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{{出典の明記|date=2015年12月18日 (金) 17:55 (UTC)}} '''ロッシュ・ローブ'''({{lang-en|Roche lobe}}、ロッシュ袋)は、軌道上の物質が[[重力]]によって[[恒星]]に結びつけられる恒星の周りの宇宙の領域のことである。'''ロシュ・ローブ'''とも表記される。恒星が自身の過去のロッシュ・ローブ以上に膨張すると、物質は恒星の重力に束縛されなくなる。恒星が[[連星系]]の場合、物質は[[ラグランジュ点]]の内側に落ち込む。重力の等位面は、おおよそ頂点が別の恒星の方向(連星系の場合はL<sub>1</sub>ラグランジュ点)を向いた[[水滴]]の形である。ロッシュ・ローブ、ロッシュ限界、ロッシュ球の名前は全てフランスの天文学者[[エドゥアール・ロシュ]]に由来する。 なおロッシュ・ローブは、[[連星]]系において一方の天体がもう一方の天体の[[潮汐力]]で破壊されずに接近できる限界の距離である[[ロッシュ限界]]とは異なる。また、質量の大きな天体のまわりを公転する天体に(公転と同期する[[回転座標系]]において)重力が及ぶ範囲を示す[[ヒル球|ヒル球 (ロッシュ球)]]とも異なる。 == ロッシュ・ローブの定義 == [[File:RochePotential.jpg|thumb|連星系のロッシュ・ポテンシャルの三次元表現]] 円形の軌道を持った連星系では、物体と一緒に回転する[[座標系]]を用いるのが便利である。この非[[慣性系]]では、重力の他に[[遠心力]]を考える必要がある。この2力は[[スカラー (物理学)|スカラー]][[ポテンシャル]]で表すことができ、そのため例えば恒星の表面は等位面上にある。 両方の恒星の近傍では、[[重力ポテンシャル]]が同じ面はおおよそ球状で、最も近い恒星と同心である。恒星系から遠く離れたところでは、等位面はおおよそ恒星の中心に向かう軸と平行な楕円体である。等位面は系のL<sub>1</sub>ラグランジュ点で自身と交差し、2つのうち1つの恒星を中心とした8の字の形になる。この等位面がロッシュ・ローブの定義である。共回転系における物質移動には、[[コリオリの力]]が働いているように見える。コリオリの力が[[保存力]]ではないことは、ロッシュ・ローブモデルからは出てこない。(即ちスカラーポテンシャルでは表せない。) == 質量移動 == 恒星が「ロッシュ・ローブを越える」と、ロッシュ・ローブを越えた部分の物質が、他の天体のロッシュ・ローブ内に「落下」する。連星系の進化では、この現象は「[[物質移動#天体物理学|質量移動]]{{R|jiten}}」と呼ばれる。 原理的には、天体の質量の減少がロッシュ・ローブの収縮を引き起こし、天体の分裂が起こりうる。しかし、通常はこのようなことが起こらないいくつかの理由がある。第一に、質量の減少によって天体の半径が収縮し、半径がロッシュ・ローブを越えなくなる可能性がある。第二に、連星系の2つの天体の間で質量移動が起こると、[[角運動量]]も転移される。質量の大きな天体から質量の小さな天体に質量移動が起こると、軌道が縮小するが、その逆が起こると軌道が拡大する(質量の合計と角運動量の合計は保存される。)連星系の軌道の拡大により、質量を供出する天体のロッシュ・ローブの収縮率が小さくなるか、拡大することさえあり、天体の破壊を防ぐ。 質量移動の安定性や恒星の運命を決定するためには、天体の半径がどうなるかや質量の減少に対するロッシュ・ローブの反応についても考慮に入れなければならない。恒星の膨張がロッシュ・ローブよりも速い、または収縮がロッシュ・ローブよりも遅い時には、質量移動は不安定になり恒星は崩壊する。恒星の膨張がロッシュ・ローブよりも遅かったり、収縮がロッシュ・ローブよりも速い場合には質量移動は一般に安定で、崩壊も起こらない。 ロッシュ・ローブから物質が溢れることによって起こる質量移動は、[[アルゴルパラドックス]]や[[新星|再帰新星]]、[[X線連星]]、[[ミリ秒パルサー]]など種々の天文現象の原因となっている。 == ロッシュ・ローブの幾何学 == ロッシュ・ローブの正確な形は質量比に依存する。しかしながら、多くの場合でロッシュ・ローブの形を同じ体積の[[球]]とする近似は有益である。この球の半径の近似式は、 :<math> \frac{r_1}{A} = 0.38+0.2\log\frac{M_1}{M_2}\quad \mathrm{for}\ 0.3<\frac{M_1}{M_2}<20 </math> あるいは、 :<math> \frac{r_1}{A} = 0.46224\left(\frac{M_1}{M_1+M_2}\right)^{1/3}\quad \mathrm{for}\ \frac{M_1}{M_2}<0.8 </math> で与えられる。ここで、<math> A </math>は系の[[軌道長半径]]、<math> r_1 </math>は質量<math> M_1 </math>の天体のロッシュ・ローブの半径である。これらの公式は約2%の誤差範囲の正確性である。 別の近似式として、 :<math> \frac{r_1}{A} = \frac{0.49q_1^{2/3}}{0.6q_1^{2/3}+\ln(1+q_1^{1/3})},~ 0<q_1<\infty </math> がある。<math>q_1\equiv M_1/M_2</math>は質量比である。この近似式は誤差1%の正確性を持つ。 == 出典 == {{reflist|refs= <ref name="jiten">{{cite web2 | df=ja |url=https://astro-dic.jp/mass-transfer-in-a-binary-system/ |title=質量移動(連星系の) | date=2018-08-17|access-date=2022-03-21 |work=天文学辞典|publisher=[[日本天文学会]]}}</ref> }} == 関連項目 == * [[連星]] * [[ヒル球]] * [[ロッシュ限界]] * [[重力圏]] * [[潮汐]] {{DEFAULTSORT:ろつしゆろおふ}} [[Category:連星|*ろつしゆろおふ]] [[Category:天体力学]] [[Category:エポニム]] [[Category:天文学に関する記事]]
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