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[[file:Vector norm sup.svg|thumb|right|'''R'''<sup>2</sup> 上の最大値ノルム一定な点の軌跡は、図のような黒い正方形を描く。]] [[数学]]の[[解析学]]の分野における'''一様ノルム'''(いちようノルム、{{Lang-en|''Uniform norm''}})は、ある集合 ''S'' 上定義される有界な[[実数|実]]または[[複素数]]値関数 ''f'' に対して、非負実数値 :<math>\|f\|_\infty\equiv\|f\|_{\infty,S}:=\sup_{x\in S} |f(x)| </math> を割り当てるものである。このノルムは'''上限ノルム'''、'''チェビシェフノルム'''あるいは'''無限大ノルム'''などとも呼ばれる。「一様ノルム」という名は、このノルムにより定められる距離についてある関数列 (''f''<sub>''n''</sub>) が ''f'' に収束することと、''f''<sub>''n''</sub> が ''f'' に[[一様収束]]することが必要十分であるという事実による<ref>{{harv|Rudin|1964|p=151}}</ref>。 一様ノルムに下付きの "∞" が用いられているのは、''f'' が連続なる限り ''p''-次平均収束ノルム :<math>\lim_{p\to\infty}\|f\|_p=\|f\|_\infty \quad \left(\|f\|_p=\Big(\int_D |f|^p\,d\mu\Big)^{\!1/p}\right) </math> が成り立つことによる。ここで ''D'' は ''f'' の定義域、積分は ''D'' が[[離散集合]]のときは単なる総和で置き換えられる。 有界でない関数 ''f'' をも考慮に入れるならば、上の定義は厳密な意味でのノルムあるいは距離を導くものではない。しかしいわゆる[[距離函数#一般化|拡張距離]]が得られるので、それにより考える関数空間上に位相を定義することは可能である。 == 定義と簡単な性質 == 適当な集合 ''X'' と[[ノルム空間]] (''Y'', ǁ ⋅ ǁ<sub>''Y''</sub>) に対し、''X'' から ''Y'' への有界写像全体の成す写像空間を ''M''(''X'', ''Y'') で表せば、写像 : <math>\lVert\cdot\rVert_{\infty}\colon M(X,Y)\to \mathbb{R};\; f\mapsto \lVert f\rVert_{\infty}:= \sup_{x\in X} \lVert f(x)\rVert_Y</math> は ''M''(''X'', ''Y'') 上のノルムを定める。この写像 ǁ ⋅ ǁ<sub>∞</sub> を''M''(''X'', ''Y'') 上の'''上限ノルム'''と呼ぶ。各点のノルムの上限が無限大にならないために、有界性は本質的である。 * 終域 ''Y'' が[[完備距離空間|完備]](したがって[[バナッハ空間]])ならば、空間 ''M''(''X'', ''Y'') は上限ノルムに関して[[バナッハ空間]]となる。 * 始域 ''X'' が有限でないならば、空間 ''M''(''X'', ''Y'') の上限ノルムに関する[[有界集合|有界]][[閉集合]]は必ずしも[[コンパクト空間|コンパクト]]でない。 * 始域 ''X'' が有限でないならば、空間 ''M''(''X'', ''Y'') のノルムで上限ノルムと位相的に同値でないようなものが存在する。 * 終域 ''Y'' が実数全体の成すノルム空間 '''R''' のとき、''M''(''X'', '''R''') に属する関数には点ごとの和に加えて点ごとの積も定義されるが、上限ノルムはこの積に関して劣乗法的、すなわち<div style="margin: 1ex 2em;"><math>\lVert fg\rVert_{\infty} \le \lVert f\rVert_{\infty}\,\lVert g\rVert_{\infty}</math></div>を満たす。即ち、この積と上限ノルムに関して ''M''(''X'', ''Y'') は[[バナッハ代数]]を成す。 * [[コンパクト空間]]上の[[複素関数|複素]][[連続関数]]は、一様ノルムに関して[[C*-環]]を成す。 == 最大値ノルム == ''f'' が[[区間 (数学)|閉区間]](あるいはより一般に[[コンパクト空間|コンパクト集合]])上で定義される[[連続関数]]ならば、''f'' は有界で、{{仮リンク|ワイエルシュトラスの最大値最小値定理|en|extreme value theorem|label=ワイエルシュトラスの定理}}により上記定義における上限の値を実現するような点が区間内に存在する(上限値は最大値になる)から、上限の代わりに最大値をとることができる。この場合、一様ノルムは'''最大値ノルム'''とも呼ばれる。特に、[[数ベクトル空間|有限次元座標空間]]におけるベクトル <math>x=(x_1,\dots,x_n)</math>(これは有限集合 {1, …, ''n''} 上の連続関数と見做せる)に対する一様ノルムは :<math>\|x\|_\infty=\max\{ |x_1|, \dots, |x_n| \} </math> の形に書ける。 == 一様構造 == 二変数関数 :<math>d(f,g)=\|f-g\|_\infty</math> は、ある特定の定義域上のすべての有界関数からなる空間(および、その任意の部分集合)上の[[距離関数|距離]]となる。関数列 {''f''<sub>''n''</sub> : ''n'' = 1, 2, 3, …} がある関数 ''f'' に一様収束するための必要十分条件は :<math>\lim_{n\to\infty}\|f_n-f\|_\infty=0</math> が成り立つことである。この距離位相について[[閉集合]]および[[閉包 (位相空間論)|閉包]]を定めることが出来る; 一様ノルムについての閉集合は'''一様閉'''と呼ばれ、同様に閉包は'''一様閉包'''と呼ばれる。関数からなる集合 A の一様閉包は、A 上の一様収束する関数列により近似されるようなすべての関数からなる集合である。例えば、[[ストーン=ワイエルシュトラスの定理]]の主張を「区間 [''a'', ''b''] 上のすべての連続関数からなる集合は、[''a'', ''b''] 上の多項式すべてからなる集合の一様閉包である」という形に述べることができる。 ==関連項目== *[[チェビシェフ距離]] *[[一様連続]] *[[一様空間]] == 注 == {{Reflist}} == 参考文献 == * {{cite book|last=Rudin|first=Walter|title=Principles of Mathematical Analysis|year=1964|publisher=McGraw-Hill|location=New York|isbn=0-07-054235-X|pages=151}} * {{cite book|first=Dirk |last=Werner|title=Funktionalanalysis|volume= 6 |edition=corrected |publisher= Springer-Verlag|location= Berlin |date=2007 |isbn=978-3-540-72533-6 |page=3}} {{DEFAULTSORT:いちようのるむ}} [[Category:関数解析学]] [[Category:数学に関する記事]]
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