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[[数学]]、とくに[[加群]]論という[[抽象代数学]]の分野において、'''半単純加群'''(はんたんじゅんかぐん、{{lang-en-short|semisimple module}})または'''完全可約加群'''(かんぜんかやくかぐん、{{lang-en-short|completely reducible module}})はその[[既約加群|既約部分加群]]から容易に理解できるようなタイプの加群である。自分自身の上で半単純加群であるような[[環 (数学)|環]]はアルティン的'''半単純環'''として知られている。[[有限群]]の標数0の[[可換体|体]]上の[[群環]]のようないくつかの重要な環は半単純環である。[[アルティン環]]ははじめはその最大の半単純商を通じて理解される。アルティン的半単純環の構造は[[アルティン・ウェダーバーンの定理]]によってよく理解される。これはこれらの環を[[行列環]]の有限個の[[環の直積|直積]]として表示するものである。 == 定義 == 単位元をもつ[[環 (数学)|環]](可換でなくてもよい)上の[[環上の加群|加群]]は、[[単純加群|単純]](既約)部分加群の[[加群の直和|直和]]であるときに、'''半単純''' (semisimple) あるいは'''完全可約''' (completely reducible) という。 加群 ''M'' に対して、以下は同値。 # ''M'' は既約加群の直和である。 # ''M'' はその既約部分加群の直和である。 # ''M'' のすべての部分加群は{{仮リンク|直和成分|en|direct summand}}である。すなわち、''M'' のすべての部分加群 ''N'' に対して、補部分加群 ''P'' が存在して、''M'' = ''N'' ⊕ ''P''. <math>3 \Rightarrow 2</math> のための最初のアイデアは次のようにして既約部分加群を見つけることだ。任意の <math>x\in M</math> を選んで <math>P</math> を <math>x \notin P</math> であるような極大部分加群とする。<!-- by Zorn's lemma? --><math>P</math> の補部分加群は既約であることを証明できる{{sfn|Jacobson|1989|p=120}}。 半単純加群の最も基本的な例は体上の加群、すなわち[[ベクトル空間]]である。一方、整数環 '''Z''' は自身の上の半単純加群ではない。(理由は、例えば、アルティン環でないから。) 半単純(完全可約)であることは[[直既約加群|完全直可約]](直既約部分加群の直和となること)よりも強い。 ''A'' を体 ''k'' 上の代数とする。このとき ''A'' 上の左加群 ''M'' が'''絶対半単純''' (absolutely semisimple) であるとは、''k'' の任意の[[体拡大]] ''F'' に対して、<math>F \otimes_k M</math> が <math>F \otimes_k A</math> 上の半単純加群であることをいう。 == 性質 == * ''M'' が半単純で ''N'' が[[部分加群]]であれば、''N'' と ''M''/''N'' も半単純である。 * 各 <math>M_i</math> が半単純加群であれば、<math>\bigoplus_i M_i</math> もそうである。 * 加群 ''M'' が[[有限生成加群|有限生成]]かつ半単純であることと[[アルティン加群|アルティン的]]かつその[[加群の根基|根基]]が 0 であることは同値である。 == 自己準同型環 == * 環 ''R'' 上の半単純加群 ''M'' はまた ''R'' から ''M'' の[[アーベル群]][[自己準同型]]環の中への[[環準同型]]として考えることもできる。この準同型の像は[[半原始環]]であり、すべての半原始環はそのような像に同型である。 * 半単純加群の[[自己準同型環]]は半原始であるだけでなく、[[フォン・ノイマン正則環|フォンノイマン正則]]でもある{{sfn|Lam|2001|p=62}}。 == 半単純環 == {{main|半単純環}} 環が(左)'''半単純'''であるとは、それがそれ自身の上の左加群として半単純であることをいう。驚くべきことに、左半単純環は右半単純でもあり、逆も同様である。左右の区別はしたがって不要であり、半単純環についてあいまいさなく話すことができる。 半単純環は[[ホモロジー代数]]の言葉で特徴づけることができる。すなわち、環 ''R'' が半単純であることと左(または右)''R''-加群の任意の短完全列が分裂することは同値である。とくに、半単純環上の任意の加群は[[移入加群]]かつ[[射影加群]]である。射影加群は[[平坦加群]]なので、半単純環は[[フォン・ノイマン正則環]]である。 半単純環は代数学者にとってかなり興味深い。例えば、環 ''R'' が半単純であれば、すべての ''R''-加群は自動的に半単純である。さらに、すべての単純(左)''R''-加群は ''R'' の極小左イデアルに同型である。すなわち、''R'' は左[[Kasch環]]である。 半単純環は[[アルティン環]]かつ[[ネーター環]]である。上記の性質から、環が半単純であることとアルティン環であり[[ジャコブソン根基]]が 0 であることは同値である。 アルティン的半単純環が体を含めば、[[半単純多元環]]と呼ばれる。 === 例 === * 可換半単純環は体の有限個の直積である。可換環が半単純であることと[[アルティン環]]かつ[[被約環|被約]]であることは同値である{{sfn|Bourbaki|loc=VIII, pg. 133}}。 * ''k'' が体で ''G'' が位数 ''n'' の有限群であれば、[[群環]] <math>k[G]</math> が半単純であることと ''k'' の[[標数]] が ''n'' を割らないことは同値である。これは[[マシュケの定理]]であり、[[群の表現論]]において重要な結果である。 * [[アルティン-ウェダーバーンの定理]]によって、単位的アルティン環 ''R'' が半単純であることと <math>M_n(D_1) \times M_n(D_2) \times \dots \times M_n(D_r)</math>(に同型)であることは同値である。ただし各 <math>D_i</math> は[[可除環]]であり <math>M_n(D)</math> は ''D'' に成分をもつ ''n'' 次全行列環。 * 半単純非単位的環の例は <math>M_{\infty}(K)</math>、体 ''k'' 上の行と列が有限な無限次行列である。 === 単純環 === {{main|単純環}} その用語にもかかわらず、''単純環は半単純環であるとは限らない''ことに注意すべきである。問題は環が''大きすぎる''かもしれないことだ。つまり、(左/右)アルティンでないかもしれない。実は、''R'' が単純環であって極小左/右イデアルをもてば、''R'' は半単純である。 単純だが半単純でない環の古典的な例は[[ワイル代数]]である。例えば {{math|'''Q'''⟨''x'', ''y''⟩/(''xy'' − ''yx'' − 1)}} は単純[[非可換整域]]である。これらやたくさんの他の素敵な例はもっと詳細にいくつかの非可換環論のテキストで議論されている。例えば Lam の本の chapter 3 では非アルティン単純環として書かれている。ワイル代数の[[加群論]]は半単純環のそれよりもよく研究されていてかなり異なる。 === ジャコブソン半単純 === {{main|半原始環}} 環は極大左イデアルの共通部分が 0 であるときに、すなわち[[ジャコブソン根基]]が 0 であるときに、''ジャコブソン半単純''(あるいは ''J-半単純''あるいは''[[半原始環|半原始]]'')と呼ばれる。自身の上の加群として半単純であるすべての環のジャコブソン根基は 0 であるが、ジャコブソン根基が 0 であるすべての環が自身の上の加群として半単純であるわけではない。J-半単純環が半単純であることと[[アルティン環]]であることは同値であり、したがって半単純環は混乱を避けるためにしばしば''アルティン的半単純環'' (artinian semisimple ring) と呼ばれる。 例えば整数環 '''Z''' は J-半単純だがアルティン半単純ではない。 == 脚注 == {{reflist|2}} == 参考文献 == * Bourbaki, Algèbre * {{Citation | last1=Jacobson | first1=Nathan | title=Basic algebra II | publisher=W. H. Freeman | edition=2nd | isbn=978-0-7167-1933-5 | year=1989}} * {{cite book |last1 = Lam |first1 = T. Y. |year = 2001 |title = A first course in noncommutative rings |edition = Second |series = Graduate Texts in Mathematics |volume = 131 |url = {{google books|2T5DAAAAQBAJ|plainurl=yes}} |publisher = Springer-Verlag |isbn = 0-387-95183-0 |mr = 1838439 |zbl = 0980.16001 |ref = harv }} * R.S. Pierce. ''Associative Algebras''. Graduate Texts in Mathematics vol 88. == 関連項目 == * [[半単純成分]] * [[半単純環]] {{DEFAULTSORT:はんたんしゆんかくん}} [[Category:加群論]] [[Category:数学に関する記事]]
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