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[[File:Sigma invader RCS.png|thumb|300px|[[A-26 (航空機)|A-26]][[攻撃機]]の各方向から測定した反射信号強度 (例; 単位はdBsm)。]] '''レーダー反射断面積'''(レーダーはんしゃだんめんせき、{{lang-en|radar cross-section, '''RCS'''}})は、[[レーダー]]から[[電波]]の照射を受けたときに[[アンテナ]]の方向に電波を反射させる能力の尺度。幾何学的な断面積、反射率、指向性の関数であり<ref name="EW102">{{Cite book|和書|author=デビッド・アダミー|year=2014|title=電子戦の技術 拡充編|chapter=第3章 レーダ特性|pages=35-84|publisher=[[東京電機大学]]出版局|isbn=978-4501330309}}</ref>、その反射波と等しい強度の電波を反射させることができる等方向性反射体の面積(完全導体で作られた[[球]]の断面積)で表される<ref name="吉田1996-2">{{Cite book|和書|author=吉田孝|year=1996|title=改訂 レーダ技術|chapter=第2章 レーダ方程式|publisher=[[電子情報通信学会]]|isbn=978-4885521393|pages=21-60}}</ref>。 == 定義 == レーダーからの電波が目標に入射すると、これによって散乱体に電流が誘起され、電流からの再放射が散乱界を形成する。RCSは、この散乱界を用いて下記のように定義されている<ref name="防衛用IT">{{Cite book|和書|author=防衛技術ジャーナル編集部|year=2006|title=防衛用ITのすべて (防衛技術選書―兵器と防衛技術シリーズ)|chapter=第9章 電波ステルス|pages=140-149|publisher=[[防衛技術協会]]|isbn=978-4990029814}}</ref>。 :<math>\sigma = \lim_{R \to \infty}4\pi R^2\frac{|E_r|^2}{|E_i|^2}</math> ::{{mvar|σ}}:RCS値 ::{{math|{{!}}''E{{sub|r}}''{{!}}}}:散乱電界強度 ::{{math|{{!}}''E{{sub|i}}''{{!}}}}:入射電界強度 ::{{mvar|R}}:目標とレーダーとの距離 レーダー目標の有効反射面積は、一義的には決まらない変動量であるため、平均的な値を扱うことが一般的である<ref name="吉田1996-2"/>。定義上、RCSは面積の次元を有するが、これらの変動について述べる場合には、上図のように[[デシベル]]表示で表すこともある。この場合は、1 m{{sup|2}}を0 dBsm(DeciBel squared meter、デシベル・スクエアメーター)とするため、例えば2 m{{sup|2}}のRCSは3 dBsmとなる<ref name="防衛用IT"/>。 またRCSは周波数の影響も受ける。例えば金属球のRCSを考えると、周波数が低い領域(Rayleigh領域)では単調に増加し、中間領域(共鳴領域)では、目標の大きさが2分の1波長の整数倍程度の時に最大値を持つよう振動する。そして高周波領域(幾何光学的領域)では幾何学的な断面積に漸近していく<ref name="防衛用IT"/>。なお、一般的なレーダーで用いられる領域においては、例えばRCS低減策を講じていない航空機については、波長とは無関係に下表のような目安が知られている<ref name="吉田1996-2"/>。 {| class="wikitable" style="text-align:center" !目標物||平均的有効反射面積の例 (m{{sup|2}}) |- |[[昆虫]]||0.001<ref name="globalsecurity">{{Cite web|author=[[グローバルセキュリティー]]|url=http://www.globalsecurity.org/military/world/stealth-aircraft-rcs.htm|title=Radar Cross Section (RCS)|language=英語|accessdate=2014/09/19}}</ref> |- |[[鳥]]||0.01<ref name="globalsecurity"/> |- |[[トマホーク (ミサイル)|トマホーク]]||0.5<ref name="globalsecurity"/> |- |小型[[戦闘機]]||2 |- |大型戦闘機||6 |- |中型[[爆撃機]]・[[旅客機]]||20 |- |大型爆撃機・旅客機||40 |- |[[ボーイング747|ジャンボジェット]]||100 |} ただし基本設計が同一でも、[[電波吸収体]]の塗布や電磁波透過性素材の採用などの漸進的な施策によるRCS低減は可能であり、例えば[[F-16 (戦闘機)|F-16]]では、初期型のRCSが5 m{{sup|2}}とされているのに対し、F-16Cでは1.2 m{{sup|2}}とされている<ref name="globalsecurity"/>。またRCS低減策も世代を追う毎に進化しており、最初の実用[[ステルス機]]である[[F-117 (航空機)|F-117攻撃機]]のRCSは0.025 m{{sup|2}}とされている<ref name="防衛用IT"/>のに対し、[[F-22 (戦闘機)|F-22]]や[[B-2 (航空機)|B-2]]では0.0001 m{{sup|2}}とされている<ref name="globalsecurity"/>。 一方、艦船については、[[アメリカ海軍]]技術研究所{{Enlink|United States Naval Research Laboratory|NRL}}が下記のようなRCSの概算式を発表しているが、こちらも同様にRCS低減策を考慮していないため、ステルス性に関して補正を行う必要がある<ref>{{Cite journal|和書|author=小滝國雄|year=1995|month=6|title=ステルス艦はペイするか (ステルス艦の現況)|journal=[[世界の艦船]]|issue=497|pages=82-85|publisher=[[海人社]]|naid=}}</ref>。なお[[海上自衛隊]]が昭和55年(1980年)度からの[[Mk 36 SRBOC]]導入にあたり、[[チャフ]]の効果を発揮するために[[自衛艦]]のRCS実測データを整理した際に、NRLの経験式との関係も検討されたが、この式による推測値は実測データよりもかなり大きい結果であった<ref>{{Citation|和書|last=桑原|first=勲|year=2014|chapter=Mk36 チャフロケットシステムの用法研究|pages=78-83|title=第5巻 船務・航海|volume-title=第2分冊|series=海上自衛隊 苦心の足跡|publisher=水交会}}</ref>。 :<math>\sigma = 52f^{0.5}D^{1.5}</math> ::{{mvar|σ}}:RCS値 ::{{mvar|f}}:レーダー周波数 ([[メガヘルツ]]) ::{{mvar|D}}:満載排水量 (キロトン) == 探知距離との関係 == 次に、[[レーダー#パルスレーダー|パルスレーダー]]に対する[[レーダー#レーダー方程式|レーダー方程式]]を示す<ref name="EW102"/>。 :<math>P_r = \frac{P_tG^2\lambda^2\sigma}{(4\pi)^3R^4}</math> ::{{mvar|P{{sub|r}}}}:レーダーの受信電力 ::{{mvar|P{{sub|t}}}}:レーダーの尖頭電力 ::{{mvar|G}}:アンテナ利得 ::{{mvar|λ}}:波長 ::{{mvar|R}}:目標とレーダーとの距離 レーダーの最低受信電力 {{mvar|P{{sub|r}}}} が判れば、RCSがσである目標からの最大探知距離 {{math|''R''<sub>max</sub>}} は次の式で計算できる。 :<math>R_{\mathrm{max}} = \frac{P_t^{1/4} G^{1/2} \lambda^{1/2} \sigma^{1/4}}{P_r^{1/4} (4\pi)^{3/4}}</math> 上記の式より、探知距離はRCSの4乗根に比例する。例えば、[[F-117 (航空機)|F-117攻撃機]]のRCSは上記の通り0.025 m{{sup|2}}、これに対して[[B-52 (航空機)|B-52戦略爆撃機]]のRCSは100 m{{sup|2}}とされているが、この場合、(100/0.025)<sup>1/4</sup> = 8倍のレーダー探知距離の差が生じる<ref name="防衛用IT"/>。また、探知される距離を2分の1にしたいのなら、RCSはその4乗の16分の1にする必要がある。 == 参考文献 == {{Reflist}} == 関連項目 == {{Commonscat|Radar cross-section}} * [[ステルス機]] * [[ステルス性]] * [[散乱断面積]] {{DEFAULTSORT:れえたあはんしやたんめんせき}} [[Category:レーダー]]
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