中巌円月のソースを表示

{{Infobox Buddhist
|名前=中巌円月
|生没年=[[正安]]2年[[1月6日 (旧暦)|1月6日]] - [[文中]]4年/[[応安]]8年[[1月8日 (旧暦)|1月8日]]{{sfn|葉貫|1997}}<br />（[[1300年]][[1月28日]] - [[1375年]][[2月9日]]〈[[ユリウス暦|新暦]]〉）
|幼名=[[土屋氏|土屋]]吉祥丸{{sfn|葉貫|1997}}
|号=道号：中巌{{sfn|葉貫|1997}}<br/>
雅号：中正子{{sfn|葉貫|1997}}、中正叟{{sfn|葉貫|1997}}、東海一漚子{{sfn|葉貫|1997}}
|諱=至道→円月{{sfn|葉貫|1997}}
|諡号=仏種慧済禅師{{sfn|葉貫|1997}}
|生地=[[相模国]][[鎌倉]]（[[神奈川県]][[鎌倉市]]）{{sfn|葉貫|1997}}
|没地=[[山城国]][[京都]]（[[京都府]][[京都市]]）{{sfn|葉貫|1997}}
|画像=
|説明文=
|宗旨=[[臨済宗]]{{sfn|葉貫|1997}}
|宗派=[[大慧宗杲|大慧派]]{{sfn|葉貫|1997}}
|寺院=開山：[[吉祥寺 (群馬県川場村)|吉祥寺]]（[[上野国]]利根荘（[[群馬県]][[川場村]]））{{sfn|竹貫|2007}}
|師= [[嶮崖巧安]]{{sfn|竹貫|2007}}、[[東明慧日]]{{sfn|竹貫|2007}}、[[霊山道隠]]{{sfn|竹貫|2007}}、[[虎関師錬]]{{sfn|竹貫|2007}}、[[古林清茂]]{{sfn|竹貫|2007}}、'''[[東陽徳輝]]'''{{sfn|竹貫|2007}}
|弟子=[[南宗建幢]]{{sfn|葉貫|1997}}、[[子建浄業]]{{sfn|葉貫|1997}}、[[東湖浄暁]]{{sfn|葉貫|1997}}、[[東生浄旭]]{{sfn|葉貫|1997}}、[[帰宗浄惲]]{{sfn|葉貫|1997}}、[[仲和原礼]]{{sfn|葉貫|1997}}、[[西昆原池]]{{sfn|葉貫|1997}}、[[大業建紹]]{{sfn|葉貫|1997}}
|著作= 『原民』、『原僧』、『中正子』、『自歴譜』、『藤陰瑣細集』、『文明軒雑談』、『仏種慧済禅師語録』、『日本書』、『蒲室集註解』{{sfn|葉貫|1997}}
|廟=[[建仁寺]]妙喜世界（妙喜庵）{{sfn|葉貫|1997}}、[[建長寺]]梅洲庵{{sfn|葉貫|1997}}
}}
'''中巌円月'''（ちゅうがんえんげつ、正安2年（1300年）1月6日<ref name=":0">{{Cite|和書|ref=harv|title=日本古典文学大辞典第4巻|author=日本古典文学大辞典編集委員会|date=1984-07|publisher=岩波書店|pages=240}}</ref> - 応安8年（1375年）1月8日）<ref name=":0" />は、[[鎌倉時代]]末期から[[南北朝時代 (日本)|南北朝時代]]にかけての[[臨済宗]][[大慧宗杲|大慧派]]の僧、[[数学者]]（[[和算家]]）、漢詩人。[[相模国]][[鎌倉]]の出身で、俗姓は[[土屋氏]]。中巌は道号。[[諡号]]は仏種慧済禅師。[[東明慧日]]や[[虎関師錬]]らに学び、中でも[[元 (王朝)|元]]の[[東陽徳輝]]の法を嗣ぐことを表明した。[[大友貞宗]]・[[大友氏泰|氏泰]]父子の帰依を受けた。数学に優れ、主著『觿耑算法』は散逸したが、『治暦篇』（『中正子外篇』6）が残る。また[[五山文学]]の代表者の一人であり、主著に詩文『東海一漚集』『東海一漚集余滴』、随筆『文明軒雑談』などがある。[[霊源院]]に坐像が残る。

== 生涯 ==
8歳で[[鎌倉]][[寿福寺]]（[[臨済宗建長寺派]]）に入った後<ref name=":0" />、[[醍醐寺]]に入って[[密教]]を学び、また[[曹洞宗]]の[[東明慧日]]に師事した。[[正中 (元号)|正中]]2年（[[1325年]]）、[[中国]]の[[元 (王朝)|元]]に入り<ref name=":0" />、[[元弘]]2年/[[正慶]]元年（[[1332年]]）に[[日本]]に戻った<ref name=":0" />。[[建武 (日本)|建武]]元年（[[1334年]]）、鎌倉建長寺の後堂首座となる<ref name=":0" />。しかし、[[暦応]]2年（[[1339年]]）に[[東陽徳輝]]の法を嗣ぐことを表明したところ、円月の師父[[東明慧日]]が属する曹洞宗宏智派から背反者として指弾される<ref name=":0" />。迫害を逃れるため、鎌倉・豊後・京都の[[万寿寺]]の住職をつとめ<ref name=":0" />、[[康安]]2年（[[1362年]]）に[[建仁寺]]第四十二世住職となるも<ref name=":0" />、暗殺を企てられたため退去<ref name=":0" />。[[貞治]]6年（[[1367年]]）には[[建長寺]]の住持となり<ref>特別展 栄西と建仁寺（東京国立博物館・読売新聞社・NHK・NHKプロモーション 2014）</ref>、[[臨済宗]]における一派を形成した。

[[朱子学]]を初めとする[[宋学]]に通じ、[[明治時代]]の[[西村天囚]]は、日本での本格的な宋学受容は中巌円月に始まるのではないかと主張した{{sfn|西村|1909|p=85}}。

[[神武天皇]]については、「[[呉 (春秋)|呉]]の[[太伯・虞仲|太伯]]の子孫」であるとして、「天皇中国人説」を唱えた<ref>[[山本七平]]『現人神の創作者たち』</ref>。

== 数学者として ==
数学に詳しく、随筆の『文明軒雑談』には数学や[[度量衡]]の話題を多く記している他、自身でも『觿耑算法』という数学書を著しているが、後者は現存していない<ref>[[川本慎自]]「禅僧の数学知識と経済活動」中島圭一 編『十四世紀の歴史学 新たな時代への起点』（高志書院、2016年） ISBN 978-4-86215-159-9</ref>。

その他、『中正子外篇』の第六となる『治暦篇』にも数学上の業績が残っている{{sfn|岡山|田村|2003|pp=110–111}}。特に、中世日本において[[分数]]計算が言及された例として貴重なものである{{sfn|岡山|田村|2003|pp=110–111}}。1[[太陽年]]の平均日数と、[[太陰太陽暦]]の[[メトン周期]]における1年の平均月数から、1[[朔望月]]の平均日数を求める計算で、数式に表すと以下のようになる{{sfn|岡山|田村|2003|pp=110–111}}。

<math>365 \frac{1}{4} \div 12 \frac{7}{19} = \left( \frac{1461}{4} \times \frac{19}{235} = \frac{27759}{940} =\right)  29 \frac{499}{940}.</math>

ただし、本文中には[[除算]]に関する記述がなく、2つの[[被演算子]]となる[[帯分数]]が並べられた後、突然正しい解となる帯分数が与えられる{{sfn|岡山|田村|2003|pp=110–111}}。このことから、[[岡山茂彦]]と[[田村三郎 (数学者)|田村三郎]]は、中巌自身は計算法を余り理解せず、計算結果を中国の数学書から書き写した可能性もあるのではないかと指摘している{{sfn|岡山|田村|2003|pp=110–111}}。

自伝である『自歴譜』によれば、中巌円月は数え12歳の時に道恵から「九章算法」というものを学んだという<ref name="shimano-2017">{{Cite conference | 和書 | last=島野 | first=達雄 | authorlink=島野達雄 | title=吉田宗恂とその周辺―コンピュータと図書館を活用して：中巌円月・月舟寿桂・継天寿戩・梅屋宗香 | conference=第271回近畿和算ゼミナール | url=http://www.wasanjyorin.com/soujyun%252002.pdf |format=PDF | year=2017 | month=5 }}</ref>{{efn|この箇所は『[[古事類苑]]』にも引かれている{{sfn|岡山|田村|2003|pp=110–111}}}}。ここでいう「九章算法」とは、中国の数学書『[[九章算術]]』のことではなく、単に数学の同義語と考えられる{{sfn|岡山|田村|2003|pp=110–111}}。その他、[[元 (王朝)|元]]に7年間に滞在した時に数学を学んだ可能性もある{{sfn|岡山|田村|2003|pp=110–111}}。しかし、『治暦篇』には、当時中国で使用されていた[[授時暦]]への言及が全くないことから、岡山と田村は、元で暦学は学ばなかったに違いないとしている{{sfn|岡山|田村|2003|pp=110–111}}。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}

=== 注釈 ===
{{Notelist}}

=== 出典 ===
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
* {{Cite journal | 和書
 | last=岡山 
 | first=茂彦
 | authorlink=岡山茂彦
 | last2=田村
 | first2=三郎
 | authorlink2=田村三郎 (数学者)
 | title=和算以前における分数・小数理解（数学史の研究）
 | publisher=[[京都大学]]
 | journal=数理解析研究所講究録
 | url=https://hdl.handle.net/2433/43008
 | volume=1317
 | pages=108–113
 | year=2003
 | hdl=2433/43008
 | CRID=1050564285473762432
 | ref={{harvid|岡山|田村|2003}}
}}
* {{ Citation | 和書
  | last = 蔭木
  | first = 英雄
  | author-link = 蔭木英雄
  | title = 中世禅者の軌跡：中厳円月
  | publisher = [[法蔵館]]
  | series = 法蔵選書
  | date = 1987
  | isbn = 978-4831810427
}}
* {{Cite thesis | 和書
  | last=孫
  | first=容成
  | authorlink=孫容成
  | degree= 博士（文学） 乙第2号
  | title=中巌円月の思想と文学
  | publisher=[[大手前大学]]
  | url=https://otemae.repo.nii.ac.jp/records/511
  | year=2013
  | naid=500000584529
  | id={{国立国会図書館書誌ID|025316514}}
  | ref={{harvid|孫|田村|2013}}
}} - 附録に『上[[後醍醐天皇|建武天子]]表』『原民篇』『原僧篇』などの現代日本語訳を載せる。
* {{Citation | 和書
  | last = 竹貫
  | first = 元勝
  | author-link = 竹貫元勝
  | contribution = 中巌円月
  | title = 改訂新版[[世界大百科事典]]
  | publisher = [[平凡社]]
  | publication-date = 2007
}}
* {{ Citation | 和書
 | last=西村
 | first=天囚
 | author-link=西村天囚
 | title=日本宋学史
 | publisher=[[杉本梁江堂]]
 | year=1909
 | url=https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/991493
 | doi=10.11501/991493
 | id={{NDLJP|991493}}
 | chapter-url=https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/991493/73
 | chapter=中巌円月の尊信
 | pages=85–97
}}
* {{Citation | 和書
  | last = 葉貫
  | first = 磨哉
  | author-link = 葉貫磨哉
  | contribution = 中巌円月
  | title = [[国史大辞典 (昭和時代)|国史大辞典]]
  | publisher = [[吉川弘文館]]
  | publication-date = 1997
}}
* {{ Citation | 和書
  | last = 増田
  | first = 知子
  | author-link = 増田知子
  | title = 中巖圓月東海一漚詩集
  | publisher = [[白帝社]]
  | year = 2002
  | isbn = 978-4891745684
}}
{{Normdaten}}

{{DEFAULTSORT:ちゆうかんえんけつ}}
[[Category:土屋氏]]
[[Category:鎌倉時代の僧]]
[[Category:南北朝時代の僧 (日本)]]
[[Category:日本の禅僧 (臨済宗)]]
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[[Category:五山文学]]