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'''ルイスの関係'''とは[[空調機器]]等で[[湿り空気]]の[[熱交換]]を考察する際によく用いられる仮定であり、[[熱伝達率]]{{math|''h''}} と[[物質伝達率]]{{math|''h''<sub>D</sub>}} の間に成り立つ次の関係のことである<ref>{{cite|和書 |author=瀬下裕|author2=藤井雅雄 |title=コンパクト熱交換器 |edition= |publisher=日刊工業新聞社 |year=1992 |isbn=4-526-03165-8 |page=63-67}}</ref>。 :<math>\frac{h}{h_\mathrm D}=c_\mathrm{p}</math> ここで{{math|''c''<sub>p</sub>}} は湿り空気の定圧比熱である。この関係式は、物質の相変化が流れ場に与える影響を無視できる時に実験的に成り立つものである。 ルイスの関係が成り立っていれば、熱交換器での熱交換量は[[エンタルピー]]差に比例し、実用設計において非常に便利な取り扱いができる。 ==導出== 熱伝達と物質伝達にはアナロジーが存在する。すなわち、温度と物質濃度の変化は同様の方程式によって記述され、熱伝達に関する公式は、理論式、実験式を問わずそのまま物質伝達に関する公式に書きかえることができる。たとえば、熱伝達に関して :<math>Nu=C\cdot Re^a\cdot Pr^b</math> という関係式が成り立っている場合、これを{{math|''Nu''→''Sh''}}、{{math|''Pr''→''Sc''}} と置き換えれば、同一の流れ場での物質伝達について、 :<math>Sh=C\cdot Re^a\cdot Sc^b</math> が成り立つ。ここで、 :<math>Nu:=\frac{hL}{k}</math> :[[ヌセルト数]] ::{{math|''h''}} :熱伝達率 ::{{math|''L''}} :代表長さ ::{{math|''k''}} :空気の熱伝導率 :<math>Sh:=\frac{h_\mathrm{D} L}{D \rho}</math> :[[シャーウッド数]] ::{{math|''h''<sub>D</sub>}} :絶対湿度差基準の物質伝達率 [kg/(m<sup>2</sup>s)] ::{{math|''D''}} :空気中の水蒸気の物質[[拡散係数]] ::{{math|''ρ''}} :湿り空気の密度 :{{math|''Re''}} :[[レイノルズ数]] :{{math|''Pr''}} :[[プラントル数]] :{{math|''Sc''}} :[[シュミット数]] である。 この2式の比をとることにより、 :<math>\frac{Nu}{Sh}=\left(\frac{Pr}{Sc}\right)^{b}=Le^{-b}</math> を得る。ここで{{math|''Le''}} は[[ルイス数]]であり、{{math|''Le''{{=}}1}} と仮定することにより :<math>\frac{h}{h_\mathrm{D}}=\frac{k}{D \rho}</math> が得られる。 さらにこの式を[[温度拡散率]]{{math|''α''}} を用いて書き換え、{{math|''α''/''D'' {{=}} ''Le'' {{=}} 1}}であることを用いると、 :<math>\frac{h}{h_\mathrm{D}}=c_\mathrm{p}</math> が得られる。 == 応用 == [[湿球温度#湿球温度計の読み取り値|湿球温度計]]を用いた湿球温度の測定原理はルイスの関係を用いて考察される。測定系を[[モデル (自然科学)|モデル化]]し、球形の液滴が気温{{math|''T''<sub>∞</sub>}}の気流の中に存在しているとし、このとき液滴の温度{{math|''T''<sub>w</sub>}}がいくらになるかを考える<ref>{{cite|和書 |editor= |author=相原利雄 |title=エスプレッソ伝熱工学 |edition= |publisher=裳華房 |year=2009 |isbn=978-4-7853-6023-8 |page=239}}</ref>。気流速度があまり速くなく、温度差{{math|''T''<sub>∞</sub> - ''T''<sub>w</sub> > 0}}もあまり大きくないと仮定すれば液滴の蒸発は激しくなく、ルイスの関係が成り立つと考えてよい。液滴の[[蒸発潜熱]]を{{math|''L''}}、液滴が蒸発する質量速度を<math>\dot{m}</math>とすると、気流から液滴に単位時間あたりに与えられる熱量<math>\dot{Q}</math>は :<math>\dot{Q}=L\dot{m}</math> である。一方、<math>\dot{Q},\dot{m}</math>は :<math>\begin{align} \dot{Q} &= h \pi d^2(T_\infty-T_w)\\ \dot{m} &= h_D \pi d^2(w_w-w_\infty) \end{align}</math> で与えられる。ここで{{math|''d''}}は液滴の直径、{{math|''w''<sub>w</sub>, ''w''<sub>∞</sub>}}はそれぞれ液滴表面と主流中の水蒸気の[[質量分率]]である。 ルイスの関係が成り立っていれば{{math|''h''/''h''<sub>D</sub> {{=}} ''c''<sub>p</sub>}}であるから、 :<math>T_w = T_\infty - \frac{L}{c_p}(w_w-w_\infty)</math> となり、液滴温度{{math|''T''<sub>w</sub>}}は気流速度によらずに定まることが分かる。この液滴温度が湿球温度であり、また水蒸気質量分率と[[水蒸気圧]]と一定の関係があるため、この関係式は湿球温度と水蒸気圧との関係とみなすことができる<ref>実際の測定では湿球温度と湿度の関係はスプルンクの式を用いて計算される。[[乾湿計]]を参照。</ref>。 もう少し具体的に述べると、気流のレイノルズ数が{{math|''Re<sub>d</sub>'' {{=}} 0.6 - 2400}}の範囲では :<math>\begin{align} h&=\frac{k}{d}(2+0.57 Re_d^{1/2} Pr^{1/3})\\ h_D&=\frac{D\rho}{d}(2+0.57 Re_d^{1/2} Sc^{1/3}) \end{align}</math> である。ルイスの関係が成り立っていれば{{math|''Pr'' {{=}} ''Sc''}}、かつ{{math|''k''/(ρ ''c''<sub>p</sub> ''D'') {{=}} 1}}であるから、{{math|''h''/''h''<sub>D</sub> {{=}} ''c''<sub>p</sub>}}であることが確認できる。 ==出典== {{Reflist}} {{デフォルトソート:るいすのかんけい}} [[Category:熱交換器]]
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