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{{出典の明記|date=2019年4月}} {{古典力学}} '''位置エネルギー'''(いちエネルギー)または'''ポテンシャル・エネルギー'''(ポテンシャル・エナジー、[[英語|英]]: potential energy)は、物体が「ある位置」にあることで物体に「蓄えられる」[[エネルギー]]のこと。主に物理教育においてエネルギーの概念を「高さ」や「ばねの伸び」などと結び付けて説明するために導入される用語である。 [[力 (物理学)|力]]との関係や数学的な詳細については[[ポテンシャル]](ポテンシャル・エネルギー)に回し、この項目では具体的な例を挙げて説明する。 == 性質 == {{独自研究|date=2020年8月22日 (土) 06:58 (UTC)|section=1}} [[質点]]に働く[[力 (物理学)|力]]が位置エネルギーの[[微分係数]]として表されることから、[[運動方程式]]とそこから導入された公式を見る限りにおいては、位置エネルギーの始点と終点での値の差だけが物理的な意味を持つ。従って、適当な[[積分定数]]を位置エネルギーにあらかじめ加えておいても構わない。ただし、[[特殊相対性理論]]においては、[[電磁気学]]との整合性から、厳密には位置エネルギーの基準値の設定には注意が必要である。 == 例 == 例として、手でボールを持ち上げて、静かに離す時を考える。ボールは[[重力]]に従って下に落ちる。 ここで、このボールがもつエネルギーに着目する。ボールを持ち上げた時、そのボールは'''位置エネルギー'''を得たと考える。得たエネルギーの大きさは、ボールを持ち上げるのに必要としたエネルギーに等しい。そしてボールを支える手が離れた瞬間、位置エネルギーは[[運動エネルギー]]に変化し始める。運動エネルギーとは物体が動いているときに持つエネルギーである。ボールが落ちていくにつれて位置エネルギーは減少し、代わりに運動エネルギーが増えていく。位置エネルギー+運動エネルギー、つまり物体が持つエネルギーの全てのことを[[力学的エネルギー]]という。 <div style="float:right">[[画像:EnergyConservation1.png|300px|thumb|落下する物体のエネルギーの移り変わり]]</div> 図は落下する物体のエネルギーの移り変わりを表している。''h'' は物体のある高さ、''t'' は[[時間]]、''E<sub>pot</sub>'' は位置エネルギー、''E<sub>kin</sub>'' は運動エネルギー、''E<sub>tot</sub>'' は力学的エネルギーである。物体の落下に伴って、位置エネルギー(黄色い部分)は減少し、運動エネルギー(青い部分)は増加する。 ここで重要なのはボールが落下している間、力学的エネルギーは常に一定で変わらないということである。物体が動くときには、エネルギーの種類は変わるがその総量は増えたり減ったりしない。この法則を力学的[[エネルギー保存の法則|エネルギー保存則]]と呼ぶ。運動エネルギーを''K''、位置エネルギーを''U''、力学的エネルギーを''E''とすると、''K+U=E''と表される。これはニュートン力学3法則から導くことができる。 == 重力による位置エネルギー == {{main|重力ポテンシャル}} 地表付近において、[[質量]]が ''m'' の物体が基準面から ''h'' だけ高い位置にあるとする。その物体が持つ位置エネルギーは、[[重力加速度]]を定数 ''-g'' とおくと :<math>\left\lbrace f = -mg\right\rbrace \longrightarrow U(h) = -\int_0^h (-mg) dr = mgh</math> で表される。 上式は[[万有引力]]による位置エネルギーの地表付近での近似である。 万有引力の位置エネルギーUは、地球の質量を ''M''、[[万有引力定数]]を ''G'' とすると、地球の中心から距離 ''r'' 離れた質量 ''m'' の物体について :<math>\left\lbrace f(r) = -G\frac{Mm}{r^2}\right\rbrace \longrightarrow U(r) = -\int \left(-G\frac{Mm}{r^2}\right)\,dr = -G\frac{Mm}{r} + C.</math> ただし、位置エネルギーの基準点は(積分定数''C''として)任意に決められるが、通常は万有引力が零となる無限遠を基準とする。 今、地表から ''h'' だけ高い質量 ''m'' の物体の位置エネルギーを考える。地球の中心から地表までの距離を ''R'' とすると、地球の中心から物体までの距離は ''R''+''h'' となる。前式に代入すると、 :<math>U = -G\frac{Mm}{R+h}</math> となる。地表を基準にするために、地表での位置エネルギーを引くと、 :<math>E = -G\frac{Mm}{R+h} - \left(-G\frac{Mm}{R}\right)</math> 第1項を[[テイラー展開]]し、2次以降の式は小さいので0と見なして省略すると :<math>E = -G\frac{Mm}{R} + G\frac{Mm}{R^2}h - \left(-G\frac{Mm}{R}\right)</math> となり、第2項の :<math>G\frac{M}{R^2} = G\frac{Mm}{R^2}\frac{1}{m} = \frac{F}{m} = \frac{mg}{m}</math> (Fは地表の物体にかかる力) は地表付近の[[重力加速度]] ''g'' だから置き換えると、 :<math>\mathbf{}E = mgh</math> となる。 === 位置水頭 === 流体の位置エネルギーを水柱の高さに置き換えたものを位置[[水頭]]という。水の位置エネルギーは[[ベルヌーイの定理]]により、[[水力]]として利用される。 == 弾性力による位置エネルギー == [[ばね]]に繋がれているある物体が、基準となる位置(普通は[[自然長]])から ''x'' だけずれた位置にあるとき、[[ばね定数]]を ''k'' として、物体が持つ位置エネルギー([[弾性エネルギー]])は :<math>\left\lbrace f(x)=-k x\right\rbrace \longrightarrow E = -\int_{0}^{x}\left(-kx\right)dx =\frac{1}{2}kx^2</math> で表される([[フックの法則]]も参照)。ここで物体を自由にすると物体は[[単振動]]を始める。ただし、実際にはばねの伸びと力の大きさは正確に比例している訳ではないので、この式はあくまで x が比較的小さい場合にのみ成り立つ。 == 電気的な位置エネルギー == [[電荷]]の周りには[[電位|'''静電ポテンシャル''']] ''V'' が発生する。[[原点 (数学)|原点]]に[[電気量]] ''q' ''の電荷を置いたとき、 :<math>V=-\int_{\infty}^{r}\frac{q'}{4\pi\epsilon_0r^2}dr=\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{q'}{r}</math> となる。さらに原点から距離 ''r'' だけ離れた点に電気量 ''q'' の別の電荷を置くと、その電荷は次のような位置エネルギーを持つ。 :<math>U=qV=\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{qq'}{r}</math> ここで<math>\epsilon_0</math>は[[真空の誘電率]]である。 この場合、基になった力が[[クーロン力]]と考えれば、試験電荷 <math>\mathbf{}q</math> を用いて :<math>\left\lbrace f(r)=\frac{q q'}{4\pi\epsilon_0r^2}\right\rbrace \longrightarrow U=-\int_{\infty}^{r}\frac{q q'}{4\pi\epsilon_0r^2}dr=\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\frac{q q'}{r}</math> とし、更に <math>V=\frac{U}{q}</math> から'''静電ポテンシャル'''が導出される。 電荷の存在そのものに周囲を電気的に歪めて電場を形成し、電荷の変化による[[電場]]の変化が[[光速]]で伝わる事が分かっている。本来はクーロン力がこの電場から生じていると解釈し、この電場を介した作用を[[近接相互作用]]という。ここからより本源的な[[ポテンシャル]]の考え方が生まれる。重力の場合も同様に場を形成している([[重力場]])。 == 関連項目 == *[[ポテンシャル]] *[[ニュートン力学]] *[[エネルギー機動性理論]] *[[水力発電]] {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:いちえねるきい}} [[Category:ポテンシャルエネルギー|*]] [[Category:重力]] [[Category:エネルギーの形態]]
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