人口重心のソースを表示

'''人口重心'''（じんこうじゅうしん）とは、ある[[地域]]に住む人々の[[居住]]地点からなる図形の[[重心]]である。物理的に説明すれば、その地域に住んでいる全ての人が同じ体重を持つと仮定して、その地域を支えることができる重心となる。

==人口重心の計算方法==
{{出典の明記|date=2020年2月|section=1}}
本来ならば1人1人の[[住民]]の自宅が所在する[[経度]]・[[緯度]]をもとに重心を求めるのが望ましいが、これは事実上不可能である。そのため通例は基本単位区（[[町丁目]]、[[市区町村]]など）の人口データをもとに計算し、単位区の[[人口]]は単位区の中心（[[役場]]の位置を使うことも）に集中していると考える。

広い地域の人口重心を正確に計算するには、3次元空間上で重心を計算し、それを地表に投影して人口重心とする。これは現在ではコンピュータで簡単に計算できるが、人口重心の統計はコンピュータが普及する以前から取られており、手作業で計算できるように近似計算が行われている。

=== 格子による近似 ===
地球の丸みが無視できる程度の狭い地域、あるいは、経緯線の歪みに高次の項がない[[赤道]]付近なら、人口重心の経緯度は、[[経緯度]]それぞれの[[平均]]である。これは経緯線を[[格子]]で近似することに相当する。

:<math>\bar{\phi} = \frac{\sum w_i\phi_i}{\sum w_i}</math>
:<math>\bar{\lambda} = \frac{\sum w_i\lambda_i}{\sum w_i}</math>

*<math>\bar{\phi},\;\bar{\lambda}</math> 人口重心の緯度、経度
*<math>\phi_i,\;\lambda_i</math> 基本単位区の中心点の緯度、経度
*<math>w_i\,</math> 基本単位区の人口

=== 高次の近似 ===
やや正確に計算すると、高緯度ほど[[経線]]の間隔が狭まるので、経度の計算に対し緯度に応じた重み付けが必要になる。この式は[[日本]]の[[総務省]][[国勢調査 (日本)|国勢調査]]（2005年）<ref name="総務省_方法">{{Cite web|和書| author = 総務省統計局政策統括官<small>（統計基準担当）</small>統計研修所 | title = 統計表で用いられる用語 分類の解説1 | year = 2005 | url = https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/users/yougo/yougo1.html | accessdate = 2011-09-23 }}</ref>や、米国国勢調査（1960年 -）<ref name="USDC">{{Cite book | title = Centers of Population Computation: 1950, 1960, 1970, 1980, 1990 and 2000 | year = 2001 | url = http://www.census.gov/geo/www/centers_pop.pdf | format = pdf | author = Geography Division U.S. Census Bureau U.S. Department of Commerce }}</ref>で採用されている。ただし、[[アメリカ合衆国]]程度のスケールでは、[[緯線]]の湾曲による影響がスケールの二乗で利いてきて、この式では実際よりやや南の結果が出る。

:<math>\bar{\phi} = \frac{\sum w_i\phi_i}{\sum w_i}</math>
:<math>\bar{\lambda} = \frac{\sum w_i\lambda_i\cos \phi_i}{\sum w_i\cos \phi_i}</math>

==各地の人口重心==
=== 世界 ===
[[File:WorldCenterOfPopulation.png|thumb|世界の人口中心<ref name="PNG_Commons" />|210x210ピクセル]]
{{multiple image
 | caption1  = 1995年国勢調査の人口重心を記念して建てられた[[日本まん真ん中センター]]（岐阜県郡上市美並町）
 | image1    = Nihon Mannaka Center.JPG
 | width1    = 100
 | alt1      = 日本まん真ん中センター
 | image2    = Center of Population Monument.jpg
 | width2    = 100
 | caption2  = 2000年国勢調査の人口重心記念碑（岐阜県関市武芸川事務所）
 | alt2      = 2000年国勢調査の人口重心記念碑
}}
定義や計算に使うデータの精度は様々であり、3次元のベクトルにした[[大都市]]の人口を平均して[[地球]]内部に点を求めたもの<ref name="MathysNA2010">{{Cite journal | author = Nicole Andréa Mathys and Jean-Marie Grether | title = Is the World's Economic Center of Gravity Already in Asia? | journal = Area | volume = 42 | issue = 1 | year = 2010 | pages = 47-50 | url = http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1475-4762.2009.00895.x/abstract | doi = 10.1111/j.1475-4762.2009.00895.x }} [http://www.hec.unil.ch/nmathys/08.03.pdf Lonegr version]。[[経済]]のデータは2006年の値</ref>、地球表面のグリッドに人口を配置して[[測地線]]の和の最短を地球表面上に求めたもの<ref name="Grasland2001">{{Cite journal | url = http://www.ined.fr/fichier/t_publication/141/publi_pdf2_pop_and_soc_english_368.pdf | author = Claude Grasland and Malika Madelin  | title = The unequal distribution of population and wealth in the world | journal = Population Et SociétéS | year = 2001 | month = May | volume = 368 | pages = 1-4 | issn = 0184-7783 | publisher = Institut national d’études démographiques }}経済のデータは1995年の値であることに注意。</ref>、国別人口に対して測地線の和の最短を地表面上に求めた右図<ref name="PNG_Commons">表示の図を作成したデータソースや計算方法は[[:File:WorldCenterOfPopulation.png|ファイルページ]]を参照</ref>などの例がある。いずれも[[中央アジア]]南部から[[南アジア]]北部に重心を得ている。

=== オーストラリア ===
[[オーストラリア]]の人口重心は1911年から1996年まで、[[シドニー]]と[[アデレード]]のほぼ中間にあり、ほとんど移動していない<ref name="Australia">{{Cite web | url = http://www.abs.gov.au/Ausstats/abs@.nsf/0/0B82C2F2654C3694CA2569DE002139D9?Open | title = A Century of Population Change in Australia | author = Graeme Hugo | work = 1301.0 - Year Book Australia, 2001, Australian Bureau of Statistics| date = 2001-01-25 | accessdate = 2011-09-23 }}</ref>。

=== スウェーデン ===
[[スウェーデン]]の人口重心は2006年には[[エレブルー]]にあり、南に移動している<ref name="Sweden">{{Cite book | title = Statistisk årsbok för Sverige (Statistical Yearbook of Sweden 2007) | author = Statistics Sweden | ISBN = 978-91-618-1347-6 | URN = NBN:SE:SCB-2007-A01SA0701_pdf | url = http://www.scb.se/statistik/_publikationer/OV0904_2007A01_BR_A01SA0701.pdf | location = Stockholm | year = 2006.12 | format = pdf | pages = 665}}</ref>。

=== ドイツ ===
[[ドイツ]]の人口重心は2004年に[[シュパンゲンベルク]]にあり、西方へ移動している<ref name="Deutschland">{{Cite web | url = http://www.dradio.de/dlr/sendungen/laenderreport/316034/ | title = Des Deutschen Mittelpunkt: Er liegt so bei Spangenberg herum | author = Claus Stephan Rehfeld | date = 2004-11-05 | work = LänderReport: DeutschlandradioBerlin | accessdate = 2011-09-23 | archiveurl = https://web.archive.org/web/20071024084628/http://www.dradio.de/dlr/sendungen/laenderreport/316034/ | archivedate = 2007-10-24 | url-status=dead|url-status-date=2017-09 }}</ref>。

===日本===

[[日本]]の人口重心は、[[国勢調査 (日本)|国勢調査]]の結果に基づいて[[総務省]][[統計局]]から発表されている。

2000年までの算出方法は、市区町村内の全ての人が市区町村役場にいるものと仮定して計算されていた。2005年以降は、「市町村合併の進展を踏まえ、より精緻に算出する観点から、基本単位区の図形中心点にその基本単位区の人口が集まっているものと仮定し」た方法により計算される<ref name="総務省_結果">{{Cite web|和書| url = https://www.stat.go.jp/data/kokusei/topics/topics22.html | title = 我が国の人口重心（平成17年国勢調査結果から） | author = 総務省 | date = 2007-06-25 | accessdate = 2011-09-23 }}都道府県別、市町村別データあり</ref>。

日本では、下記表のとおり、[[1965年]]（昭和40年）の国勢調査以降、人口重心はすべて[[岐阜県]]に位置する。直近では、[[2005年]]以降[[2020年]]まで、[[関市]]が人口重心となっている。長期的にみると、[[首都圏 (日本)|首都圏]]への人口の転入超過が続いてきたことなどにより、おおむね東南東方向へ移動している<ref>{{Cite web |url=https://www.stat.go.jp/data/kokusei/topics/pdf/topics135.pdf |title=統計トピックス№ 135 我が国の人口重心 |access-date=2024-09-19 |publisher=[[総務省]] |date=2023-01-17}}</ref>。

'''日本の人口重心の推移（1965年～2020年）'''
{| class="wikitable" style="width:100%"
|年次
|東経
|北緯
|位置
|移動距離
|-
|1965(昭和40)年
|136 45 46
|35 39 46
|岐阜県山県郡美山町円原
| -
|-
|1970(昭和45)年
|136 51 11 
|35 39 03 
|岐阜県武儀郡洞戸村高賀
|8.3km
|-
|1975(昭和50)年
|136 53 08 
|35 38 17
|岐阜県美濃市<br>今淵ヶ岳と瓢ヶ岳のほぼ中間
|3.3km
|-
|1980(昭和55)年
|136 54 08 
|35 38 19
|岐阜県郡上郡美並村<br>片知山の北約1200ｍ
|1.5km
|-
|1985(昭和60)年
|136 55 07 
|35 37 45
|岐阜県郡上郡美並村<br>片知山の東約1400ｍ
|1.8km
|-
|1990(平成2)年
|136 57 06 
|35 37 19
|岐阜県郡上郡美並村<br>長良川鉄道半在駅の東北東約650ｍ
|3.1km
|-
|1995(平成7)年
|136 57 55 
|35 37 12
|岐阜県郡上郡美並村<br>長良川鉄道半在駅の東約1825ｍ
|1.3km
|-
|2000(平成12)年
|136 58 45
|35 36 53
|岐阜県武儀郡武儀町北西部
|1.4km
|-
|2000(平成12)年
|136 59 16.83
|35 36 54.50
|岐阜県武儀郡武儀町富之保<br>（武儀郡武儀町立武儀東小学校から北北西約3900ｍ）
| -
|-
|2005(平成17)年
|137 00 27.43
|35 36 20.65
|岐阜県関市富之保<br>（関市立武儀東小学校から北約2260ｍ）
|2.1km
|-
|2010(平成22)年
|137 01 45.46
|35 35 35.31
|岐阜県関市富之保<br>（関市立武儀東小学校から東北東約1835ｍ）
|2.4km
|-
|2015(平成27)年
|137 02 15.84
|35 34 51.44
|岐阜県関市中之保<br>（関市立武儀東小学校から東南東約2452ｍ）
|1.6km
|-
|2020(令和2)年
|137 03 20.44
|35 34 03.64
|岐阜県関市中之保<br>（関市立武儀小学校から東南東約4489ｍ）
|2.2km
|}
====東京都====
[[東京都]]の人口重心は、2020年時点、{{Coord|35|41|14.68|N|139|38|30.69|E|type:landmark_region:JP-13|name=東京都人口重心}}、[[和田堀公園]]近くの[[杉並区]][[松ノ木]]一丁目にある<ref name="総務省_結果2020">{{Cite web|和書 |url=https://www.stat.go.jp/data/kokusei/topics/pdf/topics135.pdf |title=我が国の人口重心（令和2年国勢調査結果から） |author=総務省 |date=2023-01-17 |accessdate=2024-01-20}}都道府県別、市町村別データあり</ref>。1955年に国勢調査時は[[渋谷区]][[明治神宮]]にあったが<ref>{{Cite web|和書|url = https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&query=人口重心&layout=dataset&toukei=00200521&stat_infid=000007914626&metadata=1&data=1 | title = 国勢調査　13　全国および都道府県の人口の重心－昭和25年および昭和30年 | author = e-Stat | accessdate = 2024-01-20 }}</ref>、[[戦後]]、[[多摩地域]]の人口が増えたため西に移動した。

[[東京23区]]の人口重心は、2020年時点、{{Coord|35|41|43.03|N|139|43|42.27|E|type:landmark_region:JP-13|name=東京23区人口重心}}、[[新宿区]][[市谷本村町]]の[[防衛省]]付近にある<ref name="総務省_結果2020" />。

=== アメリカ合衆国 ===
[[File:Marker for center of U.S. population in 1910.jpg|thumb|1910年のアメリカ合衆国人口重心標（インディアナ州モンロー郡庁）]]
2010年の国勢調査では、[[アメリカ合衆国]]の人口重心は[[ミズーリ州]][[:en:Texas County, Missouri|テキサス郡]][[:en:Plato,_Missouri|プレイトー]]にある<ref name="USDC" />。

1990年の国勢調査では、アメリカ合衆国の人口重心はミズーリ州[[:en:Crawford County, Missouri|クローフォード郡]]であった<ref name="USDC" />。

アメリカ合衆国の人口重心は徐々に西進している。1790–1800年には[[アメリカ東海岸|東部]]の[[メリーランド州]]にあったが、1810年には[[ヴァージニア州]]、1820–1850年には[[ウェストヴァージニア州]]、1860–1870年には[[オハイオ州]]、1880年には[[ケンタッキー州]]、1890–1940年には[[インディアナ州]]、1950–1970年には[[イリノイ州]]にあり、[[ミシシッピ川]]を越えミズーリ州に入ったのは1980年からである<ref name="USDC" />。

=== ロシア ===
[[ロシア]]の人口重心は、[[工業]][[生産]]・[[商業]]の重心とともに[[モスクワ]]より東にあり、いずれも[[ウファ]]の付近を移動している<ref name="Russia_Treivish">{{Cite journal | author = Andrei Treivish | title = A New Russian Heartland: The Demographic and Economic Dimension | journal = Eurasian Geography and Economics | year = 2005 | volume = 46 | issue = 2 | pages = 123-155 | url = http://www.geog.le.ac.uk/russianheartland/EGESpecialIssue/Treyvish.pdf | doi = 10.2747/1538-7216.46.2.123 | format = pdf}}</ref>。1959年から1989年にかけては東に移動していたが、1989年から2002年の間には西に戻っている<ref name="Russia_Treivish" />。

==中央値中心==
緯度と経度のそれぞれについて、人口分布の[[中央値]]となる点を、中央値中心 (median center) という。その地を通る経線より西の人口、東の人口、その地を通る緯線より北の人口、南の人口は、全て等しい。

===日本の中央値中心===
日本の中央値中心は、2005年時点、[[長野県]]南部の[[飯田市]]付近{{どこ|date=2010年10月}}である。人口重心より東にずれているのは、人口分布の東西[[歪度|非対称]]による。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

==関連項目==
*[[人口地理学]]
*[[国の人口順リスト]]
*[[都道府県の人口一覧]]

{{Geo-term-stub}}

{{DEFAULTSORT:しんこうしゆうしん}}
[[Category:地理指標]]
[[Category:平均]]
[[Category:人口統計学]]