一酸化鉛のソースを表示

{{Infobox_無機化合物
|name=一酸化鉛
|画像=[[ファイル:Oxid olovnatý.JPG|200px]]
|IUPAC名=Lead(II) Oxide
|別名=酸化鉛(II)
|組成式=PbO
|式量=223.2
|形状=
|結晶構造=正方晶系
|CAS登録番号=1317-36-8
|密度=9.53
|相=固体
|水への溶解度=不溶
|温度=
|融点=886
|融点注=
|沸点=
|沸点注=
|出典=CRC
}}
[[File:PbO.jpg|thumb|リサージとマシコット]]
[[File:Massicot-177335.jpg|thumb|アメリカ合衆国ネバダ州の鉱山 Monte Cristo mine から産出したマシコット]]
'''一酸化鉛'''（いっさんかなまり、'''PbO'''）は[[鉛]]と[[酸素]]の[[化合物]]である。組成比は1:1で、別名は'''酸化鉛(II)'''。

== 性質 ==
[[両性酸化物]]である。赤色・[[正方晶系]]で室温で安定なα型と、黄色・[[斜方晶系]]で300℃以上で安定なβ型がある。β型への[[転移温度]]は587℃だが、[[酸素]][[分圧]]に依存する。α型の別称は'''密陀僧'''（みつだそう）・'''リサージ''' ([[:en:litharge|litharge]])、β型の別称は'''金密陀'''（きんみつだ）・'''マシコート''' ([[:en:massicot|massicot]]、'''マシコット''')。共に、[[鉱物]]としても産出する。

== 合成方法 ==
[[金属]]鉛の加熱、[[硝酸鉛]]の[[アルカリ]]処理、または[[炭酸鉛]]の加熱で得られる。

=== 鉱石の精製 ===
酸化鉛は鉛鉱石を金属鉛に精製する際の中間生成物として大量に生産されている。[[方鉛鉱]]の粉末を約1,000度で加熱すると硫化物が酸化物に変換される。<ref>{{cite journal|title=Thermal and XRD analysis of Egyptian galena|journal=Journal of Thermal Analysis and Calorimetry|year=2006|volume=86|issue=2|pages=393–401|last1=Abdel-Rehim|first1=A. M. |doi=10.1007/s10973-005-6785-6|s2cid=96393940}}</ref>
:<math>
\rm 2PbS + 3O_2 \longrightarrow 2PbO + 2SO_2
</math>

=== 金属鉛の加熱 ===
600℃前後で繰り返し[[酸化]]させるか、1000℃前後で[[融解]]した酸化鉛にするか、900℃以上で融解させた鉛を噴霧する方法がある。いずれの場合も徐冷すると[[四酸化三鉛]]（Pb<sub>3</sub>O<sub>4</sub>）が生成するため、300℃以下まで急冷する必要がある。

:<math>
\rm 2Pb + O_2 \longrightarrow 2PbO
</math>

=== アルカリ処理 ===
硝酸鉛と[[炭酸アンモニウム]]または[[塩化アンモニウム]]を[[水溶液]]中で混合して[[アンモニウム]]水<!--アンモニア水?-->を加える。[[水素イオン指数|pH]]が7.1以上になると炭酸鉛が沈殿するので、[[ろ過]]および洗浄の後に 400℃ まで加熱する。この時、400℃ でα型、590℃ でβ型が得られる。
:<math>
\rm Pb(NO_3)_2 + (NH_4)_2CO_3 \longrightarrow PbCO_3 + 2NH_4NO_3
</math>
:<math>
\rm PbCO_3 \longrightarrow PbO + CO_2
</math>

=== 炭酸鉛の加熱 ===
上記のアルカリ処理の後半部分に相当する。

== 用途 ==
古代ローマ時代などから[[顔料]]として用いられており、中世からマシコットと呼ばれるようになった<ref>[https://books.google.com/books?id=7VMVguiMmY0C&pg=PA172&lpg=PA172&dq=massicot&hl=en#v=onepage&q&f=false ''Archaeomineralogy''], by George Robert Rapp, year 2002, page 173, 古代ローマで使用されていた三種の鉱物{{ill2|ミニウム|en|Minium (mineral)}}, litharge, and massicot.</ref><ref>[https://books.google.com/books?id=ZL4OAAAAQAAJ&pg=PA16&lpg=PA16&dq=massicot#v=onepage&q=massicot&f=false ''Lead Manufacturing in Britain: A History''], by David John Rowe, year 1983, page 16. 中世後期にイタリア語とフランス語にマシコットという語が見られるとしている</ref>。また、[[クリスタル・ガラス]]の製造にも用いられる。
[[皮蛋]]（ピータン）の熟成を促進する黄丹粉の主成分も一酸化鉛である<ref name=pt>{{Cite web|和書|url = http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=33766|title = ピータンの食べ過ぎで鉛中毒に＝「無鉛」ピータンも危険？！―中国|publisher = [[レコードチャイナ]]|date = 2009-07-26|accessdate = 2013-06-09|archiveurl= https://web.archive.org/web/20110521224712/http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=33766 |archivedate=2011-05-21 |url-status=dead|url-status-date=2021-06-19 }}</ref>。

セラミックス、ゴムの加硫<ref name=Ullmann>{{Ullmann|first=Dodd S.|last=Carr|year=2005|title=Lead Compounds|doi=10.1002/14356007.a15_249}}</ref><ref name=kt>[https://kotobank.jp/word/一酸化鉛-434158 一酸化鉛] コトバンク</ref>

==健康問題==
[[鉛中毒]]を起こすので、顔料や皮蛋（ピータン）などでは使われなくなってきている<ref name=pt/><ref name=kt/>。ただし、皮蛋の無鉛製品と命名されて、黄丹粉を使用していないとした製品にも鉛が使われている場合が指摘されている<ref>{{Cite web|和書|url = http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=33766|title = ピータンの食べ過ぎで鉛中毒に＝「無鉛」ピータンも危険？！―中国|publisher = [[レコードチャイナ]]|date = 2009-07-26|accessdate = 2021-12-09}}</ref>。

== 参考文献 ==
*日本化学会・編『第4版 新実験化学講座 16巻 無機化合物』　丸善、1991年

==脚注==
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
*[[鉛]]
*[[相転移]]
*[[両性酸化物]]

{{鉛の化合物}}
{{Chem-stub}}
{{DEFAULTSORT:いつさんかなまり}}
[[Category:鉛の化合物]]
[[Category:酸化物]]
[[Category:無機化合物]]
[[Category:SVHC]]