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{{no footnotes|date=November 2015}} 代数学において,[[環準同型]] {{math|''f'': ''R'' → ''S''}} が与えられると,[[環上の加群|加群]]の'''係数環を変更'''する3つの方法がある;すなわち,右 {{mvar|R}}-加群 {{mvar|M}} と右 {{mvar|S}}-加群 {{mvar|N}} に対し, *<math>f_! M = M \otimes_R S</math>, [[誘導加群]]. *<math>f_* M = \operatorname{Hom}_R(S, M)</math>, [[余誘導加群]]. *<math>f^* N = N_R</math>, [[係数の制限]]. それらは[[随伴関手]]として関係する: :<math>f_! : \text{Mod}_R \leftrightarrows \text{Mod}_S : f^*,</math> :<math>f^* : \text{Mod}_S \leftrightarrows \text{Mod}_R : f_*.</math> これは{{仮リンク|シャピロの補題|en|Shapiro's lemma}}と関係する. == Operations == ===係数制限=== 係数の制限は {{mvar|S}}-加群を {{mvar|R}}-加群に変える.[[代数幾何学]]では,用語「係数制限」はしばしば{{仮リンク|ヴェイユ制限|en|Weil restriction}}のシノニムとして用いられる. ==== 定義 ==== {{mvar|R}} と {{mvar|S}} を2つの環とし([[可換環|可換]]であってもなくてもよく,[[単位元]]を持っても持たなくてもよい),{{math|''f'': ''R'' → ''S''}} を準同型とする.{{mvar|M}} を {{mvar|S}} 上の加群とする.このとき次のようにして {{mvar|M}} を {{mvar|R}} 上の加群と見なせる:{{mvar|R}} の作用を {{math|''r'' ∈ ''R''}} と {{math|''m'' ∈ ''M''}} に対して <math>r \cdot m = f(r) \cdot m</math> によって与える. ==== 関手としての解釈 ==== 係数制限は {{mvar|S}} 加群の圏から {{mvar|R}} 加群の圏への[[関手]]と見ることができる.{{mvar|S}} 準同型 {{math|''u'': ''M'' → ''N''}} は自動的に {{mvar|M}} と {{mvar|N}} の制限の間の {{mvar|R}} 準同型になる.実際,{{math|''m'' ∈ ''M''}} と {{math|''r'' ∈ ''R''}} に対し, : <math>u(r \cdot m) = u(f(r) \cdot m) = f(r) \cdot u(m) = r\cdot u(m)\,</math> となる. 関手として,係数制限は[[係数拡大]]関手の[[右随伴]]である. {{mvar|R}} が有理整数環のとき,これは単に加群の圏からアーベル群の圏への忘却関手である. ==== 体の場合 ==== {{mvar|R}} と {{mvar|S}} がともに[[可換体|体]]のとき,{{mvar|f}} は[[単射]]でなければならないので,{{mvar|f}} により {{mvar|R}} は {{mvar|S}} の[[部分体]]と同一視される.そのような場合 {{mvar|S}} 加群は単に {{mvar|S}} 上の[[ベクトル空間]]であり,当然任意の部分体上のベクトル空間でもある.すると制限によって得られる加群は単に部分体 <math>R \subset S</math> 上のベクトル空間である. === 係数拡大 === 係数拡大は {{mvar|R}} 加群を {{mvar|S}} 加群に変える. ==== 定義 ==== この定義では環は[[結合的]]と仮定するが,可換であったり単位元を持ったりする必要はない.また,加群は[[左加群]]と仮定する.右加群の場合に必要な修正は容易である. {{math|''f'': ''R'' → ''S''}} を2つの環の間の準同型とし,{{mvar|M}} を {{mvar|R}} 上の加群とする.[[加群のテンソル積|テンソル積]] {{math|1={{sub|''S''}}''M'' = ''S'' ⊗{{sub|''R''}} ''M''}} を考える,ただし {{mvar|S}} は {{mvar|f}} によって右 {{mvar|R}} 加群と見なす.{{mvar|S}} は自身の上の左加群でもあり,2つの作用は可換である,すなわち {{math|''s'', ''s''′ ∈ ''S''}} と {{math|''r'' ∈ ''R''}} に対して <math>s \cdot (s' \cdot r) = (s \cdot s') \cdot r</math> である(よりフォーマルなことばでは,{{mvar|S}} は {{math|(''S'', ''R'')}} [[両側加群]]である)から,{{math|{{sub|''S''}}''M''}} は {{mvar|S}} の左作用を引き継ぐ.それは {{math|''s'', ''s''′ ∈ ''S''}} と {{math|''m'' ∈ ''M''}} に対して <math>s \cdot (s' \otimes m) = ss' \otimes m</math> によって与えられる.この加群は {{mvar|M}} から''係数拡大''によって得られるといわれる. インフォーマルには,係数拡大は「環と加群のテンソル積」である;よりフォーマルには,それは両側加群と加群のテンソル積の特別な場合である―― {{math|(''S'', ''R'')}} 両側加群と {{mvar|R}} 加群のテンソル積は {{mvar|S}} 加群である. ==== 例 ==== 最も単純な例の1つは{{仮リンク|複素化|en|complexification}}であり,これは[[実数]]から[[複素数]]への係数拡大である.より一般に,任意の[[体拡大]] {{math|''K'' < ''L''}} が与えられると,{{mvar|K}} から {{mvar|L}} に係数拡大できる.体のことばでは,体上の加群は[[ベクトル空間]]と呼ばれ,したがって係数拡大は {{mvar|K}} 上のベクトル空間を {{mvar|L}} 上のベクトル空間に変える.これは,{{仮リンク|四元数化|en|quaternionification}}(実数から[[四元数]]への拡張)のように,[[可除環]]に対してもできる. より一般に,体あるいは''可換''環 {{mvar|R}} から環 {{mvar|S}} への準同型が与えられると,環 {{mvar|S}} は {{mvar|R}} 上の[[結合多元環]]と考えることができ,したがって {{mvar|R}} 加群を係数拡大するとき,得られる加群は {{mvar|S}} 加群と考えることも({{mvar|R}} 代数としての){{mvar|S}} の[[代数の表現]]をもった {{mvar|R}} 加群と考えることもできる.例えば,実ベクトル空間を複素化 ({{math|1=''R'' = '''R'''}}, {{math|1=''S'' = '''C'''}}) した結果は,複素ベクトル区間({{mvar|S}} 加群)とも{{仮リンク|線型複素構造|en|linear complex structure}}({{mvar|R}} 加群としての {{mvar|S}} の代数の表現)を持った実ベクトル空間とも解釈できる. ===== 応用 ===== この一般化は体の研究に対してさえ有用である――特に,体に付随する多くの代数的対象はそれら自身は体ではなく[[表現論]]のように体上の代数のような環である.ベクトル空間上の係数を拡大できるのと同様に,[[群環]]上の係数も拡張でき,したがって群環上の加群すなわち[[群の表現]]の係数も拡張できる.特に有用なのは[[既約表現]]が係数拡大でどう変わるかを関係づけることである――例えば,平面の 90° の回転によって得られる位数4の巡回群の表現は既約な2次元の''実''表現であるが,複素数に係数拡大すると,2つの1次元の複素表現に分裂する.これはこの作用素の[[特性多項式]] {{math|''x''{{sup|2}} + 1}} が実数では2次の既約多項式であるが複素数では2つの1次式に分解することに対応する――実固有値は持たないが,2つの複素固有値を持つ. ==== 関手としての解釈 ==== 係数拡大は {{mvar|R}} 加群の圏から {{mvar|S}} 加群の圏への関手と解釈できる.それは {{mvar|M}} を上のように {{mvar|{{sub|S}}M}} に送り,{{mvar|R}} 準同型 {{math|''u'': ''M'' → ''N''}} を <math>u_S = \text{id}_S \otimes u</math> で定義される {{mvar|S}} 準同型 {{math|''u{{sub|S}}'': ''{{sub|S}}M'' → ''{{sub|S}}N''}} に送る. === 係数余拡大(余誘導加群) === {{empty section|date=November 2015}} == 係数拡大と係数制限の関係 == {{mvar|R}} 加群 {{mvar|M}} と {{mvar|S}} 加群 {{mvar|N}} を考える.準同型 <math>u \in \text{Hom}_R(M,N)</math>, ただし {{mvar|N}} は[[係数制限]]によって {{mvar|R}} 加群と見なす,が与えられたとき,{{math|''Fu'': {{sub|''S''}}''M'' → ''N''}} を[[写像の合成|合成]] :<math>_SM = S \otimes_R M \xrightarrow{\text{id}_S \otimes u} S \otimes_R N \to N</math>, と定義する,ただし最後の写像は <math>s \otimes n \mapsto sn</math> である.この {{mvar|Fu}} は {{mvar|S}} 準同型であり,したがって <math>F \colon \text{Hom}_R(M,N) \to \text{Hom}_S(_SM,N)</math> は well-defined で,([[アーベル群]]の)準同型である. {{mvar|R}} と {{mvar|S}} がともに単位元を持つとき,逆写像 <math>G : \text{Hom}_S(_SM,N) \to \text{Hom}_R(M,N)</math> があり,それは以下のように定義される.<math>v \in \text{Hom}_S(_SM,N)</math> とする.すると {{mvar|Gv}} は合成 :<math>M \to R \otimes_R M \xrightarrow{f \otimes \text{id}_M} S \otimes_R M \xrightarrow{v} N</math> である,ただし最初の写像は{{仮リンク|canonical form|en|canonical form|label=標準的な}}[[同型]] <math>m \mapsto 1 \otimes m</math> である. この構成は群 <math>\text{Hom}_S(_SM,N)</math> と <math>\text{Hom}_R(M,N)</math> が同型であることを示している.実はこの同型は準同型 {{mvar|f}} のみに依っており,したがって[[関手]]的である.[[圏論]]のことばでは,係数拡大関手は係数制限関手の[[左随伴]]である. == 関連項目 == *{{仮リンク|Six operations|en|Six operations}} *[[体のテンソル積]] == 参考文献 == *J.P. May, [http://www.math.uchicago.edu/~may/MISC/TorExt.pdf Notes on Tor and Ext] *NICOLAS BOURBAKI. Algebra I, Chapter II. LINEAR ALGEBRA.§5. Extension of the ring of scalars;§7. Vector spaces. 1974 by Hermann. == 関連文献 == *http://mathoverflow.net/questions/1534/induction-and-coinduction-of-representations {{DEFAULTSORT:けいすうかんのへんこう}} [[Category:環論]] [[Category:加群論]] [[Category:数学に関する記事]]
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