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{{about|位相群に付随する位相多元環|離散群の場合の純代数的な取扱い|群環}} [[数学]]において、[[局所コンパクト群]]の'''群環'''(ぐんかん、{{lang-en-short|''group algebra''}})とは、その[[群の表現]]が適当な[[環の表現]]の表現として読み替えることができるような(いくつかの)構成法が与えられたときの、その環(ふつうは[[作用素環]]あるいはもっと一般の[[バナハ代数]])を総称して呼ぶものである。そういった環は、[[離散群|位相を抜きにして考えた群]]に対する[[群環]]と同じような働きを果たす。 == 群環 ''C<sub>c</sub>''(''G'')== [[函数解析学]]、特に[[調和解析]]で用いる目的で、純代数的な群環の構成を[[位相群]] {{mvar|G}} に対するものへ敷衍することは意味がある。{{mvar|G}} が[[局所コンパクト群|局所コンパクトハウスドルフ位相群]]である場合には、{{mvar|G}} は[[ハール測度]]と呼ばれる本質的に一意な左不変可算加法的[[ボレル測度]] {{mvar|μ}} を持ち、ハール測度を用いて {{mvar|G}} 上の[[コンパクト台]]つき複素数値連続函数全体の成す空間 {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} の上に[[畳み込み]]演算を定義することができる。さらに {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} に任意に与えられた[[ノルム]]による[[完備化]]も群環となり得る。 畳み込み演算は {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} の任意の二元 {{math|''f'', ''g''}} に対して {{math|''f'' ∗ ''g''}} を、{{math|''t'' ∈ ''G''}} において : <math> [f * g](t) = \int_G f(s) g(s^{-1}t)\, d \mu(s)</math> と置くことによって定められる。事実、{{math|''f'' ∗ ''g''}} が連続であることは[[優収斂定理]]から直ちに従うし、中黒を {{mvar|G}} の積として : <math> \operatorname{supp}(f * g) \subseteq \operatorname{supp}(f) \cdot \operatorname{supp}(g) </math> が成り立つから、{{math|''f'' ∗ ''g''}} は確かに {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} に属する。また {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} は : <math> f^*(s) = \overline{f(s^{-1})} \Delta(s^{-1}) </math> で定義される[[対合]]も持つ。ただし {{mvar|Δ}} は {{mvar|G}} の[[ハール測度#モジュラー函数|モジュラス]]である。この対合のもとで {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} は [[対合環|*-環]]を成す。 ; 定理 : ノルム<div style="margin:1ex 2em;"><math> \|f\|_1 := \int_G |f(s)| d\mu(s)</math></div>のもとで {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} は{{仮リンク|近似単位元|en|approximate identity}}もつ対合[[ノルム代数]]を成す。 この代数の近似単位元はコンパクト集合からなる(群の)単位元の近傍基で添字付けることができる。実際、{{mvar|V}} を単位元のコンパクト近傍とし、{{mvar|V}} に台を持つ非負連続函数 {{math|''f<sub>V</sub>''}} が : <math> \int_V f_{V}(g)\, d \mu(g) =1</math> を満たすものをとれば、{{math| {''f<sub>V</sub>''}<sub>''V''</sub>}} が近似単位元となる。群環が(単に近似単位元であるばかりではなく厳密な)単位元をもつための必要十分条件は、もとの群の位相が[[離散位相]]であることである。 離散群の場合の {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} は複素係数の[[群環]] {{math|'''C'''[''G'']}} と同じものであることに注意。 この群環の重要性は、これが {{mvar|G}} の[[ユニタリ表現]]論を以下に述べるような意味で的確に捉えることができるという点にある。 ; 定理: {{mvar|G}} を局所コンパクト群、{{mvar|U}} をヒルベルト空間 {{mvar|H}} における {{mvar|G}} の強連続ユニタリ表現とすると、<div style="margin: 1ex 2em;"><math> \pi_U (f) = \int_G f(g) U(g)\, d \mu(g) </math></div>はノルム代数 {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} の非退化有界 ∗-表現であり、写像 <div style="margin: 1ex 2em;"><math> U \mapsto \pi_U</math></div>は {{mvar|G}} の強連続ユニタリ表現全体の成す集合と {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} の非退化有界 ∗-表現との間の全単射となる。この全単射はユニタリ同値と強束縛に矛盾しない。特に {{math|π<sub>''U''</sub>}} が既約であることと、{{mvar|''U''}} が既約であることとは同値である。 ここで、ヒルベルト空間 {{math|''H''<sub>π</sub>}} における {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} の表現 {{mvar|π}} が非退化であるとは、 : <math> \left \{\pi(f) \xi : f \in C_c(G), \xi \in H_\pi \right \} </math> が {{math|''H''<sub>π</sub>}} において稠密であることを言う。 == 畳み込み代数 {{math|''L''<sup>1</sup>(''G'')}} == [[測度論]]の標準的な定理により、{{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} の {{math|''L''<sup>1</sup>(''G'')}}-ノルムによる完備化は[[ハール測度]]に関して可積分な函数(のふつうはハール測度零の集合上でのみ異なるような函数を同一視したもの)全体の成す空間[[ルベーグ空間|{{math|''L''<sup>1</sup>(''G'')}}]]に同型である。 ; 定理: {{math|''L''<sup>1</sup>(''G'')}} は畳み込み積、上述の対合、{{math| ''L''<sup>1</sup>}}-ノルム のもとで [[対合バナッハ環|バナハ ∗-環]]を成す。{{math| ''L''<sup>1</sup>(''G'')}} は有界な近似単位元も持つ。 == 群 {{math|''C''{{sup|∗}}}}-環 {{math|''C''{{sup|∗}}(''G'')}} == 以下、{{math|'''C'''[''G'']}} は[[離散群]] {{mvar|G}} の[[群環]]とする。 局所コンパクト群 {{mvar|G}} に対し、{{mvar|G}} の群 [[C*-環|{{math|''C''{{sup|∗}}}}-環]] {{math|''C''{{sup|∗}}(''G'')}} は {{math|''L''<sup>1</sup>(''G'')}} の {{math|''C''{{sup|∗}}}}-展開環、すなわち {{mvar|π}} がヒルベルト空間における {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} の非退化 {{math|∗}}-表現の全てを亙るときの最大 {{math|''C''{{sup|∗}}}}-ノルム : <math> \|f\|_{C^*} := \sup_\pi \|\pi(f)\|</math> に関する {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} の完備化として定義される。{{mvar|G}} が離散のときは三角不等式により、そのような {{mvar|π}} の何れに対しても三角不等式 : <math> \|\pi (f)\| \leq \| f \|_1</math> が成り立つから、このノルムは矛盾なく定まる。 定義により、{{math|''C''{{sup|∗}}(''G'')}}は以下の[[普遍性]]を持つ。 : {{math|'''C'''[''G'']}} から適当な {{math|'''B'''(''H'')}}(適当な[[ヒルベルト空間]] {{mvar|H}} 上の[[有界作用素]]全体の成す {{math|''C''{{sup|∗}}}}-環)への任意の {{math|∗}}-準同型は[[包含写像]] <div style="margin: 1ex 2em;"><math>\mathbb{C}[G] \hookrightarrow C^*(G)</math></div>を経由する。 === 被約群 {{math|''C''{{sup|∗}}}}-環 {{math|''C''{{su|b=''r''|p=∗}}(''G'')}} === 被約群 {{math|''C''{{sup|∗}}}}-環 {{math|C{{su|b=''r''|p=∗}}(''G'')}} はノルム : <math> \|f\|_{C^*_r} := \sup \left \{ \|f*g\|_2: \|g\|_2 = 1 \right \}</math> に関する {{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} の完備化である。ただし、 : <math> \|f\|_2 = \sqrt{\int_G |f|^2 d\mu}</math> は {{math|''L''<sup>2</sup>}}-ノルムとする。{{math|''C<sub>c</sub>''(''G'')}} の {{math|''L''<sup>2</sup>}}-ノルムに関する完備化はヒルベルト空間であるから、この {{math| ''C''{{su|b=''r''|p=∗}}}}-ノルムは {{math|''L''<sup>2</sup>(''G'')}} 上の {{mvar|f}} を畳み込む作用による有界作用素のノルムであり、従って {{math|''C''{{sup|∗}}}}-ノルムになる。 あるいは同じことだが、{{math|''C''{{su|b=''r''|p=∗}}(''G'')}} は {{math|ℓ<sup>2</sup>(''G'')}} 上の左正則表現の像全体で生成される {{math|''C''{{sup|∗}}}}-環である。 一般に {{math|''C''{{su|b=''r''|p=∗}}(''G'')}} は {{math|''C''{{sup|∗}}(''G'')}} の商であり、この被約群 {{math|''C''{{sup|∗}}}}-環が先の非被約群 {{math|''C''{{sup|∗}}}}-環と同型となる必要十分条件は {{mvar|G}} が[[従順群|従順]]であることである。 == 群フォンノイマン環 == {{mvar|G}} の群フォンノイマン環 {{math|''W''{{sup|∗}}(''G'')}} は {{math|''C''{{sup|∗}}(''G'')}} の展開フォンノイマン環である。 {{mvar|G}} が離散群のときは、[[ヒルベルト空間]] {{math|ℓ<sup>2</sup>(''G'')}} において {{mvar|G}} はその[[正規直交基底]]になる。{{mvar|G}} は {{math|ℓ<sup>2</sup>(''G'')}} に基底ベクトルの置換として作用するから、複素群環 {{math|'''C'''[''G'']}} を {{math|ℓ<sup>2</sup>(''G'')}} 上の[[有界作用素]]全体の成す多元環の部分多元環と同一視することができるが、この部分多元環の弱閉包 {{math|''NG''}} は[[フォンノイマン環]]である。 {{math|''NG''}} の中心は[[共軛類]]が有限となるような {{mvar|G}} の元を用いて記述することができる。特に、{{mvar|G}} の単位元がそのような性質を持つ唯一の元である(つまり、{{mvar|G}} が{{仮リンク|無限共軛類性質|en|infinite conjugacy class property}} を持つ)ならば {{math|''NG''}} の中心は単位元の複素数倍のみからなる。 {{math|''NG''}} が{{仮リンク|超有限型II-1因子環|label=超有限型 II{{sub|1}}-因子環|en|hyperfinite type II-1 factor}}に同型となるための必要十分条件は、[[可算]][[従順群|従順]]かつ無限共軛類性質を持つことである。 == 関連項目 == * {{仮リンク|グラフ代数|en|Graph algebra}} * [[接合環]] (incidence algebra) * [[箙 (数学)|道代数]] * {{仮リンク|亜群代数|en|Groupoid algebra}} == 脚注 == <references/> == 参考文献 == *J, Dixmier, ''C* algebras'', ISBN 0-7204-0762-1 *A. A. Kirillov, ''Elements of the theory of representations'', ISBN 0-387-07476-7 *L. H. Loomis, "Abstract Harmonic Analysis", ASIN B0007FUU30 *{{SpringerEOM|title=Group algebra of a locally compact group|author=A.I. Shtern|urlname=Group_algebra_of_a_locally_compact_group}} {{PlanetMath attribution|id=33628|title=Group $C^*$-algebra}} {{DEFAULTSORT:くんかん}} [[Category:作用素環論]] [[Category:ユニタリ表現論]] [[Category:群上の調和解析]] [[Category:数学に関する記事]]
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