伝熱のソースを表示

{{混同|電熱}}
{{Expand English|Heat transfer|date=2024年5月}}
{{化学工学}}
'''伝熱'''（でんねつ、{{Lang-en-short|heat transfer}}<ref>{{Cite book|1 =和書|author =[[文部省]]|coauthors =[[日本物理学会]]編|title =[[学術用語集]] 物理学編|url =http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi|year =1990|publisher =[[培風館]]|isbn =4-563-02195-4|page =}}{{リンク切れ|date=2017年9月 |bot=InternetArchiveBot }}</ref>）とは、[[熱]]エネルギーが空間のある場所から別の場所に移動する現象。'''熱移動'''（ねついどう）ともいう。「熱」は本来、高温物体から低温物体へと移動するエネルギーを指すが、その移動現象に特に着目した時にこれを伝熱という<ref name=mochizuki>{{cite|和書 |editor= |author=望月貞成|author2=村田章 |title=伝熱工学の基礎 |edition= |publisher=日新出版 |year=2000 |isbn=4-8173-0166-X |pages=1-4}}</ref>。

本項目では物理現象としての伝熱について説明する。工学的応用については[[伝熱工学]]を参照。

== 伝熱の形態 ==
伝熱には'''熱伝導'''と'''熱放射'''の2つの基本形態がある<ref>甲藤好郎『伝熱概論』養賢堂、1994（初版：1964）p. 1-2 ISBN 4-8425-0172-3.</ref>。他方、固体壁と流れている流体と間の熱移動は、流体内での混合とそれに伴う熱拡散といった特有の物理現象を伴うため、伝熱現象の観点からも特徴的な現象である。また、自然界や日常生活，さらに身の回りの機器においても頻繁に遭遇する現象であるため、これを「対流熱伝達」と呼び、伝熱形態として熱伝導・対流熱伝達・熱放射の3形態を併記したり、伝熱の3形態とする場合もある<ref>Incropera, F.P, Dewitt, D.D., Fundamentals of Heat and Mass Transfer (5-th ed.), John Wiley & Sons, 2002, p. 2-3, ISBN 0-471-38650-2.</ref>,<ref>日本機械学会(編)『伝熱工学』日本機械学会、2005, p. 5-6, ISBN 978-4-88898-120-0.</ref>。

=== 熱伝導 ===
{{Main|熱伝導}}
物体内に非均一な[[温度]]分布が存在するとき、物体の中の温度の高いところから低いところへと熱エネルギーがひとりでに移動する現象である<ref name=mochizuki/>。ミクロには物体を構成する分子、原子、電子などの運動がエネルギーをやりとりすることで生じると考えられている。[[フーリエの法則]]として下記の式で表される。 
{{Indent|<math>q=-k\frac{dT}{dx}</math>}}
ここで{{math|''q''}}は熱[[流束]]、{{math|''k''}}は[[熱伝導率]]、{{math|''T''}}は温度、{{math|''x''}}は[[位置]]。

=== 熱放射 ===
{{Main|熱放射}}
物体がその温度に応じて内部エネルギーを[[電磁波]]に変換し放出、または吸収することで高温物体から低温物体へのエネルギー移動が生じる現象である<ref name=mochizuki/><ref name=aihara>{{cite|和書 |editor= |author=相原利雄 |title=エスプレッソ伝熱工学 |edition= |publisher=裳華房 |year=2009 |isbn=978-4-7853-6023-8 |pages=1-6}}</ref>。より詳細には、固体表面はその電気電子的性質によって、波長依存性を持つ[[光吸収]]、[[反射]]、放射、[[透過率 (光学)|光透過]]などの現象の組み合わせという、複雑なエネルギー移動現象である。[[プランクの法則]]によると、温度{{math|''T''}}の黒体が放射する波長{{math|&lambda;}}の電磁波のエネルギー{{math|''E''(&lambda;)}} は、
{{Indent|<math>E(\lambda)=\frac{8\pi hc}{\lambda^5}\frac{1}{e^{hc/\lambda kT} - 1}</math>}}
と表せる。ここで、{{math|''h''}}は[[プランク定数]]、{{math|''k''}}は[[ボルツマン定数]]。このエネルギーの交換は[[キルヒホッフの法則 (放射エネルギー)|キルヒホッフの法則]]などに従う。{{math|''E''(&lambda;)}}を電磁波の全波長で[[積分]]した合計の放射エネルギーは[[シュテファン＝ボルツマンの法則]]によれば物体の温度の4乗に比例し、
{{Indent|<math>E_B(T) \equiv \int_0^\infty E(\lambda) d\lambda = \sigma T^4</math>}}
となる。方向性のない熱放射は固体表面の[[放射率]]{{math|&epsilon;}}によって、{{math|&epsilon;&sigma;''T''<sup>4</sup>}}となる。2つの固体間の放射熱交換はそれぞれの固体が相手を見る[[立体角]]に関係する[[形態係数]]{{math|''F''<sub>1&rarr;2</sub>}}などを用いて計算される。

== 対流熱伝達 ==
{{See also|対流|熱伝達率}}
流体が流れる場合に、その保有するエネルギーが流体とともに運搬されるために生じる伝熱現象は'''対流熱伝達'''と呼ばれる。対流熱伝達では流体の持つ[[エンタルピー]]の移動も関係してくるのが特徴である<ref name=aihara/>。対流熱伝達には必ず熱伝導と放射のいずれか一方または両者が同時に存在しており、対流を伝熱の基本形態に含める場合<ref name=mochizuki/>と含めない場合<ref name=aihara/>がある。[[ニュートンの冷却の法則]]により次式で表される。
{{Indent|<math>q=h(T_f-T_s)</math>}}
ここで{{math|''q''}}は[[熱流束]]（単位時間に単位面積を横切って移動した熱量）、{{math|''h''}}は[[熱伝達率]]、{{math|''T''<sub>f</sub>}}は流体の温度、{{math|''T''<sub>s</sub>}}は固体表面の温度。

対流熱伝達には強制対流熱伝達と自然対流熱伝達がある。強制対流熱伝達は、[[ポンプ]]や[[ファン]]などの外部から与えられた流れにより起こる熱伝達である。自然対流熱伝達は、温度差より生ずる[[浮力]]による対流を通じた熱伝達である。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
{{Commonscat|Heat transfer}}
* [[伝熱工学]]
* [[熱工学]]
* [[熱量効果]] - 伝熱現象とは異なるが、温度や熱（エントロピー）とは異なる状態量の変化によって温度差や発熱・吸熱を起こす各種の現象がある。
** 磁気熱量効果<ref>https://solid-mater.com/entry/mce</ref> - [[断熱消磁]]など
** {{仮リンク|電気熱量効果|en|Electrocaloric_effect}}<ref>https://news.mynavi.jp/techplus/article/20170929-a103/</ref> - [[熱電効果]]、[[焦電効果]]など
** 力学熱量効果<ref>https://www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/micro/report/rcst/2013/2013res04.html</ref>
** 弾性熱量効果<ref>https://www.mapion.co.jp/news/column/cobs2548384-1-all/</ref> - {{仮リンク|ゴフ・ジュール効果|en|Gough–Joule effect}}など
** 圧力熱量効果<ref>https://www.kuicr.kyoto-u.ac.jp/sites/topics/20210324/</ref>
** イオン熱量効果<ref>https://texal.jp/2023/01/09/a-new-method-completely-different-from-conventional-cooling-systems-was-devised/</ref>
** 物質の濃度勾配による熱量効果 - [[ソレー効果]]や[[デュフール効果]]など
** [[相変化]]による熱量効果
** マルチ熱量効果<ref>https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21062101/</ref> - 複数の熱量効果の組み合わせ

{{Normdaten}}
{{デフォルトソート:てんねつ}}
[[Category:熱]]
[[Category:伝熱|*]]