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丁度可知差異
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[[精神物理学]]において、'''丁度可知差異'''(ちょうどかちさい、{{lang|en|''just noticeable difference''}}、''jnd'' )あるいは'''最小可知差異'''(さいしょうかちさい)とは、ある標準となる[[感覚]]刺激からはっきりと[[弁別]]できる刺激の最小の[[差異]]のことである。'''弁別閾'''(べんべついき、{{lang|en|''difference threshold''}} あるいは {{lang|en|''difference limen''}})と呼ばれることもある。 [[マーケティング]]の分野ではこの考え方の応用として、いったん構築された[[ブランド]]イメージの一貫性を維持しながら市場の変化に対応していくために加え続けるパッケージや味などへのわずかな変更のことを丁度可知差異と表現する。 == 概要 == 丁度可知差異は英語の "just noticeable difference" の訳語で、文字通り人間のさまざまな[[感覚]]での「just noticeable(辛うじて気づく)」差異を表す。 丁度可知差異の考え方を最初に用いたのは19世紀の[[ドイツ]]の[[生理学者]]である[[エルンスト・ヴェーバー]]で、人間が感じる重さの感覚について以下の式で表される法則を発見した <ref name="WebersLaw">{{Cite web | title = Weber's Law of Just Noticeable Differences | url = http://people.usd.edu/~schieber/coglab/WebersLaw.html | accessdate = 2010-8-20}} </ref>。 : <math>\frac {\Delta I} {I} = k</math> ここで<math>I\!</math> は標準刺激の強さ、<math>\Delta I\!</math> は違いが分かる最小の差異(丁度可知差異)、''k'' はヴェーバー比と呼ばれる定数である。 これは[[ヴェーバー‐フェヒナーの法則|ヴェーバーの法則]]と呼ばれ、例えば 40g の重さに対し 1g 加えることで変化が分かった場合、80g の重さに対しては 2g 加えないと変化が分からないということを表す。 ヴェーバーの弟子で[[精神物理学]]の創始者でもある[[グスタフ・フェヒナー]]は重さ以外の感覚にも適用範囲を広げ、ヴェーバーの法則の定式化と理論付けを行った。 この法則は全ての感覚で成立するものではないが、明るさ、音の大きさ、重さ、線の長さなど多くの対象に適用することができる <ref name="WebersLaw"></ref>。ヴェーバー比の値は対象ごとに異なり、一定範囲内の強さの刺激では定数として扱うことができる。 == 詳細 == 丁度可知差異は一意に決まる数値ではなく[[統計量]]であり、測定ごとに値が変動する。そのため丁度可知差異の正確な定義は以下のようになる <ref name="YorkU">{{Cite web|和書 | title = 三種の心理物理学的測定法でみる精度と確度 | url = http://www.yorku.ca/psycho/ja/introduction.asp | accessdate = 2010-08-20}} </ref> <ref name="kiso">{{Cite web|和書 | author = 田山 忠行 | title = 基礎心理学入門 感覚(1) | url = http://ocw.hokudai.ac.jp/Course/LiberalArts/ScienceAndTechnology/Psychology/2009/page/materials/Psychology-2009-Note-04.pdf | format = PDF | publisher = 北海道大学 | date = 2009 | accessdate = 2010-08-20}} </ref>。 判断回数の50%の信頼率で弁別される2刺激間の最小差異 丁度可知差異の一般的な測定方法として以下の3つの手法が知られている<ref name="YorkU" />。 ;極限法:実験者が比較対象となる刺激を一定の間隔で変化させ、被験者の標準刺激に対する差異判断の変化により値を求める ;恒常法:実験者が比較対象となる複数の刺激をランダムに提示し、被験者の標準刺激に対する差異判断により値を求める ;調整法:被験者が刺激をダイアルなどで連続的に変化させながら標準刺激と同じと判断した刺激の範囲から値を求める 極限法は、実験者があらかじめ決めた間隔で刺激の強さを上方向/下方向に段階的に変化させ、標準刺激との差異を被験者が判断する。刺激の変化方向の影響をなくすため上方向/下方向の変化を同じ回数行って平均をとる。比較的実施が容易であるという長所があるが、慣れや期待による誤差が発生しやすい。 恒常法は、極限法のように比較刺激を段階的に変化させる代わりに、あらかじめ決めた間隔の刺激をランダムに提示する方法である。慣れや期待による誤差は発生しにくいが、ランダムに提示された結果から正確な情報を得るために非常に多くの刺激を提示して統計的処理を行う必要があり、測定に時間が掛かる。 調整法は、被験者自身が比較対象となる刺激を調整できるため、分かりやすく測定が短時間で済むという長所があるが、被験者の意図が入る可能性がある。 極限法と恒常法では、標準刺激と比較対象刺激との区別が不確実な範囲(不確定帯)の 1/2 が丁度可知差異になる。調整法では標準刺激と同じと判断された反応の[[標準偏差]]の 0.6745 倍(確率が 50% の誤差範囲)が丁度可知差異である<ref name="YorkU" />。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} <references/> == 参考文献 == * {{Cite web|和書 | author = 田山 忠行 | title = 基礎心理学入門 感覚(1) | url = http://ocw.hokudai.ac.jp/Course/LiberalArts/ScienceAndTechnology/Psychology/2009/page/materials/Psychology-2009-Note-04.pdf | format = PDF | publisher = 北海道大学 | date = 2009 | accessdate = 2010-08-20}} == 関連項目 == * [[精神物理学]] * [[等ラウドネス曲線]] * [[ヴェーバー‐フェヒナーの法則]] * [[スティーヴンスのべき法則]] == 外部リンク == * [http://people.usd.edu/~schieber/coglab/WebersLaw.html Weber's Law of Just Noticeable Differences]{{リンク切れ|date=2020年5月}} ヴェーバーの法則に関するウェブページ(英語) * [http://www.yorku.ca/psycho/ja/introduction.asp 三種の心理物理学的測定法でみる精度と確度]{{リンク切れ|date=2020年5月}} - [[ヨーク大学 (カナダ)]]の精神物理学実験に関するウェブページ * {{Kotobank|弁別閾}} {{デフォルトソート:ちようとかちさい}} [[Category:感覚]] [[Category:精神物理学]] [[Category:差異]]
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