一般化費用のソースを表示

'''一般化費用''' (いっぱんかひよう、英: generally cost) とは、[[鉄道]]などの[[交通|交通機関]]における、貨幣的[[費用]]である[[運賃]]に加え、所要時間などの非貨幣的費用を含めた値のこと<ref>[https://www.mlit.go.jp/common/000220831.pdf 第6編 用語集・参考文献] 国土交通省</ref>。

一般化費用が少ないほど、交通機関の[[需要と供給|需要]]が高まるという重要な考え方である。

== 計算方法 ==

=== 時間価値を考えた式 ===
一般化費用についての式は、[[運賃]] <math>C</math>、所要時間 <math>T</math>、時間価値 <math>\omega</math> の3要素からなり、一般化費用 <math>G</math> に対して次の式で表される。

<math>G=C+\omega T</math>

ここでいう時間価値とは、時間を[[費用]]に換算するパラメータであり、[[単位記号|単位]]は [¥/min] である。時間価値は[[収入|所得]]、利用[[目的]]などの個人属性によって違い、例えば[[長距離列車|長距離]]利用者は[[定期乗車券|通勤通学利用]]者よりも時間価値が高い傾向にある。またこの式から、一般化費用は運賃に加えて、時間についての感覚的な費用を含めた値であることがわかる。<ref name=":0">{{Cite web|和書|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscej1969/1978/275/1978_275_91/_pdf |title=混雑費用を考慮した一般化費用によるModalChoiceモデル |accessdate=2023-07-23}}</ref>

=== モーダルチョイス理論 ===
同一区間を利用するも、[[普通列車]]または[[特別急行列車|有料特急]]のいずれかを利用するように、利用方法が複数ある場合がある。普通列車の運賃、所要時間をそれぞれ <math>C_1, T_1</math> として、有料特急の場合 <math>C_2, T_2</math> とすると、一般的に次の式が成り立つ。(式1とする)

<math>\begin{cases} G_1=C_1+\omega T_1 \\ G_2=C_2+\omega T_2 \end{cases} \quad (C_1<C_2,\ T_1>T_2)</math>

<math>C_1<C_2</math> かつ <math>T_1<T_2</math> のときは、すべての <math>\omega</math> で <math>G_1<G_2</math> となるので、この場合は考えない。<math>C,\ T</math> を定数とするとき、<math>G</math> を <math>\omega</math> の[[関数 (数学)|関数]]として表すことができ、2式の[[交点 (数学)|交点]]を <math>(\omega^*,\ G^*)</math> とすると次の式が成立する。(式2とする)

<math>\begin{cases} G_1<G_2 & \text{if} \ \omega<\omega^*\\ G_1=G_2=G^* & \text{if} \ \omega = \omega^* \\ G_1>G_2 & \text{if} \ \omega>\omega^*\end{cases}</math>

したがって[[経済人|合理的経済人]]であれば、<math>\omega<\omega^*</math> の時間価値を持つ人は普通列車を、<math>\omega>\omega^*</math> の人は有料特急を利用する。ここで、式1と式2より <math>\omega^*=\dfrac{C_2-C_1}{T_1-T_2}</math> なので、これから普通列車、有料特急のいずれかを利用すればよいか計算できる。<ref name=":0" />

== 具体例 ==
長距離利用者の方が通勤通学利用者に比べて時間価値が高い傾向にあるが、平均的な時間価値は、およそ20 [¥/min] であるといわれている。ここでは <math>\omega\simeq20</math> として計算する。<ref name=":0" />

=== 京都から姫路まで ===
例として、[[京都駅]]から[[姫路駅]]まで[[東海道本線|JR]] (在来線) または[[山陽新幹線|新幹線]]で移動するとき、どちらを選択する傾向にあるかを考える。このときの運賃と所要時間は以下の通りである。
<table class="wikitable">
    <tr>
        <th> </th><th>JR (京都→姫路)</th><th>新幹線 (京都→姫路)</th>
    </tr>
    <tr>
        <th>運賃</th><td>2310円</td><td>4840円</td>
    </tr>
    <tr>
        <th>所要時間</th><td>90分</td><td>40分</td>
    </tr>
</table>
<math>C_1<C_2,\ T_1>T_2</math> なので、JRの運賃、所要時間を <math>C_1=2310,\ T_1=90</math>、新幹線は <math>C_2=4840,\ T_2=40</math> とできる。このとき <math>\omega^* =\dfrac{C_2-C_1}{T_1-T_2}\simeq51>\omega</math> となるので、ほとんどの人は新幹線ではなくJRに乗車するといえる。<ref name=":1">{{Cite web|和書|url=https://transit.yahoo.co.jp/ |title=Yahoo乗換案内 |accessdate=2023-07-24}}</ref>

=== 東京から博多まで ===
次に、[[東京駅]]から[[博多駅]]までJRまたは新幹線で移動するとき、どちらを選択する傾向にあるかを考える。このときの運賃と所要時間は以下の通りである。
<table class="wikitable">
    <tr>
        <th> </th><th>JR (東京→博多)</th><th>新幹線 (東京→博多)</th>
    </tr>
    <tr>
        <th>運賃</th><td>14240円</td><td>22200円</td>
    </tr>
    <tr>
        <th>所要時間</th><td>1100分</td><td>300分</td>
    </tr>
</table>
JRの運賃、所要時間を <math>C_1=14240,\ T_1=1100</math>、新幹線は <math>C_2=22200,\ T_2=300</math> とできる。このとき <math>\omega^* =\dfrac{C_2-C_1}{T_1-T_2}\simeq10<\omega</math> となるので、ほとんどの人はJRではなく新幹線に乗車するといえる。<ref name=":1" />
== 脚注 ==
<references />
{{DEFAULTSORT:いっぱんかひよう}}
[[Category:費用]]
[[Category:交通]]