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{{No footnotes|date=2018-01-23}} [[数学]]における'''レゾルベント'''({{lang-en-short|''resolvent''}}, '''解素''')は、線型作用素(あるいは行列)の[[スペクトル (関数解析学)|スペクトル]]の補集合([[レゾルベント集合]])を定義域とする[[解析函数]]である。 レゾルベントの解析的構造から線型作用素のスペクトル的な性質が調べられる。また、レゾルベントを用いれば、[[ヒルベルト空間]]やもっと一般の空間上の作用素のスペクトルの研究に[[複素解析学]]の概念を定式化して持ち込むことができる。レゾルベントは'''解核'''とも呼ばれ、(通常は[[リウヴィル-ノイマン級数]]として定義される)積分核として、非斉次[[積分方程式|フレドホルム積分方程式]]を解くのにも使われる。 [[イヴァール・フレドホルム]]は ''[[Acta Mathematica]]'' に収録された論文 {{harv|Fredholm|1903}} において、初めてレゾルベント作用素を大々的に用いた。これは、現代的な[[作用素論]]が構築される基となった歴史的な論文である。レゾルベントの名称は、[[ダフィット・ヒルベルト]]による。 == 定義 == 与えられた線型作用素 ''A'' の'''レゾルベント'''は ''A'' のレゾルベント集合 ρ(''A'')(''A'' − ''zI'' が可逆となる集合)上で定義される写像 :<math> R(z, A):= (A-zI)^{-1}</math> である。文献によっては ''R''(''z'', ''A'') := (''zI'' − ''A'')<sup>−1</sup> を定義とするものもあるが、さほど違いは生じない。 == 性質 == 線型作用素 ''A'' のレゾルベントは、''r'' を ''A'' の[[スペクトル半径]]とすれば、領域 {''z'' ∈ '''C''' : |''z''| > ''r''} 上の[[解析函数]]であり、[[ノイマン級数]] :<math>R(z,A) = -\sum_{n = 0}^{\infty} \frac{A^n}{z^{n+1}}</math> として表される。レゾルベントは不安定作用素のスペクトル分解(たとえば [[フランツ・レリック|レリック]]-[[加藤敏夫|加藤]]分解および[[ジョン・ウィリアム・ストラット (第3代レイリー男爵)|ストラット]]-[[エルヴィン・シュレーディンガー|シュレーディンガー]]分解)を記述するのに用いることができる。たとえば、λ を ''A'' の[[孤立点|孤立]]した[[固有値]](つまり、複素平面上の適当な[[単純閉曲線]] ''C''<sub>λ</sub> が存在して、λ を ''A'' のほかのスペクトルから分離することができる)ならば[[留数]] :<math> \frac{-1}{2\pi i} \oint_{C_\lambda} (A- z I)^{-1}\, dz </math> は ''A'' の λ-[[固有空間]]の上への[[射影作用素]]を定める。 [[ヒレ-吉田の定理]]はレゾルベントを ''A'' の生成する変換の[[一径数群]]上の積分と関連付けるものである。これはたとえば、''A'' が[[エルミート作用素]]ならば ''U''(''t'') = exp(''itA'') はユニタリ作用素からなる一径数群で、''A'' のレゾルベントは積分 :<math>R(z,A)= \int_0^\infty e^{-zt}U(t)\, dt</math> として表される。 == レゾルベント方程式 == 第一および第二'''レゾルベント方程式'''(あるいは'''レゾルベント恒等式''')は計算に有用である。''z'', ''w'' を線型作用素 ''A'' の[[レゾルベント集合]] ρ(''A'') の元とすると、(''z'' − ''w'')''I'' = (''zI'' − ''A'') − (''wI'' − ''A'') の逆元を取ることにより、第一レゾルベント方程式 :<math>R(w, A) - R(z, A) = (z - w) R(z, A) R(w, A) = (z - w) R(w, A) R(z, A)</math> が得られる{{harv|Dunford|Schwartz|1988|loc=p.567 Lemma 6}}。また ''z'' を ρ(''A'') ∩ ρ(''B'') の元として、''A'' − ''B'' = (''zI'' − ''B'') − (''zI'' − ''A'') の逆元を考えることにより、第二レゾルベント方程式 :<math>R(z, A) - R(z, B) = R(z, A) (A - B) R(z, B)</math> を得る。 == 関連項目 == * [[レゾルベント集合]] * {{仮リンク|一径数ユニタリ群に関するストーンの定理|en|Stone's theorem on one-parameter unitary groups}} * [[正則汎函数計算]] * [[スペクトル理論]] == 参考文献 == <references/> * {{Citation|last1=Fredholm |first1 =Ivar |last2= | first2= |coauthors= |year=1903 |title= Sur une classe d'equations fonctionnelles |journal=Acta Mathematica |volume=27|issue=1 |pages=365-390 |doi =10.1007/BF02421317 |url = |format = |accessdate = }} * {{Citation|last1=Dunford |first1 =Nelson|last2=Schwartz |first2=Jacob T. |coauthors= |year=1988 |title= Linear Operators Part I General Theory ||publisher=Wiley-Interscience |isbn=0-471-60848-3 |volume= |issue= |pages= |doi = |url = |format = |accessdate = }} * {{Citation|last1=Dunford |first1 =Nelson|last2=Schwartz |first2=Jacob T. |coauthors= |year=1988 |title= Linear Operators Part II Spectral Theory, Self Adjoint Operators in Hilbert Space |publisher=Wiley-Interscience |isbn=0-471-60847-5 |volume= |issue= |pages= |doi = |url = |format = |accessdate = }} * {{Citation|last1=Dunford |first1 =Nelson|last2=Schwartz |first2=Jacob T. |coauthors= |year=1988 |title= Linear Operators Part III Spectral Operators |publisher=Wiley-Interscience |isbn= 0-471-60846-7 |volume= |issue= |pages= |doi = |url = |format = |accessdate = }} * {{Citation | last = Kato | first = Tosio | title = Perturbation Theory for Linear Operators | edition = 2nd | publisher = Spinger-Verlag | location = New York, NY | year = 1980 | isbn = 0-387-07558-5 }}. {{DEFAULTSORT:れそるへんと}} [[Category:関数解析学]] [[Category:フレドホルム理論]] [[Category:数学に関する記事]] [[Category:形式主義]]
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