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'''単葉関数''' (たんようかんすう、'''{{lang-en-short|univalent function}}''')は、[[複素解析]]における用語である。[[複素数#複素数平面|複素平面(ガウス平面)]]上のある[[開集合]](領域)上で定義された複素関数が[[単射]](1対1写像)である場合、その関数は'''単葉'''であると表現し、また、その関数を単葉関数と呼ぶ。[[正則関数|正則]]である必要はないが通常は正則な単葉関数を考察の対象にする。このような正則かつ単葉な関数は、英語では[[等角写像|コンフォーマル]](Conformal) であると表現するが<ref name="M.J. Kozdron, 2007"> [http://stat.math.uregina.ca/~kozdron/LectureNotes/univalent.pdf M.J. Kozdron, 2007, "The Basic Theory of Univalent Functions"]</ref>、日本語では単に'''単葉正則'''であると表現する場合が多いようである。 ==基本的な性質== ===定理 (単葉正則関数の基本定理)=== <math>f(z)</math> を複素平面のある[[連結空間|連結領域]] {{mvar|D}} で定義された正則関数とし、その[[微分]]を <math>f'(z)</math> で表す。 :'''(1)''' <math>f(z)</math> が {{mvar|D}} で単葉であれば {{mvar|D}} で <math>f'(z) \ne 0</math> である。 :'''(2)''' {{mvar|D}} の点 <math>z_0</math> で <math>f'(z_0) \ne 0</math> であれば、<math>z_0</math> の近傍 {{mvar|U}} を、{{mvar|U}} で<math>f(z)</math> が単葉になるように選ぶことができる<ref name="M.J. Kozdron, 2007"/>。 ===証明=== '''(1)''' {{mvar|D}} で<math>f(z)</math>が単葉正則であるが、<math>f'(z)</math> の[[零点]]が存在すると仮定して矛盾を導く。 まず、<math>f'(z)</math> の零点の内の一つを任意に選んで <math>z_0</math> とする。<math>z_0</math> の近傍 {{mvar|U}} を、その[[閉包 (位相空間論)|閉包]] <math>\overline{U}</math> が[[コンパクト空間|コンパクト]]で <math>\overline{U} \subset D </math> となるように選ぶ。 この仮定の下では、<math>\overline{U} </math> で <math>f'(z)</math> の零点の個数は有限である。なぜなら、零点が無限個存在するとすれば、[[ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理]]により <math>\overline{U}</math> において全ての零点の集合は少なくとも1個の[[集積点]]を持つことになり、[[一致の定理]]から {{mvar|U}} で <math>f'(z)=0</math> となり、<math>f(z)</math> は単葉正則という仮定に反するからである。 {{mvar|U}} で <math>z_0</math> 以外に零点が存在する場合は、閉包がその零点を含まないように{{mvar|U}}を選び直す(このような操作は零点が有限個であるから可能である)。 <math>g(z) = f(z) - f(z_0)</math> と置けば <math>g(z_0) = g'(z_0) = 0</math> である。従って <math>z=z_0</math> における <math>g</math> の位数は2以上で、これを <math>n</math> とすれば <math>g(z) = (z - z_0)^n g_1(z)</math>、<math>g_1(z_0) \ne 0</math> と置くことができる。 <math>g</math> は <math>\partial U </math> 上で零点を持たず、また <math>\partial U </math> はコンパクトであるため、<math>0 < |\alpha| < \min_{z \in \partial U}|g(z)|</math> を満たす複素数 <math>\alpha</math> を任意に選べば、[[ルーシェの定理]]から {{mvar|U}} における <math>g(z)</math> と<math>h(z)=g(z)+\alpha</math> の位数を含めた零点の個数はともに <math>n</math> となる。 <math>h</math> について、<math>h(z_0)=\alpha\ne0</math> であり、<math>h'(z)=f'(z)</math> は {{mvar|U}} で <math>z_0</math> 以外に零点を持たないので、 {{mvar|U}} における <math>h</math> の零点の位数は1である([[重根]]を持たない)。したがって <math>h</math> は{{mvar|U}}で位数1の相異なる零点を <math>n (\ge 2)</math> 個持つことになる。 以上から、<math>f(z) = h(z) + f(z_0) - \alpha</math> は {{mvar|U}} で同じ値となる点を複数持つことになり、<math>f(z)</math> が {{mvar|D}} で単葉であるという仮定に反する。 '''(2)''' <math>g(z) = f(z) - f(z_0)</math> と置き、(1) と同様にして、<math>z_0</math> の近傍 {{mvar|U}} を、<math>\overline{U}</math> がコンパクトで、その上では <math>z_0</math> のみが <math>g(z)</math> の零点となるように選ぶ。 <math>g(z_0) = 0</math>、<math>g'(z_0) = f'(z_0) \ne 0</math> であるから <math>z_0</math> は <math>g</math> の1位の零点である。 <math>g</math> は <math>\partial U</math> 上で零点を持たず、また <math>\partial U</math> はコンパクトであるため、<math>0 < |-\alpha| < \min_{z \in \partial U}|g(z)|</math> を満たす複素数 <math>\alpha</math> を任意に選べば、ルーシェの定理から {{mvar|U}} における <math>g(z)</math> と <math>g(z) - \alpha</math> の零点の全位数は共に1である。 すなわち、<math>g(z) = \alpha</math> となる点が {{mvar|U}} においてただ一つ存在する。<math>V = \{ z \mid |g(z)| < \min_{z \in \partial U} |g(z)| \} \subset U</math> と置けば、{{mvar|V}} 上で <math>g(z)</math> および <math>f(z) = g(z) + f(z_0)</math> は単葉である。 ===系=== <math>f(z)</math> を複素平面のある領域 {{mvar|D}} で定義された単葉正則関数とすれば、<math>f(z)</math> は単葉正則な[[逆写像]] <math>f^{-1}(\omega)</math> を持ち、[[連鎖律]]から、 :<math>\frac{df^{-1}(\omega)}{d\omega} = \frac{1}{f'(z)}, \quad \omega = f(z)</math> となる。 ==関連する定理== 単葉関数と関連する重要な定理がいくつか知られているが、ここでは次の一例のみを紹介する(この定理は[[リーマンの写像定理]]を証明する際に必要となる)。 ===定理 (単葉正則関数の収束定理)=== 複素平面のある領域 {{mvar|D}} で定義された単葉正則関数の列 { ''f<sub>n</sub>''(''z'') } ( <math>n \in \mathbb{N}</math> ) が ''f'' (''z'') に[[極限#関数列の収束|広義一様収束]]するのであれば、''f'' (''z'') は {{mvar|D}} で単葉正則関数かまたは定数となる。 ===証明=== まず、 { ''f<sub>n</sub>''(''z'') } が単葉正則関数であっても ''f'' (''z'') が定数となる例として ''f<sub>n</sub>''(''z'') = ''z'' / ''n'' がある。当然 ''f'' (''z'') は定数 0 となる。 次に、 {{mvar|D}} で ''f'' (''z'') が定数でも単葉関数でもないと仮定する。この場合、少なくとも、''f'' (''z''{{sub|1}}) = ''f'' (''z''{{sub|2}}) = ''α'' となる {{mvar|D}} 内の異なる2点、''z''{{sub|1}}、 ''z''{{sub|2}} が存在するはずである。 ''g<sub>n</sub>''(''z'') = ''f<sub>n</sub>''(''z'') − α、''g'' (''z'') = ''f'' (''z'') − αと定義すれば、 { ''g<sub>n</sub>''(''z'') } は {{mvar|D}} で定義された単葉関数の列であり、''g'' (''z'') に[[極限#関数列の収束|広義一様収束]]する。 ''z''{{sub|1}}、''z''{{sub|2}} を含み、その閉包 <math>\overline{D'}\ </math> が {{mvar|D}} に含まれる[[有界]]な領域 <math>D'\ </math> を選ぶことができる。 <math>\overline{D'}\ </math> は有界な[[閉集合]]としてコンパクトであり、 { ''g<sub>n</sub>''(''z'') } は<math>\overline{D'}\ </math>で ''g'' (''z'') に[[極限#関数列の収束|一様収束]]する。 上の仮定の下では、<math>\overline{D'}\ </math>で ''g'' (''z'') の零点の個数は有限である。なぜなら、零点が無限個存在するとすれば、<math>\overline{D'}\ </math>はコンパクトであるからボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理により全ての零点の集合は少なくとも1個の集積点を持つことになり、一致の定理から ''g'' (''z'') は {{mvar|D}} で 0 となるが、これは ''f'' (''z'') が定数でないという仮定に反するからである。 <math>D'\ </math>の境界 <math>\partial D'\ </math>上に ''g'' (''z'') の零点があると都合が悪いので、そのような場合には<math>\overline{D'}\ </math>の内側に、''z''{{sub|1}}、''z''{{sub|2}} を含み、しかもその境界上に ''g'' (''z'') の零点が来ないように領域を取り、これを改めて <math>D'\ </math>とする(このような操作は ''g'' (''z'') の零点が有限個であるから可能である)。 ''g'' (''z'') は <math>\partial D'\ </math>に零点を持たず、また <math>\partial D'\ </math> はコンパクトであるから、 <math>\partial D'\ </math> 上の|''g'' (''z'') | の最小値は正数である。これをεとする。 { ''g''{{sub|n}}(''z'') } は<math>\overline{D'}\ </math>で ''g'' (''z'') に一様収束するから、ある ''N'' ∈ <math>\mathbb{N}</math> が存在して ''n'' ≥ ''N'' であれば |''g''{{sub|n}}(''z'') − ''g'' (''z'') | < εとできる。 従って、 ''n'' が十分大きな自然数であれば、 <math>\partial D'\ </math> 上で |''g'' (''z'') | > |''g''{{sub|n}} (''z'') − ''g'' (''z'') | とでき、ルーシェの定理により<math>D'\ </math> での ''g<sub>n</sub>'' (''z'') と ''g'' (''z'') の零点の個数は一致するはずであるが、''g''{{sub|n}} (''z'') は単葉関数であるから零点の個数は高々1であり(上記基本定理から単葉正則関数の微分は 0 にならないのでその零点の位数は1である)、一方 ''g'' (''z'') のそれは''z''{{sub|1}}、''z''{{sub|2}} を含めて2以上であるから矛盾である。従って、 {{mvar|D}} で ''g'' (''z'') は定数でなければ単葉関数であることになる。 == 例== <math>|a| < 1</math> である任意の複素数 {{mvar|a}} に対して <math>\phi_a(z) =\frac{z-a}{1 - \bar{a}z}\ </math> と定義すると、 <math>\phi_a</math> は単位開円板 <math>\{z \mid |z| < 1 \}</math> をそれ自身に写像するが、これは単位開円板を定義域とする単葉関数となる(この関数もリーマンの写像定理を証明する際に何度も繰り返して使用され、重要な働きをする)。 ==実関数との比較== 複素[[解析関数]] (正則関数に一致する) の場合と異なって、実解析関数の場合では、上記のような性質は成り立たない。例えば ''ƒ''(''x'') = ''x''<sup>3</sup> を考えると、これは :<math>f: (-1, 1) \to (-1, 1) \, </math> であり、この定義域で明らかに単射であるが、その微分は''x'' = 0 で 0 であり、その逆写像は区間 (−1, 1)に渡って解析的ではない。ただし逆写像は''x'' = 0 を除いて区間 (−1, 1)に渡って微分可能である。 ==脚注== <references /> == 参考文献 == * John B. Conway. ''Functions of One Complex Variable I''. Springer-Verlag, New York, 1978. ISBN 0-387-90328-3. * John B. Conway. ''Functions of One Complex Variable II''. Springer-Verlag, New York, 1996. ISBN 0-387-94460-5. * 遠木幸成・阪井章 『関数論』 学術図書出版社、1966年。 ==関連項目== * [[リーマンの写像定理]] {{Normdaten}} {{DEFAULTSORT:たんようかんすう}} [[Category:複素解析]] [[Category:解析学]] [[Category:数学に関する記事]]
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