ローラン多項式のソースを表示

{{Refimprove|date=July 2009}}
[[数学]]における'''ローラン多項式'''（ローランたこうしき、{{lang-en-short|''Laurent polynomial''}}; '''形式ローラン多項式'''）は、[[ピエール・アルフォンス・ローラン]]に名を因む、与えられた[[可換体|体]]に係数を持つ不定元の正冪および負冪たちの[[線型結合]]を言う。
{{mvar|X}} を不定元とする体 {{mathbf|F}} 上の（一変数）ローラン多項式全体の成す集合 {{math|'''F'''{{bracket|''X'', ''X''{{sup|&minus;1}}}}}} は、ローラン多項式環と呼ばれる[[環 (数学)|環]]を成す<ref>{{MathWorld|urlname=LaurentPolynomial|title=Laurent Polynomial}}</ref>。通常の[[多項式]]と異なり、ローラン多項式は次数がマイナスの項を持つことに注意する。一変数ローラン多項式の構成を再帰的に繰り返すことにより、多変数ローラン多項式も定義される。ローラン多項式は、[[多変数複素函数論]]において特に重要である。

== 定義 ==
{{seealso|多項式#定義|形式ローラン級数}}
{{mvar|X}} を不定元（形式的な変数）として、体 {{mathbf|F}} に係数をとる'''ローラン多項式'''は <math display="block"> p := \sum_k p_k X^k, \quad (p_k\in \mathbb{F})</math> の形をしている。ただし、右辺の和は {{mvar|k}} が（必ずしも正でない）[[整数]]全体を亙るものとし、[[補有限|有限個の例外を除く全て]]の係数 {{mvar|p{{sub|k}}}} が零でなければならない。

二つのローラン多項式が相等しいとは、それらの係数のすべてが次数ごとに相等しいときに言う。二つのローラン多項式に対して加法および乗法が定義できて、（同類項をまとめることにより）それら演算の結果もまた上記と同じ形に表される。これら加法および乗法の定義式は、形の上では[[多項式環#定義|通常の多項式とちょうど同じ]]に <math display="block">\Bigl(\sum_i a_iX^i\Bigr) + \Bigl(\sum_i b_iX^i\Bigr) = \sum_i (a_i+b_i)X^i</math> および <math display="block">\Bigl(\sum_i a_iX^i\Bigr) \cdot \Bigl(\sum_j b_jX^j\Bigr) = \sum_k \biggl(\sum_{i + j = k} a_i b_j\biggr)X^k</math> と書くことができる（が、添字の奔る範囲、つまり {{mvar|X}} の正冪だけでなく負冪も出てくるという点では異なる）。

有限個の {{mvar|a{{sub|i}}, b{{sub|j}}}} だけが非零であることにより、上記に現れた総和は何れも実質有限和になっており、したがってそれらは正しくローラン多項式を表現するものになっていることに注意する。

== 性質 ==
* [[複素数]]体 {{mathbf|ℂ}} 上のローラン多項式は、係数が零でない項が有限個しかない[[ローラン級数]]と看做せる。
* ローラン多項式環 {{math|''R''{{bracket|''X'', ''X''{{sup|−1}}}}}} は[[多項式環]] {{math|''R''{{bracket|''X''}}}} に {{mvar|X}} の「逆数」{{math|''X''{{sup|&minus;1}}}} を添加した拡大環として得られる。より厳密に言えば、ローラン多項式環は {{mvar|X}} の非負冪全体の成す積閉集合による多項式環の[[環の局所化|局所化]]である。ローラン多項式環の多くの性質が局所化の持つ一般性質から導かれる。
* ローラン多項式環は[[有理函数]]体の部分環である。
* 体上のローラン多項式環は[[ネーター環|ネーター]]だが[[アルティン環|アルティン]]でない。
* 係数環 {{mvar|R}} が[[整域]]ならば、ローラン多項式環 {{math|''R''{{bracket|''X'', ''X''{{sup|−1}}}}}} の[[可逆元|単元]]は {{mvar|R}} の適当な単元 {{mvar|u}} と整数 {{mvar|k}} を用いて {{mvar|uX{{sup|k}}}} の形をしている。特に {{mvar|K}} を[[可換体|体]]とすれば {{math|''K''{{bracket|''X'', ''X''{{sup|−1}}}}}} の単元は {{mvar|K}} の非零元 {{mvar|a}} に対して {{mvar|aX{{sup|k}}}} の形である。
* 一変数ローラン多項式環 {{math|''R''{{bracket|''X'', ''X''{{sup|−1}}}}}} が {{mvar|R}} に係数をとる有理整数環 {{mathbf|ℤ}} の[[群環]] {{math|''R''{{bracket|'''ℤ'''}}}}に同型である。より一般に、{{mvar|n}}-変数ローラン多項式環は自由階数 {{mvar|n}} の[[自由アーベル群]]の群環に同型になる。これにより、ローラン多項式環が可換かつ[[余可換]]な[[ホップ代数]]の構造を持つことが保証される。

== 関連項目 ==
* [[ジョーンズ多項式]]

== 注 ==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
* Lang, Serge (2002), Algebra, Graduate Texts in Mathematics, 211 (Revised third ed.), New York: Springer-Verlag, {{ISBN2|978-0-387-95385-4}}, MR 1878556

== 外部リンク ==
* {{MathWorld|urlname=LaurentPolynomial|title=Laurent Polynomial}}
* {{nlab|urlname=Laurent+polynomial|title=Laurent polynomial}}

{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:ろうらんたこうしき}}
[[Category:可換環論]]
[[Category:多項式]]
[[Category:環論]]
[[Category:数学に関する記事]]