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'''ユレダス'''({{en|UrEDAS}})とは、国鉄鉄道技術研究所(後の財団法人[[鉄道総合技術研究所]])が開発した[[地震警報システム]]である。名称は、早期地震検知警報システム(地震動早期検知警報システム、{{lang-en|'''Ur'''gent '''E'''arthquake '''D'''etection and '''A'''larm '''S'''ystem}})の頭文字をとったもの。[[地震]]の際に即座に警報を発して<!--運行中の列車への-->被害を最小限に抑えるための安全管理システムである。運用対象には[[東海道新幹線]]を初めとする日本の[[新幹線]]があった。 == 略歴 == *1983年 - プロトタイプが完成。翌年、試験観測が開始<ref>{{Cite journal|和書|author=中村豊 |title=研究展望:総合地震防災システムの研究 |date=1996 |journal=土木学会論文集 |volume=531 |naid=10004540884 |pages=1-33 |url=http://www.jsce.or.jp/library/eq10/proc/00037/531-121643.pdf |ref=harv}}</ref>。 *1989年頃 - [[東海道新幹線]]で設置が始まる<ref name="gijutsushi">[http://www.engineer.or.jp/cmty/bousai/BousaiQandA_Ver1_02_20090909A/chap_7/7.12.5.pdf (社)日本技術士会/防災支援委員会 防災Q&A]</ref>。 *1992年3月14日 - 東海道新幹線で「[[のぞみ (列車)|のぞみ]]」の運行開始から全面稼働<ref name="gijutsushi"/>。 *1995年4月28日 - [[山陽新幹線]]の新大阪 - 西明石間で稼働開始<ref name="交通2001">{{Cite news |title=JR7社14年のあゆみ |newspaper=[[交通新聞]] |publisher=交通新聞社 |date=2001-04-02 |page=9 }}</ref>。 *1996年11月28日 - 山陽新幹線全区間で全面稼働<ref name="交通2001"/><ref>[http://www.sdr.co.jp/papers/uredas2.pdf 世界最初の実用P 波警報システム「ユレダス」の現状と将来]</ref>。 *1997年 **システムアンドデータリサーチが'''コンパクトユレダス'''を開発、JR東日本で導入。翌年、盛岡以南の東北・上越・長野新幹線で実用化<ref>[http://www.sdr.co.jp/papers/20070716_chuetsu-oki-eq.html 2007年新潟県中越沖地震に関連して考えたこと]</ref><ref name="gijutsushi"/>。 **在来線への情報伝達を開始(在来線地震情報伝達システム)<ref name="gijutsushi"/>。 *2005年 **3月 - システムアンドデータリサーチが'''FREQL(フレックル)'''<!-- <ref>Fast Recommendation Earthquakes Quick Lean ?</ref> -->を開発<ref>[http://www.sdr.co.jp/041023niigata/niigata2.html 2004年新潟県中越地震について(2)]</ref>。 **8月 - 東海道新幹線で、JR東海がユレダスを改良した「テラス(TERRA-S<ref>'''T'''okaido-shinkansen '''E'''a'''R'''thquake '''R'''apid '''A'''lert '''S'''ystem.</ref>、東海道新幹線早期地震警報システム)」が導入される<ref>[http://eco.jr-central.co.jp/aims/index2_2.html 安全について(新幹線)|安全性・利便性・快適性との両立をめざして|JR東海環境サイト]</ref><ref>[http://www.kogai-net.com/sokai/sokai35/02nagoyashinkansen.html 公害弁連第35回総会議案書]</ref><ref>[http://scienceportal.jp/news/daily/0809/0809031.html 2008年9月3日「JR東日本在来線にも早期地震警報システム導入」 サイエンスポータル編集ニュース 科学技術 全て伝えます サイエンスポータル / SciencePortal]</ref>。 *2006年頃から - 新幹線のユレダス・コンパクトユレダスが、気象庁主導で鉄道総合技術研究所と共同開発した[[早期地震警報システム]](EQAS)に置き換えられた。2007年3月までには、ユレダスを含む新幹線全線区の地震計は、鉄道総合技術研究所が開発した新地震計に更新された<ref name="gijutsushi"/><ref>{{Cite journal|和書 |author=佐藤新二 |author2=宮武洋之 |author3=貝瀬弘樹 |author4=北野陽堂 |title=九州新幹線地震防災システムの構築 |journal=土木学会年次学術講演会講演概要集第1部 |volume=59 |date=2004-09 | url=http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2004/59-1/59-1-0743.pdf }}</ref><ref>{{Cite journal|和書|author=芦谷公稔 |author2=佐藤新二 |author3=岩田直泰 |author4=是永将宏 |author5=中村洋光 |title=鉄道の地震警報システムにおける緊急地震速報の活用 |date=2007-10-01 |publisher=物理探査学会 |journal=物理探査 |volume=60 |number=5 |naid=10020129022 |pages=387-397 |doi=10.3124/segj.60.387 |ref=harv}}</ref>。 *現在は東京メトロでも使用されている。 == ユレダスの役割 == 鉄道関係では、運行中の列車を止める、減速させることで、被害を最小限に抑えることを目的としている。遠地の大地震の場合はこのタイムラグが大きいため、地震被害軽減に大きな効果が期待されている。 当初のユレダスは遠地の大地震を対象にしており、P波検知から警報までに3秒程度要していた。[[阪神・淡路大震災]]を契機に、システムアンドデータリサーチによって'''コンパクトユレダス'''が開発され、P波検知後1秒での警報が可能となった。2003年の[[宮城県沖地震 (2003年)|三陸南地震]]や2004年の[[新潟県中越地震]]では、コンパクトユレダスがいち早く警報を発するとともに、最大加速度などの情報を発信している。 東京メトロのコンパクトユレダスは、同様の動作原理に基づく後継機種である'''FREQL(フレックル)'''に置き換えられている。フレックルは、最短0.1秒で1波警報を発信することができるオンサイトの迅速な警報装置として、全国の各種工場など産業施設の地震時の安全目的に利用されている。また、フレックルの可搬型はハイパーレスキューなどの災害救援活動を支援する機器として利用されている<ref name="gijutsushi"/>。 == ユレダスの原理 == ユレダスは一つの地点にて観測された[[地震波]]の[[初期微動]]([[地震波#P波_(P-wave)|P波]])の振動波形だけで、地震の[[震央]]位置(震源距離、深さと震央方位から推定する)・[[マグニチュード]]を、瞬時(ほぼリアルタイム)で推定し、必要と判断される地域に[[地震波|S波]]が来る前に警報を発信するシステムである。なお初動を感知できなくとも、地震動があらかじめ定めた規準値を超過した場合には、瞬時に警報を発信する。 ユレダスでは単独の3成分地震計とそれに連動した独立した演算器(コンピューター)により、以下の項目をリアルタイム処理する。ユレダスの地震波形処理の基本的な考え方は、リアルタイム処理にあり、波形を貯め込んでモデル関数にフィッティングするなどの間歇的な処理方法はとっていない。波形をデジタルサンプリングしてから次のサンプリングまでの間に、PS識別処理、卓越周期の推定、震央方位の推定、などすべての処理は終了している。 ; P波の識別 : 地震動を検知したとき、地震動の特徴を利用して、それがP波であるか、S波であるかを識別する。 ; マグニチュード<math>M</math> : P波初動の卓越周期Tより次式でマグニチュードを求める。当初、断層破壊時間を考慮して<math>M6</math>以上を対象に、初動周期を確定するのに3秒待ったが、断層破壊時間よりかなり早く卓越周期が安定することを見出した。現在は<math>M7</math>を超す程度までは1秒以下で十分確定できることがわかっている。 : <math>M = a*logT + b</math> ; 震央方位 : 地震動の3方向成分より地震波動の到来する方向を「主成分分析法」によりリアルタイムで推定する。断層の進展状況をリアルタイムに追跡することも可能である。地震波動の地表への入射角もリアルタイム監視しているので、統計的に深さを推定することもできる。 :<math>x(t)=( NS(t), EW(t), UD(t) ) ^t </math>により定義される共有散行列<math>C=E[x(t) x^t (t)]</math> :すなわち地盤振動の3次元的オービットの長軸方向が震源の方位に相当する。 ; 震源距離ほか : 通常のマグニチュード推定では、マグニチュードは震源距離または震央距離と初動震幅から指定される。そこで、ユレダスでは、既に推定したマグニチュードと初動震幅から、震源距離を推定し、これと入射角より、震央距離と深さを推定している。 ; 警報範囲の判断 : 「 <math>M - \Delta\quad</math> 図」により推定する。 : <math>M - \Delta\quad</math> 図とは、既往の地震被害地点と震央近くの無被害地点のデータを集積し、これらを <math>(M,\Delta)</math> 座標系に落として、被害が発生する可能性が高い領域を <math>M</math> に対して明確にしたものである。 なお震源が浅い[[地震|直下型地震]]の場合には、P波とS波の到達がほぼ同時となるため、このシステムでは大きな効果は期待しにくいが、例えば[[上越新幹線脱線事故|上越新幹線とき325号脱線事故]]の例のように、明らかに早期警報が大惨事を防止した例がある。普通、地震の深さが10km程度以上あること(中越地震では13km)を考えると、P波検知後1秒で警報が出せるコンパクトユレダスは、S波到来前に警報を出すことができる。さらに1,2秒経ってから本格的な地震動となるのが普通なので、数秒であるが効果は期待できる。2004年新潟県中越地震でも、とき325号への警報は大きく揺れ出す2秒~3秒前であったものと推測される。2秒~3秒で新幹線は100m~200m走行する。つまり被災したかも知れないところをそれだけ走行せずにすむ効果と、付近一帯の列車も止めるので、対向列車が突入する危険性を減じる効果は期待できる。 == 特許 == * [[発明]]の名称:地震動早期検知システム ** [[登録番号]]:特1291223 * 発明の名称:地震動早期検知システム ** 登録番号:特1291229 * 発明の名称:地震動早期検知システム ** 登録番号:特1285667 * 発明の名称:震央方位推定装置 ** 登録番号:特1610592 * 発明の名称:S波検出装置 ** 登録番号:特1636955 * 発明の名称:卓越周波数算出装置 ** 登録番号:特1610622 == 検知点(JR) == [[東日本旅客鉄道|JR東日本]]は100箇所以上にも及ぶため、ここでは記載を省略する。 [[東海地震]]及び[[東南海地震]]に備え、[[東海旅客鉄道|JR東海]]の検知点は関東から近畿にかけての14か所に置かれている。 * [[茨城県]] 西茨城 * [[千葉県]] 富津 * [[神奈川県]] 丹沢 * [[静岡県]] 静岡・御前崎・下田 * [[愛知県]] 奥三河 * [[岐阜県]] 根尾・北恵那 * [[京都府]] 舞鶴 * [[三重県]] 伊勢・御在所 * [[大阪府]] 金剛山 * [[和歌山県]] 新宮 [[西日本旅客鉄道|JR西日本]]の検知点は2004年現在5か所。 * 高知 * [[宮崎県]] 延岡 * 鳥取 * [[島根県]] 浜田 * 福岡<!-- ここは個人的意見のようなので保留 中央構造線の和歌山から四国にかけては、東端の金剛山にのみ観測点がある。[[中央構造線]]には[[マグニチュード]]8クラスの巨大地震が起きるだけのエネルギーが溜まっているとする地震学者がいる。 --> == 脚注 == {{Reflist}} == 参考文献 == * 菊池正幸 『リアルタイム地震学』 [[東京大学出版会]]、2003年、ISBN 4-13-060743-X。 == 関連項目 == * [[地震]] * [[地震波]] * [[断層]] <!--* [[列車集中制御装置]]も?--> * [[緊急地震速報]] == 外部リンク == * [https://www.sdr.co.jp/index.html 株式会社システムアンドデータリサーチ](ユレダス・コンパクトユレダス・FREQLのメーカー) * [http://www.bousaihaku.com/cgi-bin/hp/index2.cgi?ac1=B101&ac2=&ac3=4524&Page=hpd2_view 消防防災博物館 ユレダス-1 システム概要]{{リンク切れ|date=2022年2月}} * [http://www.zisin.jp/modules/pico/index.php?content_id=1652 公益社団法人日本地震学会 - 列車を地震から守る!]{{リンク切れ|date=2022年2月}} <!-- * [http://www.rtri.or.jp/rd/openpublic/rd46/rd4640/erthq_index.html 鉄道総研の地震防災研究室Webサイト]--> <!-- * [http://www.jr-central.co.jp/info.nsf/CorpInfoPrv/7224EB132A722AD84925681F001930FF 防災対策]([http://saiyo.jr-central.co.jp/index.php JR東海])--> {{Earthquake}} {{DEFAULTSORT:ゆれたす}} [[Category:地震学]] [[Category:災害情報]] [[Category:日本の防災]] [[Category:情報システム]] [[Category:新幹線]] {{Disaster-stub}}
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