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'''不変質量'''(ふへんしつりょう、{{lang-en-short|invariant mass}})は、[[ローレンツ変換]]によって関連付けられた全ての[[w:frame of reference|基準系]]で不変になるような、系の固有の[[質量]]である。不変質量は、系が全体として静止しているときの、系の全エネルギーを[[光速]]の二乗で割った値と等しい。 '''静止質量'''(せいししつりょう、{{en|rest mass}})、'''固有質量'''(こゆうしつりょう、{{en|proper mass}})、'''内在質量'''(ないざいしつりょう、{{en|intrinsic mass}})、または単に'''質量''' ({{en|mass}}) とも言う。 == 概要 == [[Image:Rest mass 0 and 1.svg|thumb|right|160px|粒子の持ちうる4元運動量。{{colors|white|#0000FF|'''青い線'''}}は不変質量がゼロの場合の運動量の領域を表し、{{bgcolor|#00FF00|'''緑の線'''}}は質量を持つ(マッシブである)場合の運動量の領域を表す。]] 単一または複数の[[物体]]で構成される系の不変質量は、系の全[[エネルギー]]および[[運動量]]の性質と関係している。不変質量は、あるスケールで計測される系の質量と等しい。 孤立した系の[[質量中心]]が安定した[[速度]]で直線上を運動するとき、観測者は常にそれに沿って運動することができる。これは、系の全運動量がゼロになる[[w:center of momentum frame|運動量中心系]](ゼロ運動量系)である。このような系は、(気体の入った瓶のような)境界のある系であるなら、全体として"静止している"ようにみなすことができる。不変質量は静止系の全エネルギーを''c''{{sup|2}}で割った値に等しい。ここで、''c''は光速である。これを[[E=mc2|質量とエネルギーの等価性]]と言う。運動量中心系の全エネルギーは、さまざまな[[慣性系]]からさまざまな観測者によって観測される中で'''最小'''のエネルギーである。この時のエネルギーを'''静止エネルギー'''と言う。 二つ以上の粒子で構成された系では、運動量中心系の中で粒子はそれぞれ運動し、[[基本相互作用|基本的な力]]により相互作用しあう。このとき、粒子の[[運動エネルギー]]および[[ポテンシャルエネルギー]]の全エネルギーは粒子の静止質量の和より大きくなり、系の不変質量に寄与する。観測者によって計算される粒子の運動エネルギーの和は、運動量中心系(または、系が境界を持つ場合は静止系)で最小である。 == 粒子物理 == [[素粒子物理学]]において、不変質量<math>m_0</math>は[[エネルギー]]''E''および[[運動量]]'''''p'''''の数学的組み合わせである。この'''不変質量'''は全ての基準系において等しく、粒子の静止系における[[質量]]の値である。([[特殊相対性理論]]を参照。)不変質量と、[[光速]]<math>c</math>、エネルギーおよび運動量との関係は次のとおりである: :<math>(m_0c^2)^2=E^2-c^2|\boldsymbol{p}|^2</math> または、''c'' = 1である[[自然単位系]]においては次のとおりである: :<math> m_0^2 = E^2 - |\boldsymbol{p}|^2.</math> この方程式は、不変質量は[[4元ベクトル]] (''E'', '''''p''''') の擬ユークリッド長さであることを意味する。[[空間]]と[[時間]]の次元がそれぞれ逆符号の相対性理論版の[[ピタゴラスの定理]]を用いて計算される。この長さは四次元での[[ローレンツブースト]]や回転に対して保存する。これは、[[ベクトル]]の長さが回転に対して保存することと同様である。 不変質量は崩壊反応の期間に保存する量から決定されるので、ある単一粒子の崩壊生成物のエネルギーおよび運動量から計算される不変質量は崩壊した粒子の質量に等しい。粒子系の不変質量は、次の一般的な公式で計算することができる: :<math>\left(Wc^2\right)^2= \left(\sum E\right)^2-c^2\left|\sum \boldsymbol{p}\right|^2</math> ここで、 : <math>W</math> は、粒子の不変質量である。これは、崩壊粒子の質量に等しい。 : <math>\sum E</math> は、粒子のエネルギーの総和である。 :<math>\sum \boldsymbol{p}</math> は、粒子の[[運動量]]の[[ベクトル和]]である。(運動量の大きさと方向を含む。) 不変質量という語は、[[非弾性散乱実験]]においても用いられる。反応に使われたエネルギーが検出されたエネルギーより大きい非弾性反応(例えば、生じる全ての粒子がその実験で検出される訳ではない場合)を考えると、反応の不変質量<math>W</math>("欠損質量"としても知られる)は次のように定義される: :<math>W^2 = \left(\sum E_{\text{in}} - \sum E_{\text{out}}\right)^2 - \left(\sum \boldsymbol{p}_{\text{in}}- \sum \boldsymbol{p}_{\text{out}}\right)^2</math> 系の中で優勢な粒子が実験によって検出されなかった場合、不変質量のプロットは失われた粒子の不変質量の点で大きくピークを描く。 ある方向に沿った運動量は測定することができないような場合、[[w:Transverse mass|横質量]]が使われる。例えば、[[ニュートリノ]]の存在は[[w:missing energy|欠損エネルギー]]からのみ推測される。 == 二粒子衝突の例 == 二粒子衝突(または、二粒子崩壊)における不変質量の二乗は([[自然単位系]]では)次のとおりである: :<math> M^2 = (E_1+E_2)^2-|\boldsymbol{p}_1 + \boldsymbol{p}_2|^2 = m_1^2 + m_2^2 + 2\left(E_1 E_2 - \boldsymbol{p}_1 \cdot \boldsymbol{p}_2 \right). </math> == 静止エネルギー == {{main|静止エネルギー}} '''静止エネルギー''' (rest energy) <math>E_0</math> は次のように定義される: :<math>E_0=m_0 c^2</math>, ここで、<math>c</math>は[[光速|真空中の光速]]である<ref> http://www.prod.sandia.gov/cgi-bin/techlib/access-control.pl/2006/066063.pdf</ref>。一般的に、[[エネルギー]]の違いのみが物理的意義を持つ<ref>{{cite book |last=Modell|first=Michael|coauthors=Robert C. Reid|title=Thermodynamics and Its Applications |publisher=Prentice-Hall|location=Englewood Cliffs, NJ |year=1974 |isbn=0-13-914861-2}}</ref>。 静止エネルギーの概念は、アインシュタインが有名なエネルギーと質量の等価性を導くきっかけとなった[[特殊相対性理論]]から得られる。[[E=mc2]]も参照のこと。 == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{reflist}} == 参考文献 == * {{cite book | author=Landau, L.D., Lifshitz, E.M.| title=The Classical Theory of Fields: 4-th revised English Edition: Course of Theoretical Physics Vol. 2 | publisher=Butterworth Heinemann | year=1975 | isbn=0-7506-2768-9}} * {{cite book | author=Okun, L.B. | title=The Concept of Mass | publisher=http://www.worldscibooks.com/etextbook/6833/6833_02.pdf | year=1989 | isbn=}} * {{cite book | author=Halzen, Francis; Martin, Alan | title=Quarks & Leptons: An Introductory Course in Modern Particle Physics | publisher=John Wiley & Sons | year=1984 | isbn=0-471-88741-2}} == 関連項目 == * {{仮リンク|特殊相対性理論における質量|en|Mass in special relativity}} * [[不変量 (物理学)]] * {{仮リンク|横質量|en|Transverse mass}} {{DEFAULTSORT:ふへんしつりよう}} [[Category:相対性理論]] [[Category:質量]] [[Category:エネルギー]] [[de:Äquivalenz von Masse und Energie#Invariante Masse]]
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