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七酸化二マンガン
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{{Chembox |verifiedrevid = 431916363 |Name = 七酸化二マンガン |ImageFile1 = Mn2O7.svg |ImageSize1 = |ImageName1 = Manganese(VII) oxide |ImageFile2 = Manganese-heptoxide-3D-balls.png |ImageSize2 = |ImageName2 = Ball-and-stick model of manganese heptoxide |ImageFile3 = Manganese heptoxide.jpg |ImageName3 = Manganese(VII) oxide |IUPACName = Manganese(VII) oxide |OtherNames = 酸化マンガン(VII)<br />無水過マンガン酸<br />七酸化マンガン |Section1 = {{Chembox Identifiers |SMILES = O=(O=)(O=)MnOMn(=O)(=O)=O |CASNo = 12057-92-0 |RTECS = }} |Section2 = {{Chembox Properties |Formula = Mn<sub>2</sub>O<sub>7</sub> |MolarMass = 221.87 g/mol |Appearance = 暗赤色油状液体(室温),硫酸との接触で緑色 |Density = 2.79 g/cm<sup>3</sup> |Solubility = [[過マンガン酸]](HMnO4)に分解 |MeltingPt = 5.9 ℃, 279.1 K |BoilingPt = 加熱によって爆発<br /> −10 ℃で昇華 }} |Section3 = {{Chembox Structure |CrystalStruct = 単斜方晶系 }} |Section7 = {{Chembox Hazards |ExternalMSDS = |MainHazards = 爆発性, 強酸化性, 強腐食性 |RPhrases = |SPhrases = }} |Section8 = {{Chembox Related |OtherCpds = [[酸化レニウム(VII)|{{chem|Re|2|O|7}}<br />]] [[過マンガン酸カリウム|KMnO<sub>4</sub>]]<br /> [[酸化テクネチウム(VII)|{{chem|Tc|2|O|7}}]]<br /> [[七酸化二塩素|{{chem|Cl|2|O|7}}]] }} }} '''七酸化二マンガン'''(ななさんかにマンガン、英:dimanganese heptoxide)は、{{chem|Mn|2|O|7}}という[[化学式]]で表される[[無機化合物]]である。2分子の[[過マンガン酸]]が脱水縮合した酸無水物に相当する、極めて反応性が高い揮発性の液体であり、非常に危険な酸化剤である<ref>Aschoff, H. Ann. Phys. Chem. Ser. 2 volume 111 (1860) page 217 and page 224.</ref>。 == 性質 == この化合物の結晶は暗緑色であり、[[四塩化炭素]]に溶解、[[水]]によって分解する。5.9 ℃で[[融解]]し、-10 ℃で[[昇華 (化学)|昇華]]する。その構造は、[[極性|無極性]]分子であることを示している。分子は頂点共有二四面体構造をとっており、四面体の頂点は[[酸素]]原子が、中心は[[マンガン]](VII)原子が占めている。結合は{{chem|O|3|Mn-O-MnO|3}}の形を取り、末尾のMn-O結合距離は1.585 Åで、橋掛けをしている[[酸素]]原子と[[マンガン]]原子の結合距離は1.77 Åである。Mn-O-Mnがなす角は120.7°である<ref>{{cite journal | author = Simon, A.; Dronskowski, R.; Krebs, B.; Hettich, B. | title = The Crystal Structure of Mn<sub>2</sub>O<sub>7</sub> | journal = [[Angew. Chem. Int. Ed. Engl.]] | year = 1987 | volume = 26 | pages = 139–140 | doi = 10.1002/anie.198701391}}</ref>。 この化合物は最高[[酸化数]]+7をとる[[マンガン]]原子を含み、同様の酸化数をとる[[マンガン]]原子を含む他の化合物には、より安定な[[過マンガン酸塩]]がある。 [[イオン (化学)|イオン]]の中でも、[[ピロ硫酸]]イオンや[[二リン酸]]イオン、[[二クロム酸]]イオンは{{chem|Mn|2|O|7}}に似た構造をとる。類似構造を持つ主な[[化合物]]としては、[[典型元素]]の[[酸化物]]として[[七酸化二塩素|{{chem|Cl|2|O|7}}]]などが挙げられる。[[遷移金属]]の酸化物では、[[酸化テクネチウム(VII)|{{chem|Tc|2|O|7}}]]と{{chem|Mn|2|O|7}}は構造的に類似しているが、Tc-O-Tcがなす角は180°である。固体の[[酸化レニウム(VII)|{{chem|Re|2|O|7}}]]は、分子ではないがそれぞれの中心が正四面体側と正八面体側とともに架橋されており<ref>{{cite journal | author = Krebs, B.; Mueller, A.; Beyer, H. H. | title = The Crystal Structure of Rhenium(VII) Oxide | journal = [[Inorganic Chemistry (journal)|Inorganic Chemistry]] | year = 1969 | volume = 8 | pages = 436–443 | doi = 10.1021/ic50073a006}}</ref>、蒸気では分子の構造は{{chem|Tc|2|O|7}}に似ている<ref>Wells A.F. (1962) ''Structural Inorganic Chemistry'' 3d edition Oxford University Press</ref>。 == 合成と反応 == 七酸化二マンガンは冷濃[[硫酸]]に固体の[[過マンガン酸塩]](代表的なものとしては[[過マンガン酸カリウム]])を少量ずつ注意深く加えることで濃緑色油状液体として生成する。この反応では、初めに強酸である硫酸との[[弱酸遊離]]反応によって[[過マンガン酸]]{{chem|(HMnO|4|)}}が遊離し、その後すぐに濃硫酸によって[[脱水反応|脱水]]されて2分子の過マンガン酸が分子間脱水を起こし、その[[酸無水物]]である七酸化二マンガンが生成している。 : <chem>{2KMnO4} + 2H2SO4 -> {Mn2O7} + {H2O} + 2KHSO4</chem> 七酸化二マンガンと[[硫酸]]の反応はさらに進み、MnO3<sup>+</sup>という[[陽イオン]]が生成する。{{要出典|date=June 2010}} これと[[酸化クロム(VI)|三酸化クロム]]は[[等電子的]]である。 : <chem>{Mn2O7} + 2H2SO4 -> {2[MnO3]^+[HSO4]^-} + H2O</chem> 七酸化二マンガンは室温付近で分解し、55 ℃で爆発する。爆発は試料に衝撃を与えたり、[[還元]]性物質と接触させたりすることで起こる。爆発によって、[[二酸化マンガン]]と[[酸素]]が生成する<ref>Holleman, A. F.; Wiberg, E. "Inorganic Chemistry" Academic Press: San Diego, 2001. ISBN 0-12-352651-5.</ref>。[[オゾン]]も同時に生成し、強い臭いを放つ。オゾンは[[アルコール]]に浸けた紙を[[自然発火]]させる。また、濃硫酸と過マンガン酸塩の混合時に、[[有機物]]などが存在していた場合、生成した七酸化二マンガンとの接触によって急速に[[酸化]]される。この酸化反応は激烈であり、しばしば容器の外に[[溶液]]が跳ねたり、音の発生や発火を伴ったりする。[[爆発]]の可能性もあり、非常に危険である。よって、七酸化二マンガンを調製する実験を安易に行ってはならない。 == 用途 == 先述の通り、非常に危険な性質を持つため、以下の用途以外ではほとんど使われていない。 [[実験器具]]の強力な[[洗浄]]液として、不溶性の[[有機化合物]]などの分解除去に用いられることがあるが、必ず'''冷却した'''濃硫酸に、過マンガン酸塩を'''極少量'''ずつ混合して調製することが求められる。濃硫酸と過マンガン酸塩を一気に加えたことによる爆発事故が起こっている<ref>京都第一法律事務所 村井 豊明 弁護士 科学者のための法律相談『学生実験中に事故が起きた・・・』 「[http://www.daiichi.gr.jp/publication/scientist/22.html 過去の判例に見る実験中の事故の事例」 (1)過マンガン酸カリウムと濃硫酸の混合による爆発]</ref><ref>佐賀県教育センター 「これで安心!実験・観察の安全テクニック『安全な理科実験・観察ハンドブック(高等学校編)』」P115 {{PDFlink|[http://www.saga-ed.jp/kenkyu/kenkyu_chousa/h16/01anzennarika/shiryou/06jiko.pdf I 事故の発生状況とその後の対応]}}</ref>。[[六価クロム]]の環境負荷の高さ、処理の煩雑さから、[[クロム酸酸化#クロム酸混液|クロム酸混液]]より、こちらの方を洗浄液として選ぶ場合があるが、万が一の事故への対策もなしに用いるべきではない。 == 出典 == {{Reflist}} {{マンガンの化合物}} {{Chem-stub}} {{DEFAULTSORT:ななさんかにまんかん}} [[Category:マンガンの化合物]] [[Category:酸化物]] [[Category:酸化剤]]
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