakob |last=Jacobi|authorlink=カール・グスタフ・ヤコブ・ヤコビ|year=1829}}により導入された。

==導入==
[[Image:JacobiFunctionAbstract.png|thumb|322px|説明用の長方形]]
ヤコビの楕円関数は全部で12種類ある。これら12種は長方形のある頂点から他の頂点へ引いた矢印に対応している。ここでは、この頂点を順に s、c、d、n と呼ぶことにする。この長方形を[[複素平面]]に配置して、s は原点に、c は実軸上の ''K'' の位置に、d は ''K''&nbsp;+&nbsp;''iK<nowiki>'</nowiki>'' の位置に、n は虚軸上の ''iK<nowiki>'</nowiki>'' の位置になるようにする。実数 ''K'' と ''K' ''は{{仮リンク|四半周期|en|quarter period}}と呼ばれる。このとき、 s、c、d、n から異なる2文字を選んで「p」と「q」とすると、ヤコビの楕円関数は「pq」と書くことができる。

ヤコビの楕円関数は二重周期を持つ[[有理型関数]]で、次の性質を満たす唯一のものをいう。
* 頂点 p に一位の零点を持ち、頂点 q には一位の極を持つ
* p から q までが関数 pq&nbsp;''u'' の半周期となる。つまり、関数 pq&nbsp;''u'' は pq の向きの周期を持っており、その周期は p と q の距離の倍である。さらに、関数 pq&nbsp;''u'' はほかの2方向についても周期的であり、p から残りの頂点への距離が 1/4 周期である。
* 関数 pq&nbsp;''u'' を各頂点で ''u'' について展開すると、先頭の項の係数は 1 となる。言い換えると、関数 pq&nbsp;''u'' を、頂点 p において展開した場合の先頭の項は ''u'' であり、頂点 q では 1/''u'' であり、残りの頂点では 1 である。

より一般的には、長方形である必要はなく、平行四辺形でもよい。しかし、''K'' と ''iK' '' をそれぞれ実軸と虚軸に置いておくと、ヤコビの楕円関数 pq&nbsp;''u'' は、''u'' が実数のとき実数値を取る。

==記法==
楕円関数には様々な記法があり、無用な混乱を引き起こしている。楕円関数は2変数の関数である。最初の変数は'''振幅'''φを使って表すこともあるが、一般には、以下のように ''u'' を使う。二番目の変数は'''パラメタ''' ''m'' を使ったり、'''{{仮リンク|母数 (楕円関数)|label=母数|en|elliptic modulus}}''' ''k'' を使って表す。ここで、''k''<sup>2</sup> = ''m'' である。他にも、'''{{仮リンク|modular angle|en|modular angle}}''' &alpha; を使うこともある。''m''&nbsp;= &nbsp;sin<sup>2</sup>&nbsp;&alpha; である。これら別記法の定義や発展した話題、''相補的''な対応概念については、[[楕円積分]]や{{仮リンク|四半周期|en|quarter period}}の記事を見られたい。

==楕円積分の逆関数による定義==
[[File:sn-k-08.png|thumb|300px|''k''&nbsp;=&nbsp;0.8 の場合のヤコビの楕円関数 sn。[[domain coloring]]法で生成<ref>http://nbviewer.ipython.org/github/empet/Math/blob/master/DomainColoring.ipynb</ref>。]] 

上記のように、特定の性質を持つ唯一の有理型関数として定義するのは非常に抽象的である。より単純で、完全に同値な定義として、第1種不完全[[楕円積分]]の逆関数として定義することができる。まず、

:<math>u=\int_0^\phi \frac{\mathrm d\theta} {\sqrt {1-m \sin^2 \theta}}</math>

とする。楕円関数 sn ''u'' は

:<math>\operatorname {sn}\; u = \sin \phi\,</math>

で与えられ、cn ''u'' は

:<math>\operatorname {cn}\; u = \cos \phi</math>

で与えられ、dn ''u'' は

:<math>\operatorname {dn}\; u = \sqrt {1-m\sin^2 \phi}</math> 

で与えられる。

[[File:Modell der elliptischen Funktion φ=am (u, k) durch eine Fläche -Schilling V, 1 - 317-.jpg|thumb|
''u''と''k''を独立に動かしたときの振幅の模型(垂直軸が振幅)]]

ここで、角 <math>\phi</math> を'''振幅'''と呼ぶ。dn&nbsp;''u''&nbsp;=&nbsp;&Delta;(''u'') を'''delta amplitude'''と呼ぶこともある。上の値 ''m'' は自由なパラメタで、通常は実数を使い、0&nbsp;≤&nbsp;''m''&nbsp;≤&nbsp;1 とする。これにより、楕円関数は、ふたつの変数、振幅<math>\phi</math>とパラメタ''m''の関数だと考えることができる。

残りの9つの楕円関数は上記の3つから簡単に構成することができ、下の節で与えられる。

注意として、<math>\phi=\pi/2</math> の場合は、''u'' は四半周期 ''K'' となる。

==三角法による定義==
{{Vertical_images_list
|寄せ = 右
|幅 = 250px
|画像1 = JacobiSN.svg
|説明1 = sn(''u'', ''m'') のグラフは ''m'' → 0 のとき sin(''u'') 、''m'' → 1 のとき [[tanh]](''u'') へ漸近する。
|画像2 = JacobiCN.svg
|説明2 = cn(''u'', ''m'') のグラフは ''m'' → 0 のとき cos(''u'') 、''m'' → 1 のとき [[sech]](''u'') へ漸近する。
|画像3 = JacobiDN.svg
|説明3 = dn(''u'', ''m'') のグラフは ''m'' → 0 のとき 1 、''m'' → 1 のとき sech(''u'') へ漸近する。
}}
''r''&nbsp;=&nbsp;1 の単位円上で<math> \cos \theta, \sin \theta</math>を定義できたのと同様に、ヤコビの楕円関数は、''a''&nbsp;=&nbsp;1 の単位楕円上で定義できる。

:<math>
\begin{align}
& x^2 + \frac{y^2}{b^2} = 1, \quad  b >  1, \\
& m = 1 - \frac{1}{b^2}, \quad 0 < m < 1, \\
& x = r \cos \theta, \quad y = r \sin \theta
\end{align}
</math>

とすると、

:<math> r( \theta,m) =  \frac{1} {\sqrt {1-m \sin^2 \theta}}</math>

である。

楕円に沿った弧長 ''u'' を計算すると、
:<math>u = u(\varphi,m)=\int_0^\varphi r(\theta,m) \, d\theta </math>
となる。ここで、<math> \varphi = \arccos(x) </math>である。単位円でおなじみの関係式
:<math> \cos \theta = x , \quad \sin \theta = y </math>
を楕円の場合に一般化して、
:<math>\operatorname{cn}(u,m)=x,\quad \operatorname{sn}(u,m) = \frac{y}{b} </math>
を定義とする。

さらに、

:<math> \operatorname{dn}(u,m) = \frac 1 {r(\varphi,m)}</math>

と定める。

==テータ関数を用いた定義==
ヤコビによるテータ関数を用いて定義することもできる。<math>\vartheta(0;\tau)</math>を<math>\vartheta</math>と略記し、<math>\vartheta_{01}(0;\tau), \vartheta_{10}(0;\tau), \vartheta_{11}(0;\tau)</math>もそれぞれ、<math>\vartheta_{01}, \vartheta_{10}, \vartheta_{11}</math>(''テータ定数''と呼ばれる)と略記する。このとき、母数 ''k'' は<math>k=\left({\vartheta_{10} \over \vartheta}\right)^2</math> となる。<math>u = \pi \vartheta^2 z</math>とおくと、
[[File:cn-k-08.png|thumb|300px|Elliptic Jacobi function, cn, ''k''&nbsp;=&nbsp;0.8]] 
[[File:dn-k-08.png|thumb|300px|Elliptic Jacobi function, dn, ''k''&nbsp;=&nbsp;0.8]] 
:<math id="def.theta">\mathrm{sn}(u; k) = -{\vartheta \vartheta_{11}(z;\tau) \over \vartheta_{10} \vartheta_{01}(z;\tau)}</math>

<!-- extra blank line between two lines of "displayed" [[TeX]], for legibility -->

:<math>\mathrm{cn}(u; k) = {\vartheta_{01} \vartheta_{10}(z;\tau) \over \vartheta_{10} \vartheta_{01}(z;\tau)}</math>

<!-- extra blank line between two lines of "displayed" [[TeX]], for legibility -->

:<math>\mathrm{dn}(u; k) = {\vartheta_{01} \vartheta(z;\tau) \over \vartheta \vartheta_{01}(z;\tau)}</math>

となる。

これで、ヤコビの関数が母数''k''(&tau;)の式で定義されたので、これを反転して τ を ''k'' の式で表す必要がある。初めに、''余母数''<math>k' = \sqrt{1-k^2}</math>を考える。これは τ の関数として、

:<math>k'(\tau) = \left({\vartheta_{01} \over \vartheta}\right)^2</math>

と書ける。

次に、

:<math>\ell = {1 \over 2} {1-\sqrt{k'} \over 1+\sqrt{k'}} =
{1 \over 2} {\vartheta - \vartheta_{01} \over \vartheta + \vartheta_{01}}</math>

と定める。

そして、[[ノーム (数学)|ノーム]] ''q'' を <math>q = \exp (\pi i \tau)</math> と定義し、ノーム ''q'' に関して、<math>\ell</math>を[[冪級数]]の商に展開すると、

:<math>\ell = {q + q^9 + q^{25} + \cdots \over 1 + 2q^4 + 2q^{16} + \cdots}</math>

となる。

{{仮リンク|級数の反転|en|Reversion of series}}を行うと、

:<math>q = \ell + 2\ell^5 + 15\ell^9 + 150\ell^{13} + 1707\ell^{17} + 20910\ell^{21} + 268616\ell^{25} + \cdots</math>

を得る。

τの虚部が 1/2 sqrt(3) 以上の場合に帰着すればよいので、''q'' の絶対値は exp(-1/2 sqrt(3) &pi;) ~ 0.0658 以下である場合だけを考えればよい。この値は小さいため、上の級数は急速に収束し、簡単に''q''の値を計算することができる。

==その他の関数==
関数名の文字の順序を反転した場合は、元の関数の逆数となる。

:<math>
\begin{align}
\operatorname{ns}(u) & = \frac{1}{\operatorname{sn}(u)} \\[8pt]
\operatorname{nc}(u) & = \frac{1}{\operatorname{cn}(u)} \\[8pt]
\operatorname{nd}(u) & = \frac{1}{\operatorname{dn}(u)}
\end{align}
</math>

同様に、上の3つの関数どうしの比は、分子の関数の最初の文字と分母の関数の最初の文字を繋げたものになる。

[[File:sc-k-08.png|thumb|300px|Elliptic Jacobi function, sc, ''k''&nbsp;=&nbsp;0.8]] 
:<math>
\begin{align}
\operatorname{sc}(u) & = \frac{\operatorname{sn}(u)}{\operatorname{cn}(u)} \\[8pt]
\operatorname{sd}(u) & = \frac{\operatorname{sn}(u)}{\operatorname{dn}(u)} \\[8pt]
\operatorname{dc}(u) & = \frac{\operatorname{dn}(u)}{\operatorname{cn}(u)} \\[8pt]
\operatorname{ds}(u) & = \frac{\operatorname{dn}(u)}{\operatorname{sn}(u)} \\[8pt]
\operatorname{cs}(u) & = \frac{\operatorname{cn}(u)}{\operatorname{sn}(u)} \\[8pt]
\operatorname{cd}(u) & = \frac{\operatorname{cn}(u)}{\operatorname{dn}(u)}
\end{align}
</math>

もっと簡単に、

:<math>\operatorname{pq}(u)=\frac{\operatorname{pr}(u)}{\operatorname{qr}(u)}</math>

と書くことができる。ここで、p、q、r は、s、c、d、n の任意の文字で、ss = cc = dd = nn = 1 と解釈する。

（この記法は、{{仮リンク|クリストフ・グーデルマン|en|Christoph Gudermann}}と[[ジェームズ・ウィットブレッド・リー・グレイシャー|グレイシャー]]によるもので、ヤコビの元々の記法にはない）

==加法定理==
ヤコビの楕円関数が持つ代数的な関係式として

:<math>\operatorname{cn}^2(u,k) + \operatorname{sn}^2(u,k) = 1</math>

:<math>\operatorname{dn}^2(u,k) + k^2 \ \operatorname{sn}^2(u,k) = 1</math>

がある。

これらの方程式で定まる2つの二次曲面の共通部分は[[楕円曲線]]であり、(cn, sn, dn)は楕円曲線のパラメタ表示を与えることが分かる。ヤコビの楕円関数の加法定理により、この楕円曲線の点は群となる。

:<math>
\begin{align}
\operatorname{cn}(x+y) & =
{\operatorname{cn}(x)\;\operatorname{cn}(y)
- \operatorname{sn}(x)\;\operatorname{sn}(y)\;\operatorname{dn}(x)\;\operatorname{dn}(y)
\over {1 - k^2 \;\operatorname{sn}^2 (x) \;\operatorname{sn}^2 (y)}}, \\[8pt]
\operatorname{sn}(x+y) & =
{\operatorname{sn}(x)\;\operatorname{cn}(y)\;\operatorname{dn}(y) +
\operatorname{sn}(y)\;\operatorname{cn}(x)\;\operatorname{dn}(x)
\over {1 - k^2 \;\operatorname{sn}^2 (x)\; \operatorname{sn}^2 (y)}}, \\[8pt]
\operatorname{dn}(x+y) & =
{\operatorname{dn}(x)\;\operatorname{dn}(y)
- k^2 \;\operatorname{sn}(x)\;\operatorname{sn}(y)\;\operatorname{cn}(x)\;\operatorname{cn}(y)
\over {1 - k^2 \;\operatorname{sn}^2 (x)\; \operatorname{sn}^2 (y)}}.
\end{align}
</math>

==関数の二乗のもつ関係式==

:<math>
-\operatorname{dn}^2(u)+m_1= -m\;\operatorname{cn}^2(u) = m\;\operatorname{sn}^2(u)-m
</math>

:<math>
-m_1\;\operatorname{nd}^2(u)+m_1= -mm_1\;\operatorname{sd}^2(u) = m\;\operatorname{cd}^2(u)-m
</math>

:<math>
m_1\;\operatorname{sc}^2(u)+m_1= m_1\;\operatorname{nc}^2(u) = \operatorname{dc}^2(u)-m
</math>

:<math>
\operatorname{cs}^2(u)+m_1=\operatorname{ds}^2(u)=\operatorname{ns}^2(u)-m
</math>

ここで、''m''&nbsp;+&nbsp;''m''<sub>1</sub>&nbsp;=&nbsp;1 and ''m''&nbsp;=&nbsp;''k''<sup>2</sup>である。

pq<sup>2</sup> &middot; qp<sup>2</sup> = 1 と pq = pr / qr を使うことで、二乗についてのさらなる関係式を得られる。ここで、p、q、rは s、c、d、n の任意の文字であり、ss = cc = dd = nn = 1 とする。

==ノームに関する展開==
ノームを<math>q=\exp(-\pi K'/K)</math>とし、引数を<math>v=\pi u /(2K)</math>と変換する。このときの関数の展開は{{仮リンク|ランベルト級数|en|Lambert series}}になる。

:<math>\operatorname{sn}(u)=\frac{2\pi}{K\sqrt{m}}
\sum_{n=0}^\infty \frac{q^{n+1/2}}{1-q^{2n+1}} \sin ((2n+1)v),</math>

:<math>\operatorname{cn}(u)=\frac{2\pi}{K\sqrt{m}}
\sum_{n=0}^\infty \frac{q^{n+1/2}}{1+q^{2n+1}} \cos ((2n+1)v),</math>

:<math>\operatorname{dn}(u)=\frac{\pi}{2K} + \frac{2\pi}{K}
\sum_{n=1}^\infty \frac{q^{n}}{1+q^{2n}} \cos (2nv).</math>

==非線形常微分方程式の解としてのヤコビの楕円関数==
ヤコビの楕円関数を微分すると、
:<math>
\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}z}\, \mathrm{sn}\,(z) = \mathrm{cn}\,(z)\, \mathrm{dn}\,(z)</math>

<!-- extra blank line between two lines of "displayed" [[TeX]] for legibility -->

:<math>\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}z}\, \mathrm{cn}\,(z) = -\mathrm{sn}\,(z)\, \mathrm{dn}\,(z)</math>

<!-- extra blank line between two lines of "displayed" [[TeX]] for legibility -->

:<math>\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}z}\, \mathrm{dn}\,(z) = - k^2 \mathrm{sn}\,(z)\, \mathrm{cn}\,(z)
</math>

となる。

上記の加法定理を使うと、''k'' が 0&nbsp;<&nbsp;''k''&nbsp;<&nbsp;1 を満たす場合は、ヤコビの楕円関数は下記の非線形[[常微分方程式]]の解となる。

* <math>\mathrm{sn}\,(x)</math> は次の微分方程式の解である
:: <math>\frac{\mathrm{d}^2 y}{\mathrm{d}x^2} + (1+k^2) y - 2 k^2 y^3 = 0</math>
: や
:: <math> \left(\frac{\mathrm{d} y}{\mathrm{d}x}\right)^2 = (1-y^2) (1-k^2 y^2)</math>

* <math>\mathrm{cn}\,(x)</math> は次の微分方程式の解である
:: <math>\frac{\mathrm{d}^2 y}{\mathrm{d}x^2} + (1-2k^2) y + 2 k^2 y^3 = 0</math>
: や
:: <math> \left(\frac{\mathrm{d} y}{\mathrm{d}x}\right)^2 = (1-y^2) (1-k^2 + k^2 y^2)</math>

* <math>\mathrm{dn}\,(x)</math> は次の微分方程式の解である
:: <math>\frac{\mathrm{d}^2 y}{\mathrm{d}x^2} - (2 - k^2) y + 2 y^3 = 0</math>
: や
:: <math> \left(\frac{\mathrm{d} y}{\mathrm{d}x}\right)^2 = (y^2 - 1) (1 - k^2 - y^2)</math>

== 逆関数 ==
ヤコビの楕円関数の逆関数は[[逆三角関数]]と同様のやり方で定義される。<math>x=\mathrm{sn}(\xi, k)</math>に対して、<math>\xi=\mathrm{arcsn}(x, k)</math>である。これらの逆関数は楕円積分で表すことができる<ref>{{dlmf|title=§22.15 Inverse Functions|first1=W. P.|last1=Reinhardt|first2=P. L.|last2=Walker|id=22.15}}</ref><ref>{{cite web|last=Ehrhardt|first=Wolfgang|title=The AMath and DAMath Special Functions: Reference Manual and Implementation Notes|url=http://www.wolfgang-ehrhardt.de/specialfunctions.pdf|accessdate=17 July 2013|page=42}}</ref>。また、冪級数でも表現できる<ref>{{cite journal|last=Carlson|first=B. C.|title=Power series for inverse Jacobian elliptic functions|journal=Mathematics of Computation|year=2008|volume=77|pages=1615–1621|url=http://www.ams.org/journals/mcom/2008-77-263/S0025-5718-07-02049-2/S0025-5718-07-02049-2.pdf|accessdate=17 July 2013|doi=10.1090/s0025-5718-07-02049-2}}</ref>。

== 地図投影法 ==
[[パース・クインカンシャル図法]]はヤコビの楕円関数を用いた[[投影法 (地図)|投影法]]である。また各国で標準的に使われている[[ガウス・クリューゲル図法]]でも、投影式をヤコビの楕円関数で表すことができる。

==脚注==
{{reflist}}

==参考文献==
* {{cite book|和書|author=戸田盛和|author-link=戸田盛和|title=楕円関数入門|year=2001|publisher=[[日本評論社]]|isbn=4-535-60128-3|ref={{sfnref|戸田|2001}}}}
* {{AS ref|16|569}}
* {{ill2|Naum Akhiezer|label=N. I. Akhiezer|en|Naum Akhiezer}}, ''Elements of the Theory of Elliptic Functions'', (1970) Moscow, translated into English as ''AMS Translations of Mathematical Monographs Volume 79'' (1990) AMS, Rhode Island ISBN 0-8218-4532-2
* [[アルフレッド・カーデュー・ディクソン|A. C. Dixon]] [https://archive.org/details/117736039  The elementary properties of the elliptic functions, with examples] (Macmillan, 1894)
* [[アルフレッド・ジョージ・グリーンヒル|A. G. Greenhill]] [https://archive.org/details/applicationselli00greerich The applications of elliptic functions] (London, New York, Macmillan, 1892)
* H. Hancock [https://archive.org/details/lecturestheorell00hancrich Lectures on the theory of elliptic functions] (New York, J. Wiley & sons, 1910)
*{{Citation | last1=Jacobi | first1=C. G. J. | title=Fundamenta nova theoriae functionum ellipticarum | url=https://archive.org/details/fundamentanovat00jacogoog | publisher=Königsberg | language=Latin | isbn=978-1-108-05200-9 | id=Reprinted by Cambridge University Press 2012 | year=1829}}
*{{dlmf|first=William P. |last=Reinhardt|first2=Peter L. |last2=Walker|id=22|title=Jacobian Elliptic Functions}}
* [[E. T. Whittaker]] and {{ill2|G. N. Watson|en|G. N. Watson}} ''{{ill2|A Course of Modern Analysis|en|A Course of Modern Analysis}}'', (1940, 1996) Cambridge University Press. ISBN 0-521-58807-3
* {{fr icon}} {{ill2|P. Appell|en|P. Appell}} and E. Lacour [https://archive.org/details/principestheorie00apperich Principes de la théorie des fonctions elliptiques et applications] (Paris, Gauthier Villars, 1897)
* {{fr icon}} G. H. Halphen [https://archive.org/details/traitedesfonctio01halprich Traité des fonctions elliptiques et de leurs applications (vol. 1)] (Paris, Gauthier-Villars, 1886–1891)
* {{fr icon}} G. H. Halphen [https://archive.org/details/traitedesfonctio02halprich Traité des fonctions elliptiques et de leurs applications (vol. 2)] (Paris, Gauthier-Villars, 1886–1891)
* {{fr icon}} G. H. Halphen [https://archive.org/details/traitedesfonctio03halprich Traité des fonctions elliptiques et de leurs applications (vol. 3)] (Paris, Gauthier-Villars, 1886–1891)
* {{fr icon}} J. Tannery and J. Molk [http://gallica.bnf.fr/notice?N=FRBNF37258233 	Eléments de la théorie des fonctions elliptiques. Tome I, Introduction. Calcul différentiel. Ire partie] (Paris : Gauthier-Villars et fils, 1893)
* {{fr icon}} J. Tannery and J. Molk  [http://gallica.bnf.fr/notice?N=FRBNF37258241 	Eléments de la théorie des fonctions elliptiques. Tome II, Calcul différentiel. IIe partie] (Paris : Gauthier-Villars et fils, 1893)
* {{fr icon}} J. Tannery and J. Molk  [http://gallica.bnf.fr/notice?N=FRBNF37258245 	Eléments de la théorie des fonctions elliptiques. Tome III, Calcul intégral. Ire partie, Théorèmes généraux. Inversion] (Paris : Gauthier-Villars et fils, 1893)
* {{fr icon}} J. Tannery and J. Molk  [http://gallica.bnf.fr/notice?N=FRBNF37258246 	Eléments de la théorie des fonctions elliptiques. Tome IV, Calcul intégral. IIe partie, Applications] (Paris : Gauthier-Villars et fils, 1893)
* {{fr icon}} C. Briot and J. C. Bouquet [http://gallica.bnf.fr/notice?N=FRBNF30162167 Théorie des fonctions elliptiques] (  Paris : Gauthier-Villars, 1875)

== 関連項目 ==
* [[楕円積分]]
* [[楕円曲線]]
* {{仮リンク|Schwarz–Christoffel mapping|en|Schwarz–Christoffel mapping}}
* {{仮リンク|Carlson symmetric form|en|Carlson symmetric form}}
* [[ヴァイエルシュトラスの楕円函数]]
* [[テータ関数|ヤコビのテータ関数]]
* {{仮リンク|ラマヌジャンのテータ関数|en|Ramanujan theta function}}

==外部リンク==
* {{SpringerEOM|title=Jacobi elliptic functions|urlname=Jacobi_elliptic_functions}}
* {{MathWorld|JacobiEllipticFunctions|Jacobi Elliptic Functions}}
* [http://www.nag-j.co.jp/naglib/examples/nag_real_jacobian_elliptic.htm ヤコビ楕円関数 - サンプルソースコード C/C++]
* [http://www.nag-j.co.jp/naglib/fl/examples/nag_real_jacobian_elliptic.htm ヤコビ楕円関数 - サンプルソースコード Fortran]

{{DEFAULTSORT:やこひのたえんかんすう}}
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