二硫化物のソースを表示

[[ファイル:Pyrite-unit-cell-3D-balls.png|thumb|120px|二硫化鉄（黄鉄鉱中）の結晶構造]]
'''二硫化物'''（にりゅうかぶつ）とは、二硫化物イオン {{chem|(S|2|2-|)}} を構成要素として含む塩、化合物の総称。[[多硫化物]]（ポリ硫化物）の範疇に含まれる。「二硫化物」という表現は主に[[無機化合物]]や金属錯体に関して用いられ、一方「R-S-S-R」という一般式で表される[[有機化合物]]はもっぱら「[[ジスルフィド]] (disulfide)」と呼ばれる。なお、英語では無機、有機化合物のいずれも disulfide と呼ばれる。

二硫化物の代表例として [[二硫化ナトリウム]] {{chem|(Na|2|S|2|)}} 、[[黄鉄鉱]]を作る[[硫化鉄|二硫化鉄]] (FeS<sub>2</sub>) などが挙げられる。いずれも構造中に S-S 結合を含む。

一方、[[二硫化炭素]]や[[二硫化モリブデン]]（硫化モリブデン(IV)）などは、その構造に S-S 結合を含まない。そのような、化学式に S<sub>2</sub> を含み「二硫化～」と呼称されるが S-S 結合を持たない化合物は、二硫化物ではなく[[硫化物]]の範疇に入る。

== 二硫化物イオン ==
二硫化物を形成する陰イオン、'''二硫化物イオン''' ({{chem|S|2|2-}}, disulfide ion) は、硫化物イオン (S<sup>2-</sup>) に単体の[[硫黄]]を作用させると生じる。二硫化ナトリウムは[[硫化ナトリウム]]に硫黄を加えて調製する。
: <chem>Na2S + 1/8 S8 -> Na2S2</chem>

二硫化物イオンにさらに硫黄を加えると、さらに S-S 結合が伸びた多硫化物イオン（ポリ硫化物イオン）が生成する。

二硫化物イオンに[[ハロゲン化アルキル]]を加えると有機ジスルフィドが生成する。
: <chem>2 R-Br + Na2S2 -> R-S-S-R + 2 NaBr</chem>

== 錯体の構造 ==
二硫化物イオンを[[配位子]]とする錯体では、ほとんどの場合イオンは2個以上の金属に結合しており、さらにその多くでジグザグ状の M-S-S-M 型をとっている。少数の例として、二硫化物イオンがη<sup>2</sup>型で1個の金属に配位している錯体（例: {{chem|Os(S|2|)(CO)|2|(PPh|3|)|2}}）、M-S-M 構造を含むμ型の錯体（例: Cp<sup>*</sup><sub>2</sub>Cr<sub>2</sub>S<sub>5</sub>）が知られる<ref name="Cotton">Cotton, F. A.; Wilkinson, G. ''Advanced Inorganic Chemistry'' 5th ed., 1988, Wiley.</ref>。

== ハロゲン化物 ==
[[ファイル:Disulfur-dichloride-3D-balls.png|thumb|150px|二塩化二硫黄の分子構造]]
[[二塩化二硫黄]] ({{chem|S|2|Cl|2}}) は市販もされている化合物で、溶融した単体硫黄に塩素分子を作用させると得られる橙色の液体である。これはゴムの加硫に利用され、分子構造は Cl-S-S-Cl、2本の S-Cl 結合は二面角103°と曲がっている<ref name="Cotton" />。二臭化二硫黄 {{chem|S|2|Br|2}} も存在と構造が知られた化合物である。

== 水素化物 ==
[[ファイル:H2S2-CM-3D-balls.png|thumb|150px|二硫化水素の分子構造]]
二硫化ナトリウムを塩酸で処理すると、[[二硫化水素]]（{{chem|H|2|S|2}}）が発生する。
: <chem>Na2S2 + 2HCl -> 2NaCl + H2S2</chem>

二硫化水素を単離することは可能だが、熱的に不安定であり[[硫化水素]]と単体[[硫黄]]に分解する<ref name="Cotton" />。
: <chem>H2S2 -> H2S + S</chem>

二硫化水素は[[アナログ (化学)|アナログ]]の[[過酸化水素]]と異なり酸化力は示さない。

== 類縁体 ==
他の16族元素も硫黄と同様に {{chem|X|2|2-}} (X = O, Se, Te) を含む化合物が知られる。[[過酸化ナトリウム]] ({{chem|Na|2|O|2}}) は強い酸化剤として、[[二セレン化ナトリウム]] ({{chem|Na|2|Se|2}}) は[[ジセレニド]] (R-Se-Se-R) の合成試剤として用いられる。

== 関連項目 ==
* [[多硫化物]]
* [[硫化物]]
* [[ジスルフィド]]

== 参考文献 ==
{{Reflist}}

{{DEFAULTSORT:にりゆうかふつ}}
[[Category:硫化物]]
[[Category:硫黄の化合物]]
[[Category:アニオン]]

[[de:Disulfide#Ionische_Disulfide]]
[[en:Disulfide#Inorganic_vs._organic_disulfides]]