全順序群のソースを表示

[[抽象代数学]]における'''線型順序群''' (''linearly ordered group'') または'''全順序群'''（ぜんじゅんじょぐん、{{lang-en-short|''totally ordered group''}}）は、群 {{mvar|G}} と[[全順序]] "{{math|≤}}" との組 {{math|(''G'', ≤)}} で、その順序 {{math|≤}} が'''(平行) 移動不変''' (''translation-invariant'') となるものを言う。移動作用の別に従って、移動不変の概念も異なるものを考え得る。すなわち {{mvar|G}} の演算を加法的に記すものとするとき、{{mvar|a, b, c}} を {{mvar|G}} の元として、{{mvar|G}} が
* '''左順序群'''であるとは、{{math|''a'' ≤ ''b''}} ならば {{math|''c + a'' ≤ ''c + b''}} となるときにいう;
* '''右順序群'''であるとは、{{math|''a'' ≤ ''b''}} ならば {{math|''a + c'' ≤ ''b + c''}} となるときにいう;
* '''両側順序群'''であるとは、左順序群かつ右順序群となるときに言う。

通常の数に対するのと同様に、順序群における元 {{mvar|c}} が'''正'''であるとは {{math|0 ≤ ''c''}} かつ {{math|''c'' ≠ 0}}（すなわち、{{math|''c'' > 0}}）となることを言う。ただし、ここでの "{{math|0}}" は群の[[単位元]]を意味する（実数の [[0]] と似ている必要はまったくない）。一つの順序群において正元全体の成す集合をしばしば {{math|''G''{{sub|+}}}} のように書く{{efn|ここで {{math|+}} を下付きにしたのは、通常は単位元も含めた[[正錐]]を上付きで {{math|''G''{{sup|+}}}} と書く<ref>例えば {{nlab|id=ordered+group#properties}}</ref>のとの区別としてである}}。

全順序群 {{mvar|G}} の任意の元 {{mvar|a}} は {{math|''a'' ∈ ''G''{{sub|+}}}} または {{math|''-a'' ∈ ''G''{{sub|+}}}} または {{math|1=''a'' = 0}} の三者択一に従う。全順序群 {{mvar|G}} が[[自明群]]でないならば、{{math|''G''{{sub|+}}}} は無限集合であり、したがって非自明な任意の全順序群は無限群である。

全順序群 {{mvar|G}} の元 {{mvar|a}} に対し、{{mvar|a}} の[[絶対値]] {{math|{{abs|''a''}}}} は <math display="block">|a|:=\begin{cases}a, & \text{if }a\geqslant0,\\ -a, & \text{otherwise}\end{cases}</math> を満たすものとして定義される。

さらに全順序群 {{mvar|G}} が[[アーベル群]]であるならば、[[三角不等式]] <math display="block">|a+b|\le |a| + |b|\quad(\forall a,b\in G)</math> が満足される。

== 例 ==
任意の全順序群は[[捩れ (代数学)|ねじれがない]]。逆に {{harvtxt|Levi|1942}} はアーベル群が両立する全順序を持つための必要十分条件が、ねじれのないアーベル群となることであると示した。

[[オットー・ヘルダー]]は任意の{{ill2|アルキメデス群|en|Archimedean group}}（[[アルキメデスの性質]]を満たす両側順序群）が[[実数]]の加法群 {{mathbf|R}} の適当な部分群に[[群同型|同型]]となることを示した{{sfn|Fuchs|Salce|2001|p=61}}。これは、乗法的に書かれたアルキメデス順序群に対して、デデキント完備化 {{mvar|{{hat|G}}}}（すなわち全順序群 {{mvar|G}} の {{mvar|n}}-乗根に関する閉包）を考えることで示される。実際、この完備化に通常の線型順序位相を入れれば、任意の {{math|''g'' ∈ ''{{hat|G}}''}} に対する指数函数 <math display="block">g^{\bull}\colon (\mathbb{R},+) \to (\widehat{G},\cdot);\; \lim_{i}q_{i}\in\mathbb{Q}\mapsto \lim_{i}g^{q_{i}}</math> は位相群の順序（を保つ/を逆にする）同型として[[well-defined|矛盾なく定まる]]ことが示せる。非アルキメデスの場合には、全順序群の完備化は困難であるから、そのような場合は群の階数（これは凸部分群からなる最大列の順序型と関係する）で分類するのがよい。

左順序群の例は、実数直線上の順序を保つ同相として作用する群からたくさん作れる。実際、可算群に対してはこれが左順序性の特徴付けであることが知られている。例えば {{harvtxt|Ghys|2001}} を参照。

== 関連項目 ==
* {{ill2|巡回順序群|en|Cyclically ordered group}}
* {{ill2|ハーン埋め込み定理|en|Hahn embedding theorem}}

== 注 ==
=== 注釈 ===
{{notelist}}
=== 出典 ===
{{reflist}}
== 参考文献 ==
*{{Citation | last1=Levi | first1=F.W. | author-link=Friedrich Wilhelm Levi | title=Ordered groups. | journal=Proc. Indian Acad. Sci. | year=1942 | volume=A16 | pages=256–263}}
*{{Citation | last1=Fuchs | first1=László | last2=Salce | first2=Luigi | title=Modules over non-Noetherian domains | publisher=[[American Mathematical Society]] | location=Providence, R.I. | series=Mathematical Surveys and Monographs | isbn=978-0-8218-1963-0 |mr=1794715 | year=2001 | volume=84}}
*{{Citation | last1=Ghys | first1=É. | title=Groups acting on the circle. | journal=L´Eins. Math. | year=2001 | volume=47 | pages=329–407}}

== 外部リンク ==
* {{ProofWiki|urlname=Definition:Totally_Ordered_Group|title=Definition:Totally Ordered Group}}
* {{SpringerEOM|urlname=Totally_ordered_group|title=Totally ordered group|author=Kokorin, A.I.; Kopytov, V.M.}}

{{DEFAULTSORT:せんしゆんしよくん}}
[[Category:順序群]]
[[Category:数学に関する記事]]