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一酸化窒素
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{{Infobox_無機化合物 |name=一酸化窒素 |画像=[[Image:Nitric-oxide-2D.png|120px]][[Image:Nitric-oxide-3D-vdW.png|120px]] |IUPAC名=一酸化窒素 |別名= |組成式=NO |式量=30.0061 |形状=無色透明の気体 |結晶構造= |CAS登録番号=[10102-43-9] |密度= |相= |水への溶解度= |温度= |融点=−163.6 |融点注= |沸点=−151.7 |沸点注= |出典= }} 一酸化窒素(いっさんかちっそ、nitric oxide)は[[窒素]]と[[酸素]]からなる無機化合物で、化学式であらわすと '''NO'''。'''酸化窒素'''とも呼ばれる。 常温で無色・無臭の[[気体]]。[[水]]に溶けにくく、[[空気]]よりやや重い。[[有機物]]の燃焼過程で生成し、[[酸素]]に触れると直ちに酸化されて[[二酸化窒素]] NO<sub>2</sub> になる。[[硝酸]]の製造原料。[[光化学スモッグ]]や[[酸性雨]]の成因に関連する。また体内でも生成し、[[血管]]拡張作用を有する。窒素の酸化数は+2。 == 製法 == 化学的には[[銅]]に[[硝酸|希硝酸]]を作用させたり、[[二酸化窒素]](NO<sub>2</sub>)に[[水]](温水)を反応させることで生じる。 銅と希硝酸の反応 : <chem>3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 2NO + 4H2O</chem> 二酸化窒素と水(温水)の反応 : <chem>3NO2 + H2O -> 2HNO3 + NO</chem> また、[[二酸化硫黄]]と二酸化窒素の置換反応の過程でできる。 : <chem>NO2 + SO2 -> NO + SO3</chem> == 環境に対する影響 == 高温で[[窒素]]と[[酸素]]が化合して一酸化窒素が生成する。自然界では主として[[雷]]や[[山火事]]によって生じるが、その発生源の大部分は、人為的理由による。人為的な発生源として、[[ボイラー]]、[[酸化剤]]として純酸素を用いる[[ロケット]]を除いた全熱機関の[[排出ガス]]、[[焼却炉]]、石油[[ストーブ]]、[[暖炉]]、[[ガスコンロ]]などである。[[大気汚染]]で問題となる[[窒素酸化物]] (NOx) の1つである。窒素酸化物は[[大気汚染防止法]]によって、自動車、火力発電所、航空機や船舶などの特定の排出源に対しては排出規制が行われているが、前記規制対象以外は野放しである。 大気へ放出された一酸化窒素は、[[二酸化窒素]]に[[酸化]]される。 一方、二酸化窒素は[[紫外線]]を受け一酸化窒素と原子状酸素になり、この原子状酸素がオゾンなど酸化物質(オキシダント)を生成するが、一酸化窒素が二酸化窒素に酸化される反応は、非メタン炭化水素(NMHC)が[[光反応]]により酸化した物質の存在下で加速するため、反応が連鎖的に進行し、[[光化学スモッグ]]を引き起こす原因となる[[光化学オキシダント]]を生成する。 また、窒素酸化物は、大気中の水蒸気と反応すると[[硝酸]]に変化し、[[酸性雨]]の原因となる。 == 応用 == [[オストワルト法]]で[[アンモニア]]を[[硝酸]]に変換する過程で中間産物としてできる。 一酸化窒素を用いて[[ポリマー]]表面の[[ラジカル (化学)|ラジカル]]を検出することができる。表面ラジカルを一酸化窒素が消去する際に生成される窒素を[[X線]][[光電子分光]]で検出する方法である。 == 食事 == ;アルギニンまたはタンパク質 体内では栄養素の[[アルギニン]]や[[シトルリン]]が一酸化窒素へと変換される。アルギニンは体内では[[腸管]]および[[腎臓]]の協同にてアンモニアから合成されるので、主として[[タンパク質]]を摂取すればよい。 ;野菜 一方、近年ではアルギニンの他に野菜等に含まれる[[硝酸塩]]も体内にて一酸化窒素の原料として利用されているという見方をする主張もある<ref>{{cite journal|title=Vascular effects of dietary nitrate (as found in green leafy vegetables and beetroot) via the nitrate‐nitrite‐nitric oxide pathway|journal=British journal of clinical pharmacology|volume=75|issue=3|year=2013|pmc=3575935|doi=10.1111/j.1365-2125.2012.04420.x}}</ref>。 == 生理機能 == 生体内では一酸化窒素は、[[一酸化窒素合成酵素]] (NOS) によって[[アルギニン]]と酸素とから合成される。一酸化窒素は細胞内の可溶型グアニル酸シクラーゼを活性化して[[サイクリックGMP]] (cGMP) を合成させることにより[[シグナル伝達]]に関与する。 [[免疫]]に関与する細胞の一種[[マクロファージ]]は病原体を殺すために一酸化窒素を産生する。しかしこれは逆に悪影響を及ぼすこともある。[[敗血症]]ではマクロファージが一酸化窒素を大量に産生し、それによる血管拡張が[[低血圧]]の主因となると考えられている。 一酸化窒素は[[神経伝達物質]]としても働く。[[シナプス]]間隙のみで働く多くの神経伝達物質と異なり、一酸化窒素分子は広い範囲に[[拡散]]して直接接していない周辺の[[神経細胞]]にも影響を与える。このメカニズムは[[記憶]]形成にも関与すると考えられている。 一酸化窒素の生物機能は1980年代において驚くべき発見として迎えられ、一酸化窒素は[[1992年]]の「[[サイエンス]]」誌で「今年の分子」として取り上げられた。[[1998年]]の[[ノーベル生理学・医学賞]]は一酸化窒素のシグナル機能の発見により[[フェリド・ムラド]]、[[ロバート・ファーチゴット]]と[[ルイ・イグナロ]]に授与された。 [[窒素酸化物]](NO、NO<sub>2</sub>等)を吸入すると[[ヘモグロビン]]の[[鉄]]が[[酸化]]されて、酸素運搬能力のない[[メトヘモグロビン]]が生成し、[[メトヘモグロビン血症]]になることがある<ref>{{PDFlink|[http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/file/40746/20101214101718/101_473.pdf 石井邦彦:アカタラセミアマウスに一酸化窒素,二酸化窒素曝露時のメトヘモグロビン生成]}}</ref>。 === 臨床応用 === [[血管]]内皮は一酸化窒素をシグナルとして周囲の[[平滑筋]]を弛緩させ、それにより[[動脈]]を拡張させて血流量を増やす。これが[[ニトログリセリン]]、亜硝酸アミル、[[一硝酸イソソルビド]](5-ISMN,アイトロール)などの亜硝酸誘導体が[[心臓病]]の治療に用いられる理由である。これらの化合物は一酸化窒素に変化し、[[心臓]]の[[冠動脈]]を拡張させて血液供給を増やす。<br> 発毛剤[[ミノキシジル]](リアップ)は cGMPの分解を抑制して毛細血管の血流量を増やす。一酸化窒素は[[陰茎]]の[[勃起]]でも働いており、同じく cGMP分解抑制薬である[[シルデナフィル]](バイアグラ)はこの機構を利用したものである。<br> 一酸化窒素を気管内に吸入させることにより、[[肺動脈]]の血管平滑筋を弛緩させて、[[肺高血圧]]を改善させることができる。新生児の新生児遷延性肺高血圧や、[[開心術]]後の心臓の負荷軽減、原発性肺高血圧症の治療などに利用されるが、日本では保険適応外の先端治療扱いである。<br> 静脈に比べて、動脈は酸素が多く、NOはNO2やHb-NO (ニトロソヘモグロビン) になりやすい。<br> NOは静脈を拡張させ、心臓の前負荷を減少させる薬理作用を持つことから、冠動脈疾患の他にも[[心不全]]・[[高血圧]]緊急症に用いられる。 ==== 医療従事者へのリスク ==== 一酸化窒素は空気中の酸素と結合し二酸化窒素となり、医療者へ害をなす恐れがある。症状には胸部不快感、めまい、のどの渇き、呼吸困難、頭痛などがある。<ref>{{Cite journal|last=金子|first=武彦|date=2010|title=一酸化窒素 (no)|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/medicalgases/12/1/12_15/_article/-char/ja/|journal=Medical Gases|volume=12|issue=1|pages=15–19|doi=10.32263/medicalgases.12.1_15}}</ref>長時間病室内に滞留させないように排気流路の工夫、活性炭の使用などを使用すると良い。<ref>{{Cite web |title=NO吸入療法の看護上の注意点は? {{!}} 看護roo![カンゴルー] |url=https://www.kango-roo.com/learning/4630/ |website=看護roo! |date=2019-09-19 |access-date=2025-03-15}}</ref> == 脚注 == <references /> == 外部リンク == * [http://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?一酸化窒素 一酸化窒素] 薬学用語解説 - 日本薬学会 *{{脳科学辞典|一酸化窒素}} 主に生体内での生理作用に関する解説。 {{窒素の化合物}}{{大気汚染}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:いつさんかちつそ}} [[Category:無機窒素化合物]] [[Category:酸化物]] [[Category:活性酸素]] [[Category:シグナル伝達]] [[Category:有毒ガス]] [[Category:大気汚染]] [[Category:NMDA受容体拮抗薬]] [[Category:フリーラジカル]] [[Category:ジョゼフ・プリーストリー]]
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