ヨウ化銅(I)のソースを表示

{{Infobox_無機化合物
|name=ヨウ化銅(I)
|画像=[[Image:Copper(I) iodide.jpg|200px|ヨウ化銅(I)]]
|IUPAC名=ヨウ化銅(I)
|別名=ヨウ化第一銅
|組成式=CuI
|式量=190.45
|形状=白色固体（市販試薬は不純物により薄い褐色となることも）
|結晶構造=
|CAS登録番号=[7681-65-4]
|密度=5.62
|相=固体
|水への溶解度=0.00042
|温度=25
|融点=605
|融点注=
|沸点=1290
|沸点注=
|出典=
}}
'''ヨウ化銅(I)'''（ヨウかどう(I)、Copper(I) iodide）は、[[化学式]] CuI で表される[[無機化合物]]である。[[有機合成]]試薬や[[人工降雨]]剤など幅広い分野で用いられている。ほぼ白色の粉末で水には難溶であるが、ヨウ化物塩の濃い水溶液や[[アセトニトリル]]などには錯体を作りながら溶ける。

天然には、希少鉱物の{{仮リンク|マーシュ石|en|Marshite}}として産出する。

== 合成 ==
実験室レベルで合成するには、[[ヨウ化ナトリウム]]または[[ヨウ化カリウム]]の水溶液に、[[硫酸銅(II)]]など[[水溶性]]の銅イオンを加えるだけでよい。
: <chem>Cu^{2+}\ + 2I^- -> CuI2</chem>

生成したCuI<sub>2</sub>はただちにヨウ化銅(I)とヨウ素に分解する。<ref>Holleman, A. F.; Wiberg, E. "Inorganic Chemistry" Academic Press: San Diego, 2001. ISBN 0-12-352651-5.</ref>
: <chem>2CuI2 -> 2CuI\ + I2</chem>

また、[[ヨウ化水素酸]]中でヨウ素と銅を加熱することでも生成する。

ヨウ化銅(I)は極めて水に溶けにくいが、NaIやKI存在下では直線型の[CuI<sub>2</sub>]<sup>−</sup>イオンとなって溶解する。この溶液を水で薄めるとヨウ化銅(I)が析出する。この精製方法により、無色で純度の高いヨウ化銅(I)が得られる<ref>Kauffman, G. B.; Fang, L. Y. "Purification of Copper(I) Iodide" ''Inorganic Syntheses'', 1983, volume 22, pages 101-103. ISBN 0-471-88887-7.</ref>。

== 構造 ==
ヨウ化銅(I)は様々な構造をとる。390℃以下では閃亜鉛鉱型構造(γ-CuI)、390～440℃ではウルツ鉱型構造(β-CuI)、440℃以上では塩化ナトリウム型構造(α-CuI)となる。

<div class="center">
{|align="center"  class="wikitable"
|[[Image:Copper(I)-iodide-unit-cell-3D-balls.png|150px|center]]||[[Image:Copper(I)-iodide-(beta)-unit-cell-3D-balls.png|150px|center]]||[[Image:Copper(I)-iodide-(alpha)-unit-cell-3D-balls.png|150px|center]]
|-
|ɣ-CuI||β-CuI||α-CuI
|}
</div>

== 利用 ==
=== 有機合成化学における利用 ===
ヨウ化銅(I)は触媒、ヨウ素化試薬として有機合成化学で用いられる。[[薗頭カップリング]]、[[ウルマン反応]]などの[[クロスカップリング反応]]において触媒、あるいは助触媒とされる。また、ヨウ化ナトリウムとともに、臭化アリールからヨウ化アリールへの変換に用いられる<ref>Klapars, A.; Buchwald, S. L. ''J. Am. Chem. Soc.'' '''2002''', ''124'', 14844−14845. DOI: [https://doi.org/10.1021/ja028865v 10.1021/ja028865v]</ref>。ヨウ化アリールは[[薗頭カップリング]]、[[ヘック反応]]、[[鈴木・宮浦カップリング]]、[[右田・小杉・スティルカップリング]]、[[ウルマン反応]]などの各種カップリング反応において臭化アリールより高い反応性を示すため、この変換は重要である。

[[東京大学]]の[[福山透]]らは、ヨウ化銅(I)と[[酢酸セシウム]]を用いた[[芳香族アミノ化反応]]を開発し、[[全合成]]に用いている<ref>Okano, K.; Tokuyama, H.; Fukuyama, T. ''Chem. Asian J. '' '''2007''', ''3'', 296 - 309. DOI: [https://doi.org/10.1002/asia.200700282 10.1002/asia.200700282]</ref>。

[[チオシアン酸イミダゾリウム]]を添加し結晶を微細化したヨウ化銅(I)は、固体型[[色素増感太陽電池]]への応用が研究されている<ref>{{Cite book|和書
|title       = 光と界面がおりなす新しい化学の世界 -光触媒と光エネルギー変換
|accessdate  = 2011-04-19
|edition     = 初版
|date        = 2008-01-30
|publisher   = クバプロ
|isbn        = 978-4-87805-090-9
|pages       = 173
|chapter     = 色素増感太陽電池を全固体にする（昆野昭則）
}}</ref>。

=== その他の利用 ===
人工降雨剤として、[[ヨウ化銀]]などと同様に用いられる。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
<references />


{{ヨウ化物}}
{{銅の化合物}}

{{DEFAULTSORT:ようかとう}}
[[Category:銅(I)の化合物]]
[[Category:ヨウ化物]]