加水分解のソースを表示

{{出典の明記| date = 2023年12月}}

'''加水分解'''（かすいぶんかい、{{lang-en-short|Hydrolysis}}）あるいは'''水解'''（すいかい）とは、[[反応物]]に[[水]]が反応し、分解生成物が得られる[[化学反応]]のことである。このとき[[水]][[分子]]は、[[生成物]]の上で H（[[陽子|プロトン]]成分）と OH（[[水酸化物]]成分）とに分割して取り込まれる。反応形式に従った分類により、加水分解にはいろいろな種類の反応が含まれる。

[[化学式]]ABで表される[[化合物]]が[[極性分子|極性]]を持ち、Aが陽性、Bが陰性であるとき、ABが水と反応するとAはOHと結合し、BはHと結合する形式の加水分解が起こるのが一般的である。
: <chem> AB + H2O -> AOH + BH</chem>

加水分解の[[逆反応]]は'''[[脱水縮合]]'''である。

== 有機化合物の加水分解 ==
カルボン酸[[誘導体]]、例えばエステル・アミドなどは、加水分解により元の[[カルボン酸]]に戻る。[[水酸化ナトリウム]]など、[[塩基]]を用いた[[エステル]]の加水分解を特に[[鹸化]]（けんか）と呼ぶ。これらは[[カルボニル基]]へ水、もしくは[[水酸化物イオン]]が作用する[[付加脱離反応]]で進行する化学反応である。 

[[アセタール]]、[[ヘミアセタール]]は加水分解により元の[[アルデヒド]]にもどり、[[ケタール]]、[[ヘミケタール]]は加水分解により元の[[ケトン]]に戻る。通常は[[酸]]を[[触媒]]とし、[[反応中間体|中間体]]として[[カルボカチオン]]を経由する。

以下に主な[[置換基]]の加水分解と生成物を示す。
* [[エステル]] → [[カルボン酸]] + [[アルコール]]
* [[アミド]] → カルボン酸 + [[アミン]]
* [[チオエステル]] → カルボン酸 + [[チオール]]
* [[アセタール]] → [[アルデヒド]] + アルコール
* [[ヘミアセタール]] → アルデヒド + アルコール
* [[ケタール]] → [[ケトン]] + アルコール
* [[ヘミケタール]] → ケトン + アルコール

各置換基の加水分解の特性・条件についてはそれぞれ左辺の項目に詳しい。また、これらの反応は[[生体]]内では[[酵素]]が関与する場合が多く、[[基質 (化学)|基質]]により異なる[[酵素]]が作用するが、それらの酵素を総称して[[加水分解酵素]]（ヒドロラーゼ）と呼ぶ。

== 塩の加水分解 ==
[[酸と塩基|酸および塩基]]の[[解離定数|解離平衡定数]]が小さい物質が塩を形成した場合、[[水溶液]]にした際に化合物の一部は元の遊離酸・塩基を生成するが、これを'''塩の加水分解'''と呼ぶことがある。[[弱酸]]から生成する[[陰イオン]]は水からプロトンを引き抜き[[水酸化物イオン]]を生成し、[[弱塩基]]から生成する[[陽イオン]]は水と反応して[[オキソニウムイオン]]を生成する。記事[[化学平衡]]に詳しい。
:<chem> CH3COO- + H+ -> CH3COOH</chem>
:<chem> CH3COO- + H2O <=> CH3COOH + OH-</chem>
:<chem> (CH3COONa + H_2O <=> CH3COOH + Na+ + OH- )</chem> 

:<chem> NH4+ + H2O <=> {NH3} + H3O+</chem>

== 無機化合物の加水分解 ==
[[ハロゲン化物]]など[[求電子剤|求電子性]]の高い[[無機化合物]]には、加水分解を受けて[[第17族元素#水素化物|ハロゲン化水素]]とともに[[水酸化物]]や[[オキソ酸]]を与えるものがある。[[塩化チタン(IV)]] は空気に触れると白煙を生じるが、これは湿気により加水分解を受けて[[酸化チタン(IV)]] に変わるためである。

:<chem> FeCl3 + 3H2O -> Fe(OH)3 + 3HCl</chem>
:<chem> SO2Cl2 + 2H2O -> H2SO4 + 2HCl</chem>
:<chem> TiCl4 + 2H2O -> TiO2 + 4HCl</chem>

[[有機金属化合物]]も以下のような加水分解を受ける。反応性は化合物により異なる。[[ジエチル亜鉛]]など、空気中の湿気に触れると[[発火]]する化合物も知られる。
: <chem>R_{n}M + n H2O -> RH + M(OH)_{n}</chem>

== 経年劣化としての加水分解 ==
ポリエステル系[[ポリウレタン]]や[[エチレン酢酸ビニル|EVA]]といった材質は加水分解を起こすので、それらが利用されている製品では、[[ボールペン]]等の表面がべた付く、[[運動靴]]の[[ソール]]が剥がれる等の[[経年劣化]]として観察される。

== 関連項目 ==
* [[付加脱離反応]]
* [[脱水反応]]
* [[水和]]
* [[水和反応]]
* [[水和物]]
* [[タンパク加水分解物]]
* [[水の性質]]

{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:かすいふんかい}}
[[Category:化学反応]]