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[[数学]]における'''保型因子'''(ほけいいんし、{{lang-en-short|''factor of automorphy''}})の概念は、[[複素解析多様体]]への[[群 (数学)|群]]の[[群作用|作用]]が定められているという状況で生じてくる。 == 定義 == 群 ''G'' が複素解析多様体 ''X'' に作用しているものとすると、この群 ''G'' は ''X'' 上の複素数値[[正則函数]]全体の成す空間にも作用する。このような函数 ''f'' が'''[[保型形式]]'''であるとは、群 ''G'' の作用に関して : <math>f(g.x) = j_g(x)f(x)</math> なる関係を満たすことを言う。ただし、''j''<sub>''g''</sub>(''x'') は至る所零でない正則函数とする。これは、保型形式は ''G'' の作用のもとで不変となる成分 {{lang|en|(divisor)}} を持つような函数であるというように述べることもできる。 保型形式 ''f'' の'''保型因子'''とはこのような函数 ''j'' のことである。また、'''保型函数''' {{lang|en|(automorphic function)}} とは、その保型因子 ''j'' が常に 1 であるような保型形式をいう。 == 性質 == 保型因子に関していくつかの事実が成り立つ。 * 任意の保型因子は、至る所零でない正則函数全体の成す乗法群への ''G'' の作用に関する[[コサイクル| 1-双対輪体]]である。 * 保型因子が[[コバウンダリー|双対境界輪体]]となることと、それが至る所零でない保型形式の保型因子として得られることとは同値である。 * 与えられた保型因子に対して、それを保型因子に持つ保型形式の全体はベクトル空間を成す。 * 二つの保型形式の点ごとの積は、それら二つの保型形式の保型因子の積を保型因子として持つ保型形式となる。 == 関連する概念 == 保型因子とその他の概念の間の関係として、以下のようなものが挙げられる。 * Γ がリー群 ''G'' 内の格子群であるとき、Γ に対する保型因子は、商リー群 ''G''/Γ 上の[[直線束]]に対応する。さらに、与えられた保型因子に対する保型形式は対応する直線束の切断に対応する。 Γ が ''SL''(2, '''R''') の部分群で[[上半平面]]に作用している場合に特殊化した議論は[[モジュラー形式の保型因子]]の項に譲る。 == 参考文献 == *{{SpringerEOM|title=Automorphic Function|author=A.N. Andrianov, A.N. Parshin|urlname=Automorphic_function}} ''(The commentary at the end defines automorphic factors in modern geometrical language)'' *{{SpringerEOM|title=Automorphic Form|author=A.N. Parshin|urlname=Automorphic_form}} {{DEFAULTSORT:ほけいいんし}} [[Category:保型形式論]] [[Category:数学に関する記事]]
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