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光延反応
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'''光延反応'''(みつのぶはんのう、{{lang-en-short|Mitsunobu reaction}})は、[[有機合成]]で用いられる[[化学反応]]のひとつで、[[アルコール]]の[[ヒドロキシル基]]をアゾカルボン酸エステルと[[トリフェニルホスフィン]]で活性化して行なう[[SN2反応|S<sub>N</sub>2反応]]のことである。1967年に[[光延旺洋]]らによって報告された<ref>{{cite journal|author=Mitsunobu, O.; Yamada, M. Mukaiyama, T.|title= Preparation of esters of phosphoric acid by the reaction of trivalent phosphorus compounds with diethyl azodicarboxylate in the presence of alcohols|journal=Bull. Chem. Soc. Jpn.|year=1967|volume=40|pages= 935-939|doi=10.1246/bcsj.40.935}}</ref><ref>{{cite journal|author=Mitsunobu, O.; Yamada, M.|title= Preparation of esters of carboxylic and phosphoric acid via quaternary phosphonium slats|journal=Bull. Chem. Soc. Jpn.|year=1967|volume=40|pages=2380-2382|doi=10.1246/bcsj.40.2380}}</ref>。 [[アゾジカルボン酸ジエチル]] (DiEthyl AzoDicarboxylate, DEAD) とトリフェニルホスフィン、アルコールと[[求核剤]]([[カルボン酸]]など)を混合すると[[アルコール]]のヒドロキシ基が[[求核剤]]によって置換された生成物が得られる。 : <chem>{ROH} + {NuH} + {Ph3P} + EtOOCN=NCOOEt -> {R-Nu} + {Ph3PO} + EtOOCNHNHCOOEt</chem> ヒドロキシル基は脱離基としては劣っているため、そのままではS<sub>N</sub>2反応により置換することは難しい。 第1級アルコールでは脱離基として優れるスルホン酸エステルに誘導することでS<sub>N</sub>2反応が可能であるが、第2級アルコールではスルホン酸エステルに誘導してもS<sub>N</sub>1反応や脱離反応が併発しやすいために収率が低下することが多い。 しかし、この反応では選択的にS<sub>N</sub>2反応を起こさせることが可能である。 この反応の基質の第2級アルコールのヒドロキシル基が結合している炭素が不斉である場合、S<sub>N</sub>2反応のみが進行するから完全な[[ワルデン反転]]が起こる。 特に求核剤としてカルボン酸を用いてこの反応を行い、続いて生成した[[エステル]]を[[加水分解]]すると、元の基質のヒドロキシル基が結合している炭素の立体配置が反転([[エピ化]])した[[立体異性体]]を得ることができる。そのため、このような反応を'''光延反転'''(みつのぶはんてん)と呼ぶこともある。 反応は以下のような機構で進行する。 #トリフェニルホスフィンがアゾジカルボン酸ジエチルに付加し[[双性イオン]]が発生する。 #求核剤(酸)のプロトンが双性イオンに引き抜かれて活性化される。 #リン原子に対し、アルコールのヒドロキシル基が[[求核置換反応]]し、アルコキシトリフェニルホスホニウム塩となる。 #求核剤とアルコキシトリフェニルホスホニウム塩のS<sub>N</sub>2反応が起こる。[[トリフェニルホスフィンオキシド]]が脱離する。 [[Image:Mitsunobu reaction mechanism.png|568px|光延反応の機構]] なお、この反応で使用できる求核剤は [[pKa|{{pKa}}]] が14以下の[[酸と塩基#ブレンステッド・ローリーの定義|ブレンステッド酸]]に限られる。 用いた求核剤がブレンステッド酸でない場合、副生するヒドラジンジカルボン酸ジエチルのアニオンが中和されないため、こちらが優先的に求核剤として働いて活性化されたヒドロキシル基を置換してしまうためである。 この点を改良したアゾジカルボン酸ジエチルとトリフェニルホスフィン以外の試薬を組み合わせて活性化する反応系も角田、伊東らにより報告されている<ref>{{cite journal|author=Tsunoda, T.; Yamamiya, Y.; Ito, S.|title= 1,1'-(Aazodicarbonyl)dipiperidine-tributylphosphine, a new reagent system for mitsunobu reaction|journal=Tetrahedron Lett.|year=1993|volume=34|pages= 1639-1642|doi=10.1016/0040-4039(93)85029-V}}</ref><ref>角田、伊東 アザクライゼン転位とその周辺-発送と展開. ''有機合成化学協会誌'', '''1994''', ''52'', 113.</ref>。 == (シアノメチレン)ホスホラン試薬 == [[Image:(Cyanomethylene)alkylphosphorane.svg|thumb|100px|(シアノメチレン)トリアルキルホスホラン]] 角田、伊東らはさらに、トリフェニルホスフィンと DEAD の機能を合わせ持つリン[[イリド]]を開発した。彼らは、(シアノメチレン)トリメチルホスホラン (R = –CH<sub>3</sub>, (cyanomethylene)trimethylphosphorane (CMMP))、(シアノメチレン)トリブチルホスホラン (R = –C<sub>4</sub>H<sub>9</sub>–n, (cyanomethylene)tributylphosphorane (CMBP))、の2種の試薬が、ともに単独で光延反応を効果的に起こすことを示した<ref>{{cite journal|author=Tsunoda, T.; Nagino, C.; Oguri, M.; Itô, S. |title=Mitsunobu-type alkylation with active methine compounds|journal=Tetrahedron Lett.|year=1996|volume=37|pages=2459|doi= 10.1016/0040-4039(96)00318-8}}</ref>。 [[Image:Phosphorane Mitsunobu Mechanism.png|center|500px|(シアノメチレン)トリアルキルホスホランによる光延反応]] 試薬のリンイリド '''1''' は、カルボン酸 '''3''' に対する塩基としての役割と、アルコール '''2''' といったん結合してその酸素を受け取る還元剤の役割の両方を果たす。この反応では生成物のエステル '''7''' とともに、[[アセトニトリル]] ('''6''') とトリアルキル[[ホスフィンオキシド]] '''8''' が副生する。 == 参考文献 == {{reflist}} {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:みつのふはんのう}} [[Category:置換反応]] [[Category:人名反応]]
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