亜硝酸ナトリウムのソースを表示

{{Infobox_無機化合物
|name=亜硝酸ナトリウム
|画像=[[Image:Sodium nitrite.jpg|250px]]
|IUPAC名=Sodium Nitrite
|別名=亜硝酸ソーダ
|組成式=NaNO<sub>2</sub>
|式量=69.01<ref name=Kagaku1996>{{Cite book|和書|year=1996|title=12996の化学商品|publisher=[[化学工業日報]]|edition= |pages=1|chapter=【亜硝酸ソーダ】|isbn=4-87326-204-6|ref=化学商品1996}}</ref>
|形状=
|結晶構造=斜方晶系
|CAS登録番号=7632-00-0<ref name=Kagaku1996 />
|密度=2.17<ref name=Kagaku1996 />
|相=固体
|水への溶解度=81.6/15℃<ref name=Kagaku1996 />
|温度=20
|融点=270
|融点注=<ref name=Kagaku1996 />
|沸点=320
|沸点注=（分解する）<ref name=Kagaku1996 />
|出典=CRC、<ref name=Kagaku1996 />
}}
[[画像:NaNO2 structure.jpg|thumb|250px|亜硝酸ナトリウムの強誘電状態での結晶構造]]
'''亜硝酸ナトリウム'''（あしょうさんナトリウム、Sodium nitrite、'''NaNO<sub>2</sub>'''）は[[ナトリウム]]の[[亜硝酸塩]]である。別名は'''亜硝酸ソーダ'''<ref name=Kagaku1996 />。'''亜硝酸Na'''とよく略記される。工業薬品JIS K1472-83、試薬JIS K8019-92、[[食品添加物]]<ref name=Kagaku1996 />。[[毒物及び劇物取締法]]で劇物に指定。[[消防法]]で[[危険物]]第1類（酸化性固体）の亜硝酸塩類（酸化性固体亜硝酸塩類第1種酸化性固体(50kg)）。[[水質汚濁防止法]]で[[水質汚濁防止法施行令|施行令]]第2条有害物質。食品の添加物として[[赤肉 (栄養学)|加工肉]]の発色剤・防腐剤として使われることが多い。

== 特徴 ==
白色または黄色の[[斜方晶系]]の[[結晶]]で、市販品は粉末・棒状または粒状のものが多い<ref name=Kagaku1996 />。[[吸湿性]]<ref name=Kagaku1996 />・[[潮解性]]を示し水によく溶け、[[水溶液]]は[[アルカリ性]]となる<ref name=Kagaku1996 />。[[アルコール]]や[[エーテル (化学)|エーテル]]には微溶解する<ref name=Kagaku1996 />。[[酸]]で分解すると[[三酸化二窒素]]を生じる<ref name=Kagaku1996 />。

== 特性と用途 ==
代表的な秩序‐無秩序型の[[強誘電体]]のひとつとして知られる<ref>{{Cite web|和書|url = https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2005/pr20050124/pr20050124.html |title = 有機強誘電体で最高の誘電特性をもつ低分子材料を開発 |publisher = 独立行政法人産業技術総合研究所 |date = 2005年1月24日 | accessdate=2011-06-09}}</ref>。[[金属]]の表面処理、[[発泡剤]]、熱処理剤のほかに、[[漂白]]、アゾ染料のジアゾ化、[[試薬]]等で用いられる。またニトロ化合物や酸化窒素の製造にも用いられる<ref name=Kagaku1996 />。[[防錆剤]]としては[[コンクリート]]中の[[鉄筋]]腐食防止<ref>{{Cite journal|和書 |author=岸谷孝一, 樫野紀元 |year=1979 |title=コンクリート中の鉄筋の腐食に関する研究 : その 1 コンクリートの中性化深さが鉄筋腐食に及ぼす影響について |journal=日本建築学会論文報告集 |volume=283 |pages=11-16 |doi=10.3130/aijsaxx.283.0_11 |publisher=日本建築学会}}</ref>、滅菌剤としては[[医療]]器具消毒でほとんどの[[ウイルス]]や細菌を不活性にする中水準消毒剤として用いられる<ref>{{Cite web|和書|url = http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/hp-infect/file/manual/d-1.pdf |format=PDF|title = 洗浄・消毒・滅菌について |publisher = [[大阪大学]]医学部附属病院感染制御部 | accessdate=2011-06-09}}{{404|date=2024-07}}</ref>。医療においては、[[青酸中毒]]の患者に[[解毒剤]]として用いられることがある。

== 取り扱い上の注意 ==

=== 燃焼 ===
可燃物と混合した状態では容易に発火、燃焼する。特にアンモニア塩類やシアン化合物との混合状態では[[爆発]]の危険性がある。発火時は水で消火する<ref name=Kagaku1996 />。

=== 廃棄 ===
水溶液とし、攪拌する[[スルファミン酸]]溶液中に少しずつ加えて分解する。または水溶液として加温・攪拌しながら塩化アンモニウムを少しずつ加えて分解する<ref name=Kagaku1996 />。

===急性毒性===
[[毒物及び劇物取締法|劇物]]。[[致死量]]は約2gと言われる<ref name=Kagaku1996 />。高濃度の溶液を飲むと中毒症状を起こし、[[頭痛]]や[[吐き気]]、[[チアノーゼ]]、[[意識障害]]や[[けいれん|痙攣]]などを発症する<ref name=Kagaku1996 />。皮膚接触での刺激は弱い<ref name=Kagaku1996 />。飲み込んだ際の[[応急処置]]は、牛乳や生の鶏卵などを飲ませ、吐き出させる。皮膚や目に付着した際には充分な水で洗い流す<ref name="Kagaku1996" />。

==食品添加物としての評価==
{{See also|赤肉 (栄養学)#加工肉}}

=== 加工肉への添加 ===
食品添加物としては、日本では肉加工品の[[塩漬け#塩せき・無塩せき|塩せき]]に用いられている。これは、加工肉における、[[ボツリヌス菌]]の増殖<ref>{{Cite journal|和書|author=安藤芳明|year=1981|title=ボツリヌス中毒およびその発生防止法をめぐる最近の問題点|journal=食品衛生学雑誌|volume=22|issue=6|pages=455-461|publisher=日本食品衛生学会|doi=10.3358/shokueishi.22.455}}</ref>や[[病原性大腸菌]]の[[毒素]]（ベロトキシン）増加を抑制する<ref>{{Cite journal|和書|author=森田英利, 坂田亮一, 加藤行男, 久松伸|date=2003-03|title=一酸化窒素による腸管出血性大腸菌O157の抗菌メカニズムとベロトキシン産生量|url=https://az.repo.nii.ac.jp/records/4446|journal=麻布大学雑誌|volume=5/6|pages=176-181|publisher=麻布大学|CRID=1050001338029249280|naid=110004323697|ISSN=1346-5880}}</ref>目的で添加が義務づけられている<ref name="nodai">{{Cite web|和書 |url=http://www.nodai.ac.jp/web_journal/adventure/vol32.html |title=進化する畜産食品～「機能性食品」の開発～ |publisher=[[東京農業大学]] |accessdate=2011-06-09}}</ref>。また、亜硝酸ナトリウムには、加工肉の[[発色剤|発色]]を良くしたり、熟成風味が醸成されるという利点もあ[[るろうに剣心 (実写映画)|る]]<ref>{{Cite web |title=東京農業大学　知的好奇心へのアドベンチャー |url=https://www.nodai.ac.jp/web_journal/adventure/vol32.html |website=www.nodai.ac.jp |access-date=2024-07-22}}</ref>。加工肉においては、[[ソルビン酸]]とともに亜硝酸ナトリウム塩が使用されるケースが多い。内閣府食品安全委員会の食品健康影響評価書『ソルビン酸カルシウム（2008年11月）』では<ref>{{Cite web |title=評価書詳細 |url=https://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20070320001 |website=www.fsc.go.jp |access-date=2024-07-19}}</ref>、加工肉において、ソルビン酸と亜硝酸ナトリウムがしばしば共存することが指摘されている。また、この評価書では、「特定の実験環境において、これらの両物質が加熱されることによりDNA 損傷物質が産生されるが、加工肉において、形成されることを意味するものではない」と指摘されている。

=== IARCの報告 ===
2015年、WHOの研究機関[[国際がん研究機関|IARC]]の作業部会において、[[赤肉]]や加工肉の摂取と十数種類のがんとの関連を調査した。これによると、赤肉の摂取と大腸癌、膵臓癌や前立腺癌との相関関係が観察されたため、ヒトに対して「おそらく発がん性がある」（グループ2A）と分類した<ref name="nodai" />。また、加工肉においては、大腸癌を引き起こすという十分な証拠に基づき、ヒトに対して「発がん性がある」（グループ1）と分類された<ref name="WHOMeat" />。また、「加工肉を毎日50g以上食べた場合、50gごとに大腸がんを患う確率が18％上昇する」と報告されていた<ref name="WHOMeat">{{Cite report |author=国際がん研究機関 |authorlink=国際がん研究機関 |date=2015-10-26 |title=IARC Monographs evaluate consumption of red meat and processed meat |url=http://www.iarc.fr/en/media-centre/pr/2015/pdfs/pr240_E.pdf }} {{Cite web |date=2015-11-13 |url=https://www.hsph.harvard.edu/nutritionsource/2015/11/03/report-says-eating-processed-meat-is-carcinogenic-understanding-the-findings/ |title=WHO report says eating processed meat is carcinogenic: Understanding the findings |publisher=[[ハーバード公衆衛生大学院]] |accessdate=2017-05-06}}</ref>。IARC所長のクリストファー・ワイルド博士は、「個人の加工肉の消費は（この数字に比べて）十分に少ないが、肉の摂取量に応じてこのリスクは増加し、公衆衛生上無視できないものになる恐れがある。」とコメントした。また、同時に、赤肉には栄養価があるため、政府や国際規制機関はリスクと利点のバランスを考慮する必要があると述べている。

=== 食品への添加基準 ===
JECFA（FAO/WHO合同食品添加物専門家会議）の評価によると、亜硝酸ナトリウムの[[一日摂取許容量|ADI]]（1日摂取許容量：生涯にわたり毎日摂取し続けても影響が出ないと考えられる一日あたりの量）を「0－0.07 mg/kg bw/日」と評価している<ref>{{Cite web |title=亜硝酸ナトリウム |url=http://www.jpec.gr.jp/detail=normal&date=safetydata/a/daa8.html |website=www.jpec.gr.jp |access-date=2024-07-19}}</ref>。これは、ラットを用いた 2年間の試験での心肺への影響に基づく [[NOAEL]] （無有害作用量）6.7mg/kg 体重/日（亜硝酸イオンとして）に安全係数 100 を適用し、算出されている<ref name=":0">{{Cite web |url=https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000178388.pdf |title=食品健康影響評価の結果通知について |access-date=20240722 |publisher=食品安全委員会}}</ref>。

日本では、厚生省の告示において、亜硝酸塩のADIは一人一日摂取量：0.284mg/人/日)、ADI比(ADI=3mg/人/日)：9.4％と定められている<ref>{{Cite web |url=https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20130620ki1&fileId=210 |title=食品安全委員会が自ら行う食品健康影響評価に関し 企画等専門調査会に提出する資料に盛り込む事項 |access-date=20240722 |publisher=食品安全委員会}}</ref>。これは、ラットを用いた 13週間飲水投与試験での 副腎皮質球状帯への影響に基づく NOAEL 1.47mg/kg 体重/日（亜硝酸イオンとして）に安全係数 50 を適用し、算出されている<ref name=":0" />。また、食品添加物量の基準として、加工肉では0.07g/kg（0.007%）、魚肉加工肉では0.05g/kg（0.005%）、魚卵加工品では0.005g/kg（0.0005%）、という量が使用基準として指定されている<ref>{{Cite web |url=https://www.ffcr.or.jp/shokuhin/upload/e5fa1c37b97cd7751ae74b0fbc78567833f7c77b.pdf |title=各添加物の使用基準及び保存基準 |access-date=20240719 |publisher=厚生労働省}}</ref>。

== 合成 ==
工業的な製法では、[[アンモニア]]を[[酸化]]して得た[[一酸化窒素]]と[[二酸化窒素]]を[[炭酸ナトリウム]]ないし[[水酸化ナトリウム]]に吸収させて合成する<ref name=Kagaku1996 />。
: <chem>Na2CO3 + NO + NO2 -> 2NaNO2 + CO2</chem>

また、実験室では融解させた[[硝酸ナトリウム]]と[[鉛]]を加熱しながら反応させることで得られる<ref name=Kagaku1996 />。
: <chem>NaNO3 + Pb -> NaNO2 + PbO</chem>

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
* 日本化学会・編『第4版 新実験化学講座 16巻 無機化合物』 丸善、1991年、{{ISBN2|9784621012017}}

== 外部リンク ==
{{Commonscat|Sodium nitrite}}
* [http://piezo.eng.u-toyama.ac.jp/inside-lab/MSDS/J_37402.pdf 製品安全データシート]
* [http://kikakurui.com/k8/K8019-2010-01.html 亜硝酸ナトリウム (試薬) JISK8019:2010]

{{ナトリウムのオキソ酸塩}}
{{Chem-stub}}
{{DEFAULTSORT:あしようさんなとりうむ}}
[[Category:亜硝酸塩]]
[[Category:無機化合物]]
[[Category:ナトリウムの化合物]]
[[Category:解毒剤]]
[[Category:食品添加物]]